255 :高杜学園たぶろいど! ◆IXTcNublQI :2008/09/07(日) 18:16:33 ID:OPadNLOZ
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「さあ、あらいざらい話してもらうわよ。隠したって何もいいことは無いんだからね」
容疑者に自白を迫ってるわけではない。これが雨宮さんの取材スタイルなのだ。
「いやぁ……特に学校新聞のネタになりそうな話なんて、なあ」
「学校の中でも外でもそう物騒な事件なんて無いよ」
「この町は治安の良いのが唯一誇れる所だ。はっはっは」
きょうも たかもりしは へいわでした まる
「あーもう。やってらんないわっ。なんなのよ、この町はっ」
「住みやすくて良い町じゃ無いですか。何をカリカリしてるんですか雨宮さん」
「無差別怪奇殺人とか、連続失踪事件とか、地球外生命体の秘密基地とか、そういう
ドキドキワクワクするような事件や発見は転がってないのかしら」
「……文芸部にでも行ったほうが良いんじゃ無いですか?」
「わかった。文芸部ね」
「え?」
行くわよメガネ、と勢いよく学校のほうに戻っていく雨宮さん。その元気は
どこから来るんだろうと思わず感心してしまう。いやマジで。
俺って昔から体が弱くてあまり外へ出ずに家で遊んでたから、こんだけ外で
歩き回っただけで息が上がってしまうのだ。
「あ、雨宮さ~ん。待ってくださいよ~」
いつの間にか雨宮さんはあんなに遠くへ行っている。俺はあわてて追いかけた。
ここは文芸部の部室――部の活動として2ヶ月に一冊のペースで小説誌を発行して
いる。タイトルはたしか「斜陽」。バックナンバーは図書館に行けば読めるようだ。
最近は「SYA‐YO」ってアルファベットのタイトルに変更され表紙にも可愛い
女の子の絵が描かれたりして、純文学からSFにファンタジー、ホラーにミステリー、
伝奇、ラブコメまでなんでもござれと言った内容である。
「部長の三島由紀恵です。今日はどういった用件で?」
……雨宮さん? そこで何故黙るんですか?
え? 俺が文芸部って言ったから来ただけだ、って俺に話を振られても困るんですが。
「おお。新聞部の皆さん。本日は……雷堂寺さんは一緒ではないようですな」
2年生の西京極秋彦先輩だ。和服(制服は?)に黒手袋というその独特な風貌は
1年生の俺でも噂に聞いたことがある。
この部室に一度取材で訪れているロリ巨乳先輩、じゃなかった、雷堂寺先輩は今、新聞部
の部室でブログ用の記事を書いているはずだ。
「あ、こないだの妖怪の話。アレなかなか反響があったわよ。先輩。」
「ふむ。かのような話でよろしければいくらでも……いっそのこと新聞部専属で執筆しても
構いませんが……」
「西京極君。文芸部を裏切るつもりですか?」
部長の三島先輩がギッと睨んでいる。自分が睨まれてるわけでも無いのに変な汗が流れた。
せっかくの美人が台無しです……
西京極先輩から聞いた「最新の怪談話」を元に記事を作成する事になった。さすがに
見出しは「高杜市春の俳句コンクール」で3年の奥野細道先輩が金賞を受賞したニュース
という無難なものになった……雨宮さんは不満みたいだけど。
「夜の学校ってなんかワクワクテカテカするわよねっ。……え?しなくてもしなさいよっ」
「ほ、本当に幽霊なんて、で、出るんでしょうか……わ、私、に、苦手なんですよね……」
というわけで俺は何の因果か雨宮さんと雷堂寺先輩を両手に従えて深夜2時の学校を探索する
ことになった。こ、このシチュエーションはっ……一歩間違えたら修羅場ルート一直線になりか
ねないっ……落ち着け蔵人。そうだ、落ち着くんだ。まだフラグのフの字も立っちゃいない。
「何やってんのっ、メガネ。 置いてくわよ」
「あ、待ってくださいよ雨宮さん」
このパターンは三年間続くんだろうか。先が思いやられる。
西京極先輩が言うには、深夜のプールに出るらしいんですよ。アレが。水着姿の女子高生の
幽霊が。随分マニアックな設定だな。スク水じゃなくて競泳水着なのが俺的にはいまいちそそられ
ないところだがそんな事はどうでもいいか。
「み、見たところ……な、何もなさそうですけど……」
雷堂寺先輩は幽霊が苦手なようだ。ふるふる震えてる姿がかわいすぎます。
「おいこらーっ。取材してやるから姿を見せなさいっ。いるんでしょっ」
この人には怖いものとか無いんだろうか。無いんだろうな。うん。
「ほらっ。メガネも何か声かけてみなさいよっ。誘ってみるとか」
「え……? そんな事して霊に憑かれたらどうするんですかっ」
「そんな美味しい状況になったら褒めて上げるわっ。格好の取材対象になるじゃないっ。そうね、
是非憑かれて頂戴。ね、他に役に立たないんだからそれくらいしてもいいんじゃない?」
ん? 今何気に酷い事言われたような気がするんだけど空耳かな?
一向に幽霊の出る気配が無い。別に幽霊の存在を信じてたわけでもないけど何の収穫も無く
取材を切り上げて帰るなんて雨宮さんに耐えられるわけが無い。だからってあんな事しなく
ても良いのに……。
「ぎゅっ」ぎゅっ? レモンを絞った音ではない。そもそもレモンなんて持ってきていない。
「ああああああ雨宮さん!? なななななな何してはるんですか?」
雨宮さんが俺の右腕を取り胸に押し当てて……るつもりなんだと思う。感触は無いんだけど。
さらに体を寄り添わせきた。こここここここれって……
「メガネくぅーん。つばき、こわいの~。おねがいだから、ずっとはなれないで~」
ああ。そういうことか。俺は一瞬で理解した。
おかしな霊に憑かれちゃったんだね雨宮さん。あんな事言うから……
その時……誰もいないはずのプールの水面が音も無くゆらいだ……気がした。
257 :高杜学園たぶろいど! ◆IXTcNublQI :2008/09/07(日) 18:33:32 ID:OPadNLOZ
投下終了っす。
じゃあ私も一応キャラ紹介をば。
高等部一年。新聞部部長。態度はでかいが胸はちいさい。
高等部一年。新聞部。メガネ(ダテ)。下僕属性。
高等部二年。新聞部。ロリ巨乳先輩。ひかるちゃんと呼ばれてるが本名は"ひかり"。
高等部三年。文芸部部長。美人だが睨むと怖い。
高等部二年。文芸部。妖怪話や怪談を執筆中。
最終更新:2008年09月28日 19:48