悪魔転生(後編) ◆VvWRRU0SzU
「この反応、ユーゼスか!」
ブライガーのコクピットで待機していたイキマは、接近する反応を感知した。
未だディス・アストラナガンに動きはない。
自分が迎撃せねばならない。
ブライガーを起動させる。
どこまでやれるかはわからないが、黙ってやられるつもりはない。
「お前は死ぬなよ…クォヴレー」
言い置き、飛び立とうとする。
だがふと思い立ち、トロニウムエンジンをパージ、放棄する。
爆弾にでもと思ったが、これが爆発すれば優に1エリアは吹き飛ぶだろう。
半ば崩れかけているアースクレイドルは今度こそ崩壊、クォヴレーは生き埋め。
そんな事態は避けなければならない。
「さて、行くか」
ブライガーを発進させ、地上を目指す。
眠り続ける仲間、その覚醒を信じて。
□
「…ふん、手間取ったものだ。だが、これで邪魔者はいなくなった」
前方に見えるアースクレイドルを見据え、ユーゼスは呟く。
木原マサキとの交戦は、またも相手の撤退により勝負はつかなかった。
撃破したいところではあったが、今は転移手段たるディス・アストラナガンの確保が先決。
そう判断し、イキマとクォヴレーを追ってきたのだが…
「まさかここに逃げ込むとは、な。際どいところだったか」
マサキによってダイダルゲートが破壊された後、ゼストはE-7の地下に転移させた。
マサキと交戦している間にヘルモーズが墜ちたのは予想外だった。
バリアを突破されるとは思っておらず、たとえ突破されたとしてもあそこには所有していたバルシェムを全て配置していた。
参加者が群れをなして襲ってこようとも迎撃できるだけの戦力はあったはずだが…
さすがは修羅王、といったところか。
どうやって生きていたかはわからないが、W17に加え試作型のゼストまで投入したのだ。
奴に関してはもう考える必要はないだろう。
そして万が一ヘルモーズとアースクレイドルを失った時のための保険として用意しておいた整備施設、そこを当面の拠点としたのだが…
まさかマサキとディス・アストラナガンがいきなり出くわすとは。
慌てて介入し、なんとかディス・アストラナガンの破壊は防げたものの、随分と予定が狂ってしまった。
急がねばならない。
フィールドは間もなく崩壊する。
それまでにディス・レヴを確保し、ゼストを完全なものに…
とそこまで
考えたとき、アースクレイドルの上方に熱源を捉えた。
「あれは…ブライガーか。フン、人形の分際で私に牙を剥くとはな」
クォヴレー・ゴードン。
自らの写し身たるイングラムの、そのさらに写し身の存在。
イングラム亡き今、面白い駒ではあったのだが…
「もう遊びの時間は終わりだ。消えてもらおう」
告げる。
最後の言葉くらいは聞いてやろうと待っていると。
「遊びの時間は終わりだと?ふん、そんな余裕はないだけだろう」
聞こえてきた言葉はクォヴレーではなかった。
たしか、イキマ。邪魔大王国とかいう古代の国の民族。
特にこれといった能力もない、ただの参加者。
だが問題は奴ではない。
奴がブライガーに乗っているということは、ディス・アストラナガンに乗っているのはクォヴレーだということ。
まさかとは思うが万一記憶を取り戻されては面倒だ。
木原マサキ以上の脅威となり得る。
保険としてクォヴレーが乗っただけでは記憶は戻らないようにしてある。
奴と融合していたイングラムを引き剥がし、ディス・レヴに封じ込めた。
つまりクォヴレーだけではディス・レヴに干渉することはできないのだ。
「まあ、急ぐに越したことはないな。どけッ!」
苛立ちとともにクロスマッシャーを放つが、軌道を読まれていたのか避けられた。
「どうした?狙いが甘いぞ!」
ソニックビームが放たれる。
だが避けるまでもない、歪曲フィールドに弾かれる。
「これならどうだ!」
