時刻はまもなく午前7時……一般的な家庭であれば、そろそろ起床して朝食を用意する時間帯であろうか。
大災害にロワの二重苦の中で、食事はいつも以上に大切なものだ。
某グルメな男に言わせれば、食事は救いでもある。
こんな時だからこそ、この時間は食事をとるべきなのだ。
だが、おそらく東京都にいる参加者達は落ち着いて食事をする余裕はないだろう。
食料が僅かであるとかそういった問題ではない。
ゴゴゴゴゴゴゴ……!!!
頻繁に起きるようになった地震、それも数時間前に起きた地震よりもさらに大きな地震だ。
こんな状況下で、落ち着いてスープを飲むことなどできるわけがない。
それでなくとも、ここまで地震が多発すれば鈍い参加者でも気がつく。
何か自分たちの知らない場所で、大事が起きているのだと。
それは正しい。
東京都庁、正確にはその地下にあるかつての世界樹の名残。
――真朱ノ窟(まそうのいわむろ)――
そこの最下層に、百億の生と千億の死を見つめる怪物が住んでいる。
ゴゴゴゴゴゴゴ……!!!
だが震源は、真朱ノ窟の中ほど。
「くっ……!」
「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!」
怪物フォレストセルとダオスの戦闘の余波で、地震が発生していたのだ。
巨大な触手を振り回し、周囲の全てを薙ぎ払う。
その口からは爆炎を吐き出しかと思えば、吹雪を巻き起こしたり雷の嵐を降らせたり。
世界樹の地下であるということを考慮してなお、フォレストセルは魔王を喰わんと怒涛の攻撃を続ける。
「これほどとは……!」
対するダオスは防戦一方。
何故彼がこれ程の窮地に追い込まれたのか。
少し、時を遡ろう。
◆ ◆ ◆
「都庁の地下に、こんな空間があったんだ……」
『ここのおそらく最下層に、フォレストセルはいるはずだ』
「んんwwwwww赤くてぬるぬるぐちょぐちょで、扉らしきものは『くぱぁ……』と開くとはwwwwww
天然のエロ洞窟ですなwwwwwwやばい興奮して(ry」
「そこまでにしておきなさいオオナズチ。まどかに卑猥なことはさせないし聞かせないわよ」
『お前は昔から、欲望を表に出し過ぎなのだ。我らの口添えがなければ、お前は今頃ミザールの横で吊るされていたぞ』
「サクヤを襲った件からレストはかなり立腹していたからな。命があるだけ良いと思った方がいい」
「サーセン……」
不気味な真朱ノ窟に足を踏み入れたのは、
都庁の軍勢と魔法少女であった。
理由は勿論、グンマ―の血を引くというまどかの力でもってフォレストセルを制御するためだ。
その要たるまどかの護衛には、都庁のトップであるダオス・雷竜・氷竜に加え、ほむらがついている。
さらにグンマ―の巫女の術式を教える役目から古龍オオナズチも。
少女一人の護衛にしては、過剰とも言える布陣。
しかしながら
DMC狂信者軍団の襲撃により、最初の地震発生から大分時間が経過してしまっている。
それはつまりフォレストセルへの対処が遅れてしまったという意味であり、都庁の軍勢からすれば予定外であった。
万が一フォレストセルが既に地上への侵攻を開始していた場合に備えて、ここまでまどか一人に戦力を割いているわけである。
「それにしても、まるで魔女の結界内のようなおぞましさね。異様に大きい白血球や赤血球がさっきから目につくんだけど」
『ルーカサイトにレッドコーパスルだな。フォレストセルが生み出した、外敵排除の免疫細胞のような魔物だ』
『やはり我らも同行して正解だったか。流石の彼らも、我らを攻撃しようとは思わないようだな』
「あれも魔物なの? じゃあ、さっきからじっとこっちを見ているあの銀色の巨大蟹は?」
『メタルシザース。あれは特に仲間思いな魔物でな、仲間が死ぬと激怒して手がつけられなくなるほどだ。
逆にこちらから危害を加えなければ温厚で大人しい。先ほどの免疫細胞たちも、ああ見えて怖がりな性格だ』
