狡噛慎也&アサシン ◆arYKZxlFnw
聖杯の力によって構築された、2010年代の様相を模した東京。
この結界の光景を見るたび、
狡噛慎也は常に思う。
歳上の同僚が生きていた、
シビュラシステム以前の街は、こういう感じだったのかもしれないと。
一見するとレトロなだけの、ただの街並みにしか見えない。
それでも一皮剥いてみれば、そこに渦巻いているものは、ナマの悪意と欲望だ。
少し夜道を出歩けば、いかがわしい商売の現場を、いくらでも見つけることができる。
日の昇っている時間にも、汚職や闇取引といった、どす黒い噂が耳に入ってくる。
(シビュラが目を光らせてる今では、さすがにこうはいかないからな)
無論全くのゼロではないが、ここまで露骨でもなかったはずだ。
今の東京を回想しながら、狡噛は口から煙草を離し、ふぅっと煙を吐き出した。
現代よりずっと過去の街だ。彼が好んでいた銘柄は、未だ発売してすらいない。
それでも喫煙という習慣は、その程度で辞められるものではないらしい。
「そういや、ケムリは平気だったか?」
と、そこまでしたところで、同席者のことを思い出し、尋ねる。
一応顔を背けはしたが、それでも煙草そのものを嫌い、ストレスに感じる者はいるはずだ。
そういうことはなかったかと、狡噛は向かい側の席に座る、1人の少女へと問いかけたのだった。
「煙じゃないが、火の扱いには慣れてる。人の焼けた時のに比べれば、どうってことないさ」
物騒な返事を返したのは、日焼けした褐色肌の少女だ。
顔立ちから推し量れる年齢は、十代後半に差し掛かった頃だろうか。
白地に「踊り子号」とだけ書かれた、センスの悪いTシャツを押し上げる、年齢には似つかわしくない乳房が目を引いた。
「そりゃごもっともだ」
異臭を伴うわけではないが、伴う生理的嫌悪感は、副流煙の比ではない。
もっとも、のどかなファミレスの喫煙席には、あまりにも似つかわしくない表現だ。
それがおかしいやら何やらで、狡噛は思わず苦笑した。
「しかし、あんたも変わった奴だな。召喚されてすぐに『腹が減った』とは」
「何しろここ最近、ろくなものを食べてなくってな」
そういう「設定」なんだ、と言いながら、少女は目の前に置かれた、熱々のハンバーグにナイフを入れる。
ともすれば粗野な印象を受ける出で立ちだったが、そうした容姿には似合わず、意外と所作は丁寧だ。
見た目よりも育ちがいいのか。英霊と呼ばれるくらいなのだから、そういうものなのかもしれない。
自らが引き当てたサーヴァント――焔と名乗ったアサシンを見ながら、狡噛はコーヒーを口にした。
「英霊なんていう割には、苦労してるんだな」
「少なくとも、『今』の私はな。未来がどうなのかは知らないが、英霊なんて呼ばれる柄じゃない」
苦笑するアサシンの瞳は、暗い。
本来サーヴァントとは、その生涯を全うし没した英霊が、生前の姿を再現されて生まれるものなのだという。
しかし狡噛のもとに現れたアサシンは、現在の姿よりも先の記憶を、全く持っていないと言うのだ。
恐らく何らかの要因により、その頃までの情報のみしか、アサシンには与えられていないのだろう。
「魔術師の戦争と言ったが、生憎と俺はオズじゃないし、エメラルドの都の生まれでもない。
恐らく俺の力不足で、その歳までの姿でしか、呼ぶことができなかったんだろう」
「かもな。でなけりゃ抜忍風情の私が、ここに呼ばれるはずもないんだ」
アサシンのサーヴァントは忍者だった。
彼女の暮らす世界において、平成の世まで息づいてきた、忍と呼ばれる戦士の1人だった。
とはいえそれも少し前までのことで、現在の年齢の彼女は、組織を抜け同胞に追われる、抜忍と呼ばれる存在なのだという。
「私の勝手な裏切りに、仲間達まで巻き込んで、苦労を強いてしまってる……とんだ駄目リーダーだよ、私は」
自虐し、アサシンは付け合わせの人参を、フォークで口元へと運んだ。
「……似た者同士、というやつか」
あるいはそれが、未熟な俺が、あんたを呼び寄せた理由なのかもしれないと。
一拍の間を置いたのち、狡噛がそう独りごちる。
「似たもの?」
「俺もあんたと同じように、追われる裏切り者ってことだ」
狡噛慎也は元刑事だ。
しかし己の復讐のために、彼は組織を離反した。
公安局の目をくぐり、忌むべき仇を追いかけて、遂に追い詰め命を奪った。
