東方不敗は死なず(後編)
轟音が鳴り響くと共に、何かの影が森のすぐ上空を駆け抜けていった。
続いて突風が巻き起こり、周囲の木々を揺らして音を奏でる。
「な、なんだ!?」
森の細道を走っていたワルキューレを停止させ、トウマは影の飛び去った方角へと振り返る。
しかし、生い茂る森の木々と夜の暗闇のせいで、影の正体を捉えることは叶わなかった。
「今のは一体……他の参加者の機体か?」
彼らが飛んできた方向、それは自分が向かっている基地の方角だった。ちょうど、すれ違った形になる。
「まさか……基地で何かあったのか!?」
嫌な予感を覚え、トウマは再びエンジンを吹かす。
すれ違う形で通り過ぎていった影の正体は気になる。だが今の自分にどうこうできるわけではない。
彼らがクォヴレー達と鉢合わせする可能性があることも心配だったが、今のクォヴレー達ならば滅多な危険はないだろう。
強力な特機が2体あるのだ。今の影が殺し合いに乗った参加者だとしても、遅れを取ることはないと思った。
それに、もし基地で何かあったのであれば。司馬博士達がそこにいて、助けを求めている可能性があるならば。
尚更、自分は基地へと急がなければならない。
トウマは迷うことなく、ワルキューレを発車させた。
やがて森を抜け――
トウマの視界に最初に、炎の明かりが飛び込んできた。
「なっ……!?」
正面の高台の上。そこにある基地施設。そのあちこちから上がる火と煙。
「く……くそっ!!」
トウマは、自分の嫌な予感が的中したことを悟り、乱暴にアクセルを踏みつける。
(頼む……間に合っててくれ……!!)
司馬博士達の無事を祈り、ワルキューレは崖を一気に駆け上った。
その祈りは、通じることはなかった。
その現実は、予想を遥かに上回る最悪の形で、トウマに突きつけられた。
破壊された基地の跡。そして、無惨な姿で倒れたロボット達……
戦いの激しさをこれ以上ないほどに物語っていた。
あちこちで燃えている、白い戦闘機の破片。
その色、そして翼の特徴的な形状から――それが自分達の捜し求めていたアルテリオンであるとわかるのに、時間はかからなかった。
グチャグチャに叩き潰された小柄な機体。よく見れば、それは以前遭遇したM9のものだった。
完全にスクラップと化したその姿、これではどう考えても搭乗者は……ヒイロ・ユイは生きてはいないだろう。
そして、両腕を失い力尽きた巨人。
トウマはそれを知っていた。忘れるはずがない。数多くの激戦を戦い抜き、幾度となく危機を共に切り抜けてきた、相棒のことを。
――巨人の名は、大雷鳳。
「……な……んだよ……これ……」
かろうじて絞り出たトウマの声は、魂が抜けてしまったかのような、掠れて力無いものだった。
怒りも悲しみも沸いてこない。何も感じられない。
それ以前に、状況を素直に受け入れることすらできなかった。
潰えた希望。仲間の死。自分の愛機が晒す無惨な姿。
一度に受け入れるには、あまりにも、ショックが大きすぎた。
何かの悪夢だと思いたかった。
しかし、これは紛れもなく現実。
襲い来る絶望の大波。打ちひしがれる心。
トウマは、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。
そのため――
彼は気付かなかった。
最悪の危機が、自分のすぐ傍まで迫っていたことに。
じゃりっ……と、地面を踏みしめる音が、後ろから聞こえた。
「!!!」
その音と共に突然背後に感じた気配に、一瞬心臓が跳ね上がり、トウマは慌てて振り返った。
振り返った先には、人が立っていた。
それも、すぐ背後に。僅か3メートルと離れていない、至近距離に。
左手がなく。
全身の皮膚という皮膚がどす黒く焼け爛れ。
どう見ても、生きていられるような状態ではない。
