213 :高杜学園たぶろいど! ◆IXTcNublQI :2008/10/15(水) 20:44:04 ID:7rY3k8GK
2-2
「ちょっとちょっと御両人っ。何を黙りこくってるのよ」
俺と氷川先輩が並んで座っているテーブル席にウェイトレス……姿の雨宮さんが。
いつの間に着替えたんだ!?
「じゃんじゃじゃーん。そんな時にはコレよっ」
自らSE(サウンドエフェクト)を発しながら雨宮さんは六面に文字の書かれている
サイコロのような立方体をテーブルの上に置いた。
「何なんですか? コレ……」
まあ、聞かなくてもわかりますけどね。
「会話に詰まったらこのサイコロを振って出た面に書かれたテーマで話せばいいのよ。
これって物凄い発明じゃない?」
それどっかで見たことありますよ雨宮さん。まあそれはいいとして。
とりあえず転がしてみた。ころころころ~
「こんなんでましたけど~」
古っ。いつの時代ですか雨宮さん。
「えーっと……ヨーネンモナン」
なんじゃこりゃ……?
「それだったら多分私のほうが詳しいですね」
あ、氷川先輩は知ってるのか。
「あれ? もしかして蔵人君は知らないんですか?」
ん? 有名な物なの? 知らないと恥なのかな……
「あ、ああ、知ってる知ってる。でも俺はあんまり好きじゃないかな……」
「え!? 男の人なら誰でも好きだと思ってたんですけど」
それは性的な意味で……? 違うか。
「ほら、ちょっとこう何というか。俺は苦手なんですよね」
「そうなんですか……私、自信あるんですけどね……」
え? 何で残念そうな顔を? ますますわからなくなってきたな。
「あーあ。できれば見せたかったです……私の……」
「ひ……あ、雹子さん?」
「ごめんなさい。もうこの話題はやめましょうか」
俺は自分の無知を悔やんだ。そして俺の知らない世界がある事を悟った。
「いや、俺のほうこそ食わず嫌いしてたみたいです」
ま、何の事だかはさっぱりわからないのだが。
「なるほど。上手い事言いますね」
上手い事言ったのか? どこがどう上手かったんだろ。
「あ、そろそろ時間ですね。行きましょうか」
結局何のことだったのか皆目見当がつかないまま喫茶店を後にする。俺はちらりと
振り向き、看板を見る……
喫茶店の名は「マクガフィン」
喫茶店を後にした一行は続いて映画館「シネマ・パラダイム」へ。
「これがいいんじゃないかしら」
氷川先輩に促されるままにチケットを購入する。高校生5枚で7500円か。あ、あれ?
全部俺が払うんですか? うーむ……しょうがないか。
『愛を中心に、世界はまわる』――女子中高生に中心に"アイセカ現象"を巻き起こした
超ベストセラー恋愛小説が待望の映画化。いや、何かのパクリじゃありませんよ?
注意:以降の記述で物語・作品に関する核心部分が明かされています。
不治の病により日々記憶を失っていく恭太郎と、ある事故により感情を失った恋人由良。
2人は高校卒業を前に旅行を計画する。旅行の当日、由良を迎えに行く恭太郎の前に
白血病で死んだはずの元恋人里佳子が現れて……それからなんだかんだ色々あって
最終的にハッピーエンドという内容だ。……とてもじゃないか正視できない。何がってそこは
皆さんの想像にお任せします。氷川先輩は面白かったと言ってたからまあ良かったのかな。
続いてゲームセンターへ。クレーンゲームでぬいぐるみを取るべし。という指示に従い、
ゲーム機の前へ。
……ぬいぐるみなんて普通に買えばいいのに。俺はあっという間に500円を失った。
「これ、穴に落ちない仕様なんじゃ無いですかね」
「そんなわけないじゃない。ほら、もう少しよ」
ちゃりん。うぃーん。うぃーんうぃーん。がしっ。うぃーん。うぃーーーん。ぽとっ。
あっ、もう少しで入りそうだけど、無理か……ん? 入った。すとん。
「あれ? 今、あきらかに不自然な落下をしたような???」
「ふふっ。気のせい気のせい」
氷川先輩がぬいぐるみを取り出す。青いトカゲのぬいぐるみだ。微妙に可愛くない。これ
なら美少女フィギュアのほうが可愛いだろう。人気なのかコレ……?
「今度はあの奥の奴狙ってみようかな」
あと一回分残ってたので次は緑のイソギンチャク(っぽいけど何なんだろう)を。
うぃーんうぃーん。うぃーんうぃーんうぃーん。がしっ。うぃーん。うぃーーん。
「あ。もうちょい。いい感じよ。がんばって」
がんばれと言われても機械のクレーンは自動的にこっちに戻ってくるだけですが。などと
心の中でツッコんでいる間に穴の上に戻ってきて捕まえた獲物を放す。イソギンチャクは筒
のふちに当たった。その瞬間、ちらりと氷川先輩の手元を見ると……ガラスの中に向かって
腕を伸ばしている。ヒジから先が消え、何かに押さえつけられたようにぬいぐるみが穴へと
押し込まれた。
「器用ですね。そんな事も出来るんですか」
「ええ。このくらいは」
俺は一応、店員が周りにいないのを確認して、緑のイソギンチャクを取り出した。一応
言っておくが、こいつも微妙に可愛く無いな。
そうそう。そのあと2人でプリクラを撮ったんだが、これって心霊写真になるのかな。
最終更新:2008年11月21日 23:30