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救世主の救い方  ◆TAEv0TJMEI



もう目の前には誰も居ない
もう奥から声も聞こえない


◆   ◇


僕には、何かが見えていたはずだった。
誰かの声が聞こえていたはずだった。
その何かのために、その誰かの為に、僕はずっと、ずっと、戦ってきたはずだった。

今はもう、何も見えない。
今はもう、何も聞こえない。

心にぽっかりと空いた穴はどこまでも広がる夜の闇のようで。
ああ、それなら。
あの空に禍々しく輝く月は――。

死した僕を蘇らせてまでこの地に呼び寄せた紅い月は――。

僕にとっての、一体何だと言うのだろうか。
僕に残されたものなんて何もないのに。
僕はただひたすらに空っぽなのに。

僕は所詮、神に捧げられし生贄に過ぎなかったから。
この身に詰まっていたはずのモノ全て、全部全部、捧げてしまったから。
空っぽな自分を満たしていたはずの神の力さえ、この身にはもう残されていないから。

だから――

「だからてめぇは空っぽだってか。中身の無い抜け殻だと。
 だったらさ、なんでてめぇはここにいる?」

僕には見慣れた存在が――天使が語りかけてくる。

……どうして、なのだろう。
どうして僕は、ここにいるのだろう。
紅い、紅い、紅い月。
どうしても叶えたい願いを持つものだけを呼び寄せる紅い月。
その紅い月に選ばれたというのなら、僕にも強い願いがあるということ。
神に捧げられたはずのこの身に、まだ心が残っているということ。

「僕は……僕は、何かを、願っ……た?
 でも、何、を。今さら、何、を?」

かつての僕には決意があった。
神の千年王国をこの地に。
地上に永遠の平和を。

そう願って戦い続けていたはずなのに。
からからと口は乾くばかりで。
当然だったはずの願いは言葉として音に乗らない。

「今更じゃなくて、今だからこそだろ!
 あのクソッタレな神様なんかの借り物じゃねぇ!
 あんたはあんた自身の願いを抱いた。
 あんた自身の心を取り戻せた!
 だからここにいるんだろ!」

……そう、なのだろうか。
僕は、もう、僕を信じることができない。
人としての身体を失い。
人としての命を失い。
人としての心も失い。
メシアとしての使命も、力も失ったというのなら。
やっぱり僕は空っぽのまま――

「あーっ、うざったい!!
 俺は自分のこと救世使としてばっか見られるのが嫌だったけど、てめぇは逆だ!
 自分のことを救世主としてしか見ていねえ!
 てめえのことをちっとも見ていねえ!」

ずかずかと近づいてきた天使に乱暴に掴みかかられる。
その背に輝く三枚の翼は僕の知るどの天使たちよりも美しく力強いというのに。
彼はちっとも天使らしくないどこにでもいる少年のように声を荒らげて。
ただ真っ直ぐに、どこまでも真っ直ぐに、僕を見つめてくる。

「いいか、耳ん穴かっぽじってようく聞け!
 なくなんねえよ! 人間はからっぽになんかなったりしねえ。
 たとえてめぇ自身が失くしたと思ってても必ず何かが残ってる。
 かつてのあんたの想いが、あんたに抱いた誰かの想いがここにあるんだ。
 それが愛だったとしても憎しみだったとしても……人の思いだけは決して…なくなったりはしねえんだよ」

彼は人間だった。
限られた刹那をひたむきにがむしゃらに生きる人間だった。
愛……。憎しみ……。
そうだ、かつての自分には確かにそんな感情が存在していた。
僕は、人を愛したことが、あったんだ……。

「――――」

声が、漏れる。
愛した人の名が音となり空へと消える。消える。
何と呼んだのか、自分でも覚えていない。
思えば救世主になって以来、あれほど愛し、この手で反魂させ涙した彼女の名前を呼ぶことはなかった。
その存在がなかったかのように、僕は、人を愛したことも忘れ、東京が洪水に呑まれ数多の人間が死にゆくさまを笑っていた。
きっと僕は憎まれていることだろう。
あの日の僕は、そんなことを思いもしないで正義をなしているのだと信じて疑いもしなかったけれど。
今の僕は知った。
僕が憎まれていることを。
思い出した。
僕が人を愛したことを。

