6 :高杜学園たぶろいど! ◆IXTcNublQI :2008/09/26(金) 01:39:16 ID:8rqYgdeS

2-1

「えと……次、どこいきましょうか」
「あ、うん。それじゃあ……」
 どぎまぎどぎまぎどぎまぎ……

「くぅ~。たまんないわね。このピリピリとした雰囲気」
「部長さ~ん。こういうのって出歯亀って言うんじゃないでしょうか……」
「雷堂寺君。そう言いながらしっかりついて来ているじゃないか」
 ……電柱の影に隠れてる雨宮さん、雷堂寺先輩、雪村部長代行の三人。あの~、もろに
見えてるんですが……せめて変装くらいしろよと。
「く、蔵人君? どこ見てるんですか?」
「あ……ごめん、雹子さん」
 うわぁなんかスゲエ照れる……下の名前で呼ぶとか……他にもルールが色々と書かれた
メモが俺の手に握られている。

 ここまでのいきさつを説明しておこう。今俺の隣にいるのは数日前、我らが新聞部に
新しく入部してきた幽霊の氷川雹子先輩。とはいってもパッと見は普通の女子高生であるの
だが。水泳で鍛えられたのだろう少し筋肉質の体にスラリとのびた脚、耳に被るくらいの
セミショートの髪が風に揺れている。学校にいる時とは違い、Tシャツにショートパンツと
いうラフな格好である。幽霊であることを忘れて見とれてしまいそうだ。
 で、なんで俺と氷川先輩が並んで歩いているかと言うと、やはり我らが新聞部の部長である
雨宮さんの提案がきっかけなのだが。

「ひょこたん、せっかくなんだから第二の人生をエンジョイしなくっちゃね」
「エンジョイ……ですか」
「第二の人生ってそう意味だっけ? で、いったい何なんですか?」
 俺が聞き返すと、雨宮さんは無邪気な表情をしながら話を続ける。
「というわけで、決定よ。今度の日曜日、高杜モールでデート大作戦!」
「デ、デー……ト……大……作戦……!?」
 何を言い出すかと思えば、何を言い出すんですか雨宮さん。
「どうせ2人とも休みはヒマなんでしょ? メガネもこんなチャンスはそうないんだから」
 まあ、確かに日曜日は朝、「魔法少女ラジカルる~な☆」を見る以外は特に予定は無いわけ
だが……いや、女児向けアニメなんだが大人が見ても鑑賞に堪えうる……げふんげふん。
「あ、でも氷川先輩は……」
「なんだか面白そうですね」
 即答であった。


 そして日曜日。俺にとっては生まれて初めてのデート(なのか?)である……


「いらっしゃいませ!」
 2人(+3人)は駅前の高杜モールでウチの学生に人気の喫茶店「マクガフィン」に
やってきた。テーブル席に腰掛けるとウェイターがすぐに注文をとりにくる。
「えと……俺はコーヒーでいいや。氷川先輩は?」
「雹子でしょ」
 いけね。やっぱり慣れてないと難しいもんだなぁ。
「私……飲んだり食べたりできないんですけど」と、氷川先輩が呟いた。
 あれ、そうでしたっけ。まあとりあえず雰囲気が出ないのでホットコーヒーを二杯
頼むことにする。

 テーブル席に座り、注文の品が届くのを待つ。
「あの……蔵人君?」
「はい?」
 しまった。思わず黙りこくってしまう。えと、何か言わなきゃな……

「あら。このパウンドケーキ。おいしいわね」
「あ、こっちのワッフルもイケますよ~」
「どれどれ~。もぐっ」
「あっ、勝手に取らないでくださいよ~」
 後ろのほうで女子高生2人がダベってるようだが無視だ。

「あ、そうそう。時々部室からいなくなりますよね。あれって……」
「あれは、消えてるだけです」
 そうなんだ……ということは。
「もしかして俺が一人でいるときも……」
「……はい」
 うわあああああああああ。アレとかアレとか見られたのか……。
「あの……?」

 いつの間にか届いていたコーヒーを飲んで落ち着こうとする俺。ずずずず……
緊張のせいか、全然味がしない。

 ふと見上げると時計の針は10時を差していた。メモによると11時過ぎから映画を
観る事になっている。あと一時間か……。






8 :高杜学園たぶろいど! ◆IXTcNublQI :2008/09/26(金) 01:43:12 ID:8rqYgdeS
投下終了です。
喫茶店「マクガフィン」の設定使わせていただきました。





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最終更新:2008年10月17日 01:56