忠告通りに、誰も真朱ノ窟に住んでいた魔物に手を出すことはしない。
長い年月をここに閉じ込められていた魔物たちだが、彼らはただじっと見つめるだけで動こうとしない。
ただ不気味な床を踏みしめるだけで、一行は先へ先へと進むことができていた。
「……この辺りは空間が歪んでいるな。迂闊に動けば逸れてしまいそうだ」
『そこは我が磁場調整しておこう。おそらくこれも、フォレストセルが外敵を惑わすために作った罠だ』
「んんwwwwwwこっちには落とし穴、そしてその下が毒茨ですぞwwwwww」
「ま、まるで
ゲームのラストダンジョンみたいだね……」
『まあ、我らは飛べるからなんの問題もないが。乗れ、まどか』
数々の罠が張り巡らされていたが、雷竜たちの手によりそれも無効化されていく。
魔物の脅威も罠の脅威も無くなり、もしここに他の冒険者がいればふざけるなと叫ぶであろう程易々と奥地に進んだ頃……
「む?」
複数の咆哮が響いた。
『これは……なるほど、少し面倒なことになった』
『ダオス、ほむら、ついでにオオナズチ。まどかを連れて先に行け』
二体の竜が立ち止り、その直後。
「「「グオオオオオオォォォォォォォ!」」」
彼らと全く同じ姿、大きさをした竜と、それに加えて赤く巨大な竜が飛び出してきた。
「なっ、あなたたちと同じ竜!? どういうことなの!?」
『かつてここに住んでいた我らを、森の記憶から生み出したクローンと言ったところだな。
オリジナルである我らには劣るが、それでも護衛には十分な力を持っている』
『こちらには赤竜がいないぶん、少し厄介な相手だが問題はない』
■ ■ ■
合計で五体の竜が絡み合った乱戦など、人間には天変地異もいいところである。
雷竜らの言うとおり、あの場は彼らに任せてまどか一行はさらに奥を目指していた。
「急がねばならんな。フォレストセルがクローン作製技術を持っているとなると、私やレストのクローンが作られる可能性もある」
「悪夢でしかないわね」
「にしゃ?」
「「「「!?」」」」
そんな時に、あまりにも唐突に、それは現れた。
都庁の軍勢にとって、いや人類にとって救世主であると同時に大災厄である存在。
毒々しい紫紅色の巨体から生えた4本の触手が、怪しく蠢く。
金色の複数の眼はぎょろぎょろと動き回り、獲物を探し求めている。
「これが、これが――」
フォレストセル が あらわれた!!! ▼
「■■■■■■■!」
「っ……!? エクスプロウド!」
フォレストセルに、対話の余地はなかった。
今のフォレストセルは善でも悪でもない。ただ、空腹だから、自分の前に立っているから、それだけの理由で攻撃する。
開幕と同時に、あらゆる生命体を焼き尽くす爆炎がその口から吐き出された。
反射的にダオスも上級術、同じ爆炎の魔法で対抗するが……
「ぐうううぅぅぅぅぅぅ!?」
フォレストセルが吐き出した爆炎はあっさりとダオスの魔法を打ち破り、術者の体を焼き焦がした。
ダオスは物理攻撃への耐性だけでなく、雷を除くあらゆる魔法への強い耐性も備えているため致命傷にこそならなかったが、
それでも受けたダメージはかなり大きい。
(挨拶代りの一発で、この威力……! 下手に相殺を狙うより、回避に専念してキュアで回復していくのが得策か)
そしてその一撃だけで、ダオスは勝ち目がないことを悟った。
せめて万全の状態であれば。世界樹内であるため動力源であるマナの枯渇こそありえないが、やはり首輪の制限は大きい。
対するフォレストセルは首輪をつけておらず、常に全力で戦える。いかに魔王といえど、この差を埋めることは難しかった。
(まどかは……ほむらとオオナズチの能力で離れたか。どのような手段でこの怪物を従わせるのかは知らぬが……
今の私にできることは、時間稼ぎ。グンマ―の巫女の術が発動するまで、耐え凌ぐ!)