「僕はこんなにも誰かを犠牲にしてきたんですね……」
「マスター。過去は消えない。あんたのしてきたことはあんたを支えたりしがらみとなって苦しめたりもする。
 あんたはかつてロウヒーローであったことを乗り越えて。その前の一人の人間だったことも思い出して。
 過去も現在も自分のものとしたあんたとして戦わなければ意味なんてないんだ」
「僕にできるでしょうか」
「……加藤故って奴がいてさ。そいつも死んだ後あんたみたいに色々あって大変で。
 自分が自分を何だと思っているか、誰だと思っているか意識し続けないと自分の姿も保てない身体になっちまってたんだ。
 この電脳空間にいるあんたも、身体を失ったというんなら、きっと似たようなもんだと思う。
 ……なあ、あんたは今、どんな姿だ?」

問いかけ、覗きこんでくる彼の真っ直ぐな瞳に僕が映る。
そこにいたのは僕だった。
救世主ではない、人間だった頃の僕の姿だった。

「ああ、そうか。僕は人間だったんだ……」
「だったじゃねえ、今からも、だろ?
 もうあんたはおもちゃの兵隊じゃない。願いだって分からないならこれから気づいていけばいいんだ」

そう言って笑う彼の笑顔が眩しくて、僕もいつ以来かの笑みを浮かべる。
貼り付けた能面の笑顔ではない、人間の笑顔を。


「とはいえマスター。正直俺はこの聖杯戦争に嫌な予感しかしない。
 物質界(アッシャー)東京……。霊気が集まる魔都市。
 人間と共に野望や怨念が集まってきてどんどん増大する無限物質地域(アカシック・ゾーン)を電磁界に再現。
 しかも願いを叶えるでけぇコンピューターでとか、ここまで来たら疑うなっつうほうが無理がある」

しばらく笑いあった後、真剣な表情で、彼はそう告げてきた。

「俺というエクストラクラスがここにいるってこと自体がトドメだ。
 救世使(エンジェル)のサーヴァント……。
 世界を救う者が呼ばれるってことは、この戦いが何らかの世界の危機と関わってる可能性が高い」

笑顔と変わらぬ真っ直ぐさで、自らの疑念を隠すことなく口にする。

「もし俺が思うとおりなら、俺は俺の因縁、こだわり、プライド、守るべきもののために聖杯さえも壊す。
 えらそーなこと言っておきながら、俺はサーヴァントとして失格だと思う」

ともすれば令呪で自害させられかねないようなことさえも大胆に言い放つ。
正直、彼はめちゃくちゃだ。

「だけどあんたがそんなサーヴァントでもその背を預けてくれるというのなら。
 約束する。俺はあんたの仲間として、あんたを裏切らない。
 俺が俺流に生きるように、あんたがあんた流を見つけられるよう、一緒に戦ってやる」

めちゃくちゃだけど、その力強い声には真実の迫力があって。
その背に輝く翼よりもずっと強烈な光を感じたから。

「俺は救世使のサーヴァント、無道刹那。あんたの答えを聞かせて欲しい」

答えは決まっていた。
僕は、彼の手に手を重ね、その言葉を口にすることにした。
失くならず記憶に残っていた、何度も聞いたその言葉を。

――今後ともよろしく、刹那君


◇   ◆


もう目の前には誰も居ない
もう奥から声も聞こえない

だったら一度振り返ろう
歩いてきた道を戻ってみよう
きっとそこには何かがあるから
置いてきてしまった誰かがいるから……

GAME OVER
  OR
▷CONTINUE?

