チェンジ・ザ・ワールド☆
不完全燃焼、恋愛模様.1
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いつも見とるだけっちゅーとは、俺んとってはなんや気持ちの悪かもんたい。
ばってん、気持ちを伝えっとはもっと難しか。
なんや知らんばってん、あいつの事見とっだけで何も出来ん自分が情けなか男に思えてきて、どうしようもなかとよ……
勇気。
男らしく勇気出せっち、背中ば誰かに叩かれんと、駄目んごたる。
テニスの試合やったらこげんこと無かとに、どうしてこう、上手く行かんとやろか?
不完全燃焼、恋愛模様
千歳千里は仏頂面で窓の外を睨んでいた。
見えるのは学校のグラウンド。
そこで繰り広げられるのは球技大会のソフトボールの試合で、千歳の視線の先には一人の少女がいた。
好きだと気付いたのは最近。
去年九州から千歳のクラスに転校してきたその少女は、熊本出身である千歳と話しが合った。
とは言っても千歳が一方的に話しかけてはそれに少女が答える。という図式ではあったが……
物腰の柔らかな少女は人懐っこい大阪人とすぐに馴染んだが、それでもどこかしら気を遣っているように千歳は思えた。
自分のように相手が誰であろうと容赦なく九州弁を使う千歳。
逆に方言を使わない少女は、千歳と話す時だけは方言を使う。
おかげで少女との壁が他の連中より薄い気がして、少しだけ自分が特別な存在かもしれないと何となく嬉しかった。
高校3年になってクラスが分かれ、以前のように話す事も少なくなった最近、千歳は寂しさを感じていた。
寂しいと気付くのにも多少時間が掛かったが、少女が近くにいない事が原因であると気付くと、自分の思いを自覚するのは早かった。
千歳の知る限り、少女には特別な男の存在。つまり彼氏はいないようだが、実際は分からない。
表立って目立つ存在ではない彼女の事が普段の友人との会話で出て来る事もなかったし、千歳から話題をふる事もしなかった。
たまに廊下で会った時に短い会話をする程度。
それが楽しくもあり、悲しくもあった。
お、次んバッターたいね。
グランドの少女は金属バットを握って何度か素振りをすると、バッターボックスへと入って行った。
痩せている訳でもなく、かといって太っている訳でもない少女。
やたらと背の高い千歳と並ぶと親子みたいだが、身長も全国女子高校生の平均くらいはあるだろう。
焦げ茶色の長い髪は、いつも控えめに一つに結んでいた。
言うなればごくごく普通の、どこにでもいる女子高生。
ピッチャーがセットポジションからウインドミルでボールを投げる。
ッキーン!!
タイミングよく弾かれたボールは高く打ち上がり、今まで暇そうにしていた外野を守る女子は慌てふためいていた。
少女は猛ダッシュで一塁へと向かう。
転がるボールを急いで追いかける外野。
しかし焦れば焦るほど上手くボールが掴めない。
もたつく間に少女は悠々と三塁ベースでピースサインを披露していた。
運動神経はなかなか良い。
チームメート達から拍手喝采を浴びて、少女は嬉しそうに笑っている。
楽しそうな少女の姿を見れば見るほど、千歳は寂しさがこみ上げてきた。
「千歳~、お前こんなとこにおったんか。ええ加減体育館行かんと、そろそろ出番やで?」
「ああ、今行くたい」
教室の入り口からクラスメートが声をかける。
千歳はもう一度グラウンドの少女を見て、教室を後にした。
背が高いうえにテニスでは全国大会に出場するほど運動神経の良い千歳は、球技大会ではあちこちから引っ張りだこだ。
今回どの球技に千歳を出場させるかで危うく傷害事件が起こりそうになったHR中、仲裁に入った担任が公正を期すためにくじびきを行なった結果、バスケットボールに決定した。
のそのそと千歳が体育館に入ると、同じクラスでバスケに出場する友人達に囲まれた。
「いいか! 何があってもボールは全部千歳に回すんや! 千歳に回しとけば大概点入るからな!」
バシッ!
「千歳! 任せたで!」
バシッ!
「お前がおったら百人力や!」
バシッ!!
「……お前ら、ちっと力入れて叩きすぎばい。背中の腫上がるやん」
バシバシと乾いた音が響き千歳が顔をしかめていると、ギャラリーからは女子の声援が沸き起こった。
見ると相手チームがコートに入って来るところだった。
「なんや、千歳もバスケかいな。やりにくいなあ」
「白石」
中学からの同級生で、今でも同じ高校のテニス部に所属するテニス部部長の白石蔵ノ介が笑っていた。
「テニス部の男前対決や!」
「いや、うちの学校を代表する男前対決や!」
「千歳! 白石なんぞいてもうたれ!」
「アホぬかせ、白石はテニス部の部長やぞ、千歳なんかに負けるか。白石、遠慮すんなや!」
「ちょっと! 白石君に怪我させたらうちらが許さへんでっ!?」
「やっかましゃあ、きゃんきゃんウルサい雌犬どもが!」
「誰が雌犬やて!?」
「千歳君にもしもの事があったら、あんたたち覚悟しとき!」
「どいつもこいつも、白石にも千歳にも相手にされんのに色目使いやがって、脳みそ腐っとるんちゃうか~?」
「何やて~! もっぺん言ってみい!?」
バスケの試合が始まる前に、すでに場外で男子対女子の試合が始まろうとしていた。
それを尻目に千歳が笑う。
「ま、お手柔らかに頼むばい、白石」
そしてバスケの試合が始まった。
続く…
勢いで書いてしまった大阪四天宝寺。
意外と千歳の二次小説って少ないのかな?
大阪弁と九州弁のミックスで、苦手な方には申し訳ないです…
ですが一話を短く区切ってるので、さらっと読めるかと(笑)
皆様の暇つぶしになれば幸いです!
意外と千歳の二次小説って少ないのかな?
大阪弁と九州弁のミックスで、苦手な方には申し訳ないです…
ですが一話を短く区切ってるので、さらっと読めるかと(笑)
皆様の暇つぶしになれば幸いです!
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