◆ ◆ ◆
そして現在。
ダオスはフォレストセルの猛攻を耐えつつ、常に動き回っていた。
一瞬でも動きを止めれば、致命傷を受けかねないからである。
「■■■■■■■■!」
「……っ!」
特に、フォレストセルの攻撃の中で警戒すべきは、このサンダーストーム。
ダオスの力が魔王であるなら、フォレストセルの力はいわば魔神。
絶対的な魔力から繰り出される弱点属性攻撃を受けてしまえば、さしものダオスも確実に戦闘不能に追い込まれる。
仮に耐えたとしても、雷特有の全身麻痺、その隙をつかれて結局は敗北してしまう。
「なんて怪物なの……」
荒れ狂うフォレストセルの姿に恐怖しながらも、ほむらはまどかの側を離れずにいた。
万が一まどかに攻撃の流れ弾がきた場合、時間停止の魔法で緊急回避を行うためだ。
またダオスはその力により時間停止の影響を受けない稀有な存在であり、彼の救出の役割も兼ねている。
どちらかが危機的状態に陥った場合、すぐさま時を止めなくてはならない……
盾に触れたままのほむらの手からは、汗が垂れていた。
(ソウルジェムの濁り具合からして、私もそう何度も時間を止められない。
もしあの2体の竜がクローン三竜を倒してかけつけてくれても……あれにはまるで歯が立たないはず。
ああまどか、またあなたに全てを背負わせてしまうことになるなんて……!)
戦況から判断して、フォレストセルの撃破は不可能。
そもそもここまで動き回るフォレストセルの相手をすることが、当初の予定とは大きく異なっている。
本来であれば、眠ったままの、或いは寝起きで寝ぼけているフォレストセルを相手にまどかの力で制御するはずだったのだ。
それができなかったのも、DMC狂信者軍団のせいである。
(予定外と言えば、この怪物の強さもそう。都庁の軍勢の話以上に強力で、巨大だわ。
まるで、ここ数日でさらに成長したような……)
「いいいいそぐんですぞwwwwwwここにこれを供えて、陣を描けばいいんですぞwwwwww」
「わ、わかったよ!」
「いまさらだけどオオナズチ、あなたどうしてグンマ―の巫女の術を?」
「あの子はかわいかったですからなwwwwwww昔よく隠れてストーキングしたりお風呂覗いたりwwwwww
でも、もうあの子も他のグンマ―人も、みんな死んでしまったんですな……」
「……」
「でも今は前を見るんですぞwwwww我には新たな天使がついていますからなwwwww
魔物を嫌いであると言っておきながら、我の怪我を癒してくれた天使さやかちゃんの親友は、我の親友wwwww
助けない道理がないですなwwwwwwww陣の生成はお任せあれwwwwwwwwww」
オオナズチがその舌で、地面を抉り取っていく。
見たこともない文字に模様は、おそらくグンマ―固有のものだろう。
そうして出来上がった陣の中心部に巫女、まどかを座らせる。
「◆◆◆◆◆◆◆◆◆!」
「ぐっ……ごほっ……!?」
「っ! ダオスもかなり消耗している、急がないと! この後はどうするの!?」
「グンマ―人は、自然と共に生きる者。そしてその巫女は、特に優れた魔力で自然との対話が可能であった子なんですぞwwwww
いくらあの絶対エロ同人誌で何人もの女の子を触手の餌食にしてそうな怪物といえど、植物タイプなのは明らかwwwwww
つまり、別段特殊な儀式を行う必要もなく、最低限の行為……つまりただ祈るだけでいいんですなwwwwwwww」
「祈るって……それで戦うのを止めて、力を貸してくれと頼むということ?」
「そうですなwwwwwww本来は豊穣とかを祈るもの、しかし今はそれよりもとにかく大人しくさせること以外ありえないwwwww
あるいはあの怪物ではなく、この世界の自然そのものに祈ってあいつを止めるのもありですぞwwwww
幸いにしてここは世界樹の真下ですからなwwwwwww」
「わ、私が、頑張らないと……!」
「唯一注意点があるとすればwwwwwww」
「すれば?」