【クラス】
エンジェル

【真名】
無道刹那@天使禁猟区

【パラメーター】
筋力B 耐久B 敏捷B 魔力B(EX) 幸運E+++ 宝具A+

【属性】
中立・中庸

【クラススキル】
救世使:A
天使と人との狭間の子。
選ばれし真の救世使。
物質界だけでなく、星幽界、地獄、至高天をも終末から救った彼のランクはかなりのもの。
意図するしないに関わらず、世界の危機に立ち向かう時、全てのステータスが1ランク上昇する。
――彼は救世“主”(メシア)ではない。救世“使”(エンジェル)である。

アストラルパワー:A+(EX)
魔力放出の上位スキル。
武器・自身の肉体に魔力(アストラルパワー)を帯びさせ、常時放出する事によって能力を向上させるスキル。
放出量を瞬間的に倍増させることで、魔力砲やバリアのような使い方もできる。
絶大な能力向上を得られる反面、魔力消費は通常の比ではないため、非常に燃費が悪くなる。
また、背中の天使の翼を大きく損傷すると上手く力を操れなくなり、使用不能になることも。


【保有スキル】
少女の祈り:B
正式名称大天使の加護。
刹那の愛した少女は、水の四大天使ジブリールの生まれ変わりであり、彼の守護天使でもあった。
水や水に関連するもの(鯨などの水生生物)が時に護ってくれ、水属性の攻撃などに耐性が付く。
――少年と少女は一生二人で戦い続けた。

カリスマ:D
軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において、自軍の能力を向上させる。
刹那自身の生還率も上がる反面、彼に魅せられた味方が犠牲になりやすい。
良くも悪くも真っ直ぐなその在り方は天使悪魔人間種族を問わず数多のものを惹きつけた。

神性:C
創世神の最高傑作であるアダム・カダモンより力を受け継いた有機天使の生まれ変わりである刹那の神性は本来Aランクである。
しかし、アダム・カダモン、有機天使、刹那に至るまで神に抗い、刹那は神殺し後ただの人間として生きたためランクが低下している。

時間魔術:C
聖隠者アダム・カダモンの力を分けられ生まれてきたため、刹那は失われた時間魔術を使用できる。
とはいえ刹那自身は一瞬だけ時間を操る、時間操作系能力に耐性を得る位の部分的かつ限定的な使用しかできない。
意識して使用するのも苦手なため、咄嗟に発動できればラッキー程度のスキル。

【宝具】
『七支刀御魂剣(ななつさやみたまのつるぎ)』
ランク:B+ 種別:対神宝具 レンジ:1 最大捕捉:一柱
通称:ななつさや。神剣にして魔剣。刹那のメインウェポン。
第五元素でできており、地球上で最も硬い。
また、戦う相手によって属性を変え、相手の弱点を突き、相手の武器や攻撃に耐性を得る。
かつて神に反旗を翻したルシファーの魂が封印されていたこと、有機天使アレクシエルによって神への反乱に使用されたこと、
刹那の手で創世神を遂に討滅したことから神や神性を持つ相手などには絶大な補正を得る。
刹那自身も神性を持つが、この剣自体も意思を持っており、刹那に願われない限り刹那を傷つけることはない。
加えて、四本腕の金属的な大女に変身することで自律行動もできる。

『運命に抗いし有機天使の三翼(アレクシエル)』
ランク:A+ 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1人
刹那の始まりの前世であり、自然無限物質(エーテル)の力を司り、火・風・水・土のルーンを操る有機天使アレクシエルの羽根。
救世使としての刹那の象徴でもある。
魔力が刹那本来のEXランクになり、強力な再生能力を得る。
また、この宝具により、刹那は魂の浄化や救済といった奇跡を起こせる。
ただしこの宝具が司ってるのはあくまでも正の力であり、自然に反するような奇跡は起こせない。
本来は自然界から魔力を無限に得られるのだが、今回の聖杯戦争は電子空間内のため、効率は悪くなっている。
尚、エンジェルはあくまでも無道刹那として召喚されたため、アレクシエルの人格が表に出てくることはない。
ちなみに宝具解放前は通常の二枚の天使の羽根を発現させている。

