チェンジ・ザ・ワールド☆
feel so good
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教室の隅っこの席、ここが音成遊の席である。最近どんどん身長が伸びて、一年で2度も学生服を作り直した。別に太った訳ではない事をここに注意しておきたい。
小学生の頃とは違い、中学に上がると周囲の男女も少しずつ色気づいていった。気が付けばもう中学も卒業間近で、卒業を前に告白するだのしないだの、クラスはそんな話しで密かに盛り上がっている。
「はあ……」
机に肩肘を付き、どこか遠くを見るような目で遊はため息を吐く。
「どうしたんだよ、音成。ため息なんてついちゃってさ」
遊の様子に気が付いた友人が声をかける。
「べっつに」
「そう言えば隣りのクラスの石川が、お前の事好きらしいぞ」
くだらないーーー
「ふうん」
「……お前ってさあ、結構モテるくせに今までされた告白全部断ってるだろ? 好きなやつがいるって話しも聞かないし、何で?」
「何でって、どうして好きでもないやつと付き合わなきゃいけないんだよ」
「お前って、見た目と中身にギャップがあるよなー。取りあえず付き合ってるやつなんていっくらでもいんのにさ、真面目~」
くだらないーーー
「俺はそういうやつらと違ってちゃんと自分を持ってんの。『中3にもなって彼女がいないとかマジありえないっしょ?』とか言うやつの気が知れないね。ガキのくせに彼女作って、責任も無いくせに好きだの嫌いだの、意味わかんね」
友人を冷めた視線で睨みつけ言葉を少し乱暴に切ると、友人はわざとらしく肩をすくめた。
「へーへー、モテる男のよゆーってやつね。でもさ、マジで好きなやついねーの?」
くだらないーーー
「知らない」
「おっ? いるのか?」
「きりーーつ!」
友人が遊に食いつこうとした時、丁度教室のドアが開いて教師が入ってきた。
それを合図に会話は終了。
しっしと友人を手で追い払い、遊は立ち上がった。
放課後、遊は休み時間の度に色々と詮索して来る友人を回避して一人で家路に着いていた。
「さぶっ……」
中学校に登校するのもあと数日。
遊は現在羽ケ崎学園の中等部で、無事に高等部への進級試験もパスしていた。ほとんどが中学からの繰り上がりなので、高校生とはいえ面子は変わらない。
それなのに何故中学卒業前に告白をして恋人を急いで作らなければいけないのか、さっぱり理解出来ないでいる。そして先ほど友人にも言ったが、遊には自分がまだ子どもだと自覚している。そんな何の責任も持てないし取れない子どものくせに、ただ周囲の人間がそうしているからという理由で恋人を作らなければいけないというのが腹立たしかった。
好きな人ならいる。
誰にも告げた事は無いが、はっきりと断言出来る相手がいるのだ。
それは遊が小学校の4年生時、隣りに引っ越してきた6歳年上のお姉ちゃん。
ちょっと天然で、見ていて危なっかしいお姉ちゃんが遊は大好きだった。ーーーいや、今も大好きだ。その気持ちはどんどん大きくなって、そのお姉ちゃん以外に目を向ける余裕も無いほどに膨らんでしまっていた。
お姉ちゃんがやっていたからという理由で、遊は中学生になってすぐに陸上部に入部した。その事を報告したときのお姉ちゃんの嬉しそうな顔は今でもはっきり覚えている。
元々運動神経が良かったのと、お姉ちゃんに褒めてもらいたいという一心で部活に明け暮れたおかげで陸上部のキャプテンになり、背も伸びた。
お姉ちゃんが高校を卒業する時に宣言した通り、いい男にも少しずつなっている……と、思う。
ふと、店舗のガラスに映った自分の姿に足を止める。
ーーーまだだ。
遊は、もっと格好良く、男らしくなりたい。胸を張って、お姉ちゃんを守れるくらいの一人前の男になったぞ。と言えるくらいに。
その時になって、もし、まだお姉ちゃんに恋人がいなかったらーーー
「遊君!」
大好きなお姉ちゃんの声。
騒ぐ心臓を落ち着かせ振り向くと、白い息を吐きながらお姉ちゃんがこちらへ走ってきた。
「お帰り、お姉ちゃん。今日はバイト休み?」
ふわりと香る、甘い匂い。
「うん、大学終わってすぐに帰ってきたんだ」
「そっか」
隣りに並ぶと、遊の目線の高さにお姉ちゃんのおでこがある。そのちょっと下には大きくてパッチリとした綺麗な目。
追いつけないかも、と思っていた身長は追いついた。
「そろそろ卒業式だね」
「高等部に行ってもほとんど知った顔ばっかりだけどね」
「あはは、そうだね。私は違ったけど」
「でもお姉ちゃんすぐに友達出来てたじゃん」
「そうだっけ? あ、そう言えば遊君ってば、お姉ちゃんはそそっかしいから心配~なんて、生意気な事言ってたよね」
見上げられた視線にどきりとする。
「そうだっけ?」
でも、悟られてはいけない。
「覚えてないの?」
「覚えてないよっ、一体何年前の話し?」
まだ、我慢しなければいけない。
「え~? ひどーい。でも、もう心配じゃないでしょ?」
「あはは、心配だよ。そそっかしいの変わってないじゃん」
「もうっ! またそんな生意気言って!」
「ははははっ、ごめんごめん」
もう、と少し怒ったように言うお姉ちゃんを、たまらなく抱きしめたくなる。
もうずっと、初めて会ったあの時から遊は気づいている。お姉ちゃんが大好きだという、自分の心に。
いつの日かその事を伝えられる時がくるだろうか。
「わっ、どうしたの?」
遊はお姉ちゃんの手をそっと握った。
一瞬驚いたが、お姉ちゃんはすぐに笑って遊の手を握り返す。
「別に、なんとなく」
「身長ばっかり大きくなって、相変わらず可愛いんだから」
「へへ~っ」
そう言って笑っているお姉ちゃん。
大丈夫だよ、お姉ちゃん。ちゃんと、お姉ちゃんへの気持ちも同じ位大きく育ってるからね。
今、こうして一緒に歩けるという事実が、遊の心を軽やかにする。
つないだ手は冷たくて、それさえも愛おしいと思う。
もうすぐ高校生。
初めて出会った時のお姉ちゃんと、同じ歳になるのだ。
2012.02.07 続く…?
=あとがき=
お読み頂きありがとうございました! 音成遊君、中学生バージョンでした!
多分、続くよね? いや、続かないと中途半端だしねw
いや、どうだろう??
お読み頂きありがとうございました! 音成遊君、中学生バージョンでした!
多分、続くよね? いや、続かないと中途半端だしねw
いや、どうだろう??
お帰りの際は、窓を閉じてくださいv
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