本編1043~1049

『聖天子と目黒の秋刀魚』-4

作者・ティアラロイド
1043

聖居・桜田門前***


翌日の早朝、聖天子を乗せた桜井の運転する黒塗りの公用車が
聖居の敷地を出て公道に出ようとしたところで、
里見蓮太郎と藍原延珠のペアが行く先を遮るように立ちはだかった。

蓮太郎「………」
延珠「………」

驚いて車を停め、運転席から降りる桜井。

桜井「里見さん、本日の聖天子様の護衛は結構だと
 申し上げたはずですが…?」
蓮太郎「俺たちについて来られると
 何かマズイことでもあるのか?」
桜井「い、いや…決してそのようなことは…!」
聖天子「構いません。里見さん、延珠さん、
 一緒に車に乗ってください」
桜井「聖天子様!?」

蓮太郎と延珠を乗せた聖天子の車は、
一路目黒へと向かう。

聖天子「里見さん、私のしていること、愚かな遊びだと思いますか?」
蓮太郎「聖天子様…」
聖天子「私は聖居の飾り物にはなりたくありません」


目黒・竹の子茶屋***


この間皆で秋刀魚を美味しく食べた竹の子茶屋に到着した一行。
老主人が出迎える。

老主人「これはいらっしゃいませ…」
桜井「親父、秋刀魚定食を所望だ」
老主人「ここは目黒でございまして、
 秋刀魚は常に置いているわけでは…」
桜井「なんとかしてもらいたい。
 わざわざ千代田から見えられておられるのだ」
老主人「はぁ…」

店の入り口をくぐる聖天子一行。
その時、蓮太郎と老主人が密かに目線を合わせていたのに
桜井は全く気がついていなかった…。

1044

すでに竹の子茶屋周辺を完全に包囲して固めている紙忍一族。
そして仮面ライダーガイとタイガ。

ガイ「いいか、あくまで行きずりの暴漢を装うんだ」
タイガ「ゴルゴムの策に乗ってやるんだ。死ぬのはバカバカしい。
 用が済んだら必ず逃げろ」
紙忍一族頭領「聖天子を掻っ攫ったら、目的地は品川だ。散れ!」

配下の下忍たちに配置につくよう命じる紙忍一族頭領。
その時、店の中からペンギン帝国ご一行が出てきた。
どうやらまた竹の子茶屋に食事に来ていたらしい。

マイケル「旬の秋刀魚はいつ食べても美味しいですね」
ペンギン帝王「うむ、近いうちにまた来るとしようぞ!」

店から帰っていくペンギンたちに思わずギョッとする紙忍一族。

紙忍一族A「あの声は…剣桃太郎!?」
紙忍一族B「殺るかッ?」
ガイ「慌てるな! アレは剣桃太郎じゃない!」
タイガ「おい、アレを見ろ」

タイガの指差した方向から、
ちょうどペンギン帝国ご一行と入れ替わるように、
男塾制服の学ランに身を包み、背中に長刀を挿した本物の剣桃太郎が、
忍び装束姿の山地哲山と織田八重に案内され、竹の子茶屋へと姿を現した。

ガイ「まさか内閣総理大臣御自らお出ましとはな…」
タイガ「どうする?」
紙忍一族頭領「剣桃太郎は斬れっ! しかるのち、聖天子を!」

一方、店の中では、聖天子たちが
客席で秋刀魚定食が出来上がるのを待っていた。
しかしさっきから桜井一人だけがなぜか震えてそわそわしている。

蓮太郎「どうした?」
延珠「もしかしてトイレなのか?」
桜井「い、いや…別に…*1)ガクガクブルブル」
聖天子「桜井さん、少し落ち着きなさい!」

聖天子が挙動不審の桜井を一喝して咎めたその時、
暴漢を装った紙忍一族がどっと一斉に竹の子茶屋の店内へとなだれ込んだ!