『その名は天使――(エンジェルサンクチュアリ)』
ランク:EX 種別:対神宝具 レンジ:1~5 最大捕捉:一柱
アレクシエルの双子の弟で電磁場無限物質(アカシヤ)の力を司る無機天使ロシエル。
彼が託してくれた『運命に翻弄されし無機天使の三翼(ロシエル)』を『運命に抗いし有機天使の三翼』と同時発動する。
『運命に翻弄されし無機天使の三翼』は負の想念や電子を力とするため、ムーンセル内の魔都東京とも相性が良い。
実際ロシエルは東京の電力と人々の負の念を糧に封印を解き復活したことがある。
両翼が揃うことで正負無機有機を網羅し無限の宇宙元素、力を得られる。アストラルパワーもEXになる。
使用後は翼の力で文字通り無限の力を生成できるため魔力消費は考えずに良くなる。
しかしその力は神霊級であり、ムーンセル内で無事発動できるかは不明。
できたとしても発動後はともかく、発動時に無限の魔力を消費するため、その一瞬だけでもマスターの命を奪うには十分である。

【weapon】
燃費の良い七支刀御魂剣やアストラルパワーで強化した肉体やエネルギーの放出。

【人物背景】
有機天使アレクシエルの生まれ変わりとしてその魂を内包する、救世使の少年。
単純だが底抜けに明るく、強烈なカリスマ性を持っている。
幼い頃から妹の紗羅を強く愛していた事で苦脳していたが、紆余曲折を経て結ばれた紗羅が刹那を庇って死んだ為、アレクシエルとしての力が暴走。
寸前で地球を救う為に時間を停めたアダム・カドモンの助言で、紗羅を蘇生させようと旅立つ。
天界・地獄・地球を股にかける戦いと、数多の出会いと別れを経て、すべての黒幕であり世界をリセットしようとしていた創世神を討つ。
救世使としての全ての力を使い果たし、羽根も失い普通の人間として、最愛の妹と一生二人で幸せに戦い続けた。

【基本戦術、方針、運用法】
七支刀御魂剣によりどんな相手とも堅実に戦えるが、スキルや宝具が救世・対神に偏っている。
また、アレクシエル発動前は決して燃費がいいとも言えず、発動したらしたで高確率で真名バレする。
願いを叶えるための純粋な殺し合いとしての聖杯戦争にはあまり向いていない。
悲業の死を遂げる呪いを輪廻に組み込まれ、神に翻弄され、幸運は最低クラスだが、その運命に打ち勝ったからこその彼でもある。
救世使としての状況にハマりさえすれば一気に大化けするサーヴァントである。

【サーヴァントとしての願い】
みんなで幸せになれたし、これ以上の願いなんてない。
そもそも願いは叶えてもらうものでもねえしな。


【マスター】
ロウ・ヒーロー……今は、まだ@真・女神転生Ⅰ

【マスターとしての願い】
自分でもまだ分かっていない

【weapon】
なし

【能力・技能】
メシアとしての能力や装備は喪失し、人間の時の能力に戻っている。
秘められた力を持ち、特に回復補助魔法と衝撃系魔法に長ける。
ディアからサマリカームまで全て習得済み。
ある程度の武器も扱い慣れている。

【人物背景】

かつて、三人の少年が居た。

三人の少年は、悪魔に踊らされた。

三人は二人になり、二人は一人になった。

残った一人は真の救世主で。

消えた二人は偽の救世主だった。

それでも。その身がただの生贄だったとしても。

彼らもまたかつては一人の人間であり、そこに本物の何かがあった。


【方針】
人として抱いた願いをまずは取り戻す



-003:聖杯のUTSUWA 投下順 -001:Ruler and Dominator
-003:聖杯のUTSUWA 時系列順 -001:Ruler and Dominator


登場キャラ NEXT
ロウ・ヒーロー&エンジェル(無道刹那 000:DAY BEFORE:闇夜が連れてきた運命

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最終更新:2015年02月05日 03:37