暗黒大将軍VS鋼鉄神マジンガーZ ◆EIyzxZM666
「すごいや剣児さん!高校生でプロのレーサーだなんて!」
「そうか!?じゃあ俺のレース見に来いよ!家族友達みんなまとめて招待してやるぜ!!」
ボスボロットに乗った少年、ツワブキ・ダイヤは同行する少し上の年長者を褒め称える。
その隣で喜んでいる年上の少年の名は草薙剣児。今の乗機はマジンガーZ。
二人とも正義感の強い熱血漢な性格で年も比較的近く、出会った早々打ち解ける事が出来た。
最初に出会えた相手が心を許せるような人物であった事は、この惨劇の中での数少ない幸運だったといえるだろう。
特にダイヤは、凶悪な殺人者と出会っていたら、ボスボロットではなす術もなく殺されていたかもしれない。
「しっかし、こんなガキまで巻き込まれてるとはなあ……」
「そういう剣児さんもたいして歳変わらないじゃないか。」
「まあ、それは確かにそうなんだけども……」
出会って間もないため、二人とも若いながらも激戦を潜り抜けてきたパイロットである事はまだ話しておらず、殺し合いなどとは無縁の人生を歩んで来たであろう相手の事を互いに気づかいあっていた。
二人は現状を打開するべく、人が集まり設備の整ってそうな北東の施設群を目指していた。
「……剣児さん!?」
「ああ……気を付けろダイヤ。」
前方に無骨なデザインのロボットが見える。全員が自分達のように殺し合いを望まぬ人間であるとは限らず、注意して近づく。
だが目の前のロボットは膝をついた体勢のまま一向に動く気配がない。
「俺たちは向かってこなきゃ戦う気はねえ!誰もいねえのか!?返事をしろぅぃ!」
「……待って剣児さん!あのロボットの足元に誰か倒れてる!」
「何ィ!?」
「う………んんっ………」
見たところ10歳前後の少女のようだ。
気を失っているだけで命に別状はなさそうで、しばらくすれば気がつくだろう。
こんな所に無防備で放り出しておく訳にもいかず、少女をボスボロットの中まで運ぶ。
首輪がはめられている所をみると、この少女も参加者であるようだ。
例え女子供であろうとも勇敢に戦う戦士となれる事を、二人とも身をもって理解している。
だが、眼前で眠る少女にとても戦えるような力が備わっているようには到底思えなかった。
「まさかこんな女の子まで……」
「……ここでじっとしててもしょうがねえ。急ごう。」
「マジンガーZ!!貴様っ!兜甲児かぁっ!!」
二人がここを発とうとした瞬間、大きな叫びが轟いた。
声がするほうを振り向けば、頭部と胴体に二つの顔を持つ巨大な化け物が立っている。
手には剣を持ち、巨大なマントを纏っている。
「かぶとこうじぃ?知らなねえよそんなやつ。俺は草薙剣児ってんだ!てめえこそ邪魔大王国の一員か!?」
「我が名は暗黒大将軍!ミケーネ帝国7つの軍団を統べる者!!
マジンガーZ!宿敵剣鉄也の前に、まず貴様を血祭りに上げてくれるわ!!」
「おめえ、この殺し合いに乗っちまうのか?
どんな事情があるか俺にはわからねえけど、皆で協力すればそんな事しねえでもここから帰る方法があるはずだ!」
「人間どもとマジンガーは我らミケーネ帝国の敵!元より全てうち滅ぼすだけの話よ!
こんな馬鹿げた茶番に俺を巻き込んだ奴らも含めてな!!」
「ミケーネ帝国の暗黒大将軍ねえ……よくよく俺はこんな奴らと縁があるみてえだな……。
ダイヤ、お前先に行ってろ。俺がこいつの相手をしてやる。」
「そんな!?俺も一緒に戦うぜ!剣児さんだけ置いていくことなんて出来ない!!」
「馬鹿やろう!その子まで戦いに巻き込んじまうぞ!!
それにお前の乗ってるそのポンコツじゃ足手まといだ!第一、俺がそんなに信用ならねえか?」
「……わかったよ剣児さん。先に行ってこの子と待ってる。後から絶対来てくれよ?」
「おうっ!」
しぶしぶこの場に剣児を残していく事を承諾したダイヤ。
少女の機体に指示を出すべく、右腕に腕時計型コントローラーを自分の腕に着ける。
「こめん。少しだけ借りるよ。……俺の言う事がわかるか?俺の後についてきてくれ!」
ゴオオオオォォォォォォン!
