SF研
部会レジュメ 『バナナ剥きには最適の日々』
by W.H.
【著者について:円城塔】
1972年生まれ。北海道札幌市出身。東北大学理学部物理学科卒。東京大学院総合文化研究科博士課程修了。北大・京大・東大とポスドクを転々としている片手間に小説を書き始める。その小説が指導教官の目にとまり、賞に応募することを勧められる。「
Self-Reference ENGINE」で第7回小松左京賞最終候補まで残るが受賞ならず。後に早川書房から発行。生活のためにウェブ・エンジニアとして有限会社シングラムに勤めるが、1年半ほどで退職。2010年2月にホラー作家の田辺青蛙と結婚。
東北大学SF研究会のOBである。ポスドクの現状を日本物理学会の会誌にぶちまけていたりする。
2006年:「Self-Reference ENGINE」で第7回小松左京賞最終候補。
2007年:「パリンプセストあるいは重ね書きされた八つの物語」
第50回群像新人文学賞第二次選考通過。
「オブ・ザ・ベースボール」
第104回文學界新人賞受賞、第137回芥川賞候補。
2010年:「烏有此譚」 第23回三島由紀夫賞候補。
「ムーンシャイン」第41回星雲賞短編部門候補
ほかに「Boy's Surface」「Twitter小説集 140字の物語」「後藤さんのこと」など。
ペンネームは指導教官であった金子邦彦の『カオスの紡ぐ夢の中で (小学館文庫)』収録の短編「小説・進物史観―進化する物語群の歴史を観て」に登場する自動物語システムが名乗る筆名のひとつ円城塔李久に由来する。
【あらすじ】
僕は、ヒト思考型人工知能。機械で測定できない現象を発見した時、それが宇宙人か否かを判別するために搭載されている。あまりにも長くの旅をしている僕は、自分の中にチャッキーという疑似人格を創り出して気を紛らわせていた。ところが、スペースデブリの直撃を受けて以前の記憶を全て無くしてしまう。
【感想】
円城先生の作品の中でも随一の読みやすさを誇る今作。(途中で休憩せずに一気に読み終えられた!)タイトルはバナナフィッシュにうってつけの日のもじり?
思考すること以外に特に何もすることがない僕が、よく分からないことをつらつらと考えているのがかなり人間臭く感じました。その考え方に相当な記憶領域使っているんじゃ…意図的にそういう冗長なシステムになっているのかも。
むしろ、こんな環境に置かれていて、目的もなく漠然と思考を続けている存在の方が、画期的手法を見つけたりするんじゃないかな、等と考えてみたりします。
昔から、答えのないことについてぼーっと考え続けることは好きなため、微妙にこの人工知能がうらやましい。宇宙人かどうかを判別するだけの簡単なお仕事です。実際に生身の人間が同じ状況に置かれたら1年も持たずに発狂するなぁ
最終更新:2011年02月13日 01:33