「相手に対して、決して恐怖心を持ってはいけない、ということですかなwwwwww……あれ?」
「◆■◆■◆◆!」
「ぐっ……!? 回避を……っ!」
オオナズチの間の抜けた声は、爆音によってすぐさまかき消された。
背後ではダオスが吹き飛ばされ、叩きつけられ、いよいよもって彼の限界も近いのがわかる。
「恐怖心を持ってはいけないって……あの怪物に対して!? ダオスすら歯が立たない相手、それもあんな外見の生物に対して!?」
「ほむほむ叫ばないでほしいですぞwwwwwここにきてなんですがwwwww…………無理ゲーですな……www」
オオナズチもほむらも、本人の意思とは無関係に震えていた。
フォレストセルの圧倒的すぎる力に加えてあの醜悪な外見は、生物に対して原初的な恐怖を植え付ける。
古龍として、魔法少女として、多くの戦場を体験してきた二人ですら恐怖せずにはいられない。
それを、ただの中学生であるまどかに恐怖せずに祈れなど……
「む、無理よ、そんなの……!」
「大丈夫だよ、ほむらちゃん」
「え?」
「私、あの子は怖くないよ。ううん、むしろ……」
<ソンナ、ソンナバカナァァァァ……!?
「あ、ほら見たほむらちゃん! あの攻撃直前にばんざーいってする時、かわいいよね!? 実はすっごいぱっちりおめめだし!」
「「」」
後に、暁美ほむらはこう語る。
「まどかは大切だけど、歌とか好みの動物とかそういった趣味に関してだけは、たぶん一生同意できない」
■ ■ ■
「ごほっ……私としたことが、なんと無様な……」
「ごめなさいダオス、まどかのぶっ飛んだ発言のせいで時と止めるどころか一瞬私の時間が止まったわ」
「ああ……私も吹き飛ばされながらだが見ていた。吹き飛ぶ私をよそに、あの怪物を指さしてかわいいと言う彼女を……」
停止させられた時間の中で、ダオスは応急処置を施しつつ前線から退いた。
あの怪物をかわいいと言える時点で、まどかには恐怖心の類はないのであろう。となれば、後は祈りを捧げるだけだ。
「念のため、この停止中にありったけの魔法を打ち込んで無力化させておく?」
「無理だ。この怪物には尋常ではない力に加えて超再生能力まで備わっている。
私ですら、預かったグリモアの力で障壁を張りながら戦ってこの様なのだ。下手にこれ以上怒らせてはまずい。
不甲斐ないが、ここはまどかとグンマ―の術に全てを託すしかない」
「そう……」
――ほむらの時間停止が解除される
「にしゃ!?」
突然戦っていた相手が移動していたために、フォレストセルは驚いた。
樹海の、自身の存続を望むフォレストセルは絶対に滅びるわけにはいかず、故にどんなに弱い侵入者であっても敵であれば全力で潰す。
そこに一切の油断はなく、相手に
未知の力があるとわかれば……そちらに注意を払い、一挙一挙を警戒する。
――魔神の攻撃の嵐が、戦いが、止んだ
一瞬の静寂、平穏。その隙を、狙う。
「今ですぞwwwwwwwww」
「グンマ―の人たち、私に力を貸して! そして……!」
――、――――、――、―――、―――――♪
紡がれるは、グンマ―の言葉。
自然を愛し、感謝し、敬い、畏れ、崇め、称える詩。
捧げられるは、巫女の祈り。
人と自然の調和、人と魔の共存の願い。
膝を折り目を瞑る巫女に眠る魔力は、未曾有のもの。
人を超え魔を超え、天の理さえ変えかねない神域の力。
異星の超文明を持つ者が彼女の願いを叶え、奇跡を起こせば、世界は生まれ変わっただろう。
大自然の力、世界樹の力といえども、そこまでの奇跡を叶えることはできない。
だが、今の祈りは過去や未来に干渉するものではない。
現在の極一部に干渉し、そして未来は自分自身の手で切り開いていくもの。
そして異星人とは違い、自然や世界樹には制限といったものは設けられていない。
――眩い光と共に、巫女の祈りが届く――
◆ ◆ ◆
「にしゃ……」
閃光が収まると、そこには戦意を失ったのか大人しくなったフォレストセルの姿があった。
