たったひとつの冴えたやりかた(2025年版)


著者紹介
 ジェイムズ・ディプトリー・ジュニア。アメリカの作家。1915年生まれ。ペンネームは男性風(由来はマーマレードの瓶にあった言葉にジュニアを付けたでたらめ)だが、女性。CIAで働いた経験がある。1968年作家デビュー。70年代後半までペンネーム通りの男性作家として見られていた。本作が遺作。受賞作には、「愛はさだめ、さだめは死」(1973年ネビュラ賞受賞)、「接続された女」(1974年ヒューゴー賞受賞)などがある。日本で刊行されている短編集には『愛はさだめ、さだめは死 』(ハヤカワ文庫SF)、『故郷から10000光年』(ハヤカワ文庫SF)や本作(ハヤカワ文庫SF)などがある。

図書館パート

あらすじ
 時は三篇よりも未来、連邦草創期に書かれたファクト/フィクションとして本編を紹介していく。

登場人物
〇モア・ブルー
 司書。ロマンスに弱い。最近の若いのは……みたいなことを最初は思っていたが、だんだん態度が軟化していくのが見て取れる。

〇コメノのカップル
 大学生。雰囲気をつかむために連邦草創期の事実を基にした作品をリクエストした。雌雄がはっきりとは決まっていない種族なので、背の高低で書き分けられていたが、途中から青年と娘という書かれ方に代わっている。背の高いほうが事実などを話し、背の低いほうが感想などを話しがち。

〇ムームの学生
 無作法。コメノノカップルの後ろで待っていて、ある程度話が弾んだところで不機嫌そうに喉を鳴らす。天文学を専攻している。話が終わるよっていう合図。

「たったひとつの冴えたやりかた」

あらすじ
 お金持ちの家に生まれたおてんば少女のコーティーは16歳の誕生日にもらった宇宙船で宇宙に(親には無断で)飛び出した!うわさに聞いた行方不明の船を追う旅の最中、彼女はその船からのメッセージ・パイプを拾い、付着していた寄生生物のシロペーンに寄生される。コーティーは持ち前の好奇心と度胸で、安全な場所には引き返さずに、メッセージ・パイプの送り主が向かった場所にして、シロベーンの故郷の惑星ノリアンを目指すことにするのだった。

登場人物
〇コーティー・キャス
 おてんばな16歳。恋よりも何よりも宇宙の旅に興味がある。家はかなりの金持ちで彼女の登場する宇宙船も両親からのプレゼント。宇宙にあこがれを抱くだけあって、宇宙船の扱いはしっかりマスターしている。
 冒頭では親からプレゼントされた宇宙船で人類が未調査の空間が多くを占める<リフト>にほど近い連邦基地に来て、リフトへの旅に向けて準備していた。そこでふと聞こえた行方不明の補給船のうわさを聞き、退屈な宇宙の山小屋に行く小旅行よりも彼らを追うことを選んだ。そして、行方不明船からのメッセージ・パイプを拾い、シロベーンに寄生される。しかし、彼女はそんなことにはめげず、むしろその寄生生物と友人となる。シロベーンとの二人旅となってからは異星人インタビューを収めたカセットテープを録りながら旅を続け、ついに惑星に到着する。そこで当初の目標であった行方不明船とその旅の行く末を収めた録画、そして乗員の遺体を発見する。惑星での旅の様子も録音し、帰路につくために宇宙に飛び立つがシロベーンが単為生殖の欲求を抑えきれなくなったため「たったひとつの冴えたやりかた」としてノリアンにとっての太陽に突っ込む事を決断し、成功させた。

〇シロペーン
 惑星ノリアンの寄生生物。若い個体で、単為生殖を抑えるすべを完全に習得していない。
ボーニイとコーに寄生して宇宙へと旅立ったイーアのうちの一個体。同行したイーアが老い、師匠のいないイーアが大量に孵化するのが怖くなり、彼らの送ったメッセージ・パイプに付着して宇宙を漂流していた。コーティーに寄生してのちは、彼女の喉を介してイーアとその惑星についての情報を与えた。ノリアンを発ってからは単為生殖しようとする欲求を必死に抑えていたが、だめだった。
 最初はシロぺーンだと思っていたけど、シロベーンだった。

