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狂気の章 2

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匿名ユーザー

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木造の橋は、歩くたびにギシギシと音を立てて揺れた。橋の向こうに見える集落が、霧雨村なのだろう。
なんの偶然か、雨はどうやら霧雨になりつつある。川の流れが速くなってきた。
小早川は、前を歩く美貴を見た。彼女は時折振り向いて、小早川に笑いかける。その笑顔が、今の小早川には不気味だった。

橋を渡りきり、集落に入る。入ってすぐ駐在所が見えた。中にいたのは女性警官だった。
美貴は小早川を見ると、小声で言った。

「あの人は、東京から来たんです。嫌い」

女性警官のことなのだろう。話し終わると、美貴は早足で歩きだした。小早川は慌てて後を追う。
道を真っすぐ進むと、診療所があった。はて、と小早川は思う。診療所があるのなら、自分は呼ばれなくともよかったのではないか。
戸を開けながら、美貴は中に向けて言った。

「お医者さまが来ましたよー」

「はい」と返事があり、奥から出てきたのは、中学生から高校生くらいの少女だった。真っ赤な着物が、不釣り合いな色気を出していた。

「希美ちゃんって言うんです」

美貴が紹介した。小早川の挨拶に微笑むと、希美は改めて自己紹介をする。よく見ると、口紅を塗っているらしく、唇までもが真っ赤だった。


希美は言った。
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