『忍び寄る真の敵の影』-2
作者・ティアラロイド
1205
そして現代…。21世紀、新西暦189年
東京・品川区某所・ランニングコース***
その日の早朝、まだ人通りの少ない時間帯。
浅見竜也はいつもの日課通りランニングに出かけていた。
そんな竜也が見たのは、目の前に倒れている
ピンク色でシニヨン付きツインテールにセットした髪の
小学生くらいの幼い少女だった。
ちびうさ「………」
竜也「…ひどい怪我だ!
おい君! しっかりしろ!」
そこへ突然、竜也とちびうさを銃撃が襲う。
竜也「お前は…!?」
銃撃の主は、竜也と瓜二つの顔ながら、
オールバックの髪型に、竜也とは対象的な冷たい瞳をした
あの男だった!
リュウヤ「久しぶりだったな、浅見竜也。
まさかこんなところでお前に会うとは思わなかったぞ」
竜也「リュウヤ隊長、どうしてアナタが現代に!?」
リュウヤ「そんなことはどうでもいい。
その娘をこっちに渡してもらおうか」
竜也「この子をどうするつもりだ?」
リュウヤ「いいからさっと渡せ!
さもなければ、貴様も殺す」
リュウヤはいきなり銃を竜也に向ける。
竜也「先祖の俺を殺せば、子孫の貴様も
無事ではいられないんじゃないのか!?」
リュウヤ「フッ…この私を誰だと思っている。
今の私はそんなタイムパラドックスなど超越した存在だ!」
持っていたレーザー銃で躊躇なく竜也を狙撃するリュウヤ。
かわした竜也は気を失っているちびうさを抱え、一目散に逃げ出す。
それを執拗に追跡するリュウヤ。
しかし、そのリュウヤの追跡を食い止めたのは
どこかから発せられた謎の強い衝撃波であった。
リュウヤ「これは…テレキネシスか!」
カッと目を見開くリュウヤ。
その先に立っていたのは、立折襟のスーツに身を固めた
精悍そうな男だった。
バロン「………」
リュウヤ「貴様…23世紀人か!?」
バロン影山――かつて東京を恐怖のどん底へと叩き落とした
シリコン生命体による犯罪組織デストラップの前線指揮官…とはあくまで
表向きの顔であり、その正体は23世紀から現代に飛来した未来人であり、
組織の総統フューラーすらも裏で操る真の黒幕でもあった。
バロン「フフ…何やら時空の波長の乱れを感じ取って
ここまで来てみれば…。30世紀人がこの時代に
いったい何の用だ?」
リュウヤ「ほざくな! コンピューター風情の
下僕になり下がった下等人類が!」
リュウヤのレーザー銃の殺人光線と、
パロン影山の指先から発した閃光が激しくぶつかる!
警視庁地下・ZAC本部***
凶悪化した都市犯罪の多発に対抗すべく、政府は警視庁直属特殊部隊ZAC(ザック、ZERO-SECTION ARMED
CONSTABLE 0課装甲警察部隊)を編成。織田久義キャップの下、ビットスーツと呼ばれる
パワードスーツを身に纏うサイバーコップたちが、日夜犯罪摘発に明け暮れていた。
エマージェンシーのサイレンが鳴り響く。
矢沢「レーザー銃で武装した男が銃を乱射しながら、
サイコキネシストと見られる男と交戦しつつ、
品川方面より移動中!」
北条「都市ゲリラか!? 毛利、西園寺、出動だ!」
1206
品川近辺***
颯爽と現場へと出動したマーズ、サターン、マーキュリーの
3名のサイバーコップは、意外な人物との悪夢の再会を果たす。
マーズ「お、お前は…まさか!」
サターン「バロン影山!」
レーザー銃を乱射していたオールバックヘアの男と
交戦していたのは、宿敵・バロン影山であったのだ!