むしろ、焼死体にしか見えない、老人らしき人間が。
「あ……!?」
比喩抜きで、心臓が止まりかけた。
何の気配も感じさせず、すぐ背後にいきなり死体同然の人間がゾンビのように佇んでいれば、誰だって寿命を縮ませる。
声が出ない……だが、トウマを襲う衝撃は、そんなものでは済まされなかった。
黒焦げの老人の目が光る。その眼光は、鋭い殺気を込めて、トウマを貫いた。
「うっ―――!?」
それだけで、全身に震えが走った。
その震えを、トウマ自身が自覚する間もなく。
老人が身体を捻り、勢いをつけ回し蹴りを一閃する。
同時に、目の前の景色が白黒に反転し、天地がひっくり返り。
次の瞬間、トウマの身体は、ワルキューレと共に地面に叩きつけられていた。
東方不敗マスターアジア。彼は確かに死んだ。
いや、厳密には……彼の「心が」死んだだけだった。
信じがたいことに、その肉体はまだ死を迎えていなかったのである。
もっとも、それも長くは持たないだろう。恐らく数分で力尽きる。
それでも――
その数分さえあれば、目の前のトウマ・カノウを殺すくらいは、造作もないことだった。
ここにいる老人は、東方不敗であって東方不敗で非ず。
ただ内なる衝動のままに殺戮を行うだけの、破壊の化身。
「う……あ……!?」
気を失いそうなほどの激痛。蹴りをまともに食らった右手が、変な方向に折れ曲がっている。
(くそ……っ!なんだよ……何なんだよ!?)
面を上げる。目の前には、破損し横たわったワルキューレがあった。
老人は……すぐ目の前にいたはずの東方不敗の姿は、いつの間にか10メートルほど離れた場所に移動していた。
いや、違う。東方不敗が動いたのではない。
彼が放った蹴りで、トウマ自身が10メートル近く吹っ飛んだのだ。
東方不敗は、トウマのほうに再び視線を向けた……いや、睨み付けた。
「……ッッ!!」
目と目が合う。トウマは、その殺意を込めた視線を直接受けてしまった。
その殺気は、身体の細胞一つ一つを蝕み。
圧倒的で、絶対的な恐怖が、トウマに襲い掛かった。
トウマ・カノウ。彼はゼ・バルマリィ帝国、そして霊帝と言った数々の強敵との戦いを経て、戦士として格段の成長を遂げていた。
その戦士としての本能が、東方不敗の恐ろしさをこの上なく敏感に感じ取ってしまった。
恐るべき威圧感……ゼンガー・ゾンボルトやバラン・ドバンなどまるで問題にならない。
この男には勝てない。少なくとも、生身での戦いは、万、いや億・兆に一つの勝ち目もない。
そして、彼の秘めた殺意。底知れぬ凶暴性。
不幸なことに、トウマはそれを見抜いてしまった。その強烈過ぎるプレッシャーを、ストレートに受け止めてしまった。
危険すぎる。逃げろ。一刻も早く。この男に関わるな――
脳の中に、激しい警告が響く。
その警告に従うには、もはや全てが手遅れだった。
「あ……ああ……」
異常すぎるプレッシャーに当てられ、トウマの思考は、恐怖に染まりきってしまっていた。
逃げようにも、身体が竦み上がって動かない。腰が抜け、怯える様は、普段からは想像もできないものだった。
その惨めな姿からは、かつて満ち溢れていた闘志など欠片も見出せない。
「く、来るな……」
東方不敗はゆっくりと、トウマに向かって歩み寄ってくる。
ゆっくりと、ゆっくりと。恐怖を煽り立てるように。
トウマと東方不敗の間の距離は、徐々に縮まっていく。
9メートル、8メートル、7メートル、6、5、4……
「う、ああ……ああぁぁぁぁっ!!」
トウマの思考が、精神が徐々に壊れ始める。
(どうする、どうするどうする!?どうすればいい!?)
トウマの心の奥底に残った消えかけ寸前の闘志が、かろうじて恐怖に抗い、理性を僅かに繋ぎ止めていた。
その時。
地面に転がっていた「ある物」が、トウマの目に付いた。
(こ、これは――!?)
