【Nice to meet you】
作:小鳥遊(PL:ワカ)
「やっちまったよ……」
国土の中央よりに存在する光の谷の上で、小鳥遊は膝を抱えてしゃがみこんでいた。
両手を頭に添え、首をぶんぶんと振り回している。
傍から見ている分には変人以外の何者でもないが、本人はそんなことに構っている余裕などなかった。
それよりももっと問題にすべきことが彼にはある。
両手を頭に添え、首をぶんぶんと振り回している。
傍から見ている分には変人以外の何者でもないが、本人はそんなことに構っている余裕などなかった。
それよりももっと問題にすべきことが彼にはある。
「やばいって、ホント……あー、もう、どうしよ、マジでどうしよう……」
一通り砂がこびりついて固くなった髪を振り回してから、ゆっくりと顔を上げる。
小高い丘となっているそこからは、森に囲まれた王都と、その向こうに位置する古墳、そして港が見えた。
小高い丘となっているそこからは、森に囲まれた王都と、その向こうに位置する古墳、そして港が見えた。
芥辺境藩国。
それが砂と緑と海に囲まれたこの国の名前であり、今日から小鳥遊が所属することになる国の名前であった。
なにやってんだろう俺、と小鳥遊は考えた。
自分は元々、にゃんにゃん共和国に志願する気でいた。それはいい。
けれど、所属する藩国についてはよくよく吟味してから決めるつもりだった。
かの有名な是空氏や海法氏が治めるFEGや避け藩国をはじめ、色々な藩国をできれば全て訪れて、考えて、それから所属を決めようと、小鳥遊はそう考えていた。
その考えは途中までは実行できていたはずだ。
にゃんにゃん共和国の全藩国のうち、4分の3くらいの藩国までは見回った記憶がある。
たしかこの芥辺境藩国を訪れる前までの第一希望はナニワアームズ商藩国だった。偵察万歳。
自分は元々、にゃんにゃん共和国に志願する気でいた。それはいい。
けれど、所属する藩国についてはよくよく吟味してから決めるつもりだった。
かの有名な是空氏や海法氏が治めるFEGや避け藩国をはじめ、色々な藩国をできれば全て訪れて、考えて、それから所属を決めようと、小鳥遊はそう考えていた。
その考えは途中までは実行できていたはずだ。
にゃんにゃん共和国の全藩国のうち、4分の3くらいの藩国までは見回った記憶がある。
たしかこの芥辺境藩国を訪れる前までの第一希望はナニワアームズ商藩国だった。偵察万歳。
それがなぜ、自分はこうして芥辺境藩国にいるのだろう。
この国はいい所だと思うが、まだ見ぬ無名騎士藩国、リワマヒ国、ゴロネコ藩国はどうなっているのだろう。そんなことを思わないでもない。
けれど、仕方がなかった。仕方がなかったのだ。
この国はいい所だと思うが、まだ見ぬ無名騎士藩国、リワマヒ国、ゴロネコ藩国はどうなっているのだろう。そんなことを思わないでもない。
けれど、仕方がなかった。仕方がなかったのだ。
目に留まったのはほんの一文。
藩国の片隅にちょこんと、なんの装飾もなくそっけなく載っていたただ1人の逗留中の人名。
藩国の片隅にちょこんと、なんの装飾もなくそっけなく載っていたただ1人の逗留中の人名。
瀧川陽平。
その名前を見た後の事を、小鳥遊はよく覚えていない。
気がつけば国民登録を済ませ、ふと我に返った時には談話室で瀧川がいるから入ってきた人がいると言われているのをこっそりと盗み聞いてしまって悶えていた。
気がつけば国民登録を済ませ、ふと我に返った時には談話室で瀧川がいるから入ってきた人がいると言われているのをこっそりと盗み聞いてしまって悶えていた。
誰が悪いと聞かれれば、間違いなく自分が悪い。
というか、他の誰に責任があるというのか。
けれど、自分の人生を捧げる藩国を決めるのに、こんな理由で決めるのはいかがなものか。
小鳥遊はそれが怖かった。
単純に、根が臆病なのである。
というか、他の誰に責任があるというのか。
けれど、自分の人生を捧げる藩国を決めるのに、こんな理由で決めるのはいかがなものか。
小鳥遊はそれが怖かった。
単純に、根が臆病なのである。
そして、自分が臆病であることを知るが故に、小鳥遊は瀧川を尊敬していた。
脇役として真っ直ぐに成長する瀧川の姿は、小鳥遊にとって憧れとなった。
脇役として真っ直ぐに成長する瀧川の姿は、小鳥遊にとって憧れとなった。
絆創膏を貼り付けた鼻に指を当てて笑う尊敬する人の姿を脳裏に浮かべて、小鳥遊はふと頭を抱えていた手を離して立ち上がった。
当たり前の事に気がついたのだった。
当たり前の事に気がついたのだった。
「瀧川さんに会いたいのなら、せめてそれに見合う自分ではいたいよなあ」
どんな理由にせよ、自分はこの芥辺境藩国に所属することを自分から願ったのだ。
それをぐちぐち悔やんで何もしないのは、あまりにもこの国の人々に対して失礼すぎる。
それにそもそも、この藩国に不満があるわけでは全くない。実際のところむしろいい選択をしたのではないかとさえ思う。
藩王はとても気さくな人で、摂政は幻想としか思えないほど凄い人だった。戦闘記録を見たときに、涙がにじんだほどである。
それなのにぐちぐちふさぎ込んでいたのは、あまりに考えなしに所属を決めてしまった自分に対して、それってどうよ、と思ったからだ。
そうやって気持ちを前向きに整えていくと、やるべきことが沢山あることに気がついた。
まずはこの国について知らなければいけないことが多いし、何ができるのかも分からない以上、できることを探す必要もある。
とにかく、頑張ろう。
それが力も自信もありはしない自分にできる唯一のことだと、小鳥遊は信じていた。
それをぐちぐち悔やんで何もしないのは、あまりにもこの国の人々に対して失礼すぎる。
それにそもそも、この藩国に不満があるわけでは全くない。実際のところむしろいい選択をしたのではないかとさえ思う。
藩王はとても気さくな人で、摂政は幻想としか思えないほど凄い人だった。戦闘記録を見たときに、涙がにじんだほどである。
それなのにぐちぐちふさぎ込んでいたのは、あまりに考えなしに所属を決めてしまった自分に対して、それってどうよ、と思ったからだ。
そうやって気持ちを前向きに整えていくと、やるべきことが沢山あることに気がついた。
まずはこの国について知らなければいけないことが多いし、何ができるのかも分からない以上、できることを探す必要もある。
とにかく、頑張ろう。
それが力も自信もありはしない自分にできる唯一のことだと、小鳥遊は信じていた。
新しい日々が始まる。