本編300~303

『公民権法』-1

 作者・キノコモルグ
300

京南大学附属病院***


藤兵衛「どうだいカドクラくん、身体の具合は?」
カドクラ「どうもご心配をおかけして申し訳ありません、立花さん」

ここは京南大学附属病院の外科病棟にある病室の一室である。
その日、立花藤兵衛は、店の常連客で旧知の間柄でもある
二輪ロードレースの監督カドクラの見舞いに来ていた。

藤兵衛「しかしひき逃げに遭うとは災難だったねえ。
 つくづく物騒な世の中になったもんだ」
マリナ「幸い軽傷で済んで、お医者さんの話だと
 後遺症の心配もないそうです」

藤兵衛の持参した贈答用のフルーツを
病室備え付けの冷蔵庫の中へとしまうマリナ。
彼女は入院中のカドクラの世話をするため、
ここ2~3日病院に泊り込んでいるようである。

カドクラ「せっかくマリナがチームに戻ってきてくれたんです。
 いつまでもベットの上でのんびりなんかしてられませんよ。
 ほら、この通り…イタタタタ!!!」

元気に振舞おうとして無理に体を動かそうとして
一瞬激痛が走り、顔が歪むカドクラ。

藤兵衛「こらこら! 怪我人が無理しちゃいかん!」
マリナ「そうですよカドクラさん。チームのメンバーのためにも、
 完治するまでしっかり養生してください」
カドクラ「むぅぅ……」

ちょっと不満そうにふくれっ面になるカドクラ。
そこへナースがやって来る。

愛「カザマさん、チームの方からお電話です」
マリナ「わたしに? すみません、ちょっと行ってきます」
藤兵衛「ああ」

電話を受け取りに病室を出るマリナ。

マリナに電話があったと呼び出しに来た、
この若い女性のナース――魚住愛。
実はかつて地球に侵攻してきた宇宙連合ウオフ・マナフの軍勢と戦った
超星神グランセイザー・水のドライブの一人
セイザーパイシーズなのだが、
その事をこの場にいる藤兵衛やマリナが知る事になるのは
もう少し先の話である…。

301

同病院・ナースステーション前受付***


受付で電話の受話器を受け取るマリナ。
しかしその電話の相手の声を聞いた途端、
その表情は凍りついた。

電話の声「もしもし…」
マリナ「貴方は誰!? チームメイトじゃないわね!」

電話の相手の声は変声機で加工されていたのだ。

電話の声「カザマ・マリナに警告する。
 この一件からは手を引け!」
マリナ「この一件?? どういうこと?」
電話の声「いいから黙って手を引くんだ。
 さもないと、この次は軽傷で入院程度じゃすまないぞ。
 フフフフフ……」
マリナ「あ、待ちなさい――」

電話は一方的に切れた…。


再び、カドクラの病室***


病室へと戻ったマリナは、いきなり荷物をまとめ
外出の身支度をし始めた。

藤兵衛「おいおいどうしたんだマリナちゃん!?」
マリナ「ごめんなさい。わたし急用を思い出しちゃって。
 ちょっと出かけてきます!」
藤兵衛「行くってどこへ!?」

困惑する藤兵衛とカドクラを置いて、
無言のまま病室を飛び出していくマリナ。

カドクラ「おい、マリナ!?」

302

ヒルカワのオフィス***


ここは悪徳ジャーナリスト、ヒルカワが自宅兼事務所として使っている
マンションの一室である。尤も…中は雑然と散らかっていて、
とてもまともなジャーナリストの仕事部屋とは思えないような
場所ではあったが…。

ヒルカワ「これはこれは…元GUYSのお嬢さんが
 そっちの方から出向いてくれるとは、いったいどういう風の
 吹き回しかな?」
マリナ「ふざけないで! 貴方の仕業ね?
 カドクラさんを車で跳ねさせたのは!!」