触手をだらりと下げ、そこには先ほどまでの荒々しさをまるで感じない。
「やったの……? まどかが、あの怪物を制御できたの……?」
「信じられぬが、どうやらそのようだな。恐れ入るとは、このことだな」
「や、やったわまどか! まど――」
喜び振り返ったほむらは、そこで言葉を失ってしまった。
そこにいたのは、深緑の衣に身を包んだまどか。
彼女のトレードマークであった、ピンク色の髪の毛は急激に伸びてしまっている。
唐突な衣装や外見の変化はまるで――魔法少女を彷彿とさせた。
「ま、まどかなの? その姿は一体……」
「ごめんね、ほむらちゃん。私が祈ったのは、あの子を制御して戦わせることじゃない」
「まさか……」
「うん。祈ったのは――あの子を役目から解放して、そして代わりに私が戦える力を貸してください――だよ。
ほら見て、こうやって手をかざすだけで植物が生えて、自由自在に動いてくれる!」
まどかが手を動かせば、どこからともなく葉が生い茂り動き回った。
まるで、植物自身が意思を持っているかのように。
「こ、これはすごいんですぞwwwwwwww」
「え?」
「まどっちがやっているのはまさしく、グンマ―の長たちが使うのと同じものwwwwwww
その気になれば水や土などの自然関係のものも操れるし、もしかしたら歴代最強の長のように翼を生やして飛んだりwwwww」
「あ、ほんとだ! できたよ!」
「パネェですぞwwwwwwww」
世界樹の加護に加え、自身の持つ魔力から薄翠色の翼を生み出しで羽ばたいて見せるまどか。
興奮した様子の本人とオオナズチをよそに、ほむらはがっくりと膝をついていた。
祈った相手こそ違えども、まどかが行使しているのは魔法であり、魔法少女になってしまったのとなんら変わりがないためだ。
「どうして、どうしてなのまどか! あなたが戦う必要はないじゃない! なんのために、この怪物のところまできたの!?」
「ううん、あの子は怪物じゃないよ。最初はね、確かにあの子を鎮めて力を貸してもらおうと思ったんだけど……
途中で世界樹の、あの子の記憶
みたいなものが見えたんだ」
まどかは表情を曇らせ、フォレストセルと向き合う。
醜悪にして巨大、災厄とされるそれは誰が見ても滅ぼすべき存在にしか見えない。
「あの子も元々はただの植物だった。大昔の人に、世界を綺麗にしてくれと祈られて……その願いを叶えようと頑張り続けた。
人が出した汚いものを浄化しようと、どんどん森を広げて……自分の体さえ犠牲にして、おかげで一度世界は綺麗になった。
でもそれを壊したのは、また人だったの。世界樹は折られて、この地下は封印されて、世界はまた汚れ始めた。
この子はもう限界だった。もし世界が綺麗なままでも、きっと用済みで危ないからって滅ぼされてたと思う。
そして今、残された本能で……森を守って、この世界を綺麗に浄化しようとしてたんだ。
そもそも世界を汚した、人間という種族そのものを汚れの一つと考えるようになってね……」
「……」
「そんな子を、無理矢理従わせて戦わせてこれ以上酷使するだなんてあんまりだよ。
だから私は祈ったの。あの子が休めるように。それに、私自身が皆に守られたままで何もできないのも嫌だったからね」
「まどか……」
まどかは、今まで沢山の存在に守られてきた。
殺し合いが始まる前から両親に、親友に、頼りになる先輩に。
殺し合いが始まってすぐに、芸能人に命を救われた。それも二度も。
その後は魔法少女とプリキュアに窮地を救われた。
都庁に迎え入れられた後は、多くの魔物が身の回りを警戒してくれた。
DMC狂信者に命を狙われた時も守られ、そして自分を守った者たちは傷つき倒れていった。
自分の無力さを痛感し、唯一役にたてるかもしれないというこの場面で……
怪物の生い立ちを知ってしまった彼女は、それを制御できうるだけの力の一部を自分自身に集めた。
「あの子の代わりに私が戦う。今度は、私がほむらちゃんやみんなを守るから」
