アットウィキロゴ
DMC狂信者による二回目の都庁への進撃が始まる寸前の、都庁の地下ダンジョン・南部方面にある一室――

そこでは他の都庁の同盟仲間と同じく、都庁に爆弾を仕掛けようとする男・呉島貴虎を捕獲しようと地下を奔走していた影薄組の五人は、貴虎達とは別に地下から潜入したDMC狂信者の一団と交戦状態に陥っていた。



攻防の中央では赤毛の死神と、青白い炎のような光を纏った銀髪の兵士との激しい一騎打ちが行われていた。

赤毛の死神は影薄組のリーダー格を務める三途の案内人の小野塚小町。そのバストは豊満であった。
銀髪の兵士は狂信者をまとめあげる上層部の一角にして伝説的存在であるヴァルキュリアのセルベリア・ブレス。そのバストは豊満であった。

「幻想郷で鍛えたあたいの弾幕を喰らいな!」

小町が懐から一枚のカードを取り出した――スペルカードだ。
それすなわち弾幕攻撃を仕掛ける合図である。

「投銭『宵越しの銭』!!」

気合を入れて放たれた言葉と共に、無数の銭による弾幕がセルベリアに襲いかかった。
一見すると回避不能な銭の弾丸の群れ、そこらの有象無象の戦士ではまず回避不能だろう。
しかし、セルベリアは伝説的種族であるヴァルキュリア人。
その弾幕の大半を超人じみた反応速度でかわし、回避しきれぬ銭はラグナイトでできた堅牢な盾で凌いだ。

「チィッ、防いだか!」
「これで終わりか? ならば次はこちらから行くぞ!」

銭による弾幕が止んだと同時に、セルベリアは小町にラグナイトの槍を向ける。
槍による突撃(ランスチャージ)?
否、槍先から繰り出されるのは突きではなく、一筋の巨大な閃光――光線であった。
戦車すら一撃で蒸発しかねないラグナイトの一撃。これが直撃すれば小町の命はない。

「きゃんッ!?」

そして、小町は眩い光に飲み込まれてあえなく消滅した……

「!?」
「今のは危なかった……」
「あの攻撃を防いだだと!?」

――かに見えたが、小町は生きていた。
セルベリアはレーザーが小町に飲み込まれる直前でレーザーの方が小町を避けていった奇怪な現象を目撃し、驚きの色を隠せなかった。

「なん…だと…?!」

さらに続けて、小町が幽霊のように姿を消したかと思えば、次の瞬間にはセルベリアの背後を取っていた。
背後から襲いかかられるも、セルベリアもヴァルキュリアの超反応で対応。
槍で刀を防ぎ、危うく袈裟斬りにされかけたところを鍔迫り合いにまで持っていった。

「流石に上層部を名乗るだけあって、あっさり勝たせちゃくれないね……!」
「絶対防御に瞬間移動の能力……いや、貴様はまさか『間合いを支配する能力』でも持っていると言うのか?!」
「だいたいあってるよ。
まだ数回しか使ってないのに能力まで見抜くとは、頭まで回るみたいだねぇ」

セルベリアの読み通り、小町は『間合いを支配する能力』=『距離を操る程度の能力』を使っていた。
レーザーを自分に届かないようにして防御したのも、縮地方より早くセルベリアの背後を一瞬で取れたのも、この能力によるものである。
間合いを支配するということは、敵のあらゆる攻撃を寄せ付けない絶対防御と、擬似的な瞬間移動能力、敵に攻撃を必ず命中させる必中攻撃を可能にさせることと同義だ。
しかし、この能力はあまりにも強力過ぎたために、首輪によって一度の使用における疲労が増加する制限がなされ、使いすぎれば過労で死にいたるなど、小町自身も能力を自由に扱うことができなかった。

だがそれも昔の話。
首輪が外れた今は、この能力を少し使ったぐらいでは疲労することはなくなった。
少なくともいっぺんに百回ほど使用しない限りは過労で倒れることはないだろう。


(こちらの攻撃が尽く防がれる……まるで同じヴァルキュリアを相手にしている気分だ!)

それが、東ヨーロッパ帝国軍最強の歩兵にして敵対者であるガリア軍から鬼神の如く恐れられたセルベリアの、小町への評価――ガリア軍のヴァルキュリアと同じぐらいの力を持つと断定した強者認定である。
ならば戦況は小町に有利か、と言えばそうではない。


(こっちの攻め手のほとんどが弾かれちまってる! このアマを倒すにはあたいでは火力不足だ!)