ヒルカワの部屋へと単身乗り込んできたマリナは
すごい形相でヒルカワへと詰め寄る。

ヒルカワ「さあて、何の事かな…」
マリナ「あくまでもとぼける気ね!」
ヒルカワ「とんでもない。それとも何か証拠でもあるんですかね?」
マリナ「くっ……」
ヒルカワ「ま、かつての上官を信じたい気持ちは分かりますよ。
 でもサコミズ前総監のスキャンダルはれっきとした事実なんだ。
 貴女ももう余計なことをいろいろと嗅ぎ回るのはやめた方がいい。
 さあ、今日のところはお帰り願いましょうか…」
マリナ「見てなさい! 貴方が根も葉もない記事を捏造して
 サコミズさんを陥れたことは、必ず暴きだしてやるからっ!」

捨て台詞を残して去るマリナ。
部屋に一人になったヒルカワは、
懐から携帯を取り出して、ある番号へと電話をかけた。

ヒルカワ「もしもし、南さんですか?」
南雅彦の声「ここへは電話をかけないようにと
 あらかじめ言っておいた筈だが?」
ヒルカワ「それがうるさい女狐が周囲をウロチョロしていましてね。
 早いトコ何とかしてもらえませんか?」
南雅彦の声「…いいだろう。そっちの方はじきに片をつける。
 お前は引き続き、我々ロゴスに楯突く人間達の
 信用を貶めるための記事を書き続けろ。いいな?」


喫茶アミーゴ&立花レーシング***


茂「カザマ・マリナ…?」
藤兵衛「うむ、うちの店の常連客の女の子なんだが、
 どうも様子がおかしくてな…」

その日の夕方……。
カウンター越しに、本日の病院であった出来事の
一部始終を藤兵衛から聞く城茂。

藤兵衛「お前達も忙しい事は承知のうえですまんのだが、
 あの娘をそれとなくガードしてやってくれんか?
 ワシの取り越し苦労かもしれんが、どうにも心配でな…」
茂「それとなくガードねぇ……」

深く考え込む茂。

303

○カドクラ→ひき逃げに遭い入院。幸い軽傷で生命に別状はなし。
○立花藤兵衛→店の常連客であるカドクラの見舞いに病院に訪れる。
 病院で電話を受けたカザマ・マリナの様子を不審に思い、彼女の警護を城茂に依頼。
○カザマ・マリナ→サコミズ失脚の一件の真相を探るのをやめるよう
 脅迫電話を受ける。その後ヒルカワのところに乗り込み詰問する。
○魚住愛→入院したカドクラを担当している。今回は顔出しのみの登場。
○城茂→立花藤兵衛からカザマ・マリナの警護を依頼される。
●ヒルカワ→カドクラがひき逃げに遭った一件と脅迫電話の事について
 カザマ・マリナから追及を受けるが、開き直って追い返す。
 その後南雅彦に密かに連絡を取り、マリナの抹殺を依頼する。
●南雅彦→ヒルカワからカザマ・マリナを始末するよう頼まれる。

【今回の新規登場】
○カドクラ(ウルトラマンメビウス)
 カザマ・マリナが所属するオートレースチームの監督。
 マリナの実力を認めており、世界選手権への期待を募らせている。
 マリナがGUYSに入隊していた時期は、マリナの後輩を率いてレースに参戦していたが、
 成績は芳しくなかったようである。一度はマリナをチームに戻るよう
 説得するつもりだったが、CREW GUYSでの仕事に情熱を傾ける
 マリナの姿を見て、その考えを改めた。

○魚住愛=セイザーパイシーズ(超星神グランセイザー)
 古代の遺伝子を受け継ぐ12人のグランセイザーの1人。
 水のドライブに属する魚座の戦士。シャチの力を持つ。
 普段は京南大学付属病院に看護師見習いとして勤務している。
 ちょっとノンビリ屋だが、芯は強い。
 専用武器『アクアブリッツ』から必殺技『ブリンクショット』を繰り出す。

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最終更新:2020年11月08日 15:47