本編636~640

『ダカールの日』-7

作者 鳴滝
636

ダカール国際空港***


イスマエル「剣総理、お待ちしていました」
桃太郎「イスマエル王子」

無事、公民権法案を国会で可決成立させ、
日本の政府専用機でダカールの国際空港に到着した剣桃太郎を、
中東有数の産油国アブラーダのイスマエル王子が出迎える。
日本は国内の石油需要の8割をアブラーダに依存しており、
またイスマエル王子の妃が日本人女性という事もあり、
両国はとても親密な間柄である。

桃太郎「父君は病にて療養中と承ったが、お体の具合は?」
イスマエル「侍医によれば軽い発熱だそうです。
 心配をお掛けし申し訳ない」
桃太郎「いや、大事無いのであれば、それは何より」

突如体調の不調を訴えて床に臥せった父王に代わり、
こうして第一王位継承者であるイスマエル王子が
国王の名代として出席しているのであった。

桃太郎「それで殿下、臨時総会での票読みの方は?」
イスマエル「五分五分…といったところです。
 ここまで追い上げることが出来たのは、日本での
 公民権法案可決の影響が大きいでしょう」
桃太郎「しかしあのティターンズの事だ。
 最後にどんな手段に訴えてくるか解らん」
イスマエル「ええ…。米国のウィルソン大統領が
 あちらの部屋でお待ちです」

α基地***


ダカールへ向けてインド洋を移動中のα基地である。
極東基地からは岡長官の計らいにより、大空魔竜も予定通りに合流している。

ルリ「そろそろティターンズの防衛網に入る頃です。セイラ艦長、作戦の説明を」
セイラ「了解しました。今回の作戦の目的は、ブレックス・フォーラ准将を無事、
 ダカールの議事堂まで送り届ける事にあります」
ピート「そのためには、陽動部隊を編成し、敵の目をひきつける必要がある。
 その隙に小数の部隊で議事堂に降下、議会を占拠する」
大文字博士「現地では、エゥーゴやPUの同志が地上部隊を率いて、
 議事堂の制圧、及び、中継局の確保を準備中だ」
ピート「ダカールからの連絡では、剣総理たちも議場に到着し、
 評議会に出る議員の面々は大方出席手続きを済ませたそうだ。
 ブレックス准将は、かねてからの手筈どおりに地下から議事堂へ接近する。
 残りのみんなは議事堂西部で陽動作戦を行ってくれ」
大文字博士「では、時計あわせ、17:00。5分後に作戦を開始する!」

637

連邦議会議事堂前・正面玄関***


日本国総理・剣桃太郎の乗った日本大使館の公用車が到着し、
正面玄関に横付けされる。
桃太郎が車から降りて姿を現した途端、
呆気に取られる出迎えの連邦政府事務官や
取材に来ていたマスコミの面々。

ちなみに、当然ながらティターンズの手によって
ダカール市内には自由なマスコミの出入りは規制され、
今周囲にいるマスコミの記者たちは言うまでもなく、
皆ティターンズの息の掛かった御用マスメディアばかりである。

記者「一体、どういうことですか! 日本の剣首相!?
 そのガクランは卒業された男塾の制服ですよね!」
桃太郎「……そうだ。これから俺は命を懸けた戦場へ行く……!!
 このガクランはその心意気だ……!!」
記者「その背中に背負っている刀は何ですか?
 もちろん模造刀ですよね?」