セルベリアはヴァルキュリアゆえに攻撃力だけでなく、破格の防御力を持っている。
流石にレストやダオスのような規格外ならまだしも、FOE程度では彼女に爪を立てることもできはしないだろう。
小町の武器も銭の弾幕と、斬魄刀である神鎗の攻撃力は別段高くはなく、ヴァルキュリアを相手にするには決め手に欠けていた。
首輪解除によって『距離を操る程度の能力』がほぼ自由に使える状態で無ければ、とっくの昔に小町はやられていただろう。

(だが、ここで退いたら狂信者共が都庁の中になだれ込んじまう!
広いダンジョンで仮面ライダー一人探すのも大変なのに、面倒事を増やすわけにはいかない。
都庁の同盟のみんなや、影薄達に迷惑をかけないためにも、あたいは負けるわけにはいかない!
それにこいつに勝てないようじゃ、風見幽香に勝つのだって夢のまた夢だ!
活路はきっと見つかるハズだ! やっつけてみせる!)

敵の力は強大なれど、小町は意を決してセルベリアに挑む。

両者が膠着状態の鍔迫り合いから一旦距離をとる。戦いの仕切り直しだ。

「やるな……貴様、名はなんと言う?」
「小野塚小町……死神だ。
名乗ったからにはアンタにも名乗ってもらおうかい?」
「私はセルベリア・ブレス。とある帝国軍の侵攻部隊司令官をしていたヴァルキュリアだ。
帝国がなくなり、今の私にはクラウザーさんしかないがな」

そして二人の女は互いに啖呵を切った。

「実力のほどは概ね互角といった所か。だが、クラウザーさんのためにも貴様をSATUGAIするのは私だ。
ここからは更に全力を出させてもらおう」
「上等だぁ! こっちもアンタ相手に加減はしない。もっと本腰を入れてやるから遠慮せずに来な!」

啖呵を切ると同時に、刀と槍による白兵戦、もしくは銭と光線による弾幕合戦はよりビートアップする。
嵐のように飛び交う弾幕と、赤と青の閃光がぶつかり合う戦場には何人たりとも近づくことは叶わないだろう。



右翼。
ここでは影薄組にして箱庭学園元生徒会長の日之影空洞と、北斗神拳伝承者候補にしてDMC狂信者であるトキとのタイマン勝負が繰り広げられている。

「おお~、こまっちゃんは派手にやってんな~」
「貴様ぁッ! この天才であるトキ様を前にして余所見とはいい度胸だな!」ユクゾッ ナギッ ナギッ!!
「うおっと、わりィわりィ」

軽口を叩いて余裕そうな日之影だが、実際はとてつもない死闘が繰り広げられている。
こちらは完全な肉弾戦による拳の弾幕合戦であり、一撃一撃が死に直結しかねない拳の応酬が続いている。

「まさかジーミーで学園でも目立たない俺が、北斗真拳伝承者候補のアンタと拳を交えるなんてな……」
「クックックッ……嬉しいか?」
「それだけにアンタが狂信者に堕ちてたことが残念でならねえんだよ!」

軽口から一転、互いに百烈拳を打っているような無数の拳の嵐の中で日之影は怒声をぶつけた。

「フッ、貴様にSATUGAIとクラウザーさんの素晴らしさなどわかるか?
大災害によって世紀末となったこの世界にこそ希望が! クラウザーさんが必要なのだよ!」
「大災害で世が世紀末になってるのは知ってるし、そんな世界にこそ希望は必要なのはわかるが、だからってクラウザー一人のために無関係な人間を生贄に捧げようとするアンタらの行動が意味不明だな!」
「希望のためには犠牲も必要なのだ! 希望のためには命は投げ捨てるもの、わかるだろう?」
「ハッ、わかりたくもねぇや」
「ならば死ぬがよい!!」

もはやトキの人格はDMC色に染まっており、かつての高潔な人となりは消えていた。
クラウザーさんの死によるショックが彼を豹変させたようだ。
今なら、このトキが偽物だと言っても誰もが信じるであろう。


(――だが、腐っても狂信者に成り果てても、実力者なのは変わらずか。
流石は病んでいなければ北斗真拳伝承者になれたと言われたほどだ)

日之影は自身の存在感を徹底的に薄くする異常性『知られざる英雄』による能力の補正も手伝って秘孔を突かれてしまうような致命打こそ躱わしているものの、それ以外の攻撃によるダメージを時折受けていた。
一発一発は軽いがダメージが蓄積すれば、いずれはやられてしまう。
一方のトキは日之影に比べればダメージは浅い。
相手の存在感のなさによって中々、秘孔をつけないことに苛立ってはいるが、日之影から放たれる幽かな闘気を辿って激流に身を委ねるが如く、攻撃のほとんどを躱している。
現状で有利なのはトキであった。
貴虎捜索に出かける前に、回復魔法や食事などで傷や疲労を取り払って万全な状態でなかったら、日之影の敗北は決定的なものになっていただろう。
それほどまでに、北斗真拳伝承者になりかけた男の強さは伊達ではないのだ。

(チッ、こりゃあ、できるだけ早くこまっちゃんやモモ達の援護に向かいたいが、ちょいと無理そうだ。
俺もこんなところで死ぬ気はねえが。なんとか持ちこたえてくれよ、四人とも!)