〇ボーニイとコー
 補給船の乗り手をする傍ら、(無給で)マッピング作業もしている。お気楽な性格。あまり頭が良くないなどと結構ひどい評価を受けている。性別はおそらくどちらも男。
 職務で惑星ノリアンにたどり着き、イーアー・ドロンとのファースト(ではない)・コンタクトを果たし、現地民の協力もあり、燃料集積所を設けることに成功した。しかし、彼らに寄生したイーアは老いていたため、宇宙に飛び立ってから生まれた幼体たちに脳をめちゃくちゃにされ、ノリアン地表に落ち、のたれ死にした。

〇司令
 コーティーが最後に出発した基地の指令。彼女の若さに不信感を抱いたが、彼女自身の船であり、操縦技術そのものに問題はなかったため、止めなかった。
 コーティーからのメッセージ・パイプが届いてからは副官や各種専門家、そして彼女の父とともに録音を聞き届けた。

「グッドナイト、スイートハーツ」

あらすじ
 宇宙でサルベージと救難の仕事を営む男、レイブンはある日一隻の難破船に出会う。その船の名は<マイラⅡ号>。この燃料切れの船に乗っていた女、イリエラとの出会いをきっかけに、レイブンは騒動に巻き込まれていく……。

登場人物
〇レイブン
 最終戦争に参加した元軍人で、今は一匹狼の宇宙船乗り。最終戦争からの70標準年のほとんどを冷凍睡眠して過ごして居たため、肉体年齢はいまだに30歳。最終戦争のトラウマを克服するためのリハビ療法を受けているため、戦前の記憶はほとんど持ち合わせていない。愛機の名前はブラックバード号。
 物語冒頭では冷凍睡眠しながら仕事のために移動しており、マイラⅡ号と連邦基地からの連絡を受けて目覚めた。まともな応答が無いことにいら立ちながらマイラに乗り込み、パラディン男爵に簡潔にマイラが置かれた状況を説明し、燃料補給の仕事をとりつける。燃料補給の作業に付いてきたイリエラとの会話の中で戦前の自分のことやイリエラとの関係のことなどを思い出すも、常識的な振る舞いとして男爵に忠告を一つしてそのままマイラを離れて次の仕事に向かう。
 マイラを離れてそう時を置かずに、マイラに謎の船が接近して、二つの船がドッキングしていることに気づく。イリエラのことが気がかりだったため、合体した二つの船に乗り込むことを決断する。奴隷用の首輪の影響を無効化するための発信機を二つの船に取り付け、マイラ側から船内に乗り込み、催眠ガスと釣り竿と"服剥がし"で手際よく宙賊たちを倒したレイブンは、宙賊たちの乗ってきた船で働かされていたボビーとイレーンを救い出す。宙賊を連邦基地に連行することになり、彼はニュー・ホープ号にイリエラ、イレーン、ボビー、僧侶のロイ、拘束した宙賊のジャンゴとともに乗り込む。その道すがらは、かつての恋人と恋人によく似た人がいる空間で穏やかな時を過ごすも、ロイが裏切ってジャンゴを自由にしてしまったため、奴隷用の首輪をつけられてしまう。ピンチを脱するために、ガスジャイアント付近で急ターンをしてニュー・ホープ号をばらばらにする策を思いつきマイラにもその旨を伝えるも、その場にある宇宙服が二着のみであることに気づく。イリエラとイレーンのどちらを救うべきか悩んだのち、自分は宇宙服を着ずに曳航させていたブラックバード号に乗り込むことを決断する。ブラックバード号までの道を全力疾走し、ロイを突き飛ばし、ジャンゴを無視して、なんとかブラックバード号に乗り込む。速やかにニュー・ホープ号を離れ、二人の無事を確認し、宙賊たちの住処への道をも得たレイブンの心は愛と自由の間を揺れ動き、最後には自由のほうを選んだ。

