『ダカールの日』-7
作者 鳴滝
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ダカール国際空港***
イスマエル「剣総理、お待ちしていました」
桃太郎「イスマエル王子」
無事、公民権法案を国会で可決成立させ、
日本の政府専用機でダカールの国際空港に到着した剣桃太郎を、
中東有数の産油国アブラーダのイスマエル王子が出迎える。
日本は国内の石油需要の8割をアブラーダに依存しており、
またイスマエル王子の妃が日本人女性という事もあり、
両国はとても親密な間柄である。
桃太郎「父君は病にて療養中と承ったが、お体の具合は?」
イスマエル「侍医によれば軽い発熱だそうです。
心配をお掛けし申し訳ない」
桃太郎「いや、大事無いのであれば、それは何より」
突如体調の不調を訴えて床に臥せった父王に代わり、
こうして第一王位継承者であるイスマエル王子が
国王の名代として出席しているのであった。
桃太郎「それで殿下、臨時総会での票読みの方は?」
イスマエル「五分五分…といったところです。
ここまで追い上げることが出来たのは、日本での
公民権法案可決の影響が大きいでしょう」
桃太郎「しかしあのティターンズの事だ。
最後にどんな手段に訴えてくるか解らん」
イスマエル「ええ…。米国のウィルソン大統領が
あちらの部屋でお待ちです」
α基地***
ダカールへ向けてインド洋を移動中のα基地である。
極東基地からは岡長官の計らいにより、大空魔竜も予定通りに合流している。
ルリ「そろそろティターンズの防衛網に入る頃です。セイラ艦長、作戦の説明を」
セイラ「了解しました。今回の作戦の目的は、ブレックス・フォーラ准将を無事、
ダカールの議事堂まで送り届ける事にあります」
ピート「そのためには、陽動部隊を編成し、敵の目をひきつける必要がある。
その隙に小数の部隊で議事堂に降下、議会を占拠する」
大文字博士「現地では、エゥーゴやPUの同志が地上部隊を率いて、
議事堂の制圧、及び、中継局の確保を準備中だ」
ピート「ダカールからの連絡では、剣総理たちも議場に到着し、
評議会に出る議員の面々は大方出席手続きを済ませたそうだ。
ブレックス准将は、かねてからの手筈どおりに地下から議事堂へ接近する。
残りのみんなは議事堂西部で陽動作戦を行ってくれ」
大文字博士「では、時計あわせ、17:00。5分後に作戦を開始する!」
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連邦議会議事堂前・正面玄関***
日本国総理・剣桃太郎の乗った日本大使館の公用車が到着し、
正面玄関に横付けされる。
桃太郎が車から降りて姿を現した途端、
呆気に取られる出迎えの連邦政府事務官や
取材に来ていたマスコミの面々。
ちなみに、当然ながらティターンズの手によって
ダカール市内には自由なマスコミの出入りは規制され、
今周囲にいるマスコミの記者たちは言うまでもなく、
皆ティターンズの息の掛かった御用マスメディアばかりである。
記者「一体、どういうことですか! 日本の剣首相!?
そのガクランは卒業された男塾の制服ですよね!」
桃太郎「……そうだ。これから俺は命を懸けた戦場へ行く……!!
このガクランはその心意気だ……!!」
記者「その背中に背負っている刀は何ですか?
もちろん模造刀ですよね?」
すると桃太郎は、居合い抜きで記者の持つマイクを
スパッと半分に切り捨ててみせる。
記者「――ヒィッッ!!)))))))))))))))))ガクガクブルブル」
桃太郎「それが答えだ……!!」
続けて米国大統領を乗せた公用車が到着。
後ろからその一部始終を見ていたマイケル・ウィルソン大統領。
マイケル「さすがは桃。私もパワードスーツを着てくればよかったか」
ジョディ「ご冗談はおよしください、大統領」
マイケル「HAHAHAHA!」
その様子を2階の窓から見ていたジャミトフたち。
ジャマイカン「つまらんパフォーマンスを見せおって!
まるでサムライ気取りか。東洋の猿めがっ!」
ジャミトフ「それよりもブレックス・フォーラはどうした?