今度は胸部から高圧縮されたビームを放ってくる。
これはさすがにフィールドでは防げず回避行動を取る。
「もらったぞ、ユーゼス!」
回避した先には猛回転するブーメランがあった。
これを狙って、回避を誘導したということか。
「調子に乗るな、サンプルごときがッ!」
CPS起動。
因果律を書き換え、ブーメランを消失させる。
「何…うおッ!?」
避けられると思わなかったのか、動きの止まったブライガーに向けてクロスマッシャーを撃ち込む。
撃破までは至らなかったが、距離は開いた。
その隙にアースクレイドルへと向かう。
もう少しで通路に入るというところで、機体を左に加速。
閃光が傍らを駆け抜ける。
ブライカノン、惑星をも撃ち砕く一撃。
もちろん威力は制限しているが、受ければ危険であることに変わりはない。
「やれやれ…そんなに死に急ぐのかね?」
うんざりと言うユーゼス。
勝てないとはわかっているはずだが。
「行かせはせんぞ…!クォヴレーのところにはな!」
「ふん、見上げた心意気だ。だがな!」
機体を加速、敵機に肉薄する。
腕のないブライガーでは接近戦に対応できない。
剣を振りかぶり、叩きつける。
「く…ぐあぁッ!」
とっさにもう片方のブーメランを射出し、剣を受け止めようとする。
だが勢いに乗ったディバインアームはブライブーメランを切り裂き、ブライガーを吹き飛ばす。
地上に倒れたブライガーを踏みつける。
後回しにしようと思ったが、気が変わった。
こいつはここで殺そう。
引き金に指をかけ、囁く。
「さて、最後に何か言いたいことはあるかね?」
答えるとも思わなかったが、一応聞いておく。
「…では一つ忠告だ、ユーゼス・ゴッツォ」
荒い息をつきながらもしっかりした声音だ。
まだ諦めていないのか、この状況で?
「ほう、何だ。言ってみろ」
興味が湧き、聞いてみる
どうせイキマの運命は変わらないのだ、それくらいは許してやってもいい。
「…相手が勝ち誇ったとき、そいつはすでに敗北している。邪魔大王国に伝わる格言だ」
「………く、くははははははははッ!この状況で言うことがそれか!どうすればこの状況を覆せると言うのだ!?おめでたいやつめ!」
「フン、何とでも言え。お前は今にこの余裕を後悔することになる」
「覚えておこう。では、さらばだ」
クロスマッシャーのチャージを開始。ブライガーを破壊できる充分なエネルギーが集まる。
「死ね」
引き金を引こうとした瞬間―――――――――――――――――――――
黒い何かが、閃いた。
「!!なんだ、何が起こった!」
機体に衝撃。
左腕が爆発したようだ。
クロスマッシャーをチャージしていたため、そこに攻撃を受けて暴発したのだろう。
急上昇し、索敵を開始。
木原マサキか?いや、グランゾンの消耗は深い。
もうこの戦闘に介入する理由もないだろう。だったら第三者か?いや、このエリアにいるのは自分とイキマ、クォヴレーだけのはず…!
動体反応を感知。モニターに映っていたのは――――。
「ガンスレイヴ、だと!?」
黒い翼を持った蝙蝠。ディス・アストラナガンの備える自立兵装だ。
これがここにあるということは――――
アラートが響く。地下に凄まじいエネルギーの発生を感知。
「この反応は、ディス・レヴか…!?まさか、なぜ起動している!?」
□
(俺は…生きるッ!!)
イキマがユーゼスと戦闘を開始する、その少し前。
クォヴレーもまた、決断を下していた。
(俺は犯した罪は消えない。償う方法も知らない。…なら、その方法を探す。償えることではないのかもしれない)
一度決意すれば、言葉は考えるまでもなく形になった。
(だがそれでも諦める訳にはいかない。俺は…生きて、その答えを探し続けたい)
生きて、ユーゼスを倒す。
その後もずっと生き続ける。
いつでも、いつまでも、死に抗い続ける…!