東方不敗に蹴り飛ばされた際に、トウマのポケットから転がり落ちたのだろう。
自分に支給された、数少ない武器であるそれを見た時、トウマの壊れかけていた思考が再構築される。
そして恐怖に染まっていた心に、僅かな希望の光が差し込んだ。
「う……あああああああああッ!!!!」
トウマは、それを引っ掴み、東方不敗目掛けて思いっきりブン投げた!
投げつけられたそれ――
「ベーゴマ」が、東方不敗に命中する。
次の瞬間――
ベーゴマは、東方不敗を巻き込み、爆発を起こした。
「ぐああぁぁぁああぁぁぁぁ!!!!」
耳を劈く爆音と、東方不敗の断末魔の叫び声。
焼け爛れた東方不敗の全身を、さらに炎が包み込んだ。
しかし。
「う……ぉぉぉぉおおおおおお……!!」
それでも、東方不敗は倒れなかった。
「う……嘘だろ!?」
全身に炎を纏いながら、尚もじりじりと歩み寄ってくる。
「ば……化け物……」
嫌な汗が止まらない。
それでも何とか自我を保ち、トウマは、ポケットの中からもう一つのベーゴマ爆弾を取り出す。
(こうなったらもう一発……い、いや、それでもまだ生きてたら……)
炎上する身体を引きずりながら、東方不敗は一歩、二歩とトウマのほうに歩み寄ってくる。
その足は、転がっているワルキューレにかけられ……
(ワルキューレ……それだっ!!)
「今だああぁぁぁぁぁぁっ!!!」
東方不敗がワルキューレを足蹴にした瞬間、トウマはもう一つのベーゴマを投げつけた。
ベーゴマは東方不敗に命中。
轟音とともに、二度目の爆発が起きる。
その爆発は東方不敗を、
そして彼のすぐ足元のワルキューレも一緒に巻き込んだ。
ワルキューレに搭載されている小型ジェットエンジンが、誘爆を起こす。
そして、三度目。
それまでで最も大きな爆発が引き起こされた――
「い……っててて……」
爆発の衝撃で吹き飛ばされた身体を引きずりながら。
目の前で炎上するワルキューレを、その炎の中に消えた東方不敗を。
トウマは、ただ呆然と眺めていた。
「は……はは……ははは……」
顔を引きつらせ、笑った。笑うしかなかった。
今の数分だけで、いったいどれだけ寿命が縮んだだろうか。
数々の修羅場を戦い抜いてきたトウマも、これほどまでの恐怖を味わったのは初めてだった。
もうダメだ。絶対に殺される。死にたくない――とにかく、それしか考えられなかった。
普段のポジティブな思考が、今回は何故か全く機能しなくなっていた。
(なんだったんだよ、あれは……)
得体の知れない恐怖に支配された記憶が蘇り、トウマは心の中で毒づいた。
だが、なんとか逃げ切れた。生き延びることができた。
「……生きてるんだよな、俺……はは」
人生最大の危機から逃げ切れたような気分だった。
トウマの心に、どっと安堵が押し寄せた。
張り詰めていた糸が切れ、全身から力が抜ける。
トウマは重力に身を任せ、ばたん、と仰向けにぶっ倒れた。
そして、深呼吸し、そのまましばらく夜空を眺める。
仲間のことも、愛機のことも、殺し合いのことも。
この時ばかりは、何もかもが頭から完全に吹き飛んでいた。
今、トウマの頭にあるのはただ一つ。
「あー……死ぬかと、思った……」
【三日目 1:15】
【クォヴレー・ゴードン 搭乗機体:ブライガー(銀河旋風ブライガー)
パイロット状態:良好、
リョウトの憎悪に対し危惧。
機体状況:良好
現在位置:G-5
第一行動方針:G-6基地へ向かい、首輪の解析をしているアルテリオン・スカーレットモビルのパイロットと接触
第二行動指針:ヒイロと合流、主催者打倒の為の仲間を探す
第三行動方針:なんとか記憶を取り戻したい(ディス・アストラナガンとの接触)
最終行動方針:ユーゼスを倒す
備考1:本来4人乗りのブライガーを単独で操縦するため、性能を100%引き出すのは困難。主に攻撃面に支障
備考2:ブライカノン使用不可
備考3:ブライシンクロンのタイムリミット、あと14~15時間前後
