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イベント13 中小藩国に愛の手を【ツチノコ友情物語】

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nakagiri

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【ツチノコ友情物語】

作:大車座(PL:大熊座)


「うう、迷ってしまいました。」
時は夕暮れ。ところは光の谷。
大車座は絶賛遭難中であった。

先日の始末書に纏わる一件において(新・芥辺境藩国物語第8話【これもある意味戦闘中?】)藩王より、
「こっちの不備もあったし、自業自得とはいえ3日も頑張っていたのだから1日だけ休暇をやらないこともない。」
とお達しがあったため、早速休暇をとった大熊座。
ここは藩国の名所である光の谷に行き、日の出を見ながら酒を飲み、疲れを癒そうと思い立ち、酒やツマミ、コップをカバンに入れて日も出ぬうちに谷へと向かったのであった。
幸い風も強く、いよいよこれから日の出であるというまさにそのときに、
「やあ、おはようございます。貴方も日の出を見に来たのですか?」
と見知らぬ猫に話しかけられ、日の出のことも忘れてカバンをつかみ、眼にも止まらぬ速さで逃げ出した次第である。

「カバンが重たいです・・・・・・。出口を探そうにも人がいてそれもままなりませんし。」
ここ最近の光の谷、ツチノコの目撃例が相次ぎツチノコハンターが集まり始めていた。
そういうわけで、所々にいるツチノコハンターを避けるために適当な道に入りさらに迷うという悪循環を繰り返した。
そんな悪循環のなか、昼は過ぎ、日も沈みだす頃になってしまったのであった。

あたりは赤みがかった光に包まれ、大熊座が自分はこんなところで野垂れ死にしてしまうのかと嘆いているときである。
「チー」
音がした。逃げ出す体勢をしながらあたりを見回してみる。
「誰もいませんね。気のせいですか・・・・・・。」
安心して体勢を直そうとしてふと下を見た。なんかいた。
「チー」
一見蛇のようである。しかし蛇にしては胴の中央部が膨れている。
「これは・・・もしかして噂のツチノコでしょうか? しかし本当に丸いですね。」
ツチノコを見ながらしみじみと呟く。
「チー」
ツチノコはさらに摺り寄ってくる。
よくよく観察してみるとどうやら目的は片手に持っているものようである。
「もしかしてお酒が飲みたいのですか? しかしこれは秘蔵の一本であって・・・・・・。」
「チー」
「・・・・・・分かりました。ここであったのも何かの縁です。夕日でも見ながら一緒に飲みましょう。」
近くにあった岩に座り、ツマミを広げて、いざお酒を飲もうとしたところ、気づいた。コップが1個しかない。
「困りました。コップが1個しかありません。これでは、分けて飲むことが出来ません。どうしましょう・・・・・・。」
大熊座が悩み考えること数分、答えが出ないでいると、
「チー」
ツチノコが鳴いた。もう一度見てみる。そばには見たことがない杯があった。
「それはいったいどうしたのですか? ・・・・・・まあいいでしょう。これでお酒を楽しめます。」
楽しければ細かいことは気にしない。猫とはそういうものである。

ツチノコと2人? で日の入りを見つつ酒を飲む。日が沈めば、ああ月が出ていると言って月見酒。
大車座は歌いツチノコは輪になって回りだす。えらい騒ぎであった。
やがて酒もつきそろそろ騒ぎも終わりという頃である。
「喧しい! 夜中に騒いでるんじゃねえ!!」
突然怒鳴り声がした。声がしたほうへ振り向いてみると人が近づいてくる。
体つきはごつく、月明かりによって照らし出される顔を見ると男のようである。
「この夜中にうるせえ! 俺は朝からツチノコ探して疲れてるんだ!! ・・・お前のそばにいるのはツチノコじゃないのか? おい、待て。逃げるんじゃねえ!!」
コップや空き瓶、ゴミをカバンに無理やり入れて逃げ出す。
知らない人ならまず逃げる。大熊座にとっては当然のことである。
横を見る。ツチノコが自分の尻尾をくわえて輪になって移動している。
後ろを振り返る。男が怒鳴りながら追いかけてくる。
「しつこいですね。しつこい男は女性にもてませんよ。しかし、なんて無謀なのでしょう。いかなる猫であろうとも足でこの私に勝てるはずがないのです。」
大車座ギアを上げる。しかし距離は離れない。逆に徐々にだか迫ってくる。しかも男の声を聞いて他のツチノコハンターらしき人物達も集まって追いかけてきていた。
「少し飲みすぎましたかね・・・・・・。仕方がないですね。最終手段です。」
懐に手を入れごそごそと取り出す。空気針式注射器であった。
「芥印の強化用ドラッグ~!! ポチッとなです。」
静脈に注射をあて薬を注入する。途端大車座のスピードが上がる。それとともにツチノコのスピードも上がる。
後ろの男たちを突き放していく。やがてその大きさは豆粒ほどとなった。
「やれやれ、これで明日は使い物になりませんね。しかしいったい出口はどこでしょう?」
ぼやく大熊座。
そのときである。突然ツチノコが前に行き、道を左へ右へと進んでいく。
「ついて来いということでしょうかね?」
その後をついて行く大車座。

数分後。
出口が見えた。
「おお、出口です。これでやっと帰ることができます。」
出口に着く。止まるツチノコ。大車座も止まる。
「チー」
「お前はこの先に行けというのですね。貴方はどうするのでしょうか。」
「チー」
「自分はこの谷が住処だ。ここを離れるわけには行かないと。」
「チー」
「分かりました。ここでお別れですね。この恩は忘れません。私は借りは必ず返します。」
大車座とツチノコの間には確かな何かがあった。
「私は友誼を守ります。それでは。」
出口から振り返らずに駆けていく大車座。
ツチノコも岩場の影に消えそして誰もいなくなった。

後日、度々夜中に瓶を片手に光の谷に入っていく人物が目撃されたがそれは誰だか定かではない。
(今回のお宝:ツチノコの杯)

(終わり)
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