歪み
鉄也のガイキングを上部に載せたボスのダイタンクは土煙をあげ疾走していた。
「大丈夫かよぉ、鉄也」
「やられたのは機体だけだ。俺には傷一つ無い」
そういう鉄也の額には汗が滲み出ていた。
彼は己の腕に自身もあり、支給された機体もスペックを見れば上々・・・
正直に言えばそうそう相手に遅れはとらないと思っていた、それがこの様だ。
「そんな事よりどちらに向かっているんだ」
「おお、とりあえずはさっきの廃墟地帯に」
「駄目だ、さっきの放送を聞かなかったのか、あそこは禁止エリアになる。そうだな・・・」
鉄也は地図を開き、辺りの地形を確認する。
「よし、同じ廃墟でもE-2の小島にしばらく潜むとするか」
「E-2・・・なるほど、廃墟は四つのエリアにまたがってるから陣取れれば、
禁止エリアにされても少ない移動で違うエリアにいけるだわね」
「そういう事だ。お前にしては頭がまわるじゃないか、ボス。
それに俺の機体とその機体には遠距離から砲撃できる武装もあるから、
島に近づく機体を迎撃する事も出来る、しばらくはあそこに滞在出来るはずだ」
「お前にしてはってどういう意味だわさ!まったく甲児さえ帰ってきたらお前にデカい口を叩かせねえのによ!」
「何を言ってるんだ?兜甲児はミケーネとの決戦に備えて帰国したじゃないか」
ボスと軽口を叩きあい少しづつ心の暗雲が引き始めていた鉄也であったが、今のボスの一言で再び暗雲が立ちこめ始めた。
「お前こそ何言ってんだよ鉄也。甲児は日本に帰ってきてなんか」
ミシッ!
金属が軋む音がなった。
ガイキングの指がダイタンクの装甲に食い込み、亀裂を走らせていた。
「な、何をするんだわさ鉄也!」
「質問するのはこちらの方だ。お前はミケーネ、またはこのゲームの主催者側の人間が化けたか用意した偽物か?」
「な、何の話だい!俺は正真正銘のボス様でい!」
「なら何故先程兜甲児が帰国してないと言った!」
「そっちこそ何をわけのわかんねぇ事を言ってるんだ!」
実際にボスは嘘を言ってはおらず、偽物でも無かった。鉄也も同様である。
だが二人の呼び出された時間にズレがあり、このような軋轢を生み出していた。
「いいかげんにしやがれ!これ以上俺を怒らせるとこっちだって黙ってやられるわけにはいかないわよ!」
(この態度、偽物とは思えんな。それにもし偽物ならばあんなわけのわからん事は言わせんはずだ)
「やいやーい!聞いてんのか鉄也!」
ガイキングはゆっくりとダイタンクの装甲から腕を離した。
「ああ、すまなかったなボス、さっきのキラ・ヤマトとかいう奴にしてやられてどうかしてたみたいだ」
「いいかげんにしないと俺様の最終兵器が火をふ・・・え?あ、ああ、わかりゃいいんだけどよ」
「まだ色々とわからん事はあるが・・・何にせよあの仮面野郎を倒せばわかるだろう。よし、E-2にひとっ飛びするか」
「飛んで行くのか?さっきは狙撃だとかなんとかいってたじゃねえか」
「水中に潜む敵もいるかもしれん、高々度を移動すれば狙撃もされないだろうし、
空に敵がいても水中戦になるよりかは空中戦の方がましだ、飛行は慣れてないなんて言うなよ、行くぞ!」
【剣鉄也 搭乗機体:ガイキング後期型(大空魔竜ガイキング)
パイロット状態:精神・肉体ともに軽い疲労
機体状態:胸部破損、右腕切断
現在位置:D-3からE-2へ移動中
第1行動方針:E-2への移動
最終行動方針:主催者の打倒】
【ボス 搭乗機体:ダイターン3(無敵鋼人ダイターン3)
パイロット状況:精神的に若干の疲労
機体状況:背部の装甲に亀裂
現在位置:D-3からE-2へ移動中
第一行動方針:E-2への移動
最終行動方針:主催者の打倒】
【初日 18:47】
最終更新:2008年05月30日 05:00