「でも、でもこれじゃあ……! それにこの怪物を戦力にできなければ、あの竜たちとの約束はどうなるの!?」
「……元よりフォレストセルを制御、暴走を阻止することが目的だったのだ。予定とは違うが、無力化には成功した。
友の覚悟を無駄にしてやるな。なに、今は不覚をとったが、主催者やDMC狂信者など私やレストがいれば十分――!?」
「にしゃぁ……」
いつの間にか、フォレストセルは接近していた。
その巨体に似合わぬ速さで、まどかたちに詰め寄っていたのだ。
「そんな、こいつ……!?」
「待ってほむらちゃん! もう、いいんだよ? あなたは十分頑張った。だから……え!?」
「どうしたのまどか!」
「にしゃ、にしゃぁ……」
「ちょ、ちょっと待ってほむらちゃん。えっと……にしゃしゃにしゃ、にしゃーしゃ! にしゃ?」
「まどかああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」
■ ■ ■
「えへへ、驚かせてごめんね。なんか、急にこの子の言葉がわかるようになったから……」
「まどかが怪物言語を使い始めて、この世の終わりかと思ったわ……」
「私も、おそらくレストですらこやつの言葉は理解できぬ。これが、グンマーの巫女の力か……それで、なんと言っていた?」
「掻い摘むと『お腹減ってるからあれ食べていい?』だって」
「あれってつまり私たちじゃない!?」
「にしゃあー」
「こっちみないで! もしかしなくてもそれはヨダレなの!? ってこいつソウルジェムに!?」
焦るほむらの手の甲に、素早くフォレストセルの触手が伸ばされる。
先程と同じように、その巨体からは考え付かない速度。とてもほむらに見切れるものではなかった。
「にしゃ」
「え……ソウルジェムがピカピカに!? どういうことなの!?」
フォレストセルがソウルジェムに触れた瞬間、黒く濁っていたソウルジェムが新品同様の輝きを取り戻す。
すぐさま触手は戻っていき、ほむらを捕食しようとする気配はない。
「長い年月の中で、浄化するためだけに集めてた『不純物や穢れ』がいつの間にかこの子の主食になっちゃったみたい。
確かに私の祈りでこの子は役目を終えられたみたいなんだけど、食欲の問題からやることは変わらないんだって……」
「……つまりこいつがいれば、グリーフシード問題解決?」
「多分。でも限界はあると思うよ? 私の祈りの弊害なんだけど、役目を終えたら満腹感みたいなものができたんだって」
「つまり、今までは際限なく世界の汚れを一気に取り込みすぎて暴走する恐れがあったが……
今度は暴走しない代わりに、一度に浄化出来る量が限られるようになったということか」
「そうですね。それと『最近地上からの不純物が一気に増えた。前ならともかく今なら胸焼けしそうな量』とのことです」
「おそらくそれが、レストたちが言っていた謎の物質だろう」
極めて高い浄化能力を持つフォレストセルをもってして、そう言わせる程の物質。
暴走の対価に浄化制限がついた今となっては、フォレストセルを地上に鎮座させても問題は永遠に解決しないだろう。
確実に謎の物質について知っているであろう主催者を問い詰めない限りは。
「ううん、私が祈らなければ、もしかしたらこの子が謎の物質も全部浄化してくれたのかな? でもやっぱりそんなの……」
「戦った私が断言するぞ。こやつが地上で暴走したらこの国は沈んでいた。お前の祈りは、我々や多くの生物を救ったのだ。
謎の物質に関しては、我々が自分の手で解決すればよい。その為にも、これからどう動くべきか考えるのだ」
◆ ◆ ◆
程なくして、自身のクローンを粉砕した雷竜と氷竜も合流した。
当初の予定とは異なったが、それでもまどかの祈りが世界を滅ぼす災厄の一つを鎮めた事実は変わらない。
二竜は惜しみない賞賛をまどかに送るのであった。
『さて……』
だが、ここにきて思わぬ問題……というよりも、誰もが失念していた基本的なことが発覚した。