聖天子「何者です!」
蓮太郎「来たかッ。天童式戦闘術、二の型十四番――
 隠禅・玄明窩ッ!!」

あらかじめ敵の襲来を予測していた蓮太郎は鋭いハイキックで聖天子に迫る紙忍一族たちをなぎ飛ばす。
延珠も目を赤く光らせ、弾丸のような速度で紙忍一族に突進していく。

1045

いきなり竹の子茶屋の老主人も刀を抜いて、
聖天子を守る戦列に加わった。

紙忍一族頭領「その身のこなし、ただの茶屋の主人ではないな!」
老主人「紙忍一族頭領! この俺を見忘れたか!」

老主人が顔のマスクを剥ぎ取り、衣装を脱ぎ捨てると、
中から颯爽と現れたのは、ジライヤスーツに身を固めた磁雷矢だった!

紙忍一族頭領「むむっ、貴様は磁雷矢!」
磁雷矢「久しぶりだな、紙忍一族頭領!
 一度地獄に落ちながら、またも懲りずに
 非道な悪事を重ねているのか!」
紙忍一族頭領「ほざくな! ちょうどいい。
 ここで一度紙忍一族を貴様に滅ぼされた恨みを
 晴らしてくれるわ!」
磁雷矢「磁光真空剣!」

磁雷矢の叫びと共に光り輝くレーザー刀――磁光真空剣。
今までの戦いでは、スミス博士が造ったコピー刀を代用していた磁雷矢…。
パコや磁雷神と一緒に宇宙へ旅立った本物の磁光真空剣だが、
無事にその後役割を終え、星間評議会特使によって地球へと運ばれ、
今はこうして再び磁雷矢の手に戻っているのである。

学「兄ちゃん!」
磁雷矢「学、聖天子様を守れ!」
学「任せとけって!」

自家製の戦闘スーツを装着している学は、パチンコで応戦しながら、
紙忍一族たちから聖天子を守る!
そして背中を合わせ、自分たちを包囲する敵と対峙する
磁雷矢と里見蓮太郎。

磁雷矢「里見蓮太郎君、凄腕の民警と噂には聞いていたが
 なかなかやるな!」
蓮太郎「蓮太郎でいい。磁雷矢、アンタもな!」

意気投合したのを合図に地面を蹴り、
磁雷矢と里見蓮太郎はそれぞれの敵へと突進していく。

一方、竹林の陰で様子をじっと伺っている
二人の悪の仮面ライダー、ガイとタイガ。

ガイ「思ったより苦戦のようだな…」
タイガ「どうするんだい?」
ガイ「よしっ、俺たちも行くぜ!」

ガイとタイガも竹の子茶屋へと突入しようとしたその時、
その前に立ち塞がった5人の美少女戦士の姿があった!

セーラームーン「お待ちなさい!」
タイガ「お前たちは!?」
セーラームーン「秋の味覚、目黒の秋刀魚をこれから
 美味しく食べようとするのを邪魔するなんて許せない!
 このセーラームーンが月に代わっておしおきよ!」
ガイ「おいおいお嬢ちゃんたち、引っ込んでいないと
 可愛い顔に傷が出来るよ」
セーラージュピター「そっちこそ、女の子だと思って
 甘く見てると感電死どころじゃすまなくなるよ!」
セーラーマーキュリー「聖天子様に手出しはさせないわ!」

タイガは白召斧デストバイザーを振りかざして、
セーラー戦士に襲い掛かる。

タイガ「死ね、セーラー戦士!」
セーラーヴィーナス「ヴィーナス・ラブ・ミー・チェーン!!」

セーラーヴィーナスのエネルギー波動をハート形に変換した鎖が
タイガの得物を絡め執る。

ガイ「チッ!!」
セーラーマーズ「おっと、あなたの相手は私よ!
 バーニング・マンダラァァーッ!!!」

セーラーマーズが召喚した八つの円状の曼荼羅絵の
燃える灼熱の炎の波動が一直線でガイに向かって放たれ、
炎の爆裂をひき起こす!

1046

愛刀を抜き、颯爽と聖天子の側へと駆け寄る剣桃太郎。

聖天子「剣総理!」
桃太郎「陛下、ご無事で!」

紙忍一族はあらゆる方向から続々と迫るが、
桃太郎と哲山は刀を振るい、聖天子を守りつつ
並み居る敵を次々と斬り伏せていく。
さらに意外な新手の援軍まで現れた。
ペンギンコマンドたちが紙忍一族を
攻撃し始めたのだ!