左翼。
こちらはセルベリアとトキが強者を抑えている間に、銃で武装したモブ狂信者の集団がダンジョンの奥へ突入しようとしていた。
しかし、ある者達によって侵入は阻まれていた。
残る影薄組である、黒子テツヤ・東横桃子・赤座あかりの三人だ。
彼らは(桃子には雀力を戦闘力に変える異能はあるが)基本的に非戦闘員である彼らは、自分達のステルス能力が役に立つと思い、貴虎捕縛に自ら志願した。
結果として、貴虎ではなくセルベリア達との戦いで手一杯である小町と日之影の代わりに、狂信者達の侵攻を抑える役目を引き受けることになった。

「……」
「SATUGAIセヨ! SATUGAぐわッ」

黒子は冷静にショットガンで狂信者を撃つ。撃たれた狂信者が地面に転がった。

「さっさとここから出て行ってくださいっす!!」
「うおおおお、いったいどこから!?」

桃子は黒子から借りた猟銃で狂信者を狙撃し、ダメージを負わせた。

「あかりっくサンダー!!」
「雷まで!?」

そして、残るあかりは黒子から譲渡されたエンシェントソードによる強力な雷撃で多くの狂信者の進軍を足止めする。

銃撃に雷撃、それに加えて影薄達特有の影の薄さも手伝い、どこから飛んでくるかわからない攻撃となって、狂信者達の突撃を押しとどめていた。
狂信者達も負けじと反撃するが、影薄達の前では銃弾は、せいぜいかすめるぐらいが精一杯だった。。
銃弾の放たれた方向から場所を推測して攻撃しても、その頃には三人はとっくに移動しており、無駄弾を増やすばかり。
狂信者も銃を持っているため、硝煙の匂いだけでは影薄達を辿れない。
そもそも三人揃えば、レストすら欺くほどのステルス能力の持ち主達であり、モブ狂信者程度の索敵能力では感知は不可能だ。
そうこうしている内に、モブ狂信者は一人また一人と倒れていく。
このようにして三人はモブ狂信者達の進軍を押し止め、翻弄していた。

「はあはあ……」
「……大丈夫、モモちゃん?」
「し、心配はいらないっす! ただ、人を撃つのには慣れてなくって……」
「東横さん……無理もないでしょう。
人を撃ったり傷つけたりするのは本当は嫌でしょうに。
赤座さんだってそうでしょう?」
「「……」」

しかし、普段から暴力を振るうことになれていない影の薄い少年少女達にとって、人を撃つ行為そのものが精神を削らせるものであった。
(桃子はマーダーであるぼのぼのを斬殺しているが、あれは必死だったため、仕方なく殺害しただけである)
いちおう、モブとはいえ大半は人間ではあるので、なるべく手足や武器を狙って命までは取らず、あくまで足止めに徹しているが、それでも人に銃弾を当てるのは気持ちの良いことではなかった。
手足を狙うと言えど、その怪我が原因で後で死んでしまう可能性だってある。
戦い疲れはあれど肉体的なダメージはほぼない三人だが、小町や日之影と違って戦う時間が増す度に精神的な疲労は蓄積されていく。


「でも、ここであかり達が戦わなくちゃ、狂信者達が都庁の中に入っちゃうよ!
都庁のみんなのために主人公として……いや、主人公じゃなくても、ここで逃げ出すなんてあかりにはできないよ!」
「あかりちゃんの言う通りっす。
中には強力な魔物や仲間がいるとはいえ、油断はできないっすからね」
「小野塚さんと日之影さんは手一杯で助けを呼ぶ暇もない以上、こっちは僕達で戦うしかないということですね」

されど、三人は己の都合に構わず、戦う道を選んだ。
都庁を守り、信じる仲間達のためにも自分達だけ戦わないわけにはいかないのだ。
そうして三人は再び銃と剣を握った。


場面は再び右翼。
日之影とトキの戦いもいよいよ決着がつく時が来た。

「闘気は十分に溜まった。貴様を確実に殺せる私の必殺奥義で葬ってやろう」

そう言うとトキは一旦、日之影から十分な距離をとり、その場に胡座をかきだして両の手を上げた。

「なに!? あの構えは!!」
「惨めな醜態をさらしながら死ぬがいい。
クラウザーさん! 我が奥義で敵を葬り去るところを是非ご覧あれ!」

その構えは、かの有名な北斗有情破顔拳。
両の腕から放たれるビームのような闘気に当たれば、(体中を捻じ曲げつつ、快楽の中でアヘ顔になりながら)相手は死ぬ。
しかも射程は無限大で、発射速度も異様に早く、そのくせタメもほぼ無い。
直撃すればどんな相手でも確実に死ぬ、トキの一撃必殺奥義であった。

