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残った力を振り絞ったものとはいえ、ボルテッカの破壊力は凄まじいものだった。
背中を支えてくれた機体の四肢が後ろに引きずられ作られた跡は、地面に50mは刻まれている。
だが、前方はもっと酷い。大地に一切の緑が消え、荒野に変わった大地が延々と続いていた。

「凄まじい威力だな。これが……一人の人間が出せる力なのか」
「恐ろしくは……ないのか?」
「何、似たような知り合いが何人かいる。仮面を被った、正義のな」

そう言って昔を懐かしむような顔になるギリアムと名乗った男。
だが、すぐに顔を引き締め、口を開いた。

「本当に来ないのか? 一人でこの世界を歩くのは、危険すぎる」
「ああ。いつ暴走するか分からない俺が、誰かの側にいるわけにはいかない」

この広大な世界だ。移動にもテックセットする必要があるかもしれない。
移動中、今回のように戦いに巻き込まれることもあるだろう。そうなった時に、暴走すればどうなるか分からない。
これ以上、自分が誰かを傷つけてしまわないように、タカヤは一人を選んだ。

「……そうか、決意は固いようだな。なら、もう敢えては言わない」

人を遠ざける意味をギリアムも知っているのか、あまり強くは引き止めなかった。
タカヤは、背を向け、荒野を歩き出す。一人、この殺し合いに乗るものを打ち倒すため。



【ギリアム・イェーガー エステバリスカスタム・アキト機(機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-)
 パイロット状況:良好
 機体状況:損傷軽微、EN消費(中) スクリューモジュール、メガ・プラズマカッター装備
 現在位置:E-6平原(東)
 第1行動方針: ……止めるのは無理か。
 第2行動方針:G-7施設で合流する
 第3行動方針:仲間を探す
 第4行動方針:首輪、ボソンジャンプについて調べる
 最終行動方針:バトルロワイアルの破壊、シャドウミラーの壊滅】







「ねーねー、どこいくの?」
「な……っ!?」

ガションガション、ガションガション。

音をたて、タカヤに近付いてきた犬型の機体。
ギリアムと話すとき、妙に大人しかったが、ギリアム側にいたからあちらに行くと思っていたのだが……。
テッカマンにテックセットしていなくとも、常人をはるかに超えた能力を持つ。
人間を投げ飛ばし、隔壁に穴をあけるくらいモロトフでもやるし、銃弾より早く走ることもできる。
タカヤはその脚力で引き離すために走り出すが―――

「ちょっとー! だからどこいくのー!」

犬のようにロボットは走ってついてくる。本当に犬型ロボットなのだから二重の意味でそのままだ。
しばらく走った後、ため息とともに後ろを振り向く。

「……俺といるのは危険だ。冗談で言っているわけじゃない。だから…「やだ!」…ないほうが――っと」

別の意味で痛くなる頭を抑え、タカヤはプルに言葉の限りを尽くす。
だが、やっぱり「えー?」とか「やだやだ」とか「なんで?」とかそんな回答ばかり。
いっそテックセットして一気に引き剥がすことも考えたが、そんなことをすればこの子が一人なってしまう。
一人、そこまで強力な機体に乗っているわけでもない少女を放り出すのも、考えものだ。
ギリアムの機体は、そこまで大きくなかった。このガイアガンダムとかいうロボットを引っ張っていくわけにはいかない。
つまり、この少女の自由意思を物理的に邪魔する方法がない。

しばらくは同行するしか、どうやらやりようはない。
諦観も混ぜてそう結論付けるタカヤ。ふと……思いついたことを少女に問う。

「……何故、俺と来るんだ?」
「うーん、なんとなく……ほっとけないから」

笑顔とともに出てきた言葉。
その笑顔に、どうしようもない後ろめたさをタカヤは覚えてしまう。

……プルという少女が、人と心で通じたことは二回しかない。
常人とはかけ離れた人生から、普通は人間が生活とともに増やしていく絆を持たない。
彼女があるのは、ニュータイプとしての感応能力で心に触れた二人だけ。
すなわち――ジュドーと、相羽タカヤ、その人だ。だからこそ、彼女は心に触れることのできた人間に強く興味を持つ。
実際、彼女が元の世界にいた場合、その後行きすぎた独占欲をジュドーに抱くようになった。
もっとも、そんな理由をプルに言語化することはできない。