〇イリエラ
 最新技術で若さを保っている、銀河の大スターだった女。大学ではレイブンの二つ上の先輩で、彼とは恋仲にあった。自分のクローンをつくっている。物語開始時点ではマイラⅡ号に乗っていた。愛称はイーリャ。
 難破していたところを救難しに来た船のパイロットがかつて恋人だった男に似ていたため興味を抱き、燃料補給についていくことにする。そこでそのパイロットこそがレイブンであることを知る。彼と別れたのち、宙賊にとらえられるも、彼の活躍で救われる。ニュー・ホープ号に乗っていたイレーンが自分の孫クローンであると知ると、彼女とともにいたいと考え、連邦基地までの旅路でニュー・ホープ号に乗り込む。ロイの裏切りによって危機一髪の状況に陥るも、レイブンの活躍のおかげで生き残るが、彼が生きているということは知らずじまいであった。

〇イレーン
 <失われた植民地>からカンブリアへの移住船、ニュー・ホープ号に乗っていた者たちの生き残り。ニュー・ホープ号では襲う船をだますための通信を担当。イレーンの孫クローン。長い時間を宙賊の下で過ごしたために連邦の文化には疎い。レーンと呼ばれる。
 ボビーとともに宙賊による強制労働をさせられていたが、レイブンによって二人とも救われる。連邦基地までの航路ではつらい過去について話す。ロイの裏切りによって危機一髪の状況に陥るも、レイブンの活躍のおかげで生き残るが、彼が生きているということは知らずじまいであった。

〇パヴェル・パラディン男爵
 リッチな男。金ぴかヨット<マイラⅡ号>の持ち主で操縦も担当している。かつての戦争末期に訪れていたグーラート星系を見るためにキャメロン、ダンタ、ロイの三人の男とイリエラを連れて旅をしていた。
 冒頭では超Cジャンプを無駄に使って燃料切れを起こしていたところをレイブンに救われる。燃料を入れてもらったのち、レイブンの忠告を聞かずに宙賊の侵入を許し、たまたまイリエラと知り合いだったレイブンに救われる。トラブルに巻き込まれたために、目的地にはいかずに帰ることにするが、レイブンの進言で連邦基地によって変えることにする。
連邦までの道では女性二人を自分の船に乗せようとしたが、断られる。

〇ラマ・ロイ
 マイラに乗っていたふとっちょ。マイラに乗っていた中ではおそらく最年少。清貧を美徳とする<行路>を信仰する新興宗教の僧侶だが、ふとっちょ。精神的助言者兼、四人目のカードゲーマーとしての役割をもっていた。ドラッグもやる。
 作中ではジャンゴに教えを説いていたはずが、そそのかされて裏切る活躍を見せる。

〇ジャンゴ
 宙賊の頭目。ジャンゴマンとも呼ばれるが、何が正しい名前なのかわからない。カンブリアの人々に残虐な行為を行った男である。
 スティーアとミッキーとともに襲える船を探していたところ、マイラを発見し、襲う。レイブンに倒されたのちもあきらめずにロイをそそのかして逃げおおせようとする。しかし、レイブンの策でばらばらになる船体とともに宇宙のチリとなった。また、逃げるレイブンを銃で撃ったが、外してボビーの寝ていたカプセルに当たり、ボビーは死んだ。

〇ボビー
 宙賊に働かされていた、元カンブリアの入植民。レイブンに救われるも、
カプセルで寝ていたところにジャン好外した流れ弾が当たり死んだ。

「衝突」

あらすじ
連邦基地九○○に届けられたメッセージ・パイプには、過去に基地から旅立った<リフト>横断船で起こった奇妙な現象についての報告があった。ヒューマンがリフトの向こう側の人々とファーストコンタクトを果たすまでの軌跡が、メッセージ・パイプが伝える宇宙の旅と、すでに起こってしまった”出来事”への対処に動く基地の面々、そしてリフトの向こう側の異星人の三視点で繰り広げられる。

登場人物
リフト・ランナー1号
〇アッシュ
 リフト・ランナー1号の船長。フルネームはルーソ・アッシュ。伴侶は冷凍睡眠している。
 ビーコン・アルファの設置地点にて、異常が見られた船内において引き返すか否かを船員に聞き、引き返さないことに決定する。ジールタン着陸後は部下に命令をして何とか無事にファーストコンタクトを取ろうとする。しかし、クリムヒーンのだまし討ちにも似た手法で燃料を奪われるが、雨が降ったことで兵が追跡できなかったこともあり、船の近くの兵を突き飛ばし、生きている船員は全員連れて惑星を発つことに成功する。追跡をまくだけの燃料がないことは知っていたため、ビーコン・アルファ周辺で突撃することを提案し船員の同意も得る。しかし、突撃前の警告への返答はなく、代わりにトムロの助けを求める通信が返ってきたため、船員の意思を聞き、助けに行くことにする。クリムヒーンの船では冷静に船内の様子を確認して救助に当たったものの、クリムヒーンに出し抜かれ、シャーラを人質に取られる。簡単な銀河共通語での説得を試み、シャーラは救えなかったものの、結果的には基地からの助けが来るまでの時間を稼ぎ戦争を止めることに成功した。