トキが技を放つ前に追撃する――間に合わない。
追撃を間に合わせないために十分な距離を取ったのだ。トキが闘気を放つほうが早いだろう。
さらに、追い打ちをかけるような現状を日之影は把握してしまう。

「後ろにはこまっちゃんやモモ達がいる! このままじゃ……!」
「フフフッ、気づいたか。だが、もう遅いわ!!」

トキの破顔拳の射線上にはセルベリアと戦っている小町、モブ狂信者を押しとどめている三人の影薄がいる。
もし放たれた闘気を避けられなかった場合、仲間は破裂して死ぬことになる。
しかし仲間に注意を喚起する時間も、もう無い。

ちなみに、この場合は狂信者達も巻き添えになるが、ラグナイトの光に守られたセルベリアには闘気は効かず、モブ狂信者達は死んでも代えが効く上に本人達もクラウザーさんのための死なら了承する、と計算してトキは味方ごと破顔拳を放てるのである。

「万事休す……か」


有情破顔拳を防ぐ手立てはなく、日之影は打つ手なしと諦めて――


「……なんてな! 俺はアンタがそれを使うのを待ってたんだ!!」


――などいない。
箱庭学園元生徒会長は諦めておらず、闘志は一切鈍っていなかった。
先程も述べたが、トキの技の発射速度と、日之影と空いた距離からして、日之影の攻撃は間に合わない。
後ろには味方がいて、仮に日之影が避けても味方に大なり小なり被害が出る。
そのようにトキの計算は完璧なハズであった。


相手が型破り(アブノーマル)に定評のある箱庭学園の生徒であることを除けば。


「ずおりゃああああああああああああ!!!」

トキが奥義を放つ直前、日之影は地面に拳を突きたて、そのままバキバキと床を引き剥がした。
剥がした床を盾にして防御?
いや、違う。
床と言っても僅か一部ではない。

戦場となっているダンジョンの一室・「右翼側のほぼ全部の床」だ。
その床の上にはトキも乗っており、トキが破顔拳を放つより早く、日之影はちゃぶ台返しのように剥がした床を座っているトキごとひっくり返した。

「――北斗有情破顔拳……なにいいいいいい!?」

トキの体が床ごと90度ひっくり返る。するとどうなるのか?
有情破顔拳による闘気のビームの射線軸が変わり、日之影達のいる正面~側面の横軸から、誰もいない天井と床の上下縦軸に放たれた。
相手が乗っている土俵を破壊し、発射軸を変えてしまうことで自分や味方の身を守る――それが日之影の有情破顔拳攻略に対する答えであった。
逆に言えば土俵を破壊して利用するなど、純粋な格闘戦能力やセンスならば黒神めだかでさえ足元にも及ばないと言われる彼以上の強者にしかできない芸当である。

「馬鹿な、この天才たる私の必殺奥義が敗れるハズが……うわらば!!」

そして、破顔拳発射直後による膠着状態、さらに奥義を破られたことへの動揺によって生まれた僅かな隙を日之影が見逃すハズもなく、トキの首に日之影の手刀が入り、その一撃がトキの首の骨をへし折り、絶命させた。

人殺しは日之影の望むところではなかったが、トキほどの強者を見逃せば、また狂信者として多くの人々を殺すかもしれない。
さらに付け加えれば、その一瞬しかトキほどの強者を仕留められるタイミングはなく、迷ってる暇もなかった。
そのような考えがよぎり、日之影に冷徹な判断を下させ、トキを殺害する道を選ばせた。


今しがた殺害したトキの死体に哀れみの表情を向けながら、日之影は呟く。

「アンタが病んでいたのが体だけだったら、負けていたのは俺かもしれねえ。
……まあ、アンタが心まで病んでなかったら、こうして殺し合うこともなかったんだろうがな」


純粋な格闘の腕はトキの方が上手であり、そのまま殴り合いを続けていれば死んでいたのは自分であったろうと日之影は考える。
トキの敗因はあの世にいるクラウザーへの顕示欲から大技に走ってしまい、日之影の死を貢物にしようとした結果、相手の機転に敗れたのである。
強すぎる信仰が、トキに激流に身を任せる彼本来の冷静な戦法を忘れさせたのだ。
クラウザーを失ったことで心の病に侵されたトキだからこそ、日之影に敗れたのである。


