託したいものがあった。それは彼女の腕を掴めなかった手に握られた、掛け替えのない小さな希望。





「俺は、希望の魔法使いだ」

 失ったものがあった。守れなかったものがあった。
 全ての始まりとなったあの日、あの時。たった一人生き残ったとばかり思っていた俺に残された最後の希望。それがコヨミだった。
 大切な人だったと、今ならば臆面もなく断言できる。彼女と過ごした時間は瞬きのように短く過ぎ去っていったけど、彼女を思い出させるものは数えきれないくらいあった。

 ……この手は無限に届きはせず、掬える砂も一握が限界。運命という言葉は、そうした人の無力の限界点を可視化する測量値と言えるのかもしれない。
 俺は負けた。失った。伸ばした腕は届かず、無様に地を這わされた。そこが俺の限界だった。
 そうして彼女を失って、残された願いに縋りつき、心のどこかに迷いを抱いていた。

 それは事実だ。けれど。

「俺の希望が溢れる世界で、俺が負けるはずないんだよ」

 それがどうした。俺は負けたが負け犬じゃない。コヨミを想うこの気持ちは、コヨミと過ごした思い出は、今もこの胸に変わらず刻み込まれている。
 たとえ何があっても、どんな悲劇が訪れようと、忘れない。忘れない。何も見えず聞こえなくなっても、それだけは忘れない。

 剣を握る指に力を込める。全ての気力を振り絞り、燃え盛る炎として魔力を放出する。
 今この時に、この場所で、俺を倒せる者など誰一人として存在しない!

「さあ───フィナーレだ」

 振り抜かれた炎の刃が、最後の亡霊(ファントム)を打ち砕いた。

 ………。

 ……。

 …。






 晴人は目を開いた。
 モノクロに染まったいつかの記憶。
 騒がしくも輝かしい、みんなのいるいつもの面影堂がそこにはあった。

 ゆっくりと、噛みしめるように。晴人は奥に向かって歩き出す。
 そして、彼女の前で立ち止まり。

「……コヨミ」
「晴人?」

 最早聞くことなどありえなかったはずの懐かしい声が、晴人の鼓膜を震わせた。
 記憶の中にある彼女の姿そのままに、コヨミは視線を投げかける。その光景に、切なさとも愛しさともつかない何かが胸の中でぐるぐると渦巻き、感情が涙となって溢れ出そうになるのをぐっと堪えて言葉を続けた。

「これ、預かってて」

 撫ぜるようにコヨミの手を取り、持っていた指輪をはめる。コヨミは困ったような、驚いたような、けれど決して不快ではない感情と共に、晴人を見遣った。

「いいけど……何?」
「俺の希望」

 たった一言。それだけの言葉に、晴人が抱いた全てが込められていた。
 それ以上の言葉は必要なかった。全ては、コヨミにこのリングを託された瞬間に結実していたのだから。

「分かった……大事に持ってる」

 言ってコヨミはたおやかな笑みを浮かべ、その指に填められた"希望"を見遣った。
 それを見た晴人は静かに踵を返し、何かと決別するかのように背を向けて歩き出す。
 二度と触れ合うことのない手のひらから、それでも暖かなものが伝わってくるような感触と共に。
 晴人は、笑った。

 コヨミ。
 俺は、戦うよ。





   ▼  ▼  ▼






 願ったものがあった。それは失われた陽だまりで託された、取るに足らない小さな祈り。




「許さない、認めない、消えてなるものか───時よ止まれ」

 俺には為さなければならない使命があった。全てを失い、奪い尽くされ、残照と知りながらも光(せつな)の残骸をかき集めてでも遂げなければならないことが。
 このまま放っておけば波旬の理が宇宙を覆い尽くす。滅尽滅相───あらゆる生命が死に絶える唯我の理。俺はどうしても、それを完成させるわけにはいかなかった。
 それが覇道の太極に至った者の果たすべき責任というもの。己の意志で、人を世界を、宇宙ごと塗り潰せる力の意味とその重さ、軽いはずがないだろう。
 だから俺は座を握らないし、波旬にも握らせない。ただそれだけを誓い、ひたすらに生き延びてきた。

