二人の共感、一人の違和感


…ゼンガー・ゾンボルト…

朝の放送の中、その名前が流された時にシンジの肩はわずかに震えた。
が、軽く黙祷するように目を瞑ると、放送を聞き逃すまいとシンジはすぐに目を開いた。

(ふむ…ずいぶん精神的に強くなったものだな。これもゼンガーの影響か?)
ウルベはそれを観察して思う。ゼンガーより扱いやすい上に、前ほど足手まといとは言えなそうだ。
手駒としては最適かもしれない。
ウルベは目を移した。傍らにはもう一人、死亡者にはまったく興味がないと言わんばかりの少年がいる。
宗介は禁止エリアが流されるとそれを地図に書き写し、検討を始めていた。
(こちらはまだまだ手駒とはいえんな…何とか懐柔したいものだが)
とはいえシンジと組ませていれば操れるかも知れん。ウルベはそんなことを思う。

そうして朝の放送は終わり、シンジはそっと安心したように息をついた。
(よかった、アスカはまだ無事みたいだ)
その吐息に何かを感じ取ったか宗介が声をかけてくる。
「どうした、何かあったか?」
その物言いに、なんとなくゼンガーの面影を感じ取りつつ、シンジはアスカについて話しておこうと思い立った。
「じつは、最初の部屋で見かけたんですけど…。アスカ、っていう知り合いの娘がここにいるみたいなんです。
 まだ放送で名前は流れていないから、生きていると思うんだけど」
「ふむ。女か?」
「…そうですけど。何か?」
「…女には気をつけろ。俺が以前にアフガンでの特殊作戦に従事していた時のことだ。
 部隊に一人、急遽女が編入されてきたのだが。実はそれは敵のスパイだったのだ」
「…はあ」
それは女じゃなくても一緒なんじゃないかな、などと思いつつ。
『アフガンでの特殊作戦』などという映画でしか聞いたことのない単語が気になってシンジは聞いてみた。
「宗介さんは軍人なんですか?」
「いや、傭兵だ。世界各地を転々としていた」
「うわあ、凄いんですね」
いやいや戦わされていた自分と比べ、そう年の変わらない彼がどんな人生を送ってきたのか、シンジはしばし物思いに沈む。

「で、そのアスカさんとやらの話ではなかったのかね?」
さきほどからなにやら考えているようだったウルベが、からかうように話を戻し、シンジは物思いから脱する。
「そ、そうです。だから僕はアスカを探して守りたい。
 …そんな事言ったら、アスカには『アンタなんかがえらそーに!』とか言われちゃうかもしれないけど」
「なんだ、その女には頭が上がらないのか?」
「う…。だって、アスカは気が強くて、僕よりも上手くエヴァを扱えて…。
 でも、傷つきやすいくせに、いつも意地を張っているような、そんな子なんです。だから、守ってあげないと。
 …あはは、何を言ってるんだろう?」

 しかし、それには意外な返事が返ってきた。
「いや…わかるぞ。碇。いいだろう、そのアスカという娘を保護したいというなら、手を貸す」
その時宗介の脳裏に、いつも気が強く、ハリセンを振りかざし、しなやかで、土壇場での度胸もあり…
でもやっぱり女の子なだれかが浮かんでいたかどうかは…定かではない。
「本当ですかっ!?」
「ああ、無駄な戦闘は避けたいところだがな」
「うむ、とりあえずの行動方針は決まったようだね。では、まずそのアスカさんの情報を集めるとするか」
「みんながみんなゲームに乗ったわけじゃないでしょう。まず、そういう人たちを探しませんか?」
まさか、当のアスカがゲームに乗っているとは思わず、シンジは無邪気にそんなことを言った。


(ふふふ、やはりこの二人は組ませておいた方がいいようだな。…しかし、アフガンでの特殊作戦とは何のことだ?)
ウルベは何かかみ合わないものを覚えつつ、それをおくびにも出してはいなかった。



【碇シンジ :大雷鳳(第三次スーパーロボット大戦α)
 パイロット状態:良好(おなかいっぱい)。全身に筋肉痛
 機体状態:右腕消失。装甲は全体的軽傷(行動に支障なし)。背面装甲に亀裂あり。
 現在位置:H-4
 第1行動方針:アスカと合流して、守る
 第2行動方針:出来るだけ助け合いたい
 最終行動方針:生き抜く
 備考1:奇妙な実(アニムスの実?)を所持 】

【相良宗介 :ブリッツガンダム(機動戦士ガンダムSEED)
 パイロット状況:健康 ちょっと寝不足 シンジにちょっと共感
 機体状況:良好
 現在位置:H-4
 第1行動方針:アスカを保護する
 第2行動方針:ウルベには気を許さない
 最終行動方針:生き延びる。戦いも辞さない】

【ウルベ・イシカワ 搭乗機体:グルンガスト(バンプレストオリジナル)
 パイロット状態:良好 ちょっと寝不足。二人の会話に違和感。
 機体状態:レーダーもなにもかもすこぶる良好
 現在位置:H-4
 第1行動方針:状況を混乱させる(宗介とシンジ、特にシンジを利用する)
 最終行動方針:???】

【二日目 6:30】





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第132話「新しい朝が来た 碇シンジ 第155話「終わらないレクイエム
第132話「新しい朝が来た 相良宗介 第155話「終わらないレクイエム
第132話「新しい朝が来た ウルベ・イシカワ 第155話「終わらないレクイエム


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最終更新:2025年01月18日 00:47