そして、中央。
こちらでも戦いの決着がつきかけていた。

互角と思われた戦いであったが、一定時間が過ぎたのを境にセルベリアの纏う光がだんだん弱まっていった。

「ハァハァ……ラグナイトの光が……! ぐうッ!!」
「息が上がってるってことは、その光と力は以前のあたいと同じく、首輪によって制限されていたみたいだね!」

ラグナイトの光の減衰は、セルベリアの防御力の減衰を意味する。
その機を狙って小町が銭の弾幕を撃ち込めば、そのほとんどが直撃し、若干のダメージをセルベリアに与えた。

ヴァルキュリア化は首輪によって力を使えば使うほど体力を大幅に消耗する制限がなされていたのだ。
そのため、セルベリアの体力は僅かな時間のうちに大きく消耗し、ヴァルキュリア化の維持も難しくなっている。
小町も首輪が外れて制限がなくなったとはいえ、この一戦で能力を大量に使ったために疲労の色は見られたが、セルベリアと比べればまだまだ余裕があった。
このまま戦えば、余力の差でセルベリアの勝機は薄いと言え、そこへさらにダメ押しするように増援が現れる。

「スマンこまっちゃん! 待たせた!」
「日之影!」
「トキほどの猛者がやられたのか……!?」


右翼にいたトキは倒され、影の薄い巨漢・日之影が小町の横に並んだ。
部下のモブ狂信者達は他の影薄達によって足止めを食らっているため、味方の援護は期待できない。
形成は明らかにセルベリアにとって不利であった。
それを見越して小町はセルベリアに降伏を迫る。

「さあ、白旗あげて降参するなら今のうちだよ、セルベリアさんよ」
「まだ負けが決まったわけではない……小野塚小町、貴様らを絶対にレ○プしてSATUGAIしてくれる!」
「そうかい。
あたいらは殺しなんてしたかないが、アンタらに殺害されんのもごめんだし、やるっていうんなら是非もない。
満身創痍か……最悪、死を覚悟するんだね!」

明らかに劣勢で勝機の薄いにも関わらず、セルベリアは影薄組との戦いを選んだ。
何が彼女をそうさせるのか?
勿論、クラウザーへの強い信仰である。


小町が刀を、日之影が拳を、セルベリアが槍と盾を構え、いざ、第二ラウンドが始まる……そう思われたとき。

DMC狂信者の側から突如、青い髪に桃のついた帽子と腕に持つグラットンソードが特徴的な少女が現れた。
その少女の姿に、小町は目を見開く。

「おまえは……緋想天の時の天人、比那名居天子?!」
「死神の小野塚小町……都庁の軍勢に組みしていたのね……汚い、さすが死神汚い」
「知り合いなのか、こまっちゃん?」
「どうやら互いに面識があるようだな、天子」

小町と天子は同じ幻想郷の出身者であり、緋想天という事件(黒幕は天子本人)の折に面識をもっているのだ。

「アンタも狂信者なのかい……ハッ! アンタの従者も浮かばれないね」
「おいィ? クラウザーさんの素晴らしさを理解出来ない愚か者はマジでかなぐり捨てンぞ?
それから衣玖に関しては……何も言うな」

天子は狂信者であり、これで1対2から2対2となることで両者のパワーバランスも対等に近づいた。
モブ狂信者達も「きた!盾きた!」「メイン盾きた!」「これで勝つる!」という喝采を上げており、天子の狂信者内での実力の高さを物語っている。
戦いになれば苦戦は強いられるかもしれないと思い、小町と日之影の二人は身構えた。

しかし、天子がこの戦いにおいて剣を抜くことはなかった。
彼女はあくまでメッセンジャーとしてここにやって来たのだ。

「おっと、勘違いするな。私は戦いに来たわけじゃない。
……セルベリア、狭間と大和が配置についた。陽動はもう十分だ」
「!……そうか」

天子の言葉を聞いたセルベリアとモブ狂信者達は、途端に撤退の準備に入った。
一方、天子の言葉に入っていた『陽動』という言葉に小町も反応し、問い詰めようとする。

「アンタらが陽動だって?!
おい! そりゃどういうことだい!?」
「お前達がそれを知ったところで意味はない。時既に時間切れだからな!
さあ、破壊力ばつ牛ンな地震がくるぞぉ」

小町の問いに対して返ってきたのは望んでいた答えではなく、天子のわけがわからなくはない言葉(ブロント語)と局地的かつ強力な地震であった。

「きゃん! 地震かい!?」
「こいつは……かなりでけえぞ!!」



その頃、都庁の地上では魔神皇・狭間を中心としたDMC狂信者による侵攻が始まっていた。
そして、大和が都庁の世界樹攻撃のために龍脈の龍を召喚したのも、ちょうどこの時刻である。
龍脈の龍による世界樹へのダメージの余波は、地下にも広がり、大地震という形で影薄組を襲った。
具体的には玄室全体の床が揺れ、落石が落ちていき、一室が土砂で埋もれていく。
それによって影薄組が満足に動けなくなった内に、天子ら狂信者達は、自分達が侵入してきたルートからの脱出を図る。