(たとえ作られた命でも…俺は自分の信じられる道を歩いていきたいんだ)
(いいんだな?)
確認するように問うイングラム。
(生きるということは虚空の使者の運命を受け入れること。たとえここを生き延びても、お前にはともに生きる友はいない。永遠に孤独の中で生きることになるぞ)
(構わない。いいや、たとえ傍にいないとしても、俺がトウマやアラド達のことを忘れなければ俺達が仲間であることに変わりはない。その確信がある限り…俺は生きていける)
決意は揺るがない。心なしか、死者たちもみな笑っているような気がする。
(そうか…。ならば与えよう、お前の記憶を。虚空の使者の使命を)
答えるイングラムもどこか満足したような表情だ。
イングラムの輪郭がぼやけ、拡散する。
同時に死者たちも消え、世界は光に満たされる。
そして脳裏に流れ込んでくる情報の洪水。
αナンバーズ、SRXチーム、バルマー帝国、キャリコ・マクレディ、イルイ、霊帝ルアフ。
アルマナ・ティクヴァー、バラン・ドバン、ルリア・カイツ。
ガンエデン、ケイサル・エフェス、アカシックレコード、アポカリュプシス。
ベルグバウ、ディス・レヴ、そしてアラド・バランガとゼオラ・シュバイツァー。
(これが…俺の記憶。俺の生きた証。俺の…仲間たち)
かけがえのない、大切な仲間たち。
(すまない、アラド、ゼオラ。本当なら俺がお前たちを守らなければならなかったのに…)
彼らは失われてしまった。
自分の知る彼らではない、そうだとしてもアラドとゼオラなのだ。
なのに虚空の使者としてユーゼスの暴挙を止められず、利用されてすらいた。
結果、彼らの他にも多くの命が失われた。
トウマ、リュウセイ、セレーナ、ジョシュア、
リョウト。
会うこともなかった多くの命。
悔やむ気持ちはある。
だが――――――
(すまない。今俺がすべきことは、イキマを助け、生き残った参加者と合流し、ユーゼスを倒すことだ。責めはあとでいくらでも受けよう…)
白む視界の中、見えたのはアラド、ゼオラ、トウマ、そしてヴィンデル。
彼らは微笑んでいた。
(あの仮面野郎に一発バーンとかましてやってくれよ、クォヴレー!)
(気をつけてね。あなたまでこっちに来ちゃダメよ?)
(俺の代わりにあの仮面に熱い闘志を叩きつけてくれよな!)
(死ぬなよ、クォヴレー。そして、ミオを頼んだ。必ずや、この狂った闘争の世界を破壊するのだ!)
彼らの声が聞こえた。
自分を受け入れてくれた者たち。
彼らの意思を受け取ったクォヴレーにもはや迷いはない。
(ああ。行ってくる…、戦いを終わらせる。俺と、アストラナガンが!)
そして、決意とともに鍵となる言葉を宣言する。
「テトラクテュス・グラマトン…!」
□
アースクレイドル地下。
四肢を失ったディス・アストラナガンに変化が起きる。
この場所をたゆたう負の意志が流れ込んでいるのだ。
ディス・レヴは輝きを放ち、やがてドーム全体を照らすほどになる。
(だが、まだだ…まだ足りん。再生し、全能力を解放するには、エネルギーが足りない…)
記憶をクォヴレーに渡したイングラムは、次にディス・アストラナガンの再生を行っていた。
だが、四肢の欠損というダメージを修復することは簡単ではない。
(なにか…そう、俺とクォヴレーが出会った時のように、触媒があれば…)
だが近くにあるのは大破した無人機の残骸のみ。
これでは吸収したところでエネルギーにはならない。
手詰まりか…そう思った時、目に映ったものは。
(あれは…トロニウムエンジンか?何故ここに…?)