備考4:ブライスター及びブライガーは最高マッハ25で飛行可能。
ただしマッハ5以上で首輪に警告メッセージ。30秒後に爆発。スピードを落とせば元に戻ります】
【イキマ 搭乗機体:グルンガスト(バンプレストオリジナル)
パイロット状況:戦闘でのダメージあり、応急手当済み。リョウトの憎悪に対し危惧。
機体状況:小破、メインカメラ破損。コックピットの血は宗介のものです。
現在位置:G-5
第一行動方針:出発までにグルンガストの操縦を完全にマスターする。
第二行動方針:G-6基地へ向かい、首輪の解析をしているアルテリオン・スカーレットモビルのパイロットと接触
第三行動方針:司馬遷次郎と和解できなければ、グループを抜ける。
第四行動方針:主催者打倒の為の仲間を探す
最終行動方針:仲間と共に主催者を打倒する】
【
反逆の牙組・共通思考】
○剣鉄也、木原マサキ、ディス・アストラナガン、ラミア・ラヴレスを特に警戒
○ガイキングの持つ力(DG細胞)が空間操作と関係があると推測
○ディス・アストラナガンがガイキングの力(DG細胞)と同種のものと推測
○剣鉄也らの背後の力(デビルガンダム)が空間操作装置と関係があると推測
○空間操作装置の存在を認識。D-3、E-7の地下に設置されていると推測
○C-4、C-7の地下通路、及び蒼い渦を認識。空間操作装置と関係があると推測
○アルテリオン、スカーレットモビルのパイロットが首輪の解析を試みていることを認識
ただしパイロットの詳細については不明
○木原マサキの本性を認識
○ラミア・ラヴレスがジョーカーであることを認識
○再合流の予定時間は翌朝5時、場所はE-5橋付近
【三日目 1:45】
【ガルド・ゴア・ボーマン 搭乗機体:エステバリス・C(劇場版ナデシコ)
パイロット状況:良好。強い決意。
機体状況:エネルギー消費(中) 駆動系に磨り減り。左腕欠損。
現在位置:G-5森上空(北上中)
第一行動方針:チーフと合流すべく、マサキを連行しE-1小島へ
第二行動方針:空間操作装置の発見及び破壊。デビルガンダムへの対処
最終行動方針:ゲームの阻止。イサム、チーフ達仲間と共に生還する(決して無闇に死に急ぐような道は選ばない)】
【木原マサキ 搭乗機体:レイズナー/強化型(蒼き流星レイズナー)
パイロット状態:焦りと苛立ち
機体状態:左腕断裂。背面部スラスター大破。背面装甲にさらなるダメージ。機体冷却中により機能一時停止。
現在位置:G-5森上空(北上中)
第一行動方針:G-6から離脱
第二行動方針:ガルドへの対抗策を考える
第三行動方針:首輪の解析、及び解析結果の確認
第四行動方針:ユーゼスを欺きつつ、対抗手段を練る
最終行動方針:ユーゼスを殺す
備考:マシンファーザーのボディ、首輪4つ保有。首輪100%解析済み(フェイクの可能性あり) 解析結果に不信感。
スパイの存在を認識。それがラミアであることには気付いていない】
※基地施設の一部が崩れました
【三日目 2:00】
【東方不敗 搭乗機体:なし
パイロット状態:―――――――――――――
が し っ
「っ!?」
不意に足首を掴まれ、トウマの心臓がまたも跳ね上がった。
「な、っ!?」
トウマは猛烈な勢いで飛び起きる。
(馬鹿な。そんな馬鹿な)
視線を、掴まれた自分の左足首へと向けた。
そこには、あるはずのないものがあった。
普通に考えて、絶対ありえないものが、自分の足首を掴んでいた。
(う、嘘だ)
炎の中から伸びた、黒い腕が。
黒く焼け焦げ、皮膚が所々剥がれ落ちた、誰かの右手が。
トウマの左足首を、しっかりと掴んでいた。
(嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だうそだうそだうそだうそだうそだうそだ)
おかしい。
こんなことはありえない。
生きてるはずがない。
死んでなきゃ絶対おかしい。