「逃がすかい!」

小町はすかさず、距離を操る程度の能力でセルベリア達を引き寄せようとした。しかし……

「待て、こまっちゃん! あれを!」
「はッ、モモ達が!?」

日之影の指し示した方向を見ると、左翼でモブ狂信者集団と戦っていた三人の影薄達が地震に足を取られ、身動きがとれなくなっていた。
さらに彼女らの周辺には大量の落石が降っており、逃げ遅れた狂信者達が次々と岩に押しつぶされる惨状が広がっていた。

「あかり達、ひょっとしてピンチ?!」
「ひょっとしなくてもピンチですね、赤座さん」
「死にたくないっす! 助けてください、小町さん!!」

セルベリア達を追うなら今を置いて他になかったが、日之影のように頑丈な体を持つわけではない三人をこのまま無視すれば、落石によってまとめてミンチになってしまうだろう。
仲間を見捨てて狂信者達を追うという選択は小町の中にはなく、彼女は能力をセルベリア達ではなく、かけがえのない仲間達に向けて使った。

「今、助ける!」

小町はまず、距離を操る能力で三人を自分と日之影のもとに手繰り寄せ、さらに天井から降ってくる落石が一つも仲間に当たらないように距離を操って当たらないようにする。
それが仲間達を救うための最善の策であると小町は信じた。
――それは引換に、セルベリアを始めとする狂信者達をダンジョンから脱出を許すことを意味していた。

セルベリアは脱出する前に、落石でドンドン埋まっていく一室の中で、小町がいるであろう方角を見て、そして啖呵を切った。

「小野塚小町! おまえはこの程度で死ぬ輩ではあるまい。
再び相まみえることがあれば、その時はこの手で必ず貴様をレ○プ(倒す)する!
その時までは必ず生きていろ!」

それはセルベリアから小町への挑戦状であった。
その挑戦状を叩きつけたのを最後にセルベリアはダンジョンから脱出した。
一方、仲間を助ける作業をしていた最中に聞こえたセルベリアの言葉より、因縁をつけられたことを理解した小町はため息混じりに呟くのだった。

「チェ、また厄介そうなのに目ぇつけられちまったね」


 ※

龍脈の龍が都庁の世界樹に攻撃をしかけた隙にセルベリアと天子の狂信者部隊は都庁の地下を抜けて、南にある南新宿の地下まで脱出した。
セルベリアの部隊に、ディーから与えられた任務は陽動である。
暴れることで敵の目を引きつけ、地下では貴虎の都庁侵入の手助けを、地上では大和が龍脈の龍を召喚できるようにさせるための時間稼ぎをさせるために、陽動部隊が送られたのだ。
(ちなみに貴虎はネットで自分が都庁に侵入し爆弾を仕掛けることを吹聴していたが、これはスマホやパソコンが使える人間が僅かながらも組みしている都庁軍には高確率で気づかれていると見ており、突入支援に陽動部隊を送り込む必要があると見越しての判断である)

結果として大和は龍脈の竜の召喚に成功し世界樹に打撃を与え、貴虎の地下ダンジョン侵入への成功率を上げた。
一先ず、任務を終えたセルベリアは天子という護衛をつけて、態勢の立て直しのために一度、ビッグサイトまで後退することになった。


(だが、代償は高くついた……)

陽動そのものは成功したが、見返りに上層部にして古参ファンの一八と手練のトキが戦死した。
その事実にセルベリアは歯噛みする。

(元より独断専行し始めた一八はまだしも、トキまで失うハメになるとはな……
警戒が地上のフォレストセルや、レストとダオスにばかり目が行き過ぎていた。
我々はまだ都庁軍を侮っていたのかもしれない)

さらにセルベリアは先ほど戦った小町と影の薄い集団についても着眼する。
実は本来ならもっと多くの魔物を引き付ける予定だったが、セルベリア達はむしろ翻弄され、影薄組以外の敵を釘付けにすることができなかった。
セルベリア自身もこのまま戦闘を続行するには危険と思われる損耗をすることになった。
天子が駆けつけなければ、自分は小町達にやられていただろうとも自覚している。


(デスマンティスの情報にもなかった異様に隠密性の高い集団……そして小野塚小町、大阪で巨大ロボットを破壊した赤毛の女……その女もレストやダオスほどではないにしろ、相当な実力を持っている。
こいつらの危険性を仲間達に伝えておくべきだな)