自らも多少関わりのあるヒュッケバインMk-Ⅲ、グルンガスト参式に搭載されているはずの機関。
このゲームにあの二機も支給されていたのか?
(…理由はどうあれここにあるか。なら、使わせてもらうのみ)
翼を広げ、トロニウムエンジンのところまで移動し、取り込む。
このエネルギーなら、機体は直に再生するだろう。
ディス・アストラナガンを暗い輝きが包む。
さながら繭のように。
(アストラナガン。俺と、お前の力…。だが、ここから先はお前が運命を斬り開くんだ)
あとはクォヴレーが目覚めるのを待つのみ。
彼が目覚めれば…
(俺の役目も終わり、か。やれることはやった。悔いはない…、)
本当にそうだろうか?
いや、もう一つやり残したことがあった。
誰でもない自分こそがやらねばならないこと。
それは―――――――
(ユーゼス。あの男に一矢報いねば、な)
今はイキマが抑えてくれているが、今のブライガーではそう長くは持たないだろう。
ここはもう自分がいなくても大丈夫だ。
ならば。
(待っていろ。今、貴様の喉笛に牙を突き立ててやる…!)
ガンスレイヴを一機、再生させる。
かつてガンファミリアに自分の疑似人格をコピーした要領で意識を移す。
(クォヴレー。俺の写し身。だがお前は俺ではない。お前の命、お前だけの戦いのために使え。道はお前の前に開かれている…)
そう想いを残し、地上へと急ぐ。
彼にとってもまた、イキマはかけがえのない仲間なのだから。
□
(残念だったな、ユーゼス。虚空の使者は転生を果たした)
「貴様…イングラム!なぜ貴様がそこにいる!?」
(シュウ・シラカワと同じだ。アストラナガンは俺の半身も同然、憑依は容易い)
飛びまわるガンスレイヴから思念が届く。
自らのコピーにして宿敵。彼が最も恐れる男。
「転生、だと!?」
(貴様がクォヴレーから奪った記憶、このゲームの目的。奴は全てを受け入れ、覚悟を決めた。虚空の使者として貴様を全ての次元から消し去るという、な)
「人形ごときが…!私を裁くというのか!?笑わせるな!」
そう、再生したのなら全て取り込むだけだ。
それによりゼストはさらに完全体に近づく―――!
(できるかな?敵はクォヴレーだけではないぞ)
「なんだと…ッ!?」
制御AIによる緊急回避。
眼下から砲撃。
ブライガー、あの死に損ないか。
(イキマだけではない。フォルカ・アルバーグ。彼もまた、貴様を止める意思を持つ者だ)
「フォルカ…だと!?まだ生きているというのか!」
(その通りだ。そう、お前がかつて求めた光の巨人の助力によってな)
イングラムの声に偽りの響きは感じられない。
光の巨人。
人知を超えた全能の力を持ちながらも、偽善の意志でその力を真の平和のために使おうとしない者たち。
完全に消滅したはずの修羅王がヘルモーズ内に転移したのは奴らの仕業か。
(またか…!また私の邪魔をするのか!またもその青臭い正義とやらで私の前に立ち塞がるのか!――――ならば、いいだろう。立ち塞がるなら今度こそ貴様らを撃ち砕いて見せよう!)
そのために、まずは。
「敵はここで、一人でも減らしておかねばなぁッ!」
ブライガーに向けて右腕のクロスマッシャーを発射する。
ブライガーは動けないだろうし、ガンスレイヴに阻むことはできない。
今度こそイキマを殺した――――そう確信した瞬間。
(ユーゼス、貴様は多くの命を弄び、神を気取った。だが)
イングラムの声は不気味なほどに落ち着いている。
その声が聞こえるのとほぼ同時に、地下から何かが飛び出した。
その何かがバリアを展開、クロスマッシャーを受け止める
あれは―――
(規格外の存在が集い、死の「運命」に抗い始めた今。はたして貴様は、滅びずにいられるかな―――――――?)
