作:那限逢真・三影
芥辺境藩国。
I=D国家にして援軍国家を目指したが故に、単独戦闘力の無いことで(国内で)有名な藩である。
そんな芥辺境藩国の飛行場には何を間違ったか、天領で極秘開発された試作機が格納されており、一部の国民は足しげく通っていた。
――そして、それは現在襲来中のアラダの飛行編隊に対する切り札として、静かに出撃を待っていた。
そして、飛行場にある建物を足早に歩く猫士がいた。藩国の王猫コジロー2世の娘、サヨコである。
I=D国家にして援軍国家を目指したが故に、単独戦闘力の無いことで(国内で)有名な藩である。
そんな芥辺境藩国の飛行場には何を間違ったか、天領で極秘開発された試作機が格納されており、一部の国民は足しげく通っていた。
――そして、それは現在襲来中のアラダの飛行編隊に対する切り札として、静かに出撃を待っていた。
そして、飛行場にある建物を足早に歩く猫士がいた。藩国の王猫コジロー2世の娘、サヨコである。
「あ~。こんにちは……いや違う。初めまして……違う。あうぅぅぅぅ」
変な声を聞きつけたサヨコは視界の端で小さなものを捉える。
覗いてみると、鏡の前で一人の少年が何やらオタオタしながら考え込んでいた。
「なにやってるのよ?」
「ひゃぁぁぁぁ!!」
素っ頓狂な叫び声を上げて文字通り飛び上がる少年――藩国技族、霧原涼。
振り返った顔は、真っ赤な顔で涙目。
ある意味、女性よりも女性らしい仕草である。
「あなた……何してたの」
「あ~、いや、そのぅ……。実は……えっと……」
言葉にするならぐるぐると言う状態であろう。オタオタしながら言葉を紡ごうとしている。
そんな霧原涼の手にはマジックアイテムがあった。
――『乙女のキス』。
別世界から、その人の望む人物を連れてくるアイテム。
そこで、今回の作戦で霧原涼の憧れの人であるヤガミを呼ぶ事になっている事を思い出す。
「ああ。なるほどね。ヤガミって人に話しかける言葉を考えていたわけね」
「え!? いや、あの、えと、そういうわけじゃ……」
「いいわよ。だれにも言わないから」
慌てて弁明しようとする霧原少年に手をヒラヒラ振りつつ、サヨコは歩き出す。
その背中に霧原涼の声を受けながら……。
「いや、その、待ってくださいぃぃぃぃ!!」
変な声を聞きつけたサヨコは視界の端で小さなものを捉える。
覗いてみると、鏡の前で一人の少年が何やらオタオタしながら考え込んでいた。
「なにやってるのよ?」
「ひゃぁぁぁぁ!!」
素っ頓狂な叫び声を上げて文字通り飛び上がる少年――藩国技族、霧原涼。
振り返った顔は、真っ赤な顔で涙目。
ある意味、女性よりも女性らしい仕草である。
「あなた……何してたの」
「あ~、いや、そのぅ……。実は……えっと……」
言葉にするならぐるぐると言う状態であろう。オタオタしながら言葉を紡ごうとしている。
そんな霧原涼の手にはマジックアイテムがあった。
――『乙女のキス』。
別世界から、その人の望む人物を連れてくるアイテム。
そこで、今回の作戦で霧原涼の憧れの人であるヤガミを呼ぶ事になっている事を思い出す。
「ああ。なるほどね。ヤガミって人に話しかける言葉を考えていたわけね」
「え!? いや、あの、えと、そういうわけじゃ……」
「いいわよ。だれにも言わないから」
慌てて弁明しようとする霧原少年に手をヒラヒラ振りつつ、サヨコは歩き出す。
その背中に霧原涼の声を受けながら……。
「いや、その、待ってくださいぃぃぃぃ!!」
(……私もああやったら、逢真気にしてくれるかな?)
――多分無理。
――多分無理。
しばらく歩くと、広い格納庫に出る。
そこには一機の試作機があった。その傍らでは、試作機を興味深そうに見上げる幼児と――寝ている青年。
どこかで、ぷち。という音が聞こえた気がした。
「こら! オーマ! 起きろ!!」
「……何だよ……」
「チビ君ほっといて寝ないの!」
「部隊編成と、試作機のマニュアル読みで眠い」
まだ眠いのか、右目を閉じたままで答える。
無論、そんな事はサヨコも良く知っている。
急な出撃準備と先ほどまでの出撃。加えて、予備人員としてマニュアルの読み込み。
作戦が始まれば、部隊指揮の支援も入るだろう。
「それより、この機体はどうなの?」
内心の心配を顔に出したくなくて、試作機の方を向く。
「いたってノーマルだが高性能だな。まぁ、通常の戦闘機ではないが」
「パイロットは? オーマが乗るの?」
「いや。瀧川の予定。乗れるならだけど」
「にいちゃんがのるの?」
当たり障りの無い会話に、チビが混ざる。
自分の父親を兄と呼ぶのもある意味変な話だが、チビはチビで少年の瀧川陽平を慕っているらしい。
苦笑して頭を撫でる逢真を横目で見る。
――同時に鳴り響くサイレン。敵襲の合図。
「来たか……。サヨコは、避難誘導よろしくな」
「あ、ちょっと……」
何か答えようとする前に、ゴーグルの少年が駆け込んでくる。
外ではコトラ空戦型が起動し、戦闘状態に入る。
続けて、試作機のエンジンに火が入る。
そこには一機の試作機があった。その傍らでは、試作機を興味深そうに見上げる幼児と――寝ている青年。
どこかで、ぷち。という音が聞こえた気がした。
「こら! オーマ! 起きろ!!」
「……何だよ……」
「チビ君ほっといて寝ないの!」
「部隊編成と、試作機のマニュアル読みで眠い」
まだ眠いのか、右目を閉じたままで答える。
無論、そんな事はサヨコも良く知っている。
急な出撃準備と先ほどまでの出撃。加えて、予備人員としてマニュアルの読み込み。
作戦が始まれば、部隊指揮の支援も入るだろう。
「それより、この機体はどうなの?」
内心の心配を顔に出したくなくて、試作機の方を向く。
「いたってノーマルだが高性能だな。まぁ、通常の戦闘機ではないが」
「パイロットは? オーマが乗るの?」
「いや。瀧川の予定。乗れるならだけど」
「にいちゃんがのるの?」
当たり障りの無い会話に、チビが混ざる。
自分の父親を兄と呼ぶのもある意味変な話だが、チビはチビで少年の瀧川陽平を慕っているらしい。
苦笑して頭を撫でる逢真を横目で見る。
――同時に鳴り響くサイレン。敵襲の合図。
「来たか……。サヨコは、避難誘導よろしくな」
「あ、ちょっと……」
何か答えようとする前に、ゴーグルの少年が駆け込んでくる。
外ではコトラ空戦型が起動し、戦闘状態に入る。
続けて、試作機のエンジンに火が入る。
再び戦場に嵐が吹き荒れようとしていた……。