 別に人類の恒久的世界平和などという、出鱈目なことまで言いはしない。
 ただ、生まれては消えていく命の連続性を絶やさぬこと。次があるという最低限の、希望と可能性を残すこと。
 俺の太極はそれが甚だしく極小で、波旬に至っては完全皆無だ。総ての理とその歴史が、そこで断絶してしまう。
 だから、俺は―――

「真実はたった一つ。亡くしてはならない光(せつな)があるから」

 俺は次代を選ばないといけなくて。
 それが生まれる余地を維持しないといけなくて。
 波旬の座を完成させるわけにはどうしてもいかなかったから。

「ここに生き恥晒してんだよ。もう誰もいなくなってしまったこの宇宙でな!」

 それこそが───

「俺の女神に捧ぐ愛だ!」

 俺に遺された、たった一つの譲れない思い。

「もう何も見えない。聞こえない。ただ忘れないだけだ。俺は彼女を愛している!」

 たとえ何があっても、どんな悲劇が訪れようと、忘れない。忘れない。何も見えず聞こえなくなっても、それだけは忘れない。
 拳を握り、地を踏みしめる。全ては今、この時のために。

「息絶えろ、薄汚い波旬の細胞! この地は絶対に渡さない!」

 いや、もういい。もう無間神無月は必要ない。

 だから見せてくれ。お前の為したい夢の形というものを。奴に打ち勝てるのだという証明を。
 俺達の黄昏に負けないほどの、輝く命の可能性というものを。

「仲間の魂に懸け、俺は負けない」
「はッ……それなら俺も負けてねえよ!」

 それを目の前の男―――新鋭は烈しく言い返す。振るわれる億の剣閃、星を裁断する時空の断裂すら押し返し、秒間毎に臓腑を抉られながらも咆哮した。

「何考えてんのか分かんねえ、どうしようもないあんちくしょうども。そして我らが総大将久雅竜胆に―――ぶっちぎりで格好良いこの俺様、坂上覇吐!」

 致命傷を無限に食らいながらも死にはせず、どころか太刀を振りかざし猛る様はこの男をよく表している。
 生きると誓っているのだ。万象滅ぼす波旬の宇宙と繋がりながら。それでも、未来を形作る可能性を身に宿している。