もはやイングラムの声に意識を向ける余裕もない。
黒い翼、長大な鎌、悪魔のようなフォルム。
銃神の心臓を宿し、悪魔王の名を冠した並行世界の番人。
「ディス・アストラナガン…!」
□
クォヴレーが
目覚めたとき、そこは見慣れたコクピットだった。
そう、ともに銀河を、並行世界を駆け抜けた己が愛機。
完全な姿を取り戻し、ディス・レヴもかつてないほど安定している。
「…待たせたな、アストラナガン」
呟き、操縦桿に触れる。
ふと違和感を覚え、首元に手をやる。首輪がない。
「お前にいったん取り込まれたから、か?」
当然答えは返ってこないが、おそらくそうなのだろう。
これで己を縛る鎖は全て断ち切れた。
今自分がここにいられるのは心を繋いだ友の、仲間のおかげだ。ならば――――――
「ユーゼス・ゴッツォ、木原マサキ。奴らを倒し、仲間を守る。そう、それを成し遂げるのも――――」
翼を広げる。
ZOサイズをその手に携える。
もう死者たちの声は聞こえない、だがともにいるという確信がある。
俺は一人ではない―――――
「この俺だッ!」
叫んだ勢いのまま、一気に地上へと飛び立った。
□
「クォヴレー…なのか?」
ユーゼスより放たれた光弾。
どうやっても防ぐ手は考えられず、覚悟を決めた瞬間この機体は現れた。
悪魔とよぶに相応しき姿、だがどこか気高くもある。
「無事か、イキマ」
通信が入る。
やはりクォヴレーだ。
だが先ほどまでとはまるで別人のような印象を受ける、どころか髪の色まで変わっている。
銀色が鮮やかな青に。
「クォヴレーなのか。その機体、その髪…いや、記憶がもどったのか!?」
「ああ。今まで済まなかったな。ここからは俺に任せてくれ」
落ち着いた声で言い放ち、ユーゼスの元に飛翔していく。
あの様子ではたしかに任せてもよさそうだ。
彼と入れ替わるように一機の蝙蝠のような小型機が降下してくる
(遅くなってすまないな、イキマ…よく生きていてくれた)
イングラムの声が聞こえる。そうか、この小型機はやつか。
「構わんさ…あんたも約束を守ってくれたようだしな」
(フッ…そうだな。これで俺の役目も終わりだ…)
「なんだと?どういう意味だ、イングラム?」
(俺の魂はもう消える…クォヴレーに俺のすべてを引き渡した、その代償にな)
「なんだと…!待て、お前にはまだ聞きたいことが…!」
(俺の知識はすべてクォヴレーが引き継いだ。やつに聞け…)
「そういう問題ではない!勝手に消えるなと言っている!」
(すまないな…死ぬなよ、イキマ…俺の…仲・・・間・・・・・)
何かが消えるような感触、ガンスレイヴが地に落ちる。
…声はもう、聞こえない。
「…イングラム。お前のことは忘れんぞ」
また一人仲間を失った。
だが、これで最後だ。
もうユーゼスに、マサキに、奪わせはしない。
決意も新たに空を見上げ、呟く。
「そうだろう、クォヴレー…!」
今そこで戦っている、仲間に向けて。
【イキマ 搭乗機体: ブライガー(銀河旋風ブライガー)
パイロット状況:戦闘でのダメージあり(応急手当済み)
マサキを警戒。ゲームが終わっていないと判断
機体状況:全身の装甲に被弾。左腕部損失、右手首損失。ブライカノン装着。コズモワインダー損失。オイルで血塗れ。EN大消費、ブライブーメラン損失
現在位置:D-6
第一行動方針:クォヴレーとともにユーゼスを撃退する
第二行動方針:ミオ、フォルカらと合流する
最終行動方針:ゲームをどうにかして終わらせる
備考: 本来4人乗りのブライガーを単独で操縦するため、性能を100%引き出すのは困難。
主に攻撃面に支障。ブライシンクロンのタイムリミット、あと6時間前後
デビルガンダム関係の意識はミオとの遭遇で一新されました。
空間操作装置の存在を認識。D-3、E-7の地下に設置されていると推測
C-4、C-7の地下通路、及び蒼い渦を認識。空間操作装置と関係があると推測
ブライソードはD-6エリアに放置】
【イングラム 消滅】
□
木原マサキはC-7の市街地に撤退していた。
クォヴレーとの戦いで消耗したグランゾンでは、ユーゼスの撃退は難しいと判断したためだ。
それにあの場所で奴を殺しては面白くない。
奴の切り札、ゼスト。
それごと粉砕してこその勝利というものだろう。
補給ポイントに到着し、補給の完了を待っていると、D-6から凄まじいエネルギーを感知した。
ヴァルシオンではない。
あの機体にここまでのエネルギーは放出できない。ならば―――?