そして殺人の罪を犯した瞬間、彼も追われる犯罪者となり、日本から逃げ去る羽目になった。
お尋ね者の根無し草――それがアサシンのサーヴァントと、狡噛慎也の共通項だった。
「でも海外に逃げてしまえば、ある程度追っ手も振り切れるだろ?」
「逃げ場所に恵まれてなかったのさ、俺の時代は。結局安息と平和なんてのは、シビュラの檻の中にしかなかった」
西暦2100年代は、文字通り暗黒の時代だ。
貧富の差は取り返しのつかないところまで拡大し、倫理や道徳までもが蝕まれ、世界は戦乱の炎に包まれた。
今や平和だと言える国は、完全管理社会と化した日本くらいのものだ。そしてそんな状況に陥って、もうすぐ100年にもなろうとしている。
そんな地獄の中で、静かに暮らせる場所を探すことが、どれほど困難なことか。
「嫌な未来だな」
「だからあんた達で変えてくれ。若者には時間も可能性もある」
「無責任な。大人の言うことじゃないだろ、それ」
励ましにしてはあんまりな言葉に、アサシンは思わず噴き出していた。
だがそのおかげで、すっかり落ち込んでしまったムードも、いくらか和らいだようだ。
「でも、そうなると、それがマスターの願いってことか?」
そうして心が落ち着けば、新たに気づくこともある。
安息の地を欲する心が、紅い月へと導いたのかと、アサシンは狡噛に問いかけた。
「悪いか?」
「いや。私に否定できることじゃない」
あっけらかんとした狡噛の問いに、アサシンもまたさらりと答える。
先程も狡噛が言ったように、根無し草なのはお互い様だ。安住を求めるその心が、どれほど真剣なものなのかは理解できる。
だからこそ、それは問い返すまでもない。
そう言わんばかりの表情で、アサシンはまたハンバーグに手をつけた。
「俺もそれは否定しない。……といっても、聖杯なんてものにすがって、追い求める気分にはなれないが」
狡噛はそう言うと、すっかり火の消えてしまった煙草を、灰皿に押し当てすり潰す。
人を無差別にさらって、街に閉じ込めた聖杯は、あのシビュラシステムと同類だ。
否、強いるのが殺し合いである以上、聖人気取りのシビュラよりも、なおタチが悪いと言っていい。
刑事ではなくなった狡噛だが、正義感とプライドすらも、ドブに投げ捨てたつもりはない。
泥沼を這いずる狡噛にも、死んでも甘えたくないものはある。死んだ方がマシなものがある。
だからこそ狡噛慎也は、聖杯を拒絶し、その存在を否定した。
聖杯戦争に招かれながら、その
ルールに従うことなく、歯向かう道を選んだのだ。
「聖杯に従うつもりはない、か」
「むしろその辺に投げつけて、叩き壊すかもしれないな」
コーヒーカップの取っ手を掴み、ゆっくりとした動作で振って、投げ捨てるようなジェスチャーを取る。
「あんたには悪いとは思うが、俺は聖杯には従わない。この馬鹿げた催しをぶち壊すために、立ち回らせてもらうことにする」
「見くびるなよ。私はマスターのサーヴァントだ。
それに実際のところ、私自身も、聖杯が欲しいってわけでもない……願いは自分の手で掴んでこそ、だからな」
だから自分はサーヴァントとして、マスターの意志を尊重すると。
狡噛の宣言に対して、アサシンもまた同意を示した。
「……やっぱりあんたなら、未来を変えられる気がするよ」
どん底で苦しみ続けてなお、そう言い切れると言うのなら。
願いだけでなく、平和な未来も、その手で掴み取れるかもしれないと。
そう言って狡噛は、感謝の代わりに、笑みを浮かべ返したのだった。
【マスター】狡噛慎也
【出典】PSYCHO-PASS
【性別】男性
【マスターとしての願い】
どこか心休まる居場所が欲しい
【weapon】
なし
【能力・技能】
犯罪捜査
元刑事。鋭い洞察力と推理力、直感力を持つ。本人曰く「デカの勘」。
体術
身体を鍛えることには余念がない。東南アジアの格闘術である、シラットを体得している。
カリスマ
ランクD-相当。軍団を指揮する天性の才能。
本人は自覚的ではないが、彼の言動は他者に信頼と憧憬を抱かせる。
狡噛の意志の強さに由来するものであるため、このスキルは、彼が自らの意志で主体的に行動している時にのみ見られる。
【人物背景】
元公安局刑事課一係の執行官。
過去の事件において部下を殺されたことから、その黒幕である
槙島聖護を憎悪し、彼の行方を探っていた。