「てめえらを討つという目的の下、一つに集まった益荒男共で」

 ああ、それは───
 なんて眩しい、求め焦れたもので───

「俺の仲間だ! 全員いなきゃつまんねえ!」



「───」



 その時生じた感情を、口では上手く説明できそうになかったから。

「それがお前の答えか」

 千の言葉の代わりに、天から巨神の腕を打ち下ろした。
 押し潰して視界を覆ってしまわねば、きっとこの男に自分の表情が見えてしまうと思ったから。

「───行くぞ、坂上覇吐! 久雅竜胆!
 これこそ俺の全身全霊、至大至高の一閃だ!」

 巨大神が歓喜の咆哮をあげる。
 溢れんばかりの哄笑が轟く。

 よく言ってくれた、それでいい。
 見たか波旬、第六天。これこそ貴様を討ち滅ぼす新たな光に他ならない。
 だから。

「これがどういうものなのか、忘れることは許さない。
 全てこの刹那に焼き付けろ、覇道の本質を理解しろ。
 お前たちが後の創世を望むなら、胸裏に刻み込んでおけ!」

 ───俺達の戦いは無駄じゃなかった。
 今は素直に、それを信じることができた。

「魂の輝きを謳った言葉、今こそ此処に証明しろ!」

 そして、全てを消滅させんとする爆光が、天空と共に墜落して。

 ………。

 ……。

 …。



「……そうだ、それでいい」
「お前の、勝ちだよ」

 全ての足掻きが此処に結実したのだと、万感の思いと共に確信して。
 天魔と呼ばれた一人の男の生涯に幕が下ろされたのだった。





   ▼  ▼  ▼







「晴人、か。お前はそう言うのか」

 その名を、異形の姿をしたサーヴァントが反芻する。何かを得心したかのような態度だ。それを、晴人は釈然としない表情で答えた。

「なんだ。何か気にかかることでもあったのか?」
「名は体を表すとはよく言ったものだと思ってな。察するに、お前の渇望も"そういうもの"なのだろう」

 そう口にするサーヴァント、夜刀と名乗った異形の男は、晴人に鋭い視線を向けた。
 朱い───彼を一言で評すれば、そのようなものになるだろうか。文字通り血のように朱い髪の下、鮮血が如き赤眼が覗いている。黒い肌は憎悪が如き濁った感情を思わせて、纏った白い衣に付き従う双蛇が人と然程変わらない姿を邪神めいたものに歪めていた。
 人間の定義に当て嵌めることはできないが、それでもかつては端整であったことを窺い知れる様相はしている。しかしその威容は一見すれば悪鬼羅刹と見紛うほどで、なるほど確かに、復讐者(アヴェンジャー)というクラス名にも頷けるというものであった。

「ご明察、ってところかな。それはやっぱり夢の中で?」
「ああ。双方向に流れ込むものだ、お前のほうも多かれ少なかれ知り得ているとは思うが」
「まあね」

 聖杯戦争において、マスターとサーヴァントにはある種の共鳴夢とも言える現象が発生する場合がある。魔力を供給するパスを繋いでいる関係か、時に全く別のものまでもが流れ込んでしまうのだ。
 とはいえ、晴人も夜刀も、特に気にするようなことではなかった。やましいことなど何もなく、この期に及んで隠し立てするようなことでもなかった。

「それにしても、聖杯ね……」

 言って、晴人は夜明け前の薄らいだ靄のかかる空を見上げた。反芻するのは数日前の記憶だ。
 笛木奏とファントムに纏わる一連の騒動が解決した後、晴人はとある目的のために世界中を旅してまわっていた。各国の様々な場所に首を突っ込み、必然としてそれなりの頻度で厄介事に遭遇した晴人は、その信条から事態の解決に乗りだし"魔法"の力を行使することも少なくなかった。
 "聖鉄"を手に入れたのも、それが原因である。
 残存する神秘の欠片、騒動を巻き起こす何某かとして在ったそれを、事態解決に際して触れた瞬間、晴人の意識は空間を飛び越えこの街にあった。

 とある地方都市「冬木」、それを再現したという電脳空間「Chaos.Cell」
 聞いたことのない街だったし、聞いたことのない代物だった。自分の中にある知識と照らし合わせても、そんな存在があるということは初耳だった。

「何でも願いが叶うなんて眉唾だけど、やっぱりアヴェンジャーは欲しいわけ?」

 聖杯についての知識は、最も新しい記憶となって晴人の脳内に叩き込まれている。
 これも聖杯とやらの恩恵なのか、それとも何かしらの調整なのか。分からないが、何とも親切なことだと思う。そんなところに気を配るくらいなら、そもそも参加者の選定に気を配れという話ではあるが。

 だから、とりあえずとして晴人はそんな疑問をぶつけたのだった。サーヴァントとは聖杯に願いを託す存在だという概論めいた知識もまた、晴人の脳内にあったからだ。
 しかし。

「いや」

 対するアヴェンジャーの答えは至極短い、そして知識にあるサーヴァント像とはかけ離れたものだった。

「おっとこれは予想外。訳を聞いても?」
「別に大したことじゃない。俺の願いは既に俺以外の奴に託している。そしてそれは、こうして俺が召喚されたという時点で"果たされた"と確信できた」

 そう口にする夜刀の顔と声音には決然としたものがあったが、同時に何かをやり遂げたような誇らしげな感情も含まれていた。

「お前はどうだ、マスター。お前はこの聖杯戦争で一体何を求め、何を為す」

 逆に夜刀が問うてきた。
 その口調には厳粛な響きがあったが、慮るような響きもまた聞こえてくる。なんとも不器用な性格なんだなと、晴人は口には出さず内心のみで思った。