「ディス・アストラナガンとやらか」
あの女から渡された情報、あの場に残っていたクズども。
総合して考えれば、クォヴレーが乗ったのだろう。
本来の乗り手の手に渡ったということだ、このグランゾンに匹敵する機体が。
それでもなおマサキから余裕の色が消えることはない。
どのような状況であれ、クズに負けるなどということはあり得ないからだ。
「ククク…面白くなってきたな。最終章の幕開けといったところか、ユーゼス?」
そう、この宴の終焉は近い。
そして最後に嗤うのは――――――
「この俺、冥王木原マサキだ――――――――――――――!」
【木原マサキ 搭乗機体:グランゾン(スーパーロボット大戦OG)
機体状況:内部機器類、(レーダーやバリアなど)に加え通信機も異常。照準のズレ修正済み(精密射撃に僅かな支障)。
右腕に損傷、左足の動きが悪い。グラビトロンカノン残弾2/2
シュウの魂とカバラシステムを併用することで一度だけネオグランゾンの力を使うことができます。
パイロット状態:激しい怒り、疲労、睡眠不足 、胸部と左腕打撲 、右腕出血(操縦には支障なし)
現在位置:C-7 市街地北端
第一行動方針:ユーゼスを殺す。そのために奴の保険を全て暴く手段を考える。邪魔をするクズも利用して殺す
最終行動方針:ユーゼスを殺す
備考:グランゾンのブラックボックスを解析(特異点についてはまだ把握していません)。
首輪を取り外しました。
首輪3つ保有。首輪100%解析済み。 クォヴレーの失われた記憶に興味を抱いています。
機体と首輪のGPS機能が念動力によって作動していると知りました。ダイダルゲートの仕組みを知りました。
ユーゼスの目的を知りました。】
□
「ユーゼス・ゴッツォ!貴様の企みもここまでだ!」
ZOサイズを展開、ヴァルシオンに斬りかかる。
剣で受け止められる、だが。
「ぬ、ぬおおッ!?」
斬りかかった勢いのまま、突き飛ばす。
サイズで言えば二倍以上違う差があるが、今のディス・アストラナガンはその差をものともしないパワーを発揮していた。
体の奥底から力が噴き上がってくるのを感じる。
自分だけではない、アストラナガンにも。
ダイダルゲートから漏れた負の意志、そしてトロニウムエンジンを吸収したディス・アストラナガンはその性能を完全に回復していた。
ディス・レヴのかつてない安定。
クォヴレーはそこに仲間の想いを感じる。
(いっしょに戦ってくれているのか…お前たちも)
この機体と、自分。
そして仲間の意志。
恐れることなど何一つない…!