今後のためにも仲間達に、小町と影薄達という実力者が都庁にいることを報告する必要があるとセルベリアは見ていた。
ちなみにデスマンティスの報告に小町以外の影薄組の情報が載っていなかったのは、彼らの影が薄すぎて報告し忘れたためである。

「天子、おまえは小町と面識があるようだが、他に何か知らないか?」
「サボり魔で乳の大きい死神ということぐらいしか……だけど、幻想郷で会った時とは目つきが違う。
この殺し合いがぐーたらな奴の何かを変えたのか、まるで怒りが有頂天なナイトの如き本気さを感じた。
いずれにせよ、警戒の必要があるのは確定的に明らかだ」

なんにせよ、小町及び影薄組の存在が自分達DMC狂信者の障害になることを二人は予感させた。
そんな思惑を抱きつつ、二人は生き残ったモブ狂信者達と共にビッグサイトへの後退を急ぐ。

 ※


場面はダンジョンの一室に戻る。
龍脈の竜による巨大な地震は止み、一室に落石が降ってくることはなくなった。
未だに部屋が振動しているが、これは地上でレスト達とDMC狂信者の軍団が大規模な戦闘を始めたからである。
部屋は落石と土砂でほとんど埋もれていたが、小町の能力によって影薄組五人の周りだけは避けるように空間ができていた。

「みんな、大丈夫かい」
「ありがとうっす、小町さん。
おかげで全員無事で済んだっす」
「そのようだね……安心したよ」

小町が心配して仲間の安否を確認したが、全員がかすり傷や疲労は目立てど、命に別状のあるダメージは追っていなかった。
生き残った狂信者は全員ダンジョンから脱出し、そうでなければ落石に潰されて死んだのか敵は周辺にも見られず、ここ一帯は安全になったといえよう。
結果的に影薄組は誰ひとり欠くことなく危機を脱出した。

しかし、それは一つの危機を脱したに過ぎないのであった。

「でもまずいよ、小町ちゃん」
「完全に閉じ込められましたね、これは……」

影薄組が入ってきた部屋の出入り口は地震と落盤によって積もった大量の落石と土砂で塞がれてしまっていた。
同様に狂信者達が侵入してきたルートも同じく塞がっていた。
これでは部屋から出ることができず、影薄組は地下の一角に閉じ込められてしまったのだ。

「確かにまずいね、こりゃあ」
「ああ、さっきから上の方からの揺れを感じるし、地上で戦闘が起きてるのかもしれねえしな」
「狂信者の二回目の攻撃が始まったんすかね……」
「地上が攻撃を受けてるってことかい。
さっきの地震は尋常なものじゃなかったし、とにかく急ぐべきだね。
掘って掘って掘りまくって早いとこ、ここから出るよ!」

このままでは身動きがとれず、閉じ込められている以上は地上や他の仲間達との状況確認もできないため、脱出を急ぐ必要があった。
そのために五人は団結して落石や土砂を掘る作業に移った。


その中で小町には引っかかることが一つあった。

(あいつら、自分のことを陽動だって言ってたね……おそらく、さっきの地震と都庁に爆弾を仕掛けようとしている貴虎って奴のための陽動か?)

セルベリア達はあくまで陽動部隊。
その言葉が本当ならば、小町達はまんまとハメられたことになる。
自分達が目の前の敵に気を取られていた分、貴虎の侵入を許していないか、それが気がかりであった。

万が一、貴虎が都庁の内部で爆弾が作動し、世界樹が灰になればそれは都庁同盟軍の敗北を意味する。
爆弾が起爆すれば多くの魔物や、力を貸している人間達も死に絶えるだろう。
当然、都庁の地下にいる自分達も例外なく爆発に飲まれて死ぬかもしれない。
それだけでなく世界樹がなくなれば、主催がバラ撒いたであろう謎の瘴気を浄化する手段もなくなり、日本は風鳴翼のような怪物塗れになるかもしれない。
それでは自分達が打倒すべき主催の思うツボである。

そうなる前に同盟の誰かが先に貴虎見つけて捕縛できているならそれでいいが、あまり他人任せにばかりするべきではないと、四季の喪失から小町は学んでいる。
その考えが頭をよぎり、小町の中の焦りを加速させる。

(あたいはもう、四季様、あやの、混沌の騎士、マナや美樹やワドルディのように仲間が死んでいくのはゴメンだよ。
一人でも多く殺させないためにもあたいも全力で頑張らないと!)