だから――「なんとなく、気になるから」という形で帰結する。




「……分かった」

守るという言葉すら、口に出すのははばかられた。
だから、ただ了承の言葉を返す。プルは、タカヤの言葉に「やったー!」と嬌声をあげた。

「ほら、走るから乗って!」

開かれるコクピットは、あまりにも狭い。
タカヤは代わりに犬の姿をしたガイアガンダムの背中に飛び乗った。

「そこでいいの?」
「……ああ、ここでいい」

少女は太陽のような笑顔を。
青年はその影のような険しい表情を。
奇妙な二人組が進む。

【エルピー・プル 搭乗機体:ガイアガンダム(機動戦士ガンダムSEED DESTINY)
 パイロット状態:良好
 機体状態:多少の損壊。フェイズシフト装甲がダウン
 現在地:E-6平原
 第一行動方針:Dボゥイと一緒に行動する。
 最終行動方針:なんでもいいのでおうちに帰る(正直帰れれば何でもいい)
 備考:名簿は見てなく、ジュドーがこちらにいることに気づいてません】


【Dボゥイ 支給機体:なし
 パイロット状況:疲労(極大) ガイアガンダムの上に乗って移動中。
 機体状況:全身の装甲に傷や焦げ跡がある エネルギー空
 現在位置:C-6
 第1行動方針:この殺し合いをとめる
 第2行動方針:テッカマンは優先して殺す
 最終行動方針:ラダムを殲滅する
 備考:30分~1時間で原作のように暴走するようになっています】









パリン、と岩の下で何かが砕けた音がした。
次に起こったのは、空へ舞い上がる赤い竜巻。その中には、青い結晶がいくつも混じっている。
アルベルトには、古い親友にすら教えてない力がある。当然、組織の誰も知らない力。
それは、周囲の水分を一気に集め凝固させ、念動の力を持って固定する能力だ。
どんなセンサーですら内部を解明することのできないほど、何もかもをシャットアウトする絶対防壁。
青い鉄壁の氷のバリアと、赤い苛烈な熱風。この二つこそ、アルベルトを十傑集に押し上げた力。

ディバックから取り出した葉巻の煙をゆっくり、どこまでも深く肺にアルベルトは吸い込んだ。
アルベルトは、別段戦闘狂というわけではない。戦いの中で心躍る部分はあっても、戦いそれ自体に高揚はしない。
やはり、戦うたびに比べてしまう。国際警察九大天王――神行太保・戴宗と。奴と戦う時ほど高揚を感じることはない。
その理由が何故かはわからない。だが、確かにアルベルトは感じるのだ。戴宗と戦っているとき、それ以上ない充足を。
それに繋がるものが僅かばかりだが、ギリアムとテッカマンブレードからも感じた。
だからこそ二人を相手に遊びではなく戦いとして向かい合い、全力を出したのだ。
今はまんざら、悪い気分でもない。

「さて、行くとするか」

体が冷えて満足に実力も出せず、若造にいいように躍らされた不満も抜けたし、いい運動にもなった。
次は、どこに行こうか。やはり、服は欲しい。適当などこかの施設でも服程度ならあるだろうが……作業着は肌に合わん。
やはり、出来るならスーツがいい。ならば、向かうべきは街か。
休憩も兼ねてゆっくりと行こう。

アルベルトは腕を組んだまま、上半身を揺らすことなく常人の全力疾走よりも速い速度で――――本人曰くゆっくり進む。

青空は高く。
雲が流れる空に葉巻の煙は溶け込んでいった。


【衝撃のアルベルト 搭乗機体:なし
 パイロット状態:下着一枚しか着ていません。十傑集走り中。疲労(中)
 現在地:E-6平原(北)
 第1行動方針:街へ向かう。服が欲しい。
 第2行動方針:他の参加者及び静かなる中条の抹殺
 最終行動方針:シャドウミラーの壊滅
 備考:サニーとのテレパシーは途絶えています】


【1日目 14:00】


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093:take the wave Dボゥイ 099:『ククク・・・どうしたミスト?私が慰めてやろうか?』
093:take the wave エルピー・プル 099:『ククク・・・どうしたミスト?私が慰めてやろうか?』
093:take the wave 衝撃のアルベルト 100:俺だってロムさんと組めば対主催として活躍できるはずなんですよ猿渡さん!(前編)

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最終更新:2010年05月08日 06:12