ジャイアント・ロボが起動し、先を行くボスボロットの後に続いていく。
その場にはマジンガーZと暗黒大将軍だけが残される事になった。
【ツワブキ・ダイヤ 搭乗機体:ボスボロット(グレートマジンガー)
パイロット状態:良好
機体状況:良好(ボスボロット)
:良好(ジャイアント・ロボ)
現在位置:F-4北西部
第一行動指針:北東の施設群に向かい、少女を守りながら剣児を待つ
第二行動指針:北東の施設群で協力できる仲間と現状を打破する方法を探す
最終行動方針:皆で帰る
備考:現在コントローラーでジャイアント・ロボを操作中】
【イルイ(イルイ・ガンエデン) 搭乗機体:ボスボロット(グレートマジンガー)
パイロット状態:気絶中
現在位置:F-4北西部
第一行動指針:???
最終行動方針:???
備考:
支給機体はジャイアント・ロボ 第2次αゼンガールート終了後】
【一日目 6:30】
「あいつら見逃してくれてありがとうよ。」
「ふん、俺とマジンガーの戦いに余計な邪魔を入れられたくなかっただけだ。
それに、この俺が手を下すまでもなくあやつらが生き残れるとは思えんがな。」
「そいつはどうかな……?真っ先にやられちまうのはてめえの方なんじゃねえか?」
「ほざけぇっ!!」
「そんじゃあまあ、そろそろおっぱじめよぉかあぁぁっ!!」
戦いの火蓋が気って落とされた。互いに相手に向かって駆ける。
剣児はジーグでの戦いで培った経験を生かし、接近しての格闘戦に持ち込もうとする。
だが、暗黒大将軍にとっても自分の距離。
次々と拳を繰り出すも、暗黒大将軍の手にする剣によって阻まれなかなか有効打を与える事が出来ない。
むしろ剣によって切り刻まれ、少しずつ傷を増やしていくのはマジンガーZの方であった。
「ちぃえいっ!」
暗黒大将軍の剣が振り下ろされる。避けきる事が出来ず、ジェットスクランダーの片翼が切り落とされる。
振り下ろされた剣はそのまま大地にめり込み巨大な地割れを生み出す。
「カァッ!」
バックステップで下がるマジンガーZに対し、暗黒大将軍の目から破壊光線が発射される。
今度はからくも避けることに成功し、剣児は反撃に転ずる。
「くぅらえっ!ミサイルストォォォームッ!!」
マジンガーZの腹部から連続発射されたミサイルが暗黒大将軍を襲う。
ズガガガガァン!
全弾目標に命中し、爆発。が、しかし、
「効かぬわ。こんなもの。」
爆煙の中から五体満足な姿の暗黒大将軍が現れる。
TNT火薬100トン分の威力を持つというミサイル群は暗黒大将軍の纏うマントに防がれ、その身体に傷一つ付ける事が出来なかった。
「まだまだぁっ!」
ミサイルを撃ち終えた即座、すでに剣児は次の行動に移っていた。
暗黒大将軍に向かって疾走し、ジャンプ。マジンガーZの巨躯が空に舞い上がり、頂点に達した所で相手目掛けて急降下する。
「ダイナマイトキィィィックッ!!」
渾身の跳び蹴り。だが、ギィン!という鈍い音と軽い衝撃を与えたのみで、この攻撃も剣の腹で受け止められてしまう。
「むぅぅん!!」
暗黒大将軍がそのパワーで強引にマジンガーZを押し返す。
マジンガーZは少し体制を崩しながらも後方へ跳び、距離を取ったと同時に両腕を組み前に突き出す。
「ナックルボンバァァァーッ!!」
鋼鉄の拳が敵を貫かんと高速で飛んでいく。暗黒大将軍はこれを撃墜せんと剣を振るうも、
「なあんちゃって!」
「なっ!?」
剣が触れる直前、組まれた拳は構えを解き再び二つに分かれ、目標を失った剣は空を切る。
本来の姿に戻った鉄拳が暗黒大将軍の胸部を打つ。
「ぐふぅっ!」
暗黒大将軍はうめき声を上げよろめく。
両腕を元に収め、これを好機と剣児は更なる攻撃を加える。
「ルストハリケェェェーン!」
強力な酸を含んだ突風が暗黒大将軍に迫る。
「調子に乗るなぁぁぁぁっ!!」
暗黒大将軍の本来の得物であるダークサーベルは現在鞘に収められており、今手にしている剣の名はセレブレイド。
これは暗黒大将軍に支給された機体セレブレイダーのもう一つの姿である。
