メモリー |いつか
- 舞台は未来、機械化が進んだディストピアでしょうか? 世界観を説明した文章が見受けられず取っつきにくさはありますが、ディストピアはバッドエンドというテーマにとてもよく合っていると思います。早苗が消えたショックを表す描写は感情が伝わってきますし、不思議な雰囲気の作品に文体が合っていると感じました。それだけに「黒薔薇姫」というような大仰な設定はせず、存在の喪失というテーマを丁寧に深掘りして欲しかったなと思いました。
- 死ぬと何も残らないという設定が良いですね。愛した彼女は自分の記憶にしかなくて、それが結末につながるとおお……と感動を覚えます。彼女がいた痕跡が残らない世界に絶望する主人公の心情が細かく描かれていて、悲痛さが伝わってきます。
ただ「人に嫌悪感を抱かない世界」なのにそれがうまく活かせていない印象を受けます。柊と主人公が関わる重要なポイントなので、普通なら嫌悪感を抱くような人を見て小山がそのような素振りを見せない描写があると世界の異質性が浮き彫りになるのではないでしょうか。
あと細かいところなのですが、余白をもっと作ったり文字を小さめにしていただけるとありがたいです。読みにくい印象を受け、物語に入りにくく思いました。それと「・・」ではなく「…(三点リーダー)」を使ってもらえると嬉しいです。
嫌悪や悲しみという負の感情がなくなった分、人間らしさが欠けた世界というのは皮肉めいていていい世界観だと思います。最後の三行もそんな世界に反抗する二人を表しているようで素敵な表現でした。次回も楽しみにしています。
悪食 |夕狩彼方
- 嫌悪の対象としての肉の描写と美味しい食べ物としての謎肉の描写の対比が好きです。
女性が初対面の主人公に謎肉の運搬を任せた事や、ちょっとしたお礼感覚で高級品である謎肉をホイホイ振る舞えた事に関してはもう少し理由がほしかったです。
小悪魔な植秦さん大好きです。
- すっと自然に読める文体でとても読みやすい作品でした。主人公だけが特殊な味覚なのではなく、世の中に同じ人がいるという世界観設定が、店の存在理由を裏付けているようで素晴らしいと思いました。こういう作風好きです。
オフェリア |蒼蓮華
- 『花物語』のような雰囲気を感じさせます。「、」が多いのが少し気になりますが、概要を冒頭に説明する事で世界観にぐっと引き込まれます。
バッドエンドの向こう側へ |あろう
- 繰り返される「暗転」の二文字が繰り返される悲劇を印象的に魅せています。ストーリー運びに典型的なものは感じざるをえませんが、とてもよくまとまっている作品だなと感心しました。
最終更新:2018年07月05日 00:06