見たくない。
見るのが怖い。
でも、見ないことにはどうにもならない。
トウマは恐る恐る、視線を腕から、その全身へと移す……
トウマの視界に映ったもの。
それは。
原形を留めなくなった、かつて東方不敗と呼ばれたモノ。
全身の皮膚が、肉が、蝋のように崩れ。
耳はちぎれ、鼻が半分削げ、唇が溶け。
頭の吹っ飛んだ部分から頭蓋骨が露出し、そこから脳髄が見える。
眼球の片方がだらりと垂れている。
そして、もう片方の目には……
それまでと全く変わらない、底知れぬ殺意の輝きが灯っていた。
それだけでも相手を竦ませる――いや、相手を発狂すらさせられるだけの殺意の輝きが。
真っ直ぐに、トウマをにらみつけていた。
その瞬間。
トウマ・カノウの全てが、壊れた。
培った闘志も、勇気も、仲間との絆も、愛する人との誓いも。
様々なものを積み重ねてきた彼の全てが。
この一瞬で、完全に崩壊した。
目の当たりにした恐怖と衝撃は、トウマの髪を、瞬く間に白くしていく。
「ああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!!」
狂ったような……いや、完全に狂ってしまった男の絶叫が響き渡った。
足首を掴んでいた腕は、上半身に……トウマの首元へと伸びた。
「うああああああああああああああ…………があっ!?」
首にあてられた右手に力が、死人同然の人間とは思えないほどの強い力が込められ、トウマの首を絞め始めた。
「ッ!?――――!!!!」
呼吸が阻まれる。絞められた首に痛みが走る。
その手を振り払おうと、トウマは形振り構わず暴れ狂った。
だが、東方不敗の右手は首から離れない。トウマの左手だけでは、払いのけることができなかった。
(うわああああああああああああああっ!!あがあああああぁぁぁあぁぁぁああああああ!!!!
うそだうそだうそだうぞだうぞだウゾダヴゾダヴゾダヴゾダ!!!
いやだいやだいやだいやだいやだしにたくないしにたくないしにたくないしにたくない!!!!!)
窒息し、意識が薄れる。目が霞む。そして思考も、何もかも壊れる。
そんな時、トウマの視界の中に、両腕を失い力尽きた、相棒の姿が映った。
(だいらいおう!!だいらいおぉぉぉぉぉおおおぉお!!!!
たすけて、たすけてたすげでだずげで!!ミナキ、ミナキミナキみなきみなきみなきぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!)
主の声なき懇願に、大雷鳳は応えない。
ただ冷ややかに、トウマを見下ろしていた。
(ああああぁぁぁあぁぁぁああぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁあああああああああああ!!!!
だずげでだずっだずげでクォヴレーイキマジョシュアりゅうせいせれーなりょうとぜんがーあるまな
みなきみなきみなきみなきみなきみなきみなきみなきみなきみなきみなk)
コキャッ……
と、何かが折れるような音がした。
トウマの抵抗が止まった。
同時に、東方不敗の身体も崩れ落ちた。
そして、静寂が場を支配した。
風が、老人と青年、二人の男に吹き付ける。
それを受けて、老人の身体が本格的に崩れだした。
皮膚は剥れて風に舞い、脆くなった骨は崩れていく。
人としての形を完全に失い、あとには青年だけが残された。
青年の首は、ありえない方向へと捻じ曲がっていた。
髪は真っ白になり、その表情は、何か恐ろしいものを見たような、恐怖に歪みきっていた。
負の感情の荒れ果てたG-6の地から、人影が完全に消えた。
ただ、燃え盛る炎と、吹きすさぶ風の音だけが、悪夢の終焉を告げていた。
【トウマ・カノウ 搭乗機体:なし
パイロット状態:死亡】
【東方不敗 搭乗機体:なし
パイロット状態:死亡】
【三日目 2:05】
最終更新:2008年06月02日 18:09