暗黒大将軍の巨大な身体では乗り込むことなど到底不可能であり、この形態で使用されている。
セレブレイダーはパートナーであるブレイドガイナーと合体する事で、動力源であるプラズマドライブからヘルスハリケーンという強力な竜巻を起こす事が可能である。
暗黒大将軍が叫びと共にセレブレイドに内蔵されたプラズマドライブがうねりを上げる。
豪快に振るわれた剣から巨大な竜巻が発生する。
そしてそれはルストハリケーンを一瞬で飲み込み、マジンガーZに襲い掛かる。
「ぐわぁぁぁぁっ!!」
荒れ狂う暴風によって、鉄の城と謳われるスーパーロボットが抗う事も出来ず吹き飛ばされ、無様に大地に叩きつけられる。
「うっ……ぐうぅっ……」
激しい衝撃に一瞬気を失ってしまっていた剣児。
全身が痛み、頭部からは出血。倒れ付すマジンガーZに追撃せんと暗黒大将軍が迫る。
「くっ……ドリルミサイルッ!」
身を起こしたマジンガーZの両腕が折り上げられ、多数の小型ミサイルが発射され――ない。
「何だ!どうした!動けっ!」
ルストハリケーンの強酸はマジンガーZ自身のボディをも蝕むほど強力なものである。
それを飲み込んだ巨大な嵐に全身をズタズタにされ、ドリルミサイルの発射機構は動作不良を起こしていた。
「だったら、光子力ビィィィームッ!」
「ふんっ!!」
マジンガーZと暗黒大将軍の両目から同時に放たれる破壊光線。
二つの光線がぶつかり合うも威力の差は歴然としており、一瞬で光子力ビームが押し戻され、爆発。
胸の放熱板と頭部の一部が吹き飛び、再び倒れるマジンガーZ。
キャノピーが破損し、ただでさえ目立つ所にあるコクピットが半ばむき出しの状態になる。
「もらったぁっ!」
止めを刺すべく、剣を構え走る暗黒大将軍。
……やべぇ……もう俺もマジンガーもぼろぼろだ……
…………あのやろう、もう勝った気でいやがる……
……このまま俺は死んじまうのか……?
―――――ふざけんな!!!
……俺は今度レースに出なきゃなんねえんだ………
………戦い続きで久々の復帰レースなんだよぉぉ!……
……あいつのバイクで走るんだ……
…鏡は、俺達を助けるため最後まで命を懸けて戦った!
こんなざまじゃあいつに合わせる顔がねえっ!!
……俺はあきらめねえ……
最後の最後まで全力で戦って、戦って、戦い抜いてやる!!
「死ねぇい!!」
暗黒大将軍の剣が振り下ろされる。
ギイイィィィィィン!!
「何っ!!」
それまで死に体であったはずのマジンガーZが、セレブレイドの刃を半ば食い込ませながらも斧状の刃のついた両腕で受けきる。
一時的に驚異的な力を発動させる出力増加機能――マジンパワーを発動させ、魔神が再び息を吹き返した。
そして、セレブレイドを握っている暗黒大将軍の両手目掛けて右足を振りぬく。
「でぃぃええええぇぇぇいっ」
「ぬおぉっ」
ガキイィィィィン!!
蹴り飛ばされ宙を舞い、そのまま地面に突き刺さるセレブレイド。
「カァッ!」
「ブレストファイヤァァァー!!」
反撃に出た暗黒大将軍の破壊光線をブレストファイヤーで打ち消す剣児。
破損した状態で出力上昇したブレストファイヤーをうった反動で爆発し、さらに吹き飛ぶ放熱板。
剣児は懐に飛び込み更なる攻撃をしかける。
「必殺ぅ!猛烈ぅ!地獄張り手ぇぇぇーっ!!
うぅぅりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃあぁぁっ!!」
「ぐおおおぉぉぉぉぉっ!!」
刃の付いた両腕での怒涛の連続張り手が炸裂する。
見る見る傷ついていく暗黒大将軍。
強酸で蝕まれたマジンガーZの両腕も、張り手を繰り出す度に朽ちていく。
「こぉぉいつで、止めだぁぁぁぁぁぁっ!!」
マジンガーZが両腕で暗黒大将軍を抱え込む。
マジンパワーによる剛力でその巨体を持ち上げ、締め上げる。
「マジィィィーンブリィィィーカァァァーッ!!」
「ぐあああぁぁぁぁぁっ!!」
ギギィィィィィィッ!!