バロン「これはこれはサイバーコップの諸君。
懐かしい顔に会えたものだ…」
マーキュリー「お前もやはり黄泉がえっていたのか!」
バロン「今は私よりもあの男の相手をした方が
よいのではないのかな? このままだと犠牲者は増える一方だぞ」
マーズ「くっ…!」
バロン影山の言ったとおりだった。
周囲の物や人間を次々とレーザー銃を乱射して
排除しながら、まるで何かに取りつかれたように
執拗に竜也とちびうさを追跡するリュウヤによって、
被害は増える一方だった。
マーズ「悔しいがひとまずバロン影山は後回しだ。
まずはあの男を追うぞ!」
サターン「マーキュリー、ブラックチェンバーだ!」
マーキュリー「ラジャー!」
近くの公衆電話ボックスへと駆け込んだマーキュリーは、
アカウント情報が記録されたカードを差し込み口に挿入し、番号を入力した。
すると都市の地下に張り巡らされたシューターを利用して、
本部に収納されている武装入りアタッシェケースが瞬く間に
地上へと呼び出されるのだ。
マーズ「ロックバスター、セットアップ!!」
サターン「ディスクラッシャー、セットアップ!!」
マーキュリー「スラッシュキャリバー、セットアップ!!」
実はこのシステム、
ブレイバーズ出資スポンサーの特権として
三千院財閥も共用しているのだが、その話はまた別の機会に…。
◇ ◇ ◇
いつしか廃工場跡へと逃げ込んでいた竜也とちびうさは、
いよいよリュウヤによって追い詰められようとしていた…。
竜也「くっ…!」
リュウヤ「二人とも死ね」
竜也は抱えていたちびうさを横に置くと、
左腕のブレスレッドのボタンを押す。
竜也「クロノチェンジャー!」
竜也はタイムレッドへと変身した。
リュウヤ「フン…!」
するとリュウヤも静かに同じ赤いクロノスーツ姿へと変身した。
おそらくタイムレッドと同型のスーツなのだろう。
二人のタイムレッドは互いに長剣スパークベクターを交え激しく衝突する。
追いついてきたサイバーコップは、この光景を見て混乱した。
マーズ「あれは…確か未来戦隊タイムレンジャーのタイムレッドか!」
マーズのビットスーツに内蔵されたコンピューターに照会し、
目の前で戦っている人物を照合する。
サターン「どっちを攻撃すればいいんだ!」
???「…敵は向こうです!」
突然、どこからか女の声がした。
マーキュリー「誰だ!?」
セーラープルート「――破滅喘鳴(デッド・スクリーム)!!」
タイムイエロー「――ボルバルカン!!」
時空の杖の宝珠のタリスマンが発する烈風の波動と、
1秒間に10発連射される2連装の光弾が、
片方のタイムレッド(リュウヤ)を弾き飛ばした。
タイムレッド(リュウヤ)「ぐわあああっ!!」
タイムレッド(竜也)「ドモン…もしかしてドモンなのか!?」
タイムイエロー「竜也、詳しい話は後だ! まずはコイツを片づける!」 竜也とドモンは、ザンギャック第一次地球遠征軍とのレジェンド大戦以来の再会となる。
マーズ「事情はよくわからんが…タイムレンジャー、
あとは俺たちに任せてくれ!」
タイムレッド(竜也)「サイバーコップ!」
マーズのロックバスター、サターンのディスクラッシャー、
マーキュリーのスラッシュキャリバーが、タイムレッド(リュウヤ)を
次々と突いては切り裂いていく。
リュウヤ「ぐわあああっ!!」
リュウヤの変身は解除され、その場に倒れこんだ。
1207
ちびうさ「ううっ…」
気を失っていたちびうさが目を覚ました。
竜也「気がついたのか、よかった」
プルート「スモールレディ、ご無事で…」
ちびうさ「プー、いえ…セーラープルート、来てくれたのね」
一方、北条たちは、リュウヤを締め上げて尋問する。
毛利「さあ、いろいろと話してもらおうか?