「おおおッ!」
再び斬りかかるがまたも受け止められる。
だがそれは予測の範疇。
剣を弾き、柄を回転させる。
現れる砲門。
「エンゲージ…!」
ZOサイズと一体化している複合武器、ラアム・ショットガン。
接近戦の最中に放たれる砲弾だ。
フィールドが間に合うはずもない。
「ぐおぉ…ッ!」
ヴァルシオンが吹き飛んだ。
至近距離から放たれた散弾はヴァルシオンの胸部にあやまたず直撃した。
「この…人形がッ!」
「そうだ、俺は作られた命だ。だがそれがどうした!?」
今の自分は一人ではない。その程度の言葉に揺らぎはしない。
「ガンスレイヴ、シュート!」
射出されたガンスレイヴがヴァルシオンを包囲し、四方から攻撃を加える。
「小賢しい…!メガ・グラビトン・ウェーブッ!!」
解放された重力波がガンスレイヴを撃ち砕く。
だがクォヴレーに焦りはない。
先ほどのマサキとの戦闘でもそうだった。
包囲攻撃をする意義、それは相手をその場に釘づけにできること!
そしてグランゾンと違い、ディス・アストラナガンはガンスレイヴを射出した後自由に動くことができる。
つまりユーゼスがガンスレイヴに対応している隙に―――――
「ゲマトリア修正…数秘予測」
チャージは完了している!
「メス・アッシャー!マキシマムシュート!!」
叫びとともに解き放たれたエネルギーの奔流。
その向かう先は、ユーゼスの駆るヴァルシオン―――!
「な――――――――――ッ!!」
爆音が声を遮って轟き、粉塵が視界を覆う。
直撃した確信はあったが、クォヴレーは油断せず敵の対応を待った。
この程度で仕留められるほど容易い相手ではない。
やがて風が吹き込み、煙を払う。
そこにいたヴァルシオンは下半身がほぼ消失していた。
「―――――――やって、くれたな…!」
苦々しげな声。
さすがに今の一撃は堪えたのだろう、取り繕う余裕もないようだ。
「ここまでだ、ユーゼス。もう諦めろ」
告げる。
もはやあの機体に戦闘能力はないだろう。
だからと言って見逃すつもりもないが。
「諦める…?ハハ、ハハハハハハッ!まだだ、まだだぞクォヴレー・ゴードン!そしてイングラム・プリスケン!」
タガが外れたような哄笑が響く。
まだ隠しているカードがあるのか?
身構えるクォヴレーにユーゼスが放った言葉は、驚くに足るものだった。
「この場は退かせてもらおう。なに、またすぐ相まみえるさ」
重力震を感知。転移する気か?
「逃がすか…ッ!」
追いすがろうと機体を加速させようとする。
だが、
「このフィールドは間もなく崩壊する」
ユーゼスの一言がその手を止める。
「何?ここが崩壊するだと!?」
「そうだ。ここから逃れる手段はただ一つ、君の乗るその機体だけだ」
「何故それを俺に教える。お前に何のメリットがある?」
なに、私もその機体がなければここから脱出できんというだけさ。つまり是が非でもその機体を手に入れねばならん」
「なら尚更、何故逃げる。この場で決着をつけてやるぞ」
「そうしたいが機体がこの状態ではな。私は死ぬつもりはない、勝てる状況でなければ戦わんさ」
つまり隠し持っているカードはそれこそ大物なのだろう。
それこそ今の自分すら圧倒できるほどに。
「E-7エリアだ。私はそこにいる。すぐに来たまえよ?この世界は、せいぜい保ってあと6時間というところだ」
本拠の場所を教える。確実に罠だろう。
だが相手もこの機体を必要とする以上、俺に自分だけ逃げられては困るということか。
「…いいだろう。あと6時間以内に必ず、E-7エリアへと向かおう。そこで最後の決着をつける」
「楽しみにしているよ、クォヴレー・ゴードン。ではさらばだ」
ヴァルシオンが消失する。
E-7、やつはそこにいる。そこが終幕の場所。
今すぐにでも向かいたいが、地上にはイキマがいる。
それに、ミオ・サスガ。
ヴィンデルから頼まれた少女。彼女とも合流せねばならない。