豪腕で挟まれる暗黒大将軍と満身創痍な状態で力を振り絞るマジンガーZ。
両者のボディが悲鳴を上げて軋む音が響く。
「こんなことでぇっ!剣鉄也をこの手で倒すまでぇぇぇっ!やられてたまるかぁぁぁっ!!」
「いっただろうがぁ!やられるのはてめえの方なんだよぉぉぉっ!!」
「ぬおぉぉぉぉぉぉっ!!」
暗黒大将軍は抜け出そうと抵抗するも、死力を尽くす剣児とマジンガーZはその度にそれを上回る力を発揮する。
対する剣児もここで決めてしまわないともう後がない。
互いの執念の強さが勝敗を決める。
―――だが、この戦いは二人が予期しない形で決着がつく。
――――ズドォォーーーーーーーン――――
「な………に………?」
二人には何が起きたのかがよく理解できなかった。
剣児が背後に何か強烈な衝撃を感じた瞬間、爆発。
マジンガーZの胸から上の部分が粉砕される。
搭乗者を失った魔神は力なく倒れ、もう立ち上がる事はなかった。
【草薙剣児 搭乗機体:マジンガーZ(強化型)(グレートマジンガー)
パイロット状況:死亡
機体状況:胸から上が大破】
「……な、なにが起きた……これはいったいどういうことだあぁぁぁぁぁっ!!」
急に縛めの力が弱まった瞬間、目の前で爆発したマジンガーZ。
確かに満身創痍な状態ではあったが、あの爆発は機体が持たなかったのではなく、おそらく外部からの攻撃によるもの。
それも暗黒大将軍ではない何者かのだ。
「ゆ、許さん!!許さんぞおぉぉぉっ!!俺とマジンガーの命を懸けた戦いを汚しおってぇぇぇっ!!
誰かは知らんが、そやつだけはこの俺の手で成敗してくれるっ!!」
マジンガーZの残骸に目を見やる。
「草薙剣児。貴様も偉大な戦士であった。」
自ら決着をつけることが出来ず倒れた好敵手を称え、暗黒大将軍はその場を後にした。
ミケーネ帝国の敵を倒すため、宿敵剣鉄也にこの手で勝利するため、ミケーネの偉大なる武人が行く。
【暗黒大将軍 支給機体:セレブレイダー(神魂合体ゴーダンナー!! SECOND SEASON)
パイロット状況:胴体部を中心に中程度のダメージ 激しい怒り
機体状況:良好 ENを30%程消費 セレブレイドに変形中
現在位置:E-4
第1行動方針:剣鉄也に勝利する
第2行動方針:マジンガーとの戦いに横槍を入れた者を成敗する
最終行動方針:ミケーネ帝国の敵を全て排除する
備考:セレブレイドは搭乗者無しでも使い手側の意思でプラズマドライブが機動できるようになってます
無論、搭乗者が普通に機体を使う事も可能です】
【一日目 6:50】
「ありゃあ?、やったのは片方だけかよ。こいつならまとめていけると思ったんだがなあ。
あいつら頑丈すぎんぞ。残った方もまだまだピンピンしてやがる。」
ティンプ・シャローンは一人不満を漏らしていた。
彼こそが剣児の乗るマジンガーZを撃墜した犯人である。
凶器は彼の支給機体テキサスマックの武器ハイパワーライフル。
地上の対象への使用が禁じられている程の威力をもつこの銃で、両者が組み合って動きを止まった瞬間を狙って狙撃したのである。
「大体わざわざこんな棺おけに突っ込んで埋めてあったり、二人用の機体渡したり嫌がらせか?いちいち面倒なんだよ!」
ハイパワーライフルは本来、棺桶型ケースに収納されてホワイトハウスおよび各国アメリカ領事館敷地内に埋めて保管されている物である。
それを律儀に再現したのかどうかは分からないが、機体の横にぽつんと立ててあった星条旗の下に埋められていた。
遙か未来の荒廃した地球――惑星ゾラに生きる彼に、アメリカなんて国の事は分からないが。
「さあて、これからどうしたもんかねえ。あんな化けもんばっかだとしたら、いちいち相手にすんのはちとやっかいだぞ。
おまけにこの場にいる唯一の知り合いがあのドマンジュウときたもんだ。」
自分を両親の敵と復讐に燃える少年、ジロン・アモスの事を思案する。
あのしつこくて糞生意気なガキの事だ、どんな状況であろうとも、俺の事を狙ってくるのだろう。
周りの人間全部巻き込んで。ああ、めんどくせえ。
「頼れるのはお前だけだぜ、相棒。」
ヒヒィィィィーン!!
相棒――パスチャーキングがその言葉に呼応するかのように嘶き、空を駆ける。
――――落馬したティンプを置き去りにして。
「……お前、飛ぶのか……」
【ティンプ・シャローン 搭乗機体:テキサスマック(PK)(真ゲッターロボ対ネオゲッターロボ)
パイロット状況:良好
機体状況:良好 ハイパワーライフルの弾を一発消費
現在地:E-3森林付近
第1行動方針:他の参加者の情報を集める
第2行動方針:特にジロン・アモスの動向には注意する
第3行動方針:可能な限り優勝は目指す
最終行動方針:生き残る
【一日目 6:50】
最終更新:2010年02月21日 17:35