本編954~957

『大統領暗殺計画』-3

作者・ティアラロイド
954

ドバイ市・迎賓館***


3日目の朝、ドバイ市の市街地中心部から離れた位置に、
ICPOの鉄人運搬用長距離移動マシン・エアロトレッカーが降り立った。
表向きの目的は、5日後の米国大統領訪問に備えて警備のための応援。
裏の目的は、2日前に失踪したアラブの大富豪令嬢と日本人男性の
捜索のためである。

三郎「ここが迎賓館だ」
正人「アルシャード家の令嬢と日本人の男が、失踪直前まで
 出席していたパーティーが開かれていたのはここか。
 よーし、じゃあさっさと現場検証を済ませようぜ。
 おっと…双葉はエアロトレッカーでお留守番なっ」
双葉「え~っ!またお留守番!?」

双葉は不満そうに顔を膨らませる。
一方、同じ迎賓館建物の裏手の道端では、
サングラスをかけ変装した当八郎が、
通りすがりの婦人に聞き込みをしていた。

当「物々しい警備ですねえ…。何かあったんですか?」
婦人「なんでも5日後にアメリカの大統領が来るらしいわよ」
当「ほう、アメリカの大統領が」
婦人「急に決まったらしいわよ。今、ICPOの人たちも
 来ているんですって」
当「ICPOが…」

その後、当は警備の目を掻い潜り、
迎賓館の中へと潜入した。

当「どうしてついて来た!? 集落のテントの
 中でじっと隠れていろと言っておいたはずだぞ」
フィリナ「じっとしているのは性に合わないの。
 お願い、足手まといにはならないから、連れて行って!」
当「やれやれ……」

当とフィリナはロッカー室から、
それぞれボーイとメイドの制服をこっそり拝借すると
それを着込んで変装し、今度は書類保管庫へ向かった。

フィリナ「何を探しているの?」
当「当日のパーティーの出席者の名簿さ。
 君があの夜見た、グラントと話していたもう一人の男とやらの
 正体が掴めれば、敵の計画の全貌も見えてくる。
 ……あった!これだ!」

パーティーの出席者の名簿の中を調べる当。
しかし、これといって不審そうな人物の名は見当たらない。

955

正人「動くな!」

正人がグリッドランサーの銃口を、当の背中に向ける。

三郎「二人とも両手を挙げて、ゆっくりとこちらの方を向くんだ」
当「………」
フィリナ「………」

大人しく言うとおりに従う、当とフィリナ。

正人「当八郎だな?」
三郎「お前をアルシャード家令嬢誘拐の容疑で、身柄を拘束する」
フィリナ「待って、この人は誘拐犯なんかじゃないわ!」
正人「君は…もしかして??」
三郎「フィリナ・アルシャード嬢か…。驚いたな」

身分を明かして当をかばうフィリナの行動に、
呆気にとられる正人と三郎。

フィリナ「この人は私を助けてくれたのよ!
 お願い、銃を下げて」
三郎「まず詳しい話は警察の方で…」
当「――むっ!? いかん!伏せろ!」
正人「なにっ!?」

当の大声で、一斉に床に伏せる4人。
その上を銃弾の嵐が襲う。
発砲の張本人は、何人かのボーイたちを引き連れた、
当迎賓館の支配人その人だった!

支配人「やれやれ困りますな。勝手にこんなところまで
 調べられては…」
フィリナ「その声は…! あの時の晩、
 グラントと密談していたのはあの男よ!」
当「やはりそうか!」

当日のパーティーの招待客の中に怪しい人物がいなければ、
他に疑わしいのは迎賓館に務める従業員しかいない。

支配人「殺れ!」

支配人の命令で、銃で武装したボーイたちが
襲い掛かってくる!