てっきり日本の代表団と一緒か、あるいはプラントの艦に
同行して来るものとばかり思っておったぞ」
ジャマイカン「報告では日本の政府専用機にも、あのザフトの
ふざけたピンク色の艦にも、ブレックス・フォーラは乗って
いなかったようであります」
ジャミトフ「米国のエアフォース・ワンには?」
ジャマイカン「無論、そちらの方も確認済みであります。
エアフォース・ワンにも奴は乗っていなかったと…」
ジャミトフ「…奴め、いったいどのルートから
ダカール入りするつもりだ?」
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連邦議会議事堂・議場前大廊下***
カガリ「ラクス!」
ラクス「カガリさん、そちらでしたか」
駆け寄る二人。久方ぶりの再会である。
互いに固い友情の握手を交わすと、周囲に聞こえないよう小声で話し込む。
カガリ「それで、フォーラ准将は?」
ラクス「すでに極秘の別ルートでダカール市内に入られておいでです。
予定ではもうじき議事堂に到着される筈ですが…」
臨時総会***
厳粛な空気の中で、すでに地球連邦臨時総会は始まっていた。
この時、ティターンズに反対的なリヨン議長は強引に更迭させられ、
ティターンズに操られるだけの傀儡たる議長代行に、
ジャマイカンが目線で合図を送る。
議長代行「では、連邦憲章、第11項改正に関する投票を行います」
ダカール市内・下水道***
密かに下水道を伝って、
議事堂へと急ぐブレックス・フォーラ准将、
そしてそれを護衛するサングラスの男。
カオルちゃん「もうすぐ議事堂の真下だ。
なんせ下水道なんで臭いはキツイだろうが、
もう少しだから我慢してくれ」
ブレックス「うむ」
野上冴子を通じて日本政府から非公式にブレックス・フォーラの
ダカール連邦議会議事堂までの護衛を依頼されたカオルちゃん。
いつもの野上冴子であれば、シティーハンター=冴羽撩に依頼する
ところであろうが、裏の世界でも相当名の通ったスイーパーである
シティーハンターは、やはり
ロゴスの筋から動きをマークされている。
そこで敵の目を欺くために、今回は別ルートを介してカオルちゃんに
仕事が持ち込まれたのであった。
ティターンズ兵A「誰だ!?」
カオルちゃん「ちいっ!」
ブレックス「こんなところにまで兵士が配備されていたか!」
ティターンズ兵「止まれ!! 止まらんと撃つぞ!!」
銃を構えるティターンズ兵士。しかし彼らが発砲するよりも先に、
カオルちゃんの華麗な蹴り捌きが決まる方が早かった。
カオルちゃん「とりゃああっ!!!」
ティターンズ兵A「――うわっ!? な、なんだ!?」
ティターンズ兵B「ぐ…」
ぐったりと気を失い倒れるティターンズの兵士達…。
ブレックス「見事だ」
カオル「さあ急ごうぜ准将。あまり時間がない」
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再び連邦議会議事堂・臨時総会***
議長代行「では、投票の結果を発表いたします。賛成212。反対101。無効178。
よって、連邦憲章11項改正法案を可決します」
反対派議員「異議あり!! これは陰謀だ!」
カガリ「その無効178ってのは何だ! 無茶苦茶だぞ!」
ランプ「黙れ! もう決まったんだ!」
中肉中背で、角ばった顔と大きな目の中年の小男が、
カガリや他の反対派を激しく恫喝する。
桃太郎「あの男は…確か」
ウイリス「反ロボット主義者のアセチレン・ランプです」
日本代表席の隣りに着席している、エスタルドのウイリス・アラミス主席が
桃太郎の小耳にそっと囁く。
桃太郎「確かあの男は一度逮捕された筈だが」
ウイリス「三輪防人と同様にロゴスの後押しで出獄して、
議員の座に返り咲いたのでしょう」
反対派議員「金に目がくらんで、独裁政権を誕生させると言うのか!?
