それぞれの思惑
湖から街へと下るハイウェイを、一台のバイクが走っていた。
ワルキューレ――北欧の戦女神の名を冠した、赤い車体に跨っているのは一人の青年だった。
青年の名はトウマ・カノウ。
ダイナミック・ライトニング・オーバー
…通称、大雷凰に乗り地球の、いや、銀河を守る為に戦った男である。
彼らの、命をかけた戦いにより、銀河に平和が訪れた・・・はずであった。
(それなのに…ユーゼス=ゴッツォとかいう、腐れ外道め!)
トウマは心の中で、ユーゼスに飛び蹴りを入れた。
(…じゃなくて、これからの事だよな)
…ゴッツォの名には聞き覚えがあった。
ゼ・バルマリィー帝国のシヴァー=ゴッツォ。
(多分、奴はバルマーの元関係者だ)
「だとすれば…アルマナを探したほうがいいな」
トウマは星を越えた友人の姿を思い浮かべる。
「それに…彼女を一人にするわけにもいかないからな」
そう呟いて、トウマは速度を加速する。
しばらくして、その目前に橋が見えてきた。
(今はとりあえず、あれを越えて街に向かうか)
そんな事を考えていたので…トウマはすぐ間近に迫る危機に、気づいていなかった。
突如、日の光が遮られる。
何事かと顔を上げたトウマの目に、真っ赤なバルキリーが映った。
「・・・戦闘機、か?」
その赤い機体は上空を軽やかに旋回すると…こちらに向けてミサイルを発射した。
「糞ッ!本気かよ!」
慌てて車体を草原に躍らせる。数瞬後、背後からまばゆい閃光と爆発音が響いた。
「伊達で、蕎麦屋のバイトを経験したわけじゃないからな!」
そう叫びつつ、車体に加速をかける。その後方から複数のミサイルが飛来していた。
爆音と熱。周囲に落ちるミサイルには構わず、トウマは目前に見える森へと突っ込む。
「畜生!問答無用で殺そうとするなんて・・・糞ッ!」
トウマは見えざる殺戮者に怒りを覚えつつ、森の奥へと潜っていった。
「どうやら、見失ってしまったようですね・・・」
赤いバルキリーのコクピットで、シュウ・シラカワは独りごちていた。
ギターを使って機体を動かすという、
エキセントリックな操縦方法も難なく会得したシュウは、
自分以外の者をすべて排除すべく、行動を開始していた。
(まあ、あれは放っておいていいでしょう)
シュウは森の上を旋回すると、新たな獲物を探すためにその場を離れた。
(参加者全員を排除し、優勝する・・・ですか)
「まあ、このファイアーバルキリーをもってすれば、造作も無いことです」
そう呟きながら、シュウは不敵な笑みを浮かべた。
(ですが、この私を利用しようとしたからには、
ユーゼス=ゴッツォにも、それ相応の代価を支払っていただきましょうか・・・)
【トウマ・カノウ 搭乗機体:ワルキューレ(GEAR戦士 電童)
現在位置:C-5にある、森の中に潜伏中
第一行動方針:街へ向かい、役に立ちそうな物を探す(食料など)
第二行動方針:アルマナをみつけ、保護する
最終行動方針:ユーゼスを倒す】
【シュウ・シラカワ 搭乗機体:VF-19改 ファイアーバルキリー (マクロス7)
現在位置:C-5から移動中
第一行動方針:参加者の排除
最終行動方針:優勝する。ユーゼスを倒す】
最終更新:2008年06月02日 21:03