「……なあ、アヴェンジャー。一つ聞いてもいいかな」

 ぽつり、と。
 晴人が呟いた。それは質問の答えではなかったが、その疑問符には彼の持つ"答え"が関わっているのだということが言外に分かった。
 故に夜刀は言葉なく疑問の続きを待って、晴人は静かに言葉を繋げた。

「仮に神さまとやらが人の願いを叶える存在だとして。けど俺達人間はそんなもの必要ないって言ったとして。
 それでも人の願いを叶えようとする聖杯(かみさま)は一体なんなんだろうな」
「決まっている」

 夜刀は間髪入れることなく、苦々しささえ交えた口調で答えた。

「人はそれを悪魔と呼ぶんだ」
「……そっか」

 そこで晴人は吹っ切れたような、そうだよなとでも言わんばかりに薄く笑みを浮かべ。

「俺さ、ずっと迷ってたんだ。コヨミの指輪を手放したくないって、心のどっかで思ってた。
 立ち止まっても何にもならないって、知ってたはずなのにな」

 思い出は大事だ。それは前に進むための力となる。けれど、それにばかり縋っていては重しとなって人の足を止めてしまう。
 あの時の自分がそうだった。思い出ばかりを背負って、未練がましく後ろを振り返るしか能がない。
 仮にあの時の自分がここに呼ばれていたならば、あるいはコヨミのためと取り繕って聖杯を目指した可能性も、一概には否定できなかっただろう。
 それほどまでに、晴人の内に降り積もった思い出は、重かった。

「……忘れられないもんだよな、過去ってのは」

 忘れられないから苦しむ。いつまでも。あるいはそれが、人の持つ弱さというやつなのかもしれない。
 けれど、いいやだからこそ。

「だから決めた。俺はもう迷わない。コヨミのことも背負っていく。けど……
 もう二度と、俺は立ち止まったりしない」

 過ぎた過去は戻らない。失ってしまったものは帰らない。だから人は、思い出を手のひらに包むように抱えて生きていく。
 それを教えてくれた恩人らの想いと選択を抱きしめて、怒りも悲しみも超越した彼に迷いなどない。他ならぬ自分自身のアンダーワールドへと潜り、そこにホープリングを託した時の想いも、在りし日の形で胸にある。

「聖杯には何も望まない。そんなものを目指すなんてのは、あの指輪のことで迷っていた時の俺と何も変わらない」
「それが、お前の選択か」
「ああ。それに早いとこ帰らないと、うるさいのが待ってるしな」

 言って、晴人は不意に手を翳した。
 眩い光が飛び込んできたのだ。空を見上げれば、いつの間にか朝日が昇っていた。
 それはいつかの黄昏にも劣らぬほどの輝きに満ちた、夜明けの姿であった。

「……何度でも言ってやるさ」

 ───操真晴人が自らの迷いを断ち切るに至った出来事。自身のアンダーワールドへ"希望"を託したという行為に、どのような意味が含まれているのか。
 それは決して現実ではなく、既に失われた彼女の影に想いを馳せたに過ぎない。
 自己満足と言われたならば、完璧な反論などできるはずもない。

 しかし。

 それでも、操真晴人がやったことに意味はある。
 ゆっくりと、そして駆け足で。
 確かに歩んだ道がある。
 ささやかな、けれど決して消えない意味がある。
 例え在りし日の残影であろうとも、そこに感じた想いは現実に他ならない。
 ───だから。

