『警視庁副総監、襲撃さる!』
作者・大魔女グランディーヌ
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東京・首相官邸***
日米直通のホットラインを通じて誰かと会話をしている日本国首相・剣桃太郎。
もちろん電話のお相手は、ホワイトハウスの主である。
桃太郎「ニュースは見たぞマイコゥ。なかなかの活躍だったみたいだな」
電話の声(マイケル)「ハハハ、いやいや、これもネロスの動きについて
日本から詳細な情報提供があったおかげだ。感謝してるよ、桃」
桃太郎「だがこれで南米の情勢も完全に一件落着とは、おそらくいかんだろう。
それに米国内の
ロゴス派の動きもある。くれぐれも用心してくれ」
電話の声(マイケル)「そちらこそな。ティターンズの勢いもあり、
ダカールの連邦政府首脳部ともほとんど連絡が取れない今、
安保理のメンバー国でもある日本とアメリカがしっかりしなければ
世界は地球至上主義を掲げる老人達の手に落ちてしまう」
桃太郎「ではJにもよろしく伝えておいてくれ」
電話の声(マイケル)「Good luck!!(幸運を)」
電話による首脳会談が終わったところで、
秘書官が首相執務室に報告に入る。
秘書官「総理、地球連邦軍極東支部の三輪長官がお見えになりました」
桃太郎「お通ししてくれ」
受話器を置いた桃太郎は三輪長官を出迎えた。
秘書官「どうぞこちらへ」
三輪「うむ、失礼する」
桃太郎「お忙しいところをお呼び立てして申し訳ありません、三輪長官。
どうぞお掛けください」
三輪「で、私に話とは?」
桃太郎「率直に申し上げます。地球教の噂について何かご存知ですか?」
三輪「地球教………さーて、なんのことやら。
一体、何ですかな、それは?」
桃太郎「地球教とは国際的なカルト宗教団体です。奴等はこの日本の支配を目指して、
信者獲得のために違法スレスレの布教活動を展開しています。そしてその日本支部の
関係者が、わが国の政府や警察内部にもいるという情報があるのです。
それが誰と誰なのかまではわかりませんが」
三輪「ほぅ……しかしそれと私と何の関係が?」
桃太郎「あなたは軍部では地獄耳とも言われるお方だ。その情報網を使って
その真偽を調査してほしいのです」
三輪「なるほど、そういうことですか。国家に仕える公僕たる者が
インチキ宗教に手を出すとは信じられん話だが……わかりました。
総理直々の頼みとあらば全力で調べてみましょう」
桃太郎「よろしくお願いします」
三輪長官は、ふとデスクの上の色紙へと目を見やった。
三輪「総理、この色紙は見事な達筆ですなあ!」
桃太郎「フッ、野暮用が多くて困っています」
どうやら後援会あたりから一筆頼まれていたものらしい。
三輪「総理、その代わりと言っては何ですが、
私にも一筆お願いできませんかな?
今日これから伊豆の方で閲兵式がありましてな。
そこで部下たちに見せてやろうと思いまして」
桃太郎「お易い御用です。こんな悪筆でよければ」
三輪に乞われて、毛筆で色紙に何やら書き始める桃太郎。
三輪「しかし羨ましい限りですな。その若さで日本のトップに登り詰め、
世論調査による支持率は歴代内閣最高ときている」
桃太郎「お待たせしました」
三輪「これはお手数をかけまして」
渡された色紙には、―沐猴にして冠す― と書かれてあった。
三輪「いやー、これは素晴らしい。これでワシも鼻が高いというものです。ワハハハハ!!