『大人しくなったフォレストセル。それはいい。問題は――どうやって地上に連れて行くかだ』
そう、フォレストセルはでかすぎた。
その圧倒的な質量のせいで、雷竜による磁軸移動は不可能。
徒歩で上に戻った場合、世界樹の根や幹をごっそり粉砕して確実に世界樹は倒壊する。
本末転倒である。
「大人しくはなったんだから、ここで待機させとけばいいんじゃないかしら?」
「それが、どうしてか私の手伝いをするって言って聞かなくて……私としては、もうゆっくり休んでもらいたいんだけどなあ」
「まどっちの祈りで、いわば肩の荷がおりたんでしょうなwwwwww」
『役目を終えたとはいえ、フォレストセルの本質は世界樹最強の
守護者。そのために動かずにはいられないのだろう。
与えられた固定思考と、己の意思という大きな違いはあるがな』
「少々手荒になるが、やはりここから少し移動し、都庁付近にあった新宿中央公園の真下に行くのはどうだ?
後は私のレーザーなり、こやつの触手なりで一気に地上まで道を繋ぐ」
『やむを得ないが、それしかあるまい』
※間もなく新宿中央公園が跡形も無く吹っ飛びます。
「もう一つ問題はあるわ。……はっきり言って、その怪物が怖すぎる。日之影空洞でも腰を抜かしかねないわよ」
「ええっ!? こんなにかわいいのに!? ですよね!?」
「……何故そこで私に同意を求める。ここまで私をうちのめすような相手をかわいいと言うのは無理がある」
『正直、我らも怖い』
『おそらく、謎の物質その他不純物が急激に増えた結果、それを食べ続け急成長したのだろう。
……それで想定していたよりも遥かに強くなったのはいい。だが大きくなりすぎだ。見下ろされて威圧感がすごい』
「……」
「ああっ!? 言葉がわからなくてもニュアンスで悪口言われてるってわかってちょっとしょんぼりしてる!?」
「まどか、あなたなんでわかるの!? 表情全く変わってないわよこいつ!」
「これが新たなグンマーの巫女まどっちの……グンまどかの力なのですなwwwww」
「まどかに変なあだなつけないで!」
「むう……そうだ! にしゃにしゃ、にーしゃ」
「にしゃしゃ? にしゃ……にしゃあ。にしゃん!」
「にしゃーしゃにんしゃ、にしゃーん。にしゃ?」
「……にしゃ!」
「頭が痛いわ……私のまどかが、もう色々手遅れよ……」
「見て見てほむらちゃん! ほら!」
頭を抱え込むほむらが振り向くと、そこには人差し指を差し出したまどかが。
そして反対側に、触手を伸ばすフォレストセルが。
触手と指が、触れる。
「 マドカ マイ ゴッデス 」
「「!?」」
光り輝く触手の先端と指先、そしてフォレストセルのカタコトが放たれた瞬間、全員が驚きと同時に脱力。
無理も無いだろう。千年以上の時を生きてきたフォレストセル、やっと覚えて初めて喋った言葉がこれである。
「そこはちゃんとフレンドでしょうまどか!? いや、フレンドとして認めるわけでもないのだけど!」
「ティヒヒ、この一発芸でみんなもこの子をかわいいと思ってくれたら、それはとっても嬉しいなって!」
それはねーよというツッコミは心の中にしまいながら、一同は気を取り直して上を見上げる。
何はともあれ、巫女の祈りは達せられた。災厄の一つを封じ、結果としてはまどかも含めて大幅な戦力増強だ。
しかしこれはこの世界において、たった一つの問題が解決したにすぎない。
やるべきことは、まだまだあるのだ。まずは見上げ、地上への道を開通させよう。
刮目せよ。
――地上に降臨する魔神の姿を――
【
二日目・7時10分/真朱ノ窟(新宿中央公園真下)】
※間もなく新宿中央公園が跡形も無く吹っ飛びます。大事なことなので(ry
【ダオス@テイルズオブファンタジア】
【状態】ダメージ(大)、物理攻撃無効、雷耐性低、都庁リーダー襲名、メガボスゴドラの飼い主
【装備】ダオスマント、七王のグリモア
【道具】支給品一式、不明品
【思考】