「俺が、最後の希望だ」

 大見得で切った啖呵が、偽りの空を震わせた。絶望の渦巻くこの世界を吹き払う祝いの神風であるかのように、ただ真っ直ぐに。

 ───伸ばした手はきっと、あの青空へ届くだろう。




【クラス】
アヴェンジャー

【真名】
天魔・夜刀@神咒神威神楽

【ステータス】
筋力A 耐久A++ 敏捷A 魔力EX 幸運- 宝具-

【属性】
混沌・善

【クラススキル】
復讐者:A
復讐者として、人の恨みと怨念を一身に集める在り方がスキルとなったもの。
周囲からの敵意を向けられやすくなるが、向けられた負の感情は直ちにアヴェンジャーの力へと変化する。

忘却補正:EX
忘れ去られたまつろわぬ旧世界の異物。忘却の彼方より襲い来るアヴェンジャーの攻撃はクリティカル効果を強化させる。
人は多くを忘れる生き物だが、復讐者は決して忘れない。例え全てを奪い尽くされ、永劫にも等しい時間が過ぎ去ろうとも、決して。

魔力回復(自己):-
復讐が果たされるまでその魔力は尽きることなく湧き続ける。そう、全ては大欲界に支配された座が塗り替えられるその日まで。

【保有スキル】
鋼鉄の決意:EX
鋼に例えられる、アヴェンジャーの不撓不屈の精神。
全宇宙を覆い尽くす滅尽滅相の理に真っ向から立ち向かい、拮抗など到底不可能であった大欲界天狗道の流出を数千年に渡りたった一人で堰き止め続けたという事実、
そして次代を担う者たちへ希望を託すため、決して世界を終わらせないという意思を摩耗させることなく悠久の時を戦い抜いたアヴェンジャーのスキルランクは規格外のそれを誇る。
本来ならば同ランクの精神耐性・勇猛等を複合する特殊スキルとなるが、アヴェンジャーの場合はこれに加えてその強固な精神性を己の攻撃にも反映させることが可能。
直接的な攻撃の威力に大幅な補正を与える他、彼の放つ攻撃はあらゆるスキル・宝具の耐性を貫通しダメージを与えることができる。
その効果は奇しくも、彼が遥か昔に失ってしまった黄昏の女神の恩寵にも酷似している。

神性:EX
神霊適性を持つかどうか。
サーヴァントとして矮化し、尚且つ極限まで疲弊しようとも規格外となる神性の高さによる超越性の他、セファールの白い巨人や物理法則の具象化たる神霊とは異なる在り方から来る特異性によりスキルランクは測定外のそれとなる。

無窮の武練:A+++
ひとつの座の歴史において無双を誇るまでに到達した武芸の手練。心技体の完全な合一により、いかなる制約の影響下にあっても十全の戦闘能力を発揮できる。
精神的な影響下は当然の事、地形的な影響、固有結界に代表される異界法則の内部においてすらその戦闘力が劣化する事はない。
超高次元空間である座の深奥や、大欲界天狗道に犯された滅尽滅相の宇宙ですら、彼の武勇が損なわれることはなかった。

反存在:-
かつての戦いで疲弊し消耗した存在であると同時に、既に消え去った旧世界の残滓であるために現世界から存在を拒絶される異物であることを指す。
召喚時の基礎能力に大幅な低下補正がかかり、僅かな残滓程度の力しか揮うことができない。また単独行動時の魔力消費が増大し、幸運判定におけるファンブル率を極限まで増大させる。


【宝具】
『刹那残影・無間大紅蓮地獄』
ランク:■■■ 種別:■■■■ レンジ:■ 最大捕捉:■
新世界へと捧げた超越の物語。時間と空間を凍結させ星天の運行すら静止させる極大域の神威。彼の悔恨、罪業、喪失の象徴にして愛しきものを守護するための理である。
現状、この神威は渇望の残滓を辛うじて残すのみに留まり、在りし日の力を流れださせることはできない。この舞台が聖杯戦争という形を取る限り、幾画の令呪を使おうと、例え聖杯の恩寵そのものを用いたとしても決して完全な形で発動することはできない。