(それにしても“沐猴にして冠す”とはどういう意味なのだ……???)」
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地球連邦軍極東支部・伊豆基地***
伊豆基地へと戻った三輪長官は、閲兵式での訓示を済ませた後、
基地を訪問した白河尚純と面会した。
トリヤマ「長官、肩をお揉み致しましょう」(・∀・)ニヤニヤ
マル「長官、お茶をお待ちしました」(・∀・)ニヤニヤ
三輪「今は大事な客人を向かえておる最中だ。
何か用があればこちらから呼ぶから、自室にて待機していろ」
トリヤマ「かしこまりました。どうぞなんなりとお申し付けくださいませ」(・∀・)ニヤニヤマル「常にお側に控えておりますので」(・∀・)ニヤニヤ
三輪の命令に従い、恭しく退室するトリヤマとマル。
白河「なんですかあの二人は?」
三輪「
GUYSから人質代わりにあの二人の身柄を預かっておるのだが、
見たとおりゴマをするしか能のない連中だ。気にする事はない。
フッフフ……しかし今やそのGUYSもティターンズ派の監視下に置かれ、
地球教による世界支配計画も順調のようだな」
白河「三輪長官、これも貴方のお蔭です。貴方の軍内部での政治力と
顔の広さで我々はこの国でも安心して勢力を伸ばす事が出来る。
ジャブローにおられるジャミトフ閣下や、地球教の総大主教猊下も喜んでおられます」
三輪「うむ。日本に集中している防衛戦力も、全て我々の完全な指揮下に
組み込まれる日は近い。ジャミトフ閣下にはよろしくお伝えしてくれ」
白河「ところで今日、剣総理と会われたとか……」
三輪「それが傑作な話でな。ワシに政府や軍・警察内部で
地球教と関係している者を探れと言うのだ。このワシがその内の一人だとも知らずに。
切れ者だと聞いておったが、所詮はまだまだ尻の青い若造だわい。
おまけにあんな物までワシにくれてな……」
三輪は、先刻首相官邸にて桃太郎からもらった、
額縁に入れ壁に掛けて飾ってある“沐猴にして冠す”と書かれた色紙を指差した。
白河「沐猴にして冠す……!?」
三輪「ほぅ、何だ、その言葉を知っておるのか。で、その意味は?
どうせくだらん人生訓か何かだろうが……」
白河「沐猴とは猿のこと……」
三輪「猿!?」
白河「つまり猿にどんな立派な冠をかぶせても所詮、猿は猿。
人の上に立つ器量ではないという意味です」
それを聞いた途端、三輪防人は愕然とした。
三輪「な、なんだとー!! ワシはついさっき閲兵式の席上で
こいつを極東支部の全兵士たちに披露してしまったばかりなのだぞ!!
ふざけやがって、あの若造がーっ!! こ、殺してやる!!
こんなもんでワシに一生消えぬ大恥をかかせおってからにーっ!!! ヽ(`Д´)ノウワァァン!!」
烈火のごとく怒る三輪長官。
白河「落ち着きなさい、三輪長官。とにかく剣総理が貴方に疑惑を持っている
ことだけは確かのようです。その色紙は貴方への挑戦状とみて間違いないでしょう」
三輪「だったら早くあの剣桃太郎を始末するのだ!!
早目に手を打たなければ危険だぞ!!」
白河「慌てることはありません。すでに手は打ってありますとも。フフフフフ……」
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その日の夜…。
東京都内の某料亭***
警視庁の東一門副総監は、警察学校時代の後輩である南雅彦と
二人きりで酒を酌み交わしていた。
南「――そうですか。加賀美総監は相変わらずですか……」
東「うむ。前総監の冴島さんが退任され、
あの冷徹で知られる加賀美さんが総監となられれば、以前に比べて
少しはマシになるかと思っていたが……かえって現場に対する
放任主義が強まったと思う事があるのは確かだな」
南「結局加賀美さんも妙な趣味に走る点では、
冴島さんと全く変わりがなかった。このままでは
我が国の警察組織の未来は危ないですね」
東「まったく……先々代の総監だった野上さんの時代が懐かしい……」
話は先代の警視総監・冴島十三や、
現警視総監・加賀美陸に対する愚痴にまで及んでいた。
南「どうでしょうか、東さん。私に力を貸しては頂けませんか?」
東「力だと? どういう意味だ?」
南「単刀直入にお話しましょう。加賀美さんには警視総監の座を退いて頂きます」
東「な、なんだと!?」
南「そうなれば警視庁は東さん、ようやく貴方の天下だ。
全ての元凶は冴島十三、加賀美陸両氏の後ろ盾となっている剣桃太郎政権にあります。