ペンギン帝王「何やら騒がしいと思って戻って来てみれば…。
 事情はよくわからんが助太刀するぞ!」
哲山「かたじけない!」
学「……(この人、本当に総理大臣に声がそっくりだなあ)」

ペンギン帝国の加勢によって
形勢は完全に聖天子を守る側へと傾いた。

磁雷矢「お前たちの企みもこれまでだな、紙忍一族!」
紙忍一族頭領「おのれ磁雷矢!」

激しく刃を交える磁雷矢と紙忍一族頭領。

磁雷矢「磁光真空剣・真っ向両断!!」
紙忍一族頭領「ぐわあああ~っっ!!!!
 磁雷矢ぁ!! たとえこの身が何度滅ぼうとも、
 また必ずやこの世に舞い戻って見せるぞぉぉ!!!!!」

磁雷矢がの磁光真空剣の光り輝く刃が、
ついに紙忍一族頭領の肢体を縦に斬りつけ、さらに横に斬る。
紙忍一族頭領は断末魔の叫びと共に光の粒子となって消滅した。

ガイ「くそっ! ここいらが潮時か!」
タイガ「セーラー戦士、磁雷矢、それに民警、
 この礼はいずれ必ずするよ!」

作戦に失敗したと見たガイとタイガは、
すかさずその場から撤退した。

セーラームーン「待ちなさい! 逃げるの!」
磁雷矢「待てセーラームーン、深追いは禁物だ!」

周囲を見渡す磁雷矢。

磁雷矢「…あれっ、そういえばペンギン帝国の連中はどうした?」
延珠「そういえばさっきからいないのだ」
蓮太郎「すばやい連中だ…」
学「味方してくれたお礼をきちんと言いたかったのにな」

1047

騒動が収まった竹の子茶屋で、聖天子を中心に取り囲み、
剣桃太郎、里見蓮太郎と藍原延珠、セーラー戦士、戸隠流忍者たちが控える。

聖天子「剣総理、よく来てくれました」
桃太郎「陛下のなさる事、わかっているつもりでございます。
 全てはこの桜井三郎が教えてくれました。そうだな、桜井?」

桃太郎は、脇に控えている桜井三郎をギロッと鋭く睨みつける。

桜井「そ、総理、私はただ…聖天子様のお供をして!」
桃太郎「桜井、聖天子様お忍びのお供をした事を責めているのではない。
 何ゆえ聖天子様を執拗にお誘いした? この度の災難、偶然とは言わせん!
 暴漢を装ってはいるが、あれは忍び…紙忍一族!」
桜井「わ、私は本当に何も! 聖天子様!」
聖天子「………」
蓮太郎「諦めろ。もう何もかもバレてんだ」
桃太郎「聖天子様ご災禍を機に、我等内閣の不行き届きを責め、
 あわよくば聖天子様ご退位に追い込まんとの計略であろう!
 そしてその後ろ盾は――」
聖天子「剣総理、そこから先を言ってはなりません!
 私がこの度の宮中から外に出たのは、その毒蛇が大きな鎌首を
 持ち上げるのを見届けるためです」
桃太郎「陛下」
聖天子「桜井さん、やはり貴方は…!」
桜井「聖天子様…お許しを!」

観念した桜井は、懐から拳銃を取り出し、
それを自身の眉間に当て自殺を図る。
しかし磁雷矢が瞬時に投げた手裏剣が拳銃を叩き落し、
蓮太郎がすかさず桜井の身体を取り押さえた。

蓮太郎「バカヤロウ! 早まるんじゃねえ!」
桜井「聖天子様! 何卒…何卒…私めに
 せめて自害のお許しを!!」
聖天子「なりません! 生きてその罪を償うのです!」

聖天子の言葉に、桜井は号泣して崩れ落ち、
その後駆けつけたパトカーに乗せられ連行されて行った。

聖天子「剣総理、許してください…」
桃太郎「いえ陛下、お詫びいたさねばならんのは
 私めの方にございます。これからは些細なことでも
 陛下のご意向を伺う所存にございますれば」
聖天子「剣総理、わかってくれましたか!?」
桃太郎「ハッ」