〇トーラン
 航法士。階級は中尉。メッセージ・パイプの録音は主に彼が行っている。準感応者だが、あまりたよりにならないとのこと。
 ビーコン・アルファの設置のためにコンピュータによって覚醒させられた際に体の異常に気が付く。体の違和感はあれど、果たすべき仕事はこなし、異常の報告を含む業務連絡のメッセージ・パイプを連邦に送る。第二信では技術的な内容に絞った報告をする。ジールタン付近では惑星の所属する文明圏で超C通信が存在することを示唆する。また、それまでの報告が自分一人の妄言ではないことを証明するための全員分の録音も録る。ジールタン着陸時にはジーロに変装し、船長の命令でシャーラとともに自分たちの航行記録をジーロたちに知らせるためにホロやトーキー・ブックを見せ、その際の反応から彼らが映像記録媒体を持たないことを知る。クリムヒーンから町に行き高官に会うことを提案された際にはついていったが、だまされていて危機に陥り、幸いにも逃げることに成功する。クリムヒーンの船の救助の際には、人工呼吸に変わるジーロの延命手段として船外のドライアイスから発生する炭酸ガスを用いての呼吸を思いつく。

〇キャシー
 フルネームはエカテリーナ・クー。階級は中尉。感応者。
 全員の体の認識に異常が見られた時には一番影響を受けており、着陸の際の儀式は自らの役目であると口にする。ジールタン着陸時にはジーロへの変装を強く提案し、さらに、到着の儀式の際は周りの反対を押し切って儀式のいけにえになり、溺死した。

〇ディンガー
 名前はディンガニャールだが、もっぱらディンガー呼び。エンジニアで準医師。中尉。
 <リフト>横断中に身体の異常を訴える。儀式のパニックの中で、儀式に使われていたものがただの水と見抜くも、キャシーは死ぬ。ジールタンの都市に向かうことになった際は留守番をしており、無線で船の燃料が抜かれていることを知らせる。ビーコン・アルファまで引き返し、クリムヒーンの船を救うときにはマロリーンに効くかもしれない薬を彼に処方した。

〇シャーラ
 言語学者。
 <リフト>横断中に身体の異常を訴える。ジールタン到着後は言語学者としてファーストコンタクト成功のために尽力する。彼女のヒューマンという発言は、ジーロたちがR-R-1がジューマン船なのではないかという疑念を抱くきっかけとなる。しかし、儀式が始まるまでの間にもジーロとその惑星の名を知ったり、簡単な文を知ったりすることに成功している。二日目以降はすでに銀河共通語話者と接触していたジラノイとのコミュニケーションを取り、彼らが<暗黒界>の人々と接触済みである可能性に気づく。ジールタンから逃げ、ビーコン・アルファにたどり着き、結局クリムヒーンの船を救うことになった際には、人工呼吸を思いつき、二つの船の通訳としての仕事も果たしたが、クリムヒーンに人質に取られ、クリムヒーンに首を絞められた際に自決用カプセルがつぶれてしまい死亡。彼を動揺させた。

連邦基地九○○
〇ヨーン
 連邦基地九○○の指令をしている女性。がっしりとした体格で鋭い目、それでいて感じのいい笑顔の持ち主。ポーナよりもだいぶ年上らしいが、第三信が届いた時点ではまだ現役。
 ポーナが持ち込んできたメッセージ・パイプの報告を彼女と副官のフレッドとともに聞く。このことに関しては口外するように二人の若い士官に言いつけ、ほかの基地司令と情報を共有する。未知の異星人との戦争という最悪のケースを考えて悪夢にうなされる生活を続けてしばらくのちに、第三信が届く。リフト・ライナー1号の予断を許さない状況を救うために超光速試作船を派遣し、最悪の事態を防ぐ。ジーロとの和解の後は、客人としてクリムヒーンを迎え入れる。

