初めての「死」
「・・・こりゃ驚いたぜ。どっかのお嬢ちゃんじゃねぇか」
イサムがそう形容したのも無理がない。まるで透き通るような白い髪と肌。綺麗だがどこか鋭い金色目。
しかし見かけに反して出てきた言葉は
「私お嬢ちゃんじゃありません、少女です」
結構キツイ言葉だった。
それからしばらく信頼してもらえるよう必死に説得を試みるイサム。しかし中々ルリは応じない。
「こうなりゃしかたねぇ!」
そう言ってエンジンを切りコクピットから降りてしまう。しかも
「この通り丸腰だ!ゲームに乗る気はねぇ!」と言いながら手を上げてしまっている
もしルリがゲームに乗っていれば間違いなく死んでいるだろう。
だが・・・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・・・・・分かりました」
機体を得るために機体を汚さず手にしたいとしても、流石にこれはやりすぎだろう。
幾らなんでもこれは殺すには不合理すぎる。少しイサムを信頼したルリは彼とはやや離れた場所にワイヤーを降ろした。
何か不信なそぶりを見せたらすぐにコクピットに戻れるようにはなっているが、イサム向き合う。
「どうにか信用してくれたみてぇだな。」
「少しですが」
ストレートなキツイ言葉が即答で返ってくる。なんだか空気が重い。少し困るイサム。
少し考えた挙句出た言葉は
「俺の名前はイサム・ダイソン。お嬢ちゃんは?」
「ホシノ・ルリです。あと私お嬢ちゃんじゃありません、少女です」
「・・・・・・・」
とまぁこんな感じでどうにかコミュニケーションをとる2人
一方その頃・・・・・・・
「前方遠距離ニ機動兵器ノ反応2。戦闘ハ確認デキズ」
「ほう・・・以前の戦闘の可能性はどうだ?」
「周囲ニ熱源発生ノ可能性0。機体の損傷オヨビパイロット確認デキズ」
「ククッそうか。そいつらはゲームに乗ってないクズのようだな。しかも機体から降りているか・・・
最大速度で接近するぞ、レイ。何か確認されるたびに逐一報告しろ」
「READY」
しばらく素性に関して話していた2人。ルリが何かの接近に気付いた
「ダイソンさん。なにか近付いてます。」
そう言ってコクピットに戻るルリ
「なんだって!?」
イサムはコクピットにすぐ戻ろうとするがコクピットに戻るより早く蒼い機体は彼らの前に降り立つ。
急いでビーム砲をそちらに向けようとするルリ。しかし彼女が狙いを定め終わるより前に、
蒼い機体のコクピットが開く。そして、中から出てきたのは・・・・
「待ってくれ!!殺し合いをする気はないんだ!!」
気弱そうな高校生くらいの少年だった。
しばらくマサキに質問をぶつける2人。
「・・・・じゃあその機体の傷は襲われた時の傷なんだな?」
「ええ、そうです。赤い飛行機のような感じのロボットに襲われて・・・」
「その機体のことを詳しく教えてください」
「携帯型の機関銃と言うんでしょうか、それと曲がりながら追ってくるミサイル。
それに、バリアみたいなのを張って殴ってきました。あとは・・・・」
「で、そいつをまいて全速で逃げてきたんだな?」
「はい・・・」
彼が嘘をついているようには見えないと2人は考えた。
「んじゃ、さっきは挨拶が途中になってたな。俺はイサム・ダイソン」
「ホシノ・ルリです」
「僕は木原マサキです」
3人は、自分はどういう世界にいて、どういう経緯でここに飛ばされたかをお互い話した。
もっともマサキは全てが嘘だが・・・・・
(乗っている機体のデータが欲しいところだな)
マサキは話題を誘導するよう話し出した。
「あの・・・今からどうします?仲間を探すにしても襲われたらとても僕、戦えないですよ?」
「俺の知り合いに良く似た奴が最初の部屋にいた。とりあえずアキトってのとそいつを探そうぜ。
どう動こうにも仮面野郎の手の中ってのも腹が立つがな」
「でも、動かないとどうにもなりません」
「ダイソンさんは高速戦闘とかが得意なんですよね?」
そう言ってレイズナーのマニュアルを取り出す。切り札(V-MAX)はマニュアルにはのっていない
ため渡しても問題ないからである。マニュアルをペラペラとめくるイサム
「俺はこっちの方がいいかもな」
スカイグラスパーのほうを指差す。
「俺のD-3ってのは話し道理ならルリちゃんのほうが向いてるしな」
マニュアルを交換する2人。
「よし!」
マニュアルを閉じるイサム。
「ダイソンさん、もう覚えたんですか?」
「大体な、あとは実際に動かして覚えるってやつだ」
そう言ってイサムが乗り込もうとコクピットに身を乗り出しだしたときだった。
ポンと、本当に軽い音がした。
「「えっ」」
イサムからすれば、わけがわからなかった。突然首輪が爆発した。時間がゆっくりに見える。
視界を覆う赤い血。そして混濁し暗転していく意識・・・・・・ふとミュンとガルドの姿が浮かぶ。
(しゃあねぇ・・・・・・ガルド・・・・・ミュンのこと・・・・・・頼んだ・・・・・ぜ)
どさり。そして地面に血が広がっていく・・・・
ルリからも変わらないものだった。突然さっきまで元気に話していた人が死んだ。ヤマダ・ジロウのときも
戦場で戦っていた時も死人は出た。「死」を知っていると思っていた。でも知っているだけだった。こんなに近くで死を見たことはなかった。わけが分からなかった。足が、肩が震える。そしてそれが一瞬アキトと重なった。
「い、いや・・・」
日頃絶対にルリから聞けない直接的な恐怖の声が漏れる。少しだけ後ずさり、肩がマサキに当たる。
「マ、マサキさ」
首輪の上の辺りに強烈な一撃が加えられ、ルリの意識は刈り取られる。
さっきまでと一変し、邪悪な笑みを浮かべるマサキ
「ほぅ・・・・他人の機体に乗ると首輪が爆発するのか。しかし、使える駒が一人減ってしまったな」
まるでイサムの死をなんとも思わぬ様子、いや本当に何にも思ってないだろう。
彼から見れば命すら自分で造れる道具に過ぎないのだから。
「こちらはしっかり抑えなければな・・・」
足元のルリを見てマサキはそうつぶやいた・・・・・・・
【イサム・ダイソン 搭乗機体:ドラグナー3型(機甲戦記ドラグナー)
パイロット状況:死亡
機体状況:良好 】
【ホシノ・ルリ 搭乗機体:スカイグラスパー(機動戦士ガンダムSEED)
パイロット状況:気絶、混乱
機体状況:良好
現在位置:C-6
第一行動方針:アキトを探す
最終行動方針:アキトと共にゲームからの脱出】
【木原マサキ 搭乗機体:レイズナー/強化型(蒼き流星レイズナー)
パイロット状態:絶好調
機体状態:ほぼ損傷なし
現在位置:C-6
第1行動方針:使えるクズを集める
最終行動方針:ユーゼスを殺す】
15時00分
※乗り換え制限設定の見直しのため破棄、第85話「
合流へ」に改訂
前回 |
登場人物追跡 |
次回 |
第26話「無題」 |
イサム・ダイソン |
- |
第26話「無題」 |
ホシノ・ルリ |
- |
第66話「無題」 |
木原マサキ |
- |
最終更新:2009年02月15日 04:41