小川一水「グラスハートが割れないように」
掘江弘己
1975年生まれ。代表作に宇宙SF「第六大陸」、また部会でも紹介された「時砂の王」などSFを書く一方で、ライトノベルも執筆している。出版社はあちこち彷徨っている様子。
現代日本を舞台にした話で、身に着けているだけで自然に増える奇妙な食べ物、「グラスハート」に魅せられた少女と青年にまつわる奇譚。
日吉康介(ひよりこうすけ)
主人公。彼女である小枝のグラスハート騒動に巻き込まれる。
秋間小枝(あきまさえ)
ヒロイン。多分。父親を亡くしたショックで癒しグッズにはまる。金魚やらCDのうちは良かったが、グラスハートを育てているうちに病む。そのうち誰か刺すんじゃないか
洞木(ほらき)
真実を調べた人。かなりの世話焼き。友達の彼女まで心配できるのは大きな器。
地衣類ハーティ・リッチェン。つまりキノコやカビの一種。胸の中に入れておき、祈りを捧げれば勝手に増えていくという。
その実態は、赤外線をよく吸収して光合成し、湿気さえあれば後は適当に育つという強靭ぶり。しかも丸ごと可食で、低カロリーながらバランスが取れている。小枝はこればかりを食べていたせいで栄養失調を起こした。
これって要するにキューピッドだよね、と。雨降って地固まるというか、「祈り」を叫ぶ小枝が可愛すぎた。すれ違いからのカタルシスはいいものだ。
何年か前、「俺は光合成ができる!」と妄想を起こした男が窓辺に一週間張り付いて病院に運ばれたそうな。人間は光合成ができないことが実験的に確かめられたのである。
最終更新:2009年03月30日 09:27