この殺し合いで出会った多くの仲間への情と、仲間の喪失への恐れ、そして芽生えた責任感が小町を確実に変えていた。
今の小町の顔はロワ開始時点のダルそうな顔ではなく、凛とした一介の戦士そのものであった。



都庁同盟軍とDMC狂信者軍、そして貴虎を中心とした残念な強者達との熾烈な戦いはまだ始まったばかり……
果たして小町と影薄組は、閉じ込められたダンジョンから脱出し、貴虎の捜索に戻れるのか?



二日目・9時00分/東京都・都庁地下南部】

【影薄組】
※落石と土砂によって地下の一角に閉じ込められました
 自力での脱出には1~2時間かかります

【小野塚小町@東方Project】
【状態】ダメージ(小)、疲労(中)、首輪解除
【装備】斬魄刀『神鎗』@BLEACH
【道具】舟
【思考】基本:もう仲間を誰も失わない為にカオスロワを終わらせる
0:早くここから脱出し、呉島貴虎を探す
1:殺し合い打破のためにも都庁には協力する
2:もう二度と仲間を置いて行こうとしない
3:幽香と戦う事を覚悟する
4:変なの(セルベリア)に因縁つけられちまったね
※飛竜たちと情報交換して、主催達が九州ロボにいることを知りました。
※ダオスとの情報交換で、カオスロワちゃんねるの信憑性に疑問を持っています(フェイ・イェンにもたらされた情報より、少なくとも都庁の悪評は天魔王軍による仕業だと理解しました)


【日之影空洞@めだかボックス】
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、首輪解除
【装備】己の拳
【道具】支給品一式
【思考】基本:主催者を倒す
0:早いとこ、ここから脱出し、呉島貴虎を探す
1:仲間を守る
2:混沌の騎士が遺した謎を解く
3:↑の全部やらなくちゃあならないのが先代生徒会長の辛いとこだな。


【東横桃子@咲-Saki-】
【状態】ダメージ(小)、疲労(中)、精神疲労(中)、首輪解除 、全裸(恥部を葉っぱで隠してる)
【装備】猟銃@現実、斬鉄剣@ルパン三世
【道具】支給品一式、スマホ、謎の物質考察メモ、筆記用具
【思考】基本:仲間と共にカオスロワを終わらせる
0:さっきの揺れ……地上の人達は大丈夫っすかね?
1:加治木先輩や友人たちと生き残る
2:時間があればスマホを使ってネットで情報を探る(現在は電波の届かない地下なので不可)
3:DMCファンだけど信者の暴動にはドン引き
4:早 く 服 を 着 た い


【黒子テツヤ@黒子のバスケ】
【状態】ダメージ(小)、疲労(中)、精神疲労(小)、首輪解除
【装備】ウィンチェスターM1912
【道具】死出の羽衣@ 幽々白書
【思考】基本:仲間と共にカオスロワを終わらせる
0:脱出を急がないと
1:友人たちと生き残るためにも、都庁に協力する
2:空気中に漂う物質への対処法を考える(世界樹が有力?)
3:狂信者には絶対に負けません


【赤座あかり@ゆるゆり】
【状態】ダメージ(小)、疲労(中)、精神疲労(中)、首輪解除
【装備】エンシェントソード@Minecraft
【道具】マムルの肉@風来のシレン
【思考】基本:仲間と一緒にカオスロワを終わらせて主人公らしく大活躍!
0:戦いは怖くても、あかり負けない!
1:混沌の騎士の分も頑張る
2:まどかと同じく、人間と魔物の共存に賛成
3:オオナズチ以外の都庁のモンスターの背中に乗りたい


【二日目・9時00分/東京都・南新宿地下】

【DMC狂信者 セルベリア部隊】
※他にも狂信者の部隊があるかもしれません

【セルベリア・ブレス@戦場のヴァルキュリア】
【状態】ダメージ(小)、疲労(大)
【装備】ラグナイト製の槍と盾
【道具】支給品一式、モブDMC狂信者×10人
【思考】
基本:クラウザーさんの復活
0:態勢の立て直しのために一度、後退する
1:仲間に、小町と隠密性に優れた集団(影薄組)の危険性を伝える
2:小町はいつか、この手で必ずレ○プ(倒す)する
3:マクシミリアン殿下が生きてたらクラウザーさんとSATUGAIの素晴らしさを伝える
※制限により、ヴァルキュリア化による疲労が増大しています


【比那名居天子@東方project】
【状態】健康、謙虚
【装備】グラットンソード@FF11
【道具】支給品一式
【思考】
基本:SATSUGAI
0:セルベリアをビッグサイトまで送る
1:小町が都庁に組みしていたとは……汚い、さすが死神汚い
2:小町と、彼女の率いる影の薄い連中を強く警戒
3:従者が死んでも、ここは謙虚にポーカーフェイス

【トキ@北斗の拳 死亡確認】
最終更新:2017年08月20日 07:29