ラミアという女、シロッコ。
彼らにも接触しなければならないだろう。
かつて殺すと誓った相手、だが今考えてみれば本当にそうしなければならないのか、わからなくなった。
木原マサキは完全な黒、排除することに躊躇いはない。
だがジョーカーであるあの女、不可解な行動をしたシロッコ。
彼らは本当に敵なのか。
彼らと接触したときの自分の精神は正常な状態ではなかった。
だからこそ初対面のヴィンデルをああも憎むことができたのだろう。
見極めなければならない。
もう二度と過ちを犯さないためにも。
思考をまとめつつ、地上へと降り立つ。
色々話すことがある、イキマとは。
(見ていてくれ、みんな。俺の戦いを。俺が生きている証を)
―――――――――虚空の使者、ここに転生を果たす。
【クォヴレー・ゴードン 搭乗機体:ディス・アストラナガン(第三次スーパーロボット大戦α)
パイロット状態:正常。記憶を取り戻した。イングラムを完全に取り込んだため青髪化。
機体状況:完全に再生。EN小消費。ガンスレイヴ数機損失、再生中。
現在位置: D―6
第一行動方針:イキマと情報交換
第二行動指針:ミオと合流、謝罪する
第三行動方針:マサキの排除
最終行動方針:E-7にてユーゼスと決着を着ける。その後生き残った参加者とともにこの空間から脱出する
備考: トロニウムエンジンを取り込みました。(機体性能などに変化なし)
マサキを敵視。シロッコ、ラミアについては保留。
イングラムの消滅は薄々気づいている
空間操作装置の存在を認識。E-7の地下に設置されていると確信
C-4、C-7の地下通路、及び蒼い渦を認識。空間操作装置と関係があると推測
ラミア・ラヴレスがジョーカーであることを認識
あと6時間ほどでフィールドが崩壊することを知りました】
□
E-7にある地下施設にユーゼスは転移してきた。
半壊した状態で無茶な転移を行った代償か、ヴァルシオンは沈黙した。
もう使えないだろう。
ここにある機体は空間操作装置の防衛用として配置していたゴラー・ゴレム隊の量産機ヴァルク・ベンが10機ほど。
それに支給機体の選に漏れた機体を何機か放置していたはずだ。
機体は充分、だがパイロットがいない。
ヘルモーズが落ちた際、所有していたバルシェムも全滅したようだ。
おそらくW17も破壊されたろう。自由に使える手駒はもうないという訳だ。
状況は絶望的。
数時間もすれば生き残った参加者が群れを成して殺到するだろう。
だがそれがいい。
どのみち今のままでは完全なゼストは望むべくもない。
だが、力を取り戻したディス・アストラナガン、特異点を内包するグランゾン。
そして光の巨人の力を得たというフォルカ・アルバーグを取り込めば、ゼストは計画通り、いやそれ以上の進化を果たすことができるはず…だ。
そうだ、まだ終わったわけではない。
完全ではないとはいえゼストの力は想像を絶する。
ジュデッカやヴァルシオンなど玩具のようなものだ。
その力を持ってすれば木原マサキ、虚空の使者、修羅王などものの数ではない。
ゼストが戦闘を行える状態にすべく、調整槽へと急ぐ。
すぐ背後に迫った破滅の足音。
ユーゼスはそれに気づかないふりをし、虚勢とも言える盲信を抱く。
「ゼストさえあれば…!そうだ、全能の調停者、ゼストさえ…!」
【ユーゼス・ゴッツォ 搭乗機体:なし
パイロット状況:激しい怒り、焦燥、やや現実逃避気味
機体状況:なし
現在位置:E-7地下基地
第一行動方針:参加者たちを待ち受け、ゼストで蹂躙し、取り込む
最終行動方針:ゼストの完成
備考 基地内には空間操作装置がある
ヴァルシオンは半壊、戦闘は不可能。
基地内にはヴァルク・ベンが10機(無人機)配置
支給されなかった機体が何機か放置されている】
【三日目 11:00 あと6時間ほどでフィールドは崩壊します】
最終更新:2008年06月17日 07:25