正人「ど、どうなってるんだいったい!?」
三郎「まずはこいつらを片付けるのが先だ!」
当「銃は使えるか?」
フィリナ「扱い方の訓練なら一通り受けてるわ」
当「よしっ!」

当はフィリナに予備の銃を手渡す。
書庫棚を盾にしながらの、激しい銃撃戦が展開される。
制圧射撃による戦法で、徐々に戦いを有利に進めていく当たち。

支配人「ぐわあああっっ!!!」

当の射撃が、最後に残った支配人の肩を打ち抜いた。
すかさず支配人を捕らえて尋問する当。

当「さあ言え! 5日後に訪問するウィルソン大統領を
 どうやって暗殺する段取りだ?」
支配人「フッフッフ……うっ!ぐぶっ…」
当「……しまった」

支配人は不敵な笑いを浮かべると、
奥歯に仕込んでいた毒入りカプセルを噛み砕いて
自決してしまった。

警備員「どうしましたか~!!」

騒ぎを聞きつけた警備員たちが、ようやく駆けつけてくる。

三郎「怪我人を運んでくれ」
警備員「わかりました」

956

そこら辺に転がっていた、先ほどの銃撃戦での
支配人配下のボーイ一人の射殺体を調べる当。
すると着衣の中から奇妙な文字列が記された布切れが出てきた。

当「…これは!?」
正人「どうしたんだ?」

当が見つけた布切れには、「地球は我が故郷、地球を我が手に」
「地球は聖なるもの」「異教徒に死を」と書かれていたのである。

正人「これって、もしかして!」
当「間違いない。こいつらは全員、地球教徒だ」


エアロトレッカー***


正太郎@通信「それで、当八郎とフィリナ嬢はどうした?」
三郎「とりあえず双葉とミラクル・ビーを監視につけてあります」

エアロトレッカーへと戻った正人と三郎は
事の詳細を金田正太郎長官へと報告した。

正太郎@通信「実は地球平和連合APPLEのゼネラル藤井極東本部長から
 秘密裏に要請があってな。これ以上、当八郎に対する追及は無用と言われた」
正人「それって思いっきり圧力じゃんか!」
正太郎@通信「まあ悪く受け取れば圧力と言えなくもないが…。
 ただゼネラル藤井は、理由もなしに捜査に妨害を加えるような人物ではない。
 それは私が保証する」
三郎「フィリナ嬢が聞いたという、合衆国大統領暗殺計画については?」
正太郎@通信「グラント前国防長官に地球教やブルーコスモスに
 入信したような思想的形跡はない。この件は他にもっと大きな力が
 動いているな。例えばアメリカの影の政府…」
正人「影の政府だって?」
三郎「その昔、アメリカ国内で影の政府が、UFOの情報を隠蔽していたり、
 邪魔になった歴代の何人かの大統領を暗殺したりしてしたとかの噂なら、
 俺も聞いたことがあります。ですが、そんなものはてっきり単なる都市伝説かと…」
正太郎@通信「いや、影の政府は確実に実在する。もしそれが
 ロゴスと結託してマイケル・ウィルソンJr大統領の抹殺を図っているとすれば、
 これは容易ならぬ事態だ。今進められているブレイバーズ計画にも悪影響は
 避けられない。正人、三郎、なんとしても奴らの陰謀を阻止し、
 ウィルソン大統領を守ってくれ!」
正人&三郎「「了解!!」」

957

○金田正人→ドバイに降り立ち、捜査を開始。
○夏樹三郎→ドバイに降り立ち、捜査を開始。
○光瀬双葉→ドバイに降り立ち、捜査を開始。
○金田正太郎→正人と三郎に大統領暗殺計画阻止を指示。
○当八郎→迎賓館に忍び込み、支配人と銃撃戦。
○フィリナ・クラウディア・アルシャード→迎賓館に忍び込み、支配人と銃撃戦。

【今回の新規登場】
○光瀬双葉(超電動ロボ 鉄人28号FX)
 金田探偵事務所出身のICPO捜査官で、丸眼鏡が特徴的な小柄な少女。
 性格も子供っぽい。両親はロボット事故に巻き込まれ他界しており、
 その直後にテレビのヒーローに励まされたことから、自身もヒーローに憧れている。
 鉄人30号ミラクル・ビーのパイロットとなる。

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最終更新:2020年11月22日 13:50