現在の報告が不完全で、どんな正真正銘の事実をもってしてもアイヌ人の倭人像を再構築することが不可能であるのだが、この時代のアイヌ人は無視できない未開人であった。しかし、その全体の印象は,エゾガシマは”悪魔が出没する”恐ろしいところだった、ということである。平家物語(1190~1218年編纂)では、”値打ちのない生活”を嘆願する落武者が、命を助けてもらえるのであればその地に追放されることでさえお受けしましょう、と述べている。1356年に制作された諏訪大明神絵詞(諏訪の偉大なる神についての、絵を交えた記述)では、エゾガシマの住民を三つのグループに分けていて、エゾガシマの住民は、悪魔の影や肉食の習性、奇妙な言葉を持ち、五穀の知識のない”有害”集団である。津軽との交易者であるワタリトの人々は多少理解できる言葉を話し、”倭国の男”に似ているように見えるけれども彼らは体中に毛が生えている、との記述がある。海保は、このような記述が、平家物語の中でのキカイガシマ(薩摩沖の悪魔の島)の住民についての記述と非常によく似ていると指摘してきた。両方の土地は、犯罪人の流刑地に使われていた。毛深くて肉食の未開人についての類似の記述は、鎌倉幕府の勢力圏の東端と西端の土地の対する固定観念がどのようなものであるかを反映している。
最終更新:2008年05月11日 18:19