【weapon】
ない。かつて手にした女神の刃を、彼が再び身に宿すことはない。

【人物背景】
神州において不可侵の領域と化した穢土に君臨する大天魔「夜都賀波岐」の一柱にしてその主柱。
自身の力の一端により、現世界から一年のうち黄昏の季節である秋の盛りを概念ごと奪い取り、穢土を常に黄昏で満ちた異世界へと変化させている張本人。
無間衆合により新生した姿ではなく、かつての戦いにより極限まで疲弊した姿での現界。

その正体は、旧世界において黄昏の女神を守護せし者の残骸。
全ての宇宙を終わらせる正真正銘の邪神を前に奮起し、たった一人悠久の時間をかけて邪神の理に浸食された世界と戦い続けた、全ての生きとし生ける者たちの恩人にして世界最後の希望だった者。
永劫に失われた想い人への祈りのため、そして彼女が愛した世界を守るために憎悪の泥を纏ってまで生き恥を晒し、仲間たちと笑いあったかつての情景を胸に抱きながら、次代を担う新鋭に全てを託し散っていった一人の男。

【サーヴァントとしての願い】
全ての決着はあの新鋭が成し遂げた。ならば自身に為すべきことは何もなく、ただマスターの「希望」に付き合うのみである。




【マスター】
操真晴人@仮面ライダーウィザード

【マスターとしての願い】
ない。喪失の過去は既に自分の中で決着がついている。
だが、強いて彼の願いを述べるならば───誰かにとっての最後の希望となる。その指針だけは、決して揺らぐことはない。

【weapon】
ウィザードライバー
晴人がウィザードへの変身やエレメント変化、各種の魔法を使用するカギとなるアイテム。
ベルト中央の手のひら状のパーツ「ハンドオーサー」に、ウィザードリングをはめた手をかざして使用するシステムとなっている。
従来の魔法使いに当てはめるなら『魔法の杖』といったところか。
右手用の指輪は必殺技の発動や巨大化に分身、専用武器の《ウィザーソードガン》や《ウィザードラゴン》の召喚等の魔法発動に使い、左手用の指輪は変身やスタイルチェンジに用いる。

ウィザーソードガン
銃と剣が一体化したウィザードの基本武器。銃としても剣としても使える他、変身前でも使用可能。

ウィザードリング
各スタイルへと変身するため、あるいは各種魔法を行使するために必要な魔法使いの指輪。
基本的なものは大抵揃っているが、ただ一つ「インフィニティウィザードリング」だけは彼の手に存在しない。

【能力・技能】
指輪の魔法使いであり、身に宿す魔力は極めて潤沢。ただし魔法使いと称されてはいるが意味合いとしてはあくまで魔術師の域を出るものではない。
ウィザードライバー及びウィザードリングを使用することで各種スタイルへの変身及び魔法(魔術)の行使が可能。
戦闘能力や特質は変身するスタイルによって大きく左右されるが、オールドラゴンを初めとした極めて強力なスタイルになることも可能である。
しかしそれら能力の行使には当然だが相応の魔力消費が必要となり、サーヴァントを使役しながらの変身には細心の注意が必要となる。

【人物背景】
サバトと呼ばれる生贄の儀式の生き残りとなった青年。
過去に両親を交通事故で失っており、その間際に両親が遺した「晴人は私達の最後の希望」という言葉を胸に刻みつけている。
表面的には飄々とした余裕のある態度を崩さない好青年だが、実際には負の面を人に見せないよう取り繕っているに過ぎない。超人でも狂人でもない、ほんの少しだけ心が強かっただけの青年。
自分にとって大事なものを見出し、それを失うまいと足掻き、それでも手を掴むことのできなかった少女が遺した最期の願いを聞き入れ、全てに決着をつけるため戦い続けた男。
本編終了後、「約束の場所」終盤においてアンダーワールドから帰還する直前からの参戦。

【方針】
この聖杯戦争が一体何を意味し、何を目的としているのかは知らない。だが、例えどのような場所であろうとも自分がすべきことは変わらない。
───最後の希望となる。それだけは、決して譲らない。

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最終更新:2017年05月04日 23:58