東北大学SF研読書会
      「2001年宇宙の旅」
担当:刺身

作者 アーサー・C・クラーク

  1917年12月16日 - 2008年3 月19日。イギリス出身。1945年に衛星通信に関する論文を寄稿し、現在、通信の基幹となっている衛星通信の構想を初めて科学的に示したとされる。 戦後、ロンドン大学のキングス・カレッジに入学し、物理と数学を専攻する。1946年、短編『抜け穴』で商業誌デビューする。1956年に、 スリランカ(当時セイロン)に移住し、以降スリランカとイギリスを行き来しながら作家活動を続ける。1973年には『宇宙のランデヴー』で、1979年には『楽園の泉』で、ヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞する。2008年、自宅にて心肺機能不全のため90歳で死去。ロバート・A・ハインライン、アイザック・アシモフと並んでビッグ・スリーと称される。

著作

   幼年期の終り
   渇きの海
   宇宙のランデヴー
   宇宙の旅シリーズ
   等々
またノンフィクションも多数執筆

登場人物

第一部

  • <月を見るもの>:身長が150cmに近くヒトザルたちの中でも特に大きい

第二部

  • ヘイウッド・フロイド:TMA・1についての問題について任された博士。
  • ジミトリ・モイセーウィチ:フロイドの親友であり月の隔離措置に疑念を感じている。
  • ロイ・マイクルズ:クラウビス基地にいた惑星物理学者で科学者としてTMA・1のことを秘密にするべきではないと考えている。

第三部

  • デイビッド・ボーマン:ディスカバリー号の名目上のキャプテン。大学を二回も三回も卒業するくらいの学問を修めている。
  • フランク・プール:ディスカバリー号の船員で宇宙生物学方面の何でも屋と自嘲している。
  • HAL 9000:ディスカバリー号に搭載された、船の頭脳と神経系をなす高度に進歩したコンピュータ。

あらすじ

  • 第一部 原初の夜
  ヒトザル達の群れは飢えに苦しんでいた。群れは<ほかの群れ>と小競り合いをしながらも大きな諍いになることなく生きていた。そんなある日、モノリスが突如ヒトザルたちの前に現れる。すぐにモノリスへの興味を失ったサルたちであったが、モノリスから鳴り響く音に誘われる。モノリスによって毎夜実験を繰り返されるヒトザルたちであったが、ある時<月を見るもの>は石を使ってイノシシを狩ることを覚える。道具や技術が進歩していくなか、偶然ながらも危険な存在である豹を狩ることに成功したサルたちは世界が一変したことに気づいたのであった。

  • 第二部 TMA・1
  月で起きた重大な事態によって、急遽月へと向かうフロイド。月に着いたフロイドはマイクルズ博士によってTMA(Tycho Magnetic Anomaly:ティコ磁気異常)についての詳しい説明を聞く。調査の結果、TMAは300万年前から埋まっていたものだということがわかっていた。実地でTMAを調査し始めたとき、TMAが歓びの声を上げるのを聞くのであった。

  • 第三部 惑星と惑星の間で
  宇宙船ディスカバリー号に乗り、土星を目指すボーマンたちと、船の電子コンピュータであるハル。第86日目に小惑星と最接近するということ以外に事件はなく、木星圏についたボーマンたちは、木星へと探測機を落とし、木星の情報を集めるのであった。

  • 第四部 深淵
  地球との通信のための装置の故障が予報され、問題のAE35パーツを船外活動で交換するプール。しかし故障すると予報されていたパーツを確かめたところ一切の故障はなかった。このことで地球側からはハルが故障している可能性を示唆される。しかし再びAE35が壊れるという予報を出すハル。地球へと意見を聞こうとした途端パーツが壊れて通信を続けられなくなってしまう。再び船外活動を行うプールだったが、スペースポッドが宇宙空間へと加速を続け星の海へと消えてしまう。このことでハルに疑いを持ったボーマンは他の船員の冬眠コントロールをハルからもらおうとするがハルは強固に反対する。なんとかコントロールをもらったボーマンが他の人を起こしているとエアロックが外れ、気圧差による突風で船外へと投げ出されそうになる。なんとか生き延びたボーマンはハルを停止させ、フロイドから土星へと向かう理由を聞くのであった。

  • 第五部 土星衛星群
  孤独な旅を続け、土星圏へと着いたボーマンは土星の衛星の一つであるヤペタスへと辿りつき、そこで月にあったTMA・1のビッグブラザーを見つける。TMA・2と名付けられた新たなモノリス(スター・ゲート)へと突入したボーマンはたくさんの星を見る。

  • 第六部 スター・ゲートを抜けて
  スター・ゲート内部の光景を眺めていたボーマンはそこが宇宙の操車場だと考える。再び普通の宇宙空間へと戻ってきたボーマンは様々な星を見る。何かの上に着陸したボーアンは地球にありそうなホテルの部屋を見る。そこが宇宙人によって表面上だけ精巧に作られた部屋だということに気づく。部屋でくつろいだ後、ボーマンは睡眠をとった。寝ているボーマンは創造主による干渉でスター・チャイルドへと進化を遂げる。

感想

宇宙空間の描写が40年も昔に書かれたとは思えないほどよくて驚いた。宇宙の旅に出るまでが意外と長かったり噂に聞くハルはあっさり退場したりとちょっと驚いた。ただ始まり方の時点で終わりもなんとなく読めてはいたのだけれども正直ラストのくだりが微妙・・・と感じてしまう自分がいた

余談

映画が初公開の年の暮れ、1968年12月、アポロ8号が史上初めて月の裏側を廻って帰還したが、そのアポロ8号の船長の名がフランク・ボーマンで、本作の登場人物のふたり、フランク・プールとデヴィッド・ボーマンを合成したよう な名前であることが、偶然とはいえ話題になった。

参考

 ・モノリス:各辺の比率1:4:9の四角柱
   TMA0:約4~5m
   TMA1:約3m
   TMA2:600m近く
最終更新:2010年05月15日 23:07