〇ポーナ
 物語開始時点では通信係士官。第三信が届いてからは通信部長。
 冒頭でR-R-1からのメッセージ・パイプを受け取り、司令のもとに届けた。彼女のわくわく度合いを見た司令の計らいで第一信を司令とともに聞き届ける。異常事態を報告するメッセージ・パイプを聞いてしまったために、報告の内容を口外することは禁止され、報告の内容を書類にすることを任せられる。その後の第二信以降の報告も司令らとともに聞いている。

〇リアルーン
 冒頭で、定期通信を司令室に運ぶメッセンジャーをしていた。冒頭では若かったが、第三信が来る頃には白髪交じりになっていた。
 定期通信を運び込むために司令室に入った結果、リフト・ランナー1号にまつわることに巻き込まれ、第三信が到着した時には最初から呼び出されている。

〇フレッド
 副官。優秀な過去の副官経験者のクローン。フレッドは名前ではなく、副官が呼ばれるあだ名。第三信以前と以降で代替わりしており、第三信以降のフレッドのほうが軽い印象(年齢の問題でしかないかも)。
 ベテランのほうのフレッドは、リフト・ランナー1号からの第一信を受け、同船のような現象について調べ、いわゆる赤イモリ現象として知られていることを突き止める。また、第二信を受ける際も聞き届けた。
 若いほうのフレッドは、前任者からの引継ぎはあったものの、第三信で超C通信の存在が示唆された際には口笛を吹いて驚きを表した。

ジールタン
〇ジラノイ
 ジーロ。ジールタンで外務局に勤めている。愛称はジラ。カナックリーとレイロイの共通の友人。赤い。本編の文章の執筆には彼女が大きく関わったということになっている。
 初登場時、東に派遣されたジューマン殲滅のための部隊への補給部隊について行き、捕虜のジューマンの言語を勉強することを志願し、旅立つ。そして、ジーロとは異なる生態に戸惑いながらも、初歩的な会話ができる程度までジューマンの言語を習得し、帰還する。カナックリーとの再会からしばしのち、行政局のジールタンに到着した謎の船(ジューマンの疑いあり)への対応に腹を立て、上司の力を借りて銀河共通語の教育セットを入手し、クリムヒーンに頼んで船へと直接コンタクトをとることにする。船では主にシャーラと会話し、銀河共通語を学ぶ。逃げたR-R-1を追う船にも通訳として同乗するが都有で炭酸ガスが不足する。R-R-1の救助のおかげで命を助けられ、ヒューマンへの認識を改める。戦いをやめようとしないクリムヒーンを止めることにアッシュの通訳という形で協力した。

〇カナックリー
 ジラノイの友人。通信局長。妻はレイロイ。のちに一児の父となる。自分のぶちにコンプレックスを持つ。
 初登場時、出勤した時にばったり会ったジラノイとジューマン事情について話し、彼女が旅立つことを知る。そして、これから生まれる自分と妻のムルヌー及び子供に思いをはせながら、増えた通信量をいかにするかのアイデアを出す。
 ジラノイ帰還後、旧友を訪ねてきた彼女と彼女の旅についてひとしきり話してから聖廟経由で駅まで歩くことにする。雨に降られ、そこで困っている老いたムルヌーと幼いジーロを助ける。その後、ジューマノールとの戦いがどうなってしまうのか、思いをはせる。
 その後は目の炎症で入院している。

〇クリムヒーン
 艦長。頑固。
 惑星に着陸した未確認船に乗っているのがジューマンであると考えるや否や捕えようと、船に乗る人が減ったタイミングで燃料を抜き、逃げられてからも自分の船で直接追いかける。しかし、宇宙船内の植物が急に枯れたために船内は炭酸ガス欠乏状態となる。R-R-1船員の救助とドライアイスの提供のおかげで息ができる状況になり、さらには甥の治療も行ってもらったにもかかわらず、ジューマンを討ち果たさんとする意志は固く、シャーラを人質にとり、R-R-1のコントロールを得ようとする。しかし、シャーラを殺してしまったことやアッシュたちの必死の説得の甲斐あって戦意を喪失し、そこに現れた超C航行船に乗って連邦基地九○○に向かうことになる。その後はヒューマンと友好的に接しジョークを飛ばすこともあったという。