実は政界のさる御方が我々同志の後ろ盾となって動いてくれております。
日本の警察を真のあるべき姿に戻すため、我々同志の旗頭として
決起なさるおつもりはありませんか?」
東「………」
しばらく無言で考え込む東副総監。だが……
東「南、今の話は聞かなかった事にさせてもらおう」
南「えっ……?」
東「確かに私は前の冴島総監のやり方に不満を抱いていた。それは事実だ。
あのブレイブポリスの連中を冴島さんが甘やかしていたことについても、
私はいつも頭を悩ませていたつもりだ」
南「ならば何故?」
東「現実的な考えを持つ我々が堂々と意見を持って諫言すれば、
冴島さんは無論、今の加賀美さんだって当然聞く耳はもっておられるだろう。
それを力ずくで総監の座から引き摺り下ろすなど……南、まさかお前が
密かにそんなとんでもない企みを考えていたとはな。
貴様は日本の警察の歴史を泥で汚すつもりか!?」
南「………」
東「先輩の誼で忠告させてもらうが、お前も余計な事は考えるな。
なんだかんだ言ってもやはり冴島さんは傑物だ。それに加賀美さんも
お前如き青二才の敵う相手ではない。今日はここで帰らせてもらう……」
東副総監が退席し、座敷に一人残る南雅彦。
南「……腰抜けめ。やはり貴方も偽善者の一人に過ぎなかったようだな」
南は襖を挟んで隣の座敷に控えていた人影に、目線で合図した。
南「須藤刑事、後はわかっているな……?」
須藤「承知しております」
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新宿西警察署管内・首都高速***
高速道路で車を運転していた東副総監は、
帰路の途中で仮面ライダーシザースとボルキャンサーに襲われた!
東「な、なんだお前たちは!?」
シザース「貴方に恨みはありません。ですが死んでいただきます」
東「や、やめろ!! う…うわああああ~~っ!!」
警視庁・総監室***
東副総監が何者かに襲撃され、病院へと運び込まれたという情報は、
直ちに所轄である新宿西警察署署長である野上冴子の口から直接
警視総監・加賀美陸へと報告された。
陸「何だって! 東くんが!?」
冴子「はい。幸い命は取り止めましたが、
1ヶ月は絶対安静だそうです」陸「………」
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○剣桃太郎、マイケル・ウィルソン→日米直通のホットラインで電話会談。
○トリヤマ補佐官、マル補佐官秘書→相変わらず三輪防人に腰巾着のように仕えているが…?
●白河尚純→地球連邦軍極東支部伊豆基地を訪問。
●三輪防人→剣桃太郎に大恥をかかされ激怒。
●南雅彦→警視庁乗っ取りのため、東副総監の抱き込みを謀るが拒絶され失敗。
口封じのため須藤雅史に東副総監を襲わせる。
○東一門→南の誘いを断ったため、仮面ライダーシザースとボルキャンサーに襲われ負傷。
●須藤雅史→現在は南雅彦の庇護の下に、その飼い犬として動いている。
仮面ライダーシザースに変身して東副総監を襲撃する。
○野上冴子→東副総監襲撃・負傷の一報を加賀美陸に報告。
○加賀美陸→野上冴子から東副総監襲撃・負傷の報告を受ける。
【今回の新規登場】
○加賀美陸警視総監(仮面ライダーカブト)
警視庁警視総監。仮面ライダーガタック=加賀美新の父親。
影で対ワーム組織ZECTの総司令官も務める。これまでZECT評議会を構成する
ネイティブの言いなりになってきたが、密かにネイティブへの反撃の機会を窺っていた。
息子・新との間には深い溝があったが、ワームとの戦いを経てその溝も埋まりつつある。
どうやら味覚審査員の資格を持っているらしく、闇キッチンバトルの審査の際には
派手なリアクションを取る。
○東一門警視監(勇者警察ジェイデッカー)
キャリア組の警視庁副総監。型に嵌った堅物で、冴島やブレイブポリスと
意見が対立する事も多いが、平和を愛し、犯罪を憎む気持ちは決して
負けていない。
●須藤雅史=仮面ライダーシザース(仮面ライダー龍騎)
所轄大森署の悪徳刑事。
●ボルキャンサー(仮面ライダー龍騎)
仮面ライダーシザースと契約しているミラーモンスター。
○野上冴子警視正(シティーハンター/エンジェル・ハート)
新宿西警察署署長。野上元警視総監の令嬢。特捜課の女刑事時代は
警視庁の妖艶な女狐と呼ばれていた。
最終更新:2020年10月29日 10:44