基本:都庁の軍勢を守りつつ星の自然環境改善
0:都庁に帰還後、影薄組と協力し風鳴翼、謎の物質などの問題に対処
1:都庁の軍勢を束ね、主催者及び敵対者を葬る
2:機械っぽい外見の奴とDMC信者は問答無用で潰す
3:警戒すべき相手への対策を練る
※ほむらとの情報交換により、インキュベーターが都庁全体での殲滅対象になりました
【氷嵐の支配者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【状態】ダメージ(中)
【装備】無し
【道具】とけないこおり@ポケットモンスター、支給品一式
【思考】基本:都庁の仲間と共に生き残る。DMC信者は殺す
1:都庁に帰還後、影薄組と協力し風鳴翼、謎の物質などの問題に対処
2:鹿目まどかは守る
3:赤竜は今どこに……?
※一定の魔力を有する相手であれば、テレパシーで会話可能
【雷鳴と共に現る者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【状態】ダメージ(中)
【装備】じしゃく@ポケットモンスターシリーズ
【道具】支給品一式、竜の玉礎×3
【思考】
基本:都庁の仲間と共に生き残る。DMC信者は殺す
1:都庁に帰還後、影薄組と協力し風鳴翼、謎の物質などの問題に対処
2:真朱ノ窟の魔物にも協力要請しておくべきか?
3:赤竜は今どこに……?
※人間に対しては、クランヴァリネと名乗っています
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】健康、小疲労、精神疲労
【装備】ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ(穢れ0パーセント)
【道具】支給品一式、ベレッタM92(残弾95)、レミントンM870(残弾20)、ミニミM249(残弾50)、M16クレイモア×10、L16 81mm迫撃砲×5、M84 閃光手榴弾×20、88式地対艦誘導弾、長ドス、ゴルフクラブ
【思考】基本:まどかを守りつつ、主催者を倒す
0:極力まどかが戦わずにすむようにする
1:手ばなしでは喜べないが、インキュベーターざまぁ
2:あとで美樹さやかのソウルジェムも浄化しておこう
3:桃園ラブに僅かに罪悪感
【オオナズチ@モンスターハンターシリーズ】
【状態】健康、角破壊
【装備】不明
【道具】支給品一式
【思考】基本:美少女とエロ同人誌みたいなことしつつ都庁で暮らしたい
1:やはりまどっちほむほむより、さやかちゃんですぞwwwwwww
※尻尾も破壊された場合、ステルス能力を失います
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】健康、世界樹の巫女
【装備】世界樹の衣
【道具】支給品一式 その他不明
【思考】基本:自分も戦い、みんなで生き残る
0:この子(フォレストセル)はなんて呼べばいいかな?
1:クラウザーさんのためにも、DMC狂信者の暴走を止める
※巫女の祈りにより、魔法少女に近い存在へとなりました
※ソウルジェムなどはないので、肉体が致命傷を負えば普通に死亡します
※衣装はアルティメットまどかのものを2Pカラーにした感じです。戦闘力もそれの劣化版
【フォレスト・セル@新・世界樹の迷宮】
【状態】健康、空腹、沈静化
【装備】不明
【道具】不明
【思考】基本思考: マドカ マイ ゴッデス
0:にしゃあ!(ワタシ マドカ ツイテク)
※巫女の祈りにより、固定思考の呪縛から解放されました
※体質により、
テラカオス化ナノマシンも浄化、その影響も受けません
※他者の穢れなども浄化可能ですが、満腹状態では不可
※まどか以外には何を言っているか理解できませんが、まどかの手で言葉を教えることはできるようです
※関東全域に複数回の地震が発生しました
最終更新:2014年09月09日 17:22