貴様は、それでも…うっ! な、何を!? は、離せ!」
ティターンズ派の議員席から野次や罵声が飛び交う中、
反対派の議員が次々と守衛によって
強引に議場から外へ連れ出され連行されていく…。
ラクス「剣総理、これは…!?」
パタリロ「ティターンズめ、有無を言わせないつもりだな」
桃太郎「………」
議長代行「…静粛に。それでは、改正にともない、
新たな評議会首席を決定する投票に移ります」
新たな評議会首席がジャミトフ・ハイマンに決定されれば、それは自動的に
地球連邦の次期大統領として選出されることを意味するのだ……。
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○イスマエル王子→ダカール国際空港で剣桃太郎を出迎える。病床の父王の
名代として地球連邦臨時総会に出席。
○剣桃太郎→日本代表団としてダカール入り。地球連邦臨時総会に出席。
○ホシノ・ルリ→作戦前にてα基地に待機。
○セイラ・マス→作戦前にてα基地に待機。
○大文字洋三→作戦前にてα基地に待機。
○ピート・リチャードソン→作戦前にてα基地に待機。
○マイケル・ウィルソン→米国代表団としてダカール入り。地球連邦臨時総会に出席。
○ジョディ・クロフォード→米国代表団としてダカール入り。地球連邦臨時総会に出席。
○ウイリス・アラミス→エスタルド代表団としてダカール入り。地球連邦臨時総会に出席。〇ラクス・クライン→地球連邦臨時総会に出席。
○カガリ・ユラ・アスハ→地球連邦臨時総会に出席。
○パタリロ・ド・マリネール8世→地球連邦臨時総会に出席。
○ブレックス・フォーラ准将→護衛のカオルちゃんと共に、ダカール市地下
下水道から議事堂へと接近する。
○カオルちゃん→日本政府からの依頼で、ブレックス・フォーラを護衛する。
●ジャミトフ・ハイマン→地球連邦臨時総会に出席。
●ジャマイカン・ダニンガン→→地球連邦臨時総会で、ジャミトフに陪席。
●アセチレン・ランプ→ロゴスの後ろ盾を得て出獄。議員の座に返り咲き、
地球連邦臨時総会に出席。
【今回の新規登場】
○イスマエル王子(仮面ライダースーパー1)
アブラーダ王国の王子で、沖一也のアメリカの大学時代の親友。
一也の取り持った縁で、日本人女性・恵子を妃に迎えた。
ドグマ王国の陰謀で、怪人カマキリガンが化けた偽者と
すり替えられるが、スーパー1の活躍で救出される。
○大文字洋三博士(大空魔竜ガイキング)
大空魔竜戦隊の創設者であり総司令。東西大学名誉教授(宇宙物理学専攻)。
早くから宇宙からの侵略を予見し、密かに超能力者を集めて大空魔竜戦隊を組織した。
○ピート・リチャードソン(大空魔竜ガイキング)
大空魔竜隊キャプテン。アメリカ海兵隊あがりの元トップガンで、
弟のトムに対しても厳しく振る舞い、大空魔竜の中でもクールな
性格故にサンシローと衝突することも多いが、本来は優しい性格
でありながらもあえて情に流されないとする為であり、地球を守る
使命感を強く持つ。徹底した現実主義者で、口癖は「ナンセンス」。
考古学に関しても知識を持っている。
○ウイリス・アラミス(機動新世紀ガンダムX)
エスタルド人民共和国の若き国家主席。民族の英雄だった前国家主席の息子。
父の後を継いだばかりであった当初は優柔不断な青年だったが、やがて指導
者としての責任に目覚めていく。
●アセチレン・ランプ(アストロボーイ 鉄腕アトム)
評論家、会社社長、政治家で、反AIロボット主義者。人間以外の知性を
認めない人間至上主義者である。政界に進出し、AIロボット排斥運動の
急先鋒となる。しかし内心では、かつて自分を救ってくれたロボット・
フレンドを見捨ててしまったPTSD(というより良心の呵責)に苛まれ、
「ロボットは道具。心などいらない」と己に言い聞かせ、世に広める
ことで、辛うじて正気を保っている。
最終更新:2020年11月16日 03:15