すると桃太郎は、居合い抜きで記者の持つマイクを
スパッと半分に切り捨ててみせる。

記者「――ヒィッッ!!*1)))))))))))))))))ガクガクブルブル」
桃太郎「それが答えだ……!!」

続けて米国大統領を乗せた公用車が到着。
後ろからその一部始終を見ていたマイケル・ウィルソン大統領。

マイケル「さすがは桃。私もパワードスーツを着てくればよかったか」
ジョディ「ご冗談はおよしください、大統領」
マイケル「HAHAHAHA!」

その様子を2階の窓から見ていたジャミトフたち。

ジャマイカン「つまらんパフォーマンスを見せおって!
 まるでサムライ気取りか。東洋の猿めがっ!」
ジャミトフ「それよりもブレックス・フォーラはどうした?
 てっきり日本の代表団と一緒か、あるいはプラントの艦に
 同行して来るものとばかり思っておったぞ」
ジャマイカン「報告では日本の政府専用機にも、あのザフトの
 ふざけたピンク色の艦にも、ブレックス・フォーラは乗って
 いなかったようであります」
ジャミトフ「米国のエアフォース・ワンには?」
ジャマイカン「無論、そちらの方も確認済みであります。
 エアフォース・ワンにも奴は乗っていなかったと…」
ジャミトフ「…奴め、いったいどのルートから
 ダカール入りするつもりだ?」

638*

連邦議会議事堂・議場前大廊下***




カガリ「ラクス!」

ラクス「カガリさん、そちらでしたか」



駆け寄る二人。久方ぶりの再会である。

互いに固い友情の握手を交わすと、周囲に聞こえないよう小声で話し込む。



カガリ「それで、フォーラ准将は?」

ラクス「すでに極秘の別ルートでダカール市内に入られておいでです。 

 予定ではもうじき議事堂に到着される筈ですが…」





臨時総会***


厳粛な空気の中で、すでに地球連邦臨時総会は始まっていた。
この時、ティターンズに反対的なリヨン議長は強引に更迭させられ、
ティターンズに操られるだけの傀儡たる議長代行に、
ジャマイカンが目線で合図を送る。

議長代行「では、連邦憲章、第11項改正に関する投票を行います」

ダカール市内・下水道***


密かに下水道を伝って、
議事堂へと急ぐブレックス・フォーラ准将、
そしてそれを護衛するサングラスの男。

カオルちゃん「もうすぐ議事堂の真下だ。
 なんせ下水道なんで臭いはキツイだろうが、
 もう少しだから我慢してくれ」
ブレックス「うむ」

野上冴子を通じて日本政府から非公式にブレックス・フォーラの
ダカール連邦議会議事堂までの護衛を依頼されたカオルちゃん。
いつもの野上冴子であれば、シティーハンター=冴羽撩に依頼する
ところであろうが、裏の世界でも相当名の通ったスイーパーである
シティーハンターは、やはりロゴスの筋から動きをマークされている。
そこで敵の目を欺くために、今回は別ルートを介してカオルちゃんに
仕事が持ち込まれたのであった。

ティターンズ兵A「誰だ!?」

カオルちゃん「ちいっ!」
ブレックス「こんなところにまで兵士が配備されていたか!」
ティターンズ兵「止まれ!! 止まらんと撃つぞ!!」

銃を構えるティターンズ兵士。しかし彼らが発砲するよりも先に、
カオルちゃんの華麗な蹴り捌きが決まる方が早かった。

カオルちゃん「とりゃああっ!!!」
ティターンズ兵A「――うわっ!? な、なんだ!?」
ティターンズ兵B「ぐ…」

ぐったりと気を失い倒れるティターンズの兵士達…。

ブレックス「見事だ」
カオル「さあ急ごうぜ准将。あまり時間がない」

639

再び連邦議会議事堂・臨時総会***


議長代行「では、投票の結果を発表いたします。賛成212。反対101。無効178。
 よって、連邦憲章11項改正法案を可決します」
反対派議員「異議あり!! これは陰謀だ!」
カガリ「その無効178ってのは何だ! 無茶苦茶だぞ!」
ランプ「黙れ! もう決まったんだ!」