しかしその過程で犯罪係数(犯罪者になる危険性を表した数値)が上昇し、潜在犯認定を受け執行官へと降格している。
ぶっきらぼうな言動が目立つが、内に秘めた正義感は強い。
何だかんだ言って面倒見が良く、新人監視官の常守朱の良き先輩であった。
安息を求めてこそいるが、その本質は猟犬のそれであり、敵を追いかけ求めずにはいられない人間であると言われている。
物語後半において、逃亡した槙島と決着をつけるため公安局を出奔する。
一係の面々との競争を経つつも、最後には槙島の元へと辿り着き殺害。部下の仇討ちを果たした。
その後は日本を離れ、静かに暮らせる場所を探しているものの、未だ安息の地を見つけられずにいる。
【方針】
人殺しを強いる聖杯の存在は認められない。聖杯戦争を止める手立てを探す。
【クラス】アサシン
【真名】焔
【出典】閃乱カグラ SHINOVI VERSUS -少女達の証明-
【性別】女性
【属性】混沌・中立
【パラメーター】
筋力:C+ 耐久:C 敏捷:B 魔力:C 幸運:C 宝具:B
【クラススキル】
気配遮断:C
サーヴァントとしての気配を断つ。隠密行動に適している。
完全に気配を断てば発見する事は難しい。
【保有スキル】
抜忍:B
組織に縛られない代わりに、他の忍から命を狙われるはぐれ者の忍。
焔は高いスキルランクを誇っており、周囲を忍以外から隔絶する忍結界を使用することが出来る。
また、忍転身を用いることで、一瞬で衣服を忍装束へと変化させることが出来る。
単独行動:B
マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。
ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。
反逆の炎:C
己の信じるもののため、過去を断ち切らんとする力。
それまでの人生で二度裏切られた焔だが、どちらに対しても相応の報復を果たしたことにより備わったスキル。
直前まで味方だった者を、正しい意志の下に裏切った時、与ダメージにプラス補正が加わる。
【宝具】
『いざ、紅蓮の如く舞い散れ(えんげつか)』
ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~5 最大補足:30人
六刀流を修めた焔が、最後の切り札とする七振り目の刀。秘伝忍法「紅」によって発動する。
真に強き忍にしか、抜くことは叶わないと言われる名刀である。
その力に引きずられる形で、焔自身の潜在能力も解放され、全パラメーターが1ランクずつ上昇する。
残る六本の刀はサイコキネシスのような力で、自在に宙を舞い敵を切り刻む。
強力だが魔力消費量も多いため、長時間の発動には適さない奥の手。
【weapon】
刀
背中に背負った七本の日本刀。
平時は『いざ、紅蓮の如く舞い散れ(えんげつか)』を除く六本を、片手に三本ずつ、鉤爪のように構えて用いる。
【人物背景】
秘立蛇女子学園を出奔し、現在は焔紅蓮隊を率いる抜忍の少女。17歳。
スリーサイズはB87・W57・H85。
好戦的で向上心が強い。
敵には厳しいが味方には優しく、仲間達に過酷な境遇を強いている現状には、心苦しいものを感じている。
荒っぽい態度が目立つが、前述通りの由緒ある家系の生まれであるため、意外にも礼儀作法には明るい。
実は機械とオカルトが苦手。
元は善忍の家系の生まれだったのだが、自分を騙した悪忍を殺害手前にまで追い込んでしまったことにより、
善忍としての資格を剥奪されてしまう。
その後家を追われさまよっていたところを、蛇女子学園に拾われ入学した。
当時は忍学生筆頭を務めていただけあり、戦闘能力は非常に高い。
炎を纏う六刀流を操り、素早い身のこなしから放たれるラッシュは、立ちはだかる全てを敵を燃え散らす。
必殺の秘伝忍法は、最大戦速で敵をなぎ払う「魁」と、『いざ、紅蓮の如く舞い散れ(えんげつか)』を抜き放ち立ち回る「紅」。
マスターである狡噛とは、「己の主義のために組織を離れ、野に放たれた者同士」ということで引かれ合ったが、
当の狡噛の魔力量が足りなかったため、全盛期とは言いがたい10代の頃のデータが反映されている。
【サーヴァントとしての願い】
特になし
最終更新:2015年02月05日 03:08