〇トムロ
 カナックリーの産んだ性動物。登場時点ですでに寿命が近い。クリーム色。
 クリムヒーンの船が着陸した時の儀式のいけにえとして同船に乗りこんだ。クリムヒーンの船が炭酸ガス不足になった際に、R-R-1に助けを求めた。戦いをやめないクリムヒーンに戦うことが悪いことであると説く。船でのひと騒動ののち、連邦基地にたどり着いた瞬間に寿命が来た。

〇マロリーン
 クリムヒーンの甥で彼の船の船医。
 炭酸ガスの欠乏により、心臓が機能不全を起こすが、奇跡的に人間用の薬が効き、一命をとりとめた。

〇長老
 冒頭でコメノたちから救難要請を受け、最終戦争の遺物を使ってジューマノールを殲滅することを決定する。

用語まとめ
  • <リフト>
 連邦の北部に位置する、星が少ない地域。また、通信が通じないため、通信手段はメッセージ・パイプに入れたカセットテープによる一方通行のものに限られる。

  • 連邦基地九○○
 全編がこの基地の付近での出来事。<リフト>最前線という辺境にあるため、慰安施設は充実している。<リフト>にまつわる仕事も多い。

  • 消えた植民地
 おそらくイーアによる汚染で滅びた植民地。イレーンたちはここから無事に逃げられた幸運な人々だった。

  • <暗黒界>
 宙賊たちがいる治安の悪い界隈。連邦の追っ手を阻む<リフト>周辺で好き放題しているっぽい。星を襲い、そこの人々を鉱石の採取のために使いつぶすようなことが横行している。

  • 最終戦争
 連邦側でも調和圏側でも起こっていた戦争。それぞれ全く別々の戦争だが、きっかけはどちらも宗教的なもののよう。どちらも戦争の中でいくつも兵器を発明していた模様。

  • 冷凍睡眠
 いわゆるコールドスリープ。生理現象の一切を停止させるため、疲れはとれない。長い間をこの状態で過ごしても支障はない。目覚めるために尻に筋肉注射する必要がある。

  • 超Cジャンプ
 その名の通り、光速を越えた移動手段。光速を越えているが、相対論的速度(つまり速いほど時間の流れが遅くなる現象を無視できる、ということか)で移動できるらしい(たったひとつの~より)。燃料を大量に消費する。

  • 超C通信
 もとはジ-ロたちの<調和圏>側の技術。たったひとつの~の時代にはリフト外での実用化が成されている。

メッセージ・パイプ
 リフトから連邦基地に連絡を行うための道具。カセットテープと航行ホロなどを内側に入れて自動で基地を目指す機械。

  • 牽引ビーム
 謎のビーム。ビームで牽引とはどういうことか。ジーロも人間も使う技術のようで、主に敵船の捕縛を目的に使われるようだ。

  • 奴隷の首輪
 発信機から一定の波を受けているときのみ、広がる。オリジナルは戦争中に作られた。宙賊たちが強制労働させる手段としてよく使う。

  • <行路>
 連邦の南部でおこった新興宗教。清貧を美徳とする感じらしい。

  • <大霊>
 <調和圏>側で信仰されている。宗教間の対立を防ぐために、すべての宗教が合体したやつ。

  • イーア
 ノリアンでドロンに寄生して生きる寄生生物。宿主のドロンは六本足の大きな猫のような見た目で、イーアが入らないと思考能力がだいぶ低いらしい。卵はごく低温でも生き残ることができるどころか活性化するが、熱には弱い。どうにもノリアンではイーアみたいな寄生生物はメジャーな模様。

  • ジーロ
 ジールタンに住む<調和圏>の一員。ムルヌーを介する不思議な生殖をおこなう。呼吸は地球人の逆で二酸化炭素を一定割合含む空気を吸い、酸素を吐き出す。水で大やけどを負う。一つ目のカンガルーのような形をしていて、人よりも大きい。跳ねて移動する。

  • ムルヌー
 ジーロの性動物。子供が生まれる過程で生まれ、乳母のようなことをする。寿命は短く数年程度。
最終更新:2025年04月25日 08:47