中肉中背で、角ばった顔と大きな目の中年の小男が、
カガリや他の反対派を激しく恫喝する。

桃太郎「あの男は…確か」
ウイリス「反ロボット主義者のアセチレン・ランプです」

日本代表席の隣りに着席している、エスタルドのウイリス・アラミス主席が
桃太郎の小耳にそっと囁く。

桃太郎「確かあの男は一度逮捕された筈だが」
ウイリス「三輪防人と同様にロゴスの後押しで出獄して、
 議員の座に返り咲いたのでしょう」

反対派議員「金に目がくらんで、独裁政権を誕生させると言うのか!?
 貴様は、それでも…うっ! な、何を!? は、離せ!」

ティターンズ派の議員席から野次や罵声が飛び交う中、
反対派の議員が次々と守衛によって
強引に議場から外へ連れ出され連行されていく…。

ラクス「剣総理、これは…!?」
パタリロ「ティターンズめ、有無を言わせないつもりだな」
桃太郎「………」

議長代行「…静粛に。それでは、改正にともない、
 新たな評議会首席を決定する投票に移ります」

新たな評議会首席がジャミトフ・ハイマンに決定されれば、それは自動的に
地球連邦の次期大統領として選出されることを意味するのだ……。

640

○イスマエル王子→ダカール国際空港で剣桃太郎を出迎える。病床の父王の
 名代として地球連邦臨時総会に出席。
○剣桃太郎→日本代表団としてダカール入り。地球連邦臨時総会に出席。
○ホシノ・ルリ→作戦前にてα基地に待機。
○セイラ・マス→作戦前にてα基地に待機。
○大文字洋三→作戦前にてα基地に待機。
○ピート・リチャードソン→作戦前にてα基地に待機。
○マイケル・ウィルソン→米国代表団としてダカール入り。地球連邦臨時総会に出席。
○ジョディ・クロフォード→米国代表団としてダカール入り。地球連邦臨時総会に出席。
○ウイリス・アラミス→エスタルド代表団としてダカール入り。地球連邦臨時総会に出席。〇ラクス・クライン→地球連邦臨時総会に出席。
○カガリ・ユラ・アスハ→地球連邦臨時総会に出席。
○パタリロ・ド・マリネール8世→地球連邦臨時総会に出席。 
○ブレックス・フォーラ准将→護衛のカオルちゃんと共に、ダカール市地下
 下水道から議事堂へと接近する。
○カオルちゃん→日本政府からの依頼で、ブレックス・フォーラを護衛する。
●ジャミトフ・ハイマン→地球連邦臨時総会に出席。
●ジャマイカン・ダニンガン→→地球連邦臨時総会で、ジャミトフに陪席。
●アセチレン・ランプ→ロゴスの後ろ盾を得て出獄。議員の座に返り咲き、
 地球連邦臨時総会に出席。

【今回の新規登場】
○イスマエル王子(仮面ライダースーパー1)
 アブラーダ王国の王子で、沖一也のアメリカの大学時代の親友。
 一也の取り持った縁で、日本人女性・恵子を妃に迎えた。
 ドグマ王国の陰謀で、怪人カマキリガンが化けた偽者と
 すり替えられるが、スーパー1の活躍で救出される。

○大文字洋三博士(大空魔竜ガイキング)
 大空魔竜戦隊の創設者であり総司令。東西大学名誉教授(宇宙物理学専攻)。
 早くから宇宙からの侵略を予見し、密かに超能力者を集めて大空魔竜戦隊を組織した。

○ピート・リチャードソン(大空魔竜ガイキング)
 大空魔竜隊キャプテン。アメリカ海兵隊あがりの元トップガンで、
 弟のトムに対しても厳しく振る舞い、大空魔竜の中でもクールな
 性格故にサンシローと衝突することも多いが、本来は優しい性格
 でありながらもあえて情に流されないとする為であり、地球を守る
 使命感を強く持つ。徹底した現実主義者で、口癖は「ナンセンス」。
 考古学に関しても知識を持っている。

○ウイリス・アラミス(機動新世紀ガンダムX)
 エスタルド人民共和国の若き国家主席。民族の英雄だった前国家主席の息子。
 父の後を継いだばかりであった当初は優柔不断な青年だったが、やがて指導
 者としての責任に目覚めていく。

●アセチレン・ランプ(アストロボーイ 鉄腕アトム)
 評論家、会社社長、政治家で、反AIロボット主義者。人間以外の知性を
 認めない人間至上主義者である。政界に進出し、AIロボット排斥運動の
 急先鋒となる。しかし内心では、かつて自分を救ってくれたロボット・
 フレンドを見捨ててしまったPTSD(というより良心の呵責)に苛まれ、
 「ロボットは道具。心などいらない」と己に言い聞かせ、世に広める
 ことで、辛うじて正気を保っている。

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最終更新:2020年11月16日 03:15

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