聖天子の問いに強く頷く剣桃太郎。
日本国の天子と宰相の主従の心が通じ合った瞬間であった。

1048

桃太郎「里見蓮太郎に藍原延珠、この度の聖天子様を守っての働き、
 誠に見事であった。私からもこの通り礼を言う」
蓮太郎「別にアンタのためにやったことじゃないですよ」

普段は政府の権力者などには反抗的に食って掛かる事の多い蓮太郎だが、
その表情からは桃太郎から褒められて満更でもないことが伺える。

桃太郎「さて、セーラームーン、本来ならお忍びに出ようとした
 聖天子様をお諌めしなければならない立場の君が、お引き留めするどころか
 一緒に出かけてしまうとは、じっくりとお灸を据えなければいけないところだが…」
セーラームーン「あ…やっぱし…?(汗」
聖天子「セーラームーンを責めないでください、剣総理。
 うさぎさんを無理に連れて行ったのは私の方なのです」
桃太郎「…との聖天子様のお言葉だ。次からはくれぐれも自重してくれよ」
セーラームーン「ありがとうございます、聖天子様」

聖天子の口添えと、今回は笑って許した桃太郎の態度に
ホッと胸をなでおろすセーラームーン。

聖天子「そうです剣総理、せっかくですから皆で秋刀魚を
 食べていきませんか?」
桃太郎「それはよろしゅうございますな」
学「あのー、それが…」
磁雷矢「どうした学?」
学「秋刀魚は、す…炭になってしまって…ございまする」

学は慣れない敬語で懸命に聖天子に報告する。
この騒ぎで、調理中だった秋刀魚は皆、
すっかり真っ黒に焼け焦げてしまっていた。

桃太郎「ハハハ…それはそうだろうな!」

その場にいた一同は皆、和やかに爆笑するのであった。


坂田龍三郎邸***


邸内で高見沢逸郎から吉報が届くのを今か今かと待ち、
待機していた坂田龍三郎とビシュム。
そこへようやく知らせが届く。

坂田「ビシュム様、残念ながら事は破れたと…」
ビシュム「仕方ありません。また次の機会もあることでしょう」


雨降って地固まるの例え通り、この日以後、
剣桃太郎政権は聖天子の意見を積極的に取り上げるようになったという。

1049

○聖天子→紙忍一族に襲われる。
○里見蓮太郎→聖天子を紙忍一族の襲撃から守り抜く。
○藍原延珠→聖天子を紙忍一族の襲撃から守り抜く。
○磁雷矢→聖天子を紙忍一族の襲撃から守り抜く。
○山地学→聖天子を紙忍一族の襲撃から守り抜く。
○山地哲山→聖天子を紙忍一族の襲撃から守り抜く。
○セーラームーン→仮面ライダーガイ、仮面ライダータイガと交戦。聖天子を守り抜く。
○セーラーマーキュリー→仮面ライダーガイ、仮面ライダータイガと交戦。聖天子を守り抜く。
○セーラーマーズ→仮面ライダーガイ、仮面ライダータイガと交戦。聖天子を守り抜く。
○セーラージュピター→仮面ライダーガイ、仮面ライダータイガと交戦。聖天子を守り抜く。
○セーラーヴィーナス→仮面ライダーガイ、仮面ライダータイガと交戦。聖天子を守り抜く。
○剣桃太郎→聖天子を紙忍一族の襲撃から守り抜く。
○ペンギン帝王→紙忍一族に襲われた聖天子側に加勢する。
●仮面ライダーガイ→聖天子を襲撃し、セーラー戦士と交戦した後、撤退。
●仮面ライダータイガ→聖天子を襲撃し、セーラー戦士と交戦した後、撤退。
●紙忍一族頭領→聖天子を襲撃し、磁雷矢に倒される。
●坂田龍三郎→聖天子拉致に失敗したとの報せが届く。
●大神官ビシュム→聖天子拉致に失敗したとの報せが届く。

●桜井三郎→聖天子襲撃作戦失敗後、罪を悔いた後、警察に連行される。

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最終更新:2020年11月22日 14:09

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