あの女の子を狙っていた目的は何だ?」
北条「誰の命令で動いていた? それともお前の単独犯行か!?」
西園寺「どうせコイツもGショッカーの手先ですよ」
西園寺の言葉を聞いたリュウヤは思わず鼻で笑ってしまう。
北条「何がおかしい…?」
リュウヤ「馬鹿め。我が主はそんな連中ではない」
ドモン「なんだと?」
リュウヤ「私に命令を下していた御方は――」
そこまで言いかけた時、なんと突然リュウヤは人体から発火した。
火は瞬く間に全身へと燃え広がり、リュウヤの断末魔の悲鳴と共に、
たちまち灰と化してしまったのだった。
リュウヤ「お、お許しを~!! ギャアアァ―!!!!!!!」
竜也「バ、バカな…」
毛利「いったい何が起こったというんだ…」
いつの間にか傍にはバロン影山が立っていた。
バロン「フフフッ…やはりそういうことか」
西園寺「バロン影山!」
北条「貴様、いったい何を知っている!?」
バロン「私も全てを把握しているわけではない。
だがこれだけは言える。お前たちは何か大きな勘違いをしている」
ドモン「どういうことだ?」
バロン「お前たちブレイバーズの真の敵は
Gショッカーなどではないということだ」
竜也「なんだって!?」
バロン「いずれまた会う時もあるだろう。
それまでさらばだ。ブレイバーズの諸君!」
北条「待て!」
何かを悟ったかのように、バロン影山は姿を消した。
ちびうさ「これって…」
竜也「真の敵はGショッカーではない。いったいどういう意味なんだ…」
???***
限りなく暗黒に近い紫色と灰色に混じりあったような空。
明らかに地球とも、また三次元銀河宇宙のどことも違う
謎の広大な空間にそびえる巨大な宮殿のような建造物。
その奥のある一室…。
正面に設置された大きな水晶球のモニターを介して、
地球で起こっていた一部始終を監視していたローブ姿の男が
静かにこう呟いていた。
アークシセイザー「愚か者めが…」
1208
○浅見竜也→現代に来たちびうさを救助。リュウヤと交戦。
○ドモン→ちびうさとリュウヤを追って現代にやってくる。
○ちびうさ→リュウヤに追われていたところを、浅見竜也に救われる。
○セーラープルート→ちびうさとリュウヤを追って現代にやってくる。
○北条明→浅見竜也(タイムレッド)に加勢してリュウヤと交戦。バロン影山とも遭遇。
○毛利亮一→浅見竜也(タイムレッド)に加勢してリュウヤと交戦。バロン影山とも遭遇。
○西園寺治→浅見竜也(タイムレッド)に加勢してリュウヤと交戦。バロン影山とも遭遇。
○矢沢大介→出動命令をマーズたちに伝える。
●リュウヤ→アークシセイザーの命令で動いていたと思われるが、口封じで消される。
●バロン影山→リュウヤと交戦。サイバーコップとも遭遇。去り際に意味ありげな一言を言い残す。
●アークシセイザー→余計な事を喋りかけたリュウヤを遠隔操作で始末する。
【今回の新規登場】
○矢沢大介(電脳警察サイバーコップ)
ZACのコンピューターオペレーター。情報収集及び解析を行い、作戦を補佐。
コンピュータや科学に関する知識が豊富。
○浅見竜也=タイムレッド(未来戦隊タイムレンジャー)
日本の政財界に強い影響力を持つ浅見グループのの御曹司。
父の跡継ぎを断り、親の敷いたレールに乗ることを良しとせず、
偶然から時間保護局の4人を救ったことにより、独立して、
彼らとともに便利屋「トゥモローリサーチ」を開業しつつ、
未来犯罪者ロンダーズファミリーと戦った。「たとえ歴史は変えられなくとも
自分たちの明日くらいは変えられる」を信念とし、自らの道を歩もうとする。
○ドモン=タイムイエロー(未来戦隊タイムレンジャー)
30世紀の格闘技グラップの元プロ選手だったが、試合出場を放棄して追放され、
時間保護局に転がり込んだ。トゥモローリサーチでは「護身術コーチ」を担当。
7人兄弟の大家族で、一本気な性格の人情家。現代では「土門太郎」と名乗る。
タイムレンジャーを追い回すスクープ記者 森山ホナミといつしか恋に落ちるが、
彼女との間にできた自身の子を見ることなく、30世紀へ帰還した。
その後、時間保護局でかなりの地位に出世したらしく、海賊戦隊ゴーカイジャーによって
意外な形で過去の時代に生きる我が子の息災を知ることとなる。
●バロン影山(電脳警察サイバーコップ)
犯罪組織デストラップの前線司令官。実はデストラップの真の支配者であり、
ジュピター(武田真也)やルシファーと同じ23世紀出身の未来人。強力な光線を放つ指輪が武器。
最終決戦時に総統フューラーの頭脳を取り込んで超人類となった。
●アークシセイザー(闘争の系統オリジナル)
堕神の一族の大審官。堕神王リリスに次ぐ実力者である。全宇宙・全次元各地で時空クレバスや黄泉がえり現象を発生させ、背後から見えない糸で戦乱をコントロールしている黒幕と目されるが、まだ誰もこの男の存在を知らない。
ブレイバーズを陰ながら支援する
星間評議会高官ジュリアス・カミュエルとは声色、雰囲気、背格好の全てにおいて酷似しているが、現在のところ両者の関係は不明。
最終更新:2020年11月26日 10:05