本編1389~1391

『聖天子暗殺!?宇都宮釣天井』-6

 作者・ティアラロイド
1389

独立幻野党の一味はあらかた鎮圧された。
無事に窮地を脱出できた聖天子は、
静弦太郎と霧島五郎に言葉をかける。

聖天子「静弦太郎隊員、霧島五郎隊員、
 あなた方のおかげで九死に一生を得ました。
 このとおり礼を申します」
弦太郎「いや、俺たちの力なんか微々たるもんです。
 これはまさしく天佑」
聖天子「なに、天佑…?」
弦太郎「つまり聖天子様が最後まで望みを捨てず、
 人の心を信じていた賜物です。それをきっと
 お天道様が賀してくだすったんですよ」

弦太郎の横で、一緒に聖天子の御前に控えている
五郎はクスクスと笑っている。

五郎「…なんでぇ、弦の字の奴。最初は聖天子様の事を
 散々ボロクソに言ってたくせに」
弦太郎「なんだ五郎? 何がそんなに可笑しいんだ!?」
五郎「いや、別にぃ…(^_^)ニコニコ 」

こうして静弦太郎と霧島五郎のコンビは、
目的地の関門海峡に向けて再び旅立つ。
今度は藤森典子も一緒だ。

典子「東都新聞社に問い合わせたけど、社会部に日高朱音という
 名前の記者はいないそうよ」
弦太郎「やっぱりそうか…」
五郎「朱音ちゃん、どこ行っちまったんだろうな。
 せっかくとびきりの美人と出会えたのに」

その時、突然弦太郎たちを乗せたジープが止まった。

五郎「うわっ! おい弦の字、いきなり
 なに車停めてんだよ!」
弦太郎「あれを見ろ。お客さんだ」
典子「あの男は!?」

弦太郎の運転する車の行く手の先には、
黒サングラスにスーツ姿の屈強な男が立ちはだかっていたのだ。

弦太郎「石津麟一郎…!」
石津「まだ終わってはいないぞ!」

1390

車を降りた弦太郎たちは、石津と対峙する。

弦太郎「五郎、テンコ、手ェ出すんじゃねえぞ!」
五郎「弦太郎!」
典子「静君!」

サングラスを外し、上着を脱ぎ捨てて
上半身裸の鍛え上げられた筋肉を晒す石津。
それに対して弦太郎も身構える。

弦太郎「石津麟一郎、いずれは日本の国防の将来を担う
 エリートと言われた男。いったいどこで道を踏み外して
 現代のヒトラーとまで呼ばれるような危険人物にまで
 堕ちちまったのか…」
石津「私を哀れむ気か?」
弦太郎「いや…。だがてめえの強さの秘密が読めた」
石津「………」
弦太郎「てめえには生きようという気がねえ。
 生きる事を捨てた人間の拳ほど、この世に
 恐ろしいものはねえ…」

いきなり斜め上から飛んで来た石津の拳を、
弦太郎は軽く身を反らしてかわす。
そのまま取っ組み合いとなった両者は、
上になり、下になり、ごろごろと崖の斜面を
転がり落ちる。

五郎「弦太郎ォッ!」
典子「静君ッ!」

五郎と典子は慌てて崖下へと降り、
倒れていた弦太郎を助け起こして救出する。
しかしその場にすでに石津の姿はなかった。

五郎「石津は!?」
弦太郎「あれで死んだとは思えねえな…」


東京・天童菊之丞邸***


菊之丞「…それで、その後、静弦太郎と霧島五郎はどうした?」
朱音「本来の目的地である関門海峡のビルドベースに向けて、
 再び旅立ちましてございます」
菊乃丞「して、例の物は?」
朱音「これに…」

茶室のにじり口のすぐ外に控えていた千坂朱音は、
中で茶を立てている天童菊之丞に一枚の書状を差し出す。
これこそ、石津麟一郎、そして独立幻野党の一味が
大阪エリア指導者である斉武宗玄と交わした念書だ。
菊之丞は直ちにこれを公にして斉武を告発する気など毛頭ない。
いざという時の切り札として、密かに取っておくつもりなのだ。

菊之丞「これでこの度の聖天子様ご行幸を仰いだ立場となる
 北関東圏の政・官・財界の名士・有力者どもも、当面はブレイバーズ
 足を向けては眠れまい。キレる…キレるのう、ブレイバーズ

朱音から受け取った念書を文書箱にしまい、
椀の中をお茶を飲み干した菊之丞は、お椀を畳の上にそっと置くが…。

菊之丞「しかしキレすぎる!」

Gショッカーなどの巨大な悪の脅威から地球上の安全を守るためには、
ブレイバーズの存在が必要不可欠である事は、天童菊之丞もよく理解していた。
しかし、世界から全ての悪が駆逐された後の事はどうなるのだろう…?
行き場のなくなった強大な力はやがて暴走していき、
いずれは聖室と日本国の存立をも脅かす時が来るのではないか…。

天童家から出奔した天童木更、里見蓮太郎の「天童民間警備会社」が
ブレイバーズに入り、聖天子や現・内閣総理大臣である剣桃太郎から
何かと重用されている事も、菊之丞にとっては気がかりであった。

菊之丞「もしもブレイバーズがこの地球を支配しようとの
 野心を抱くとすれば、由々しき大事となる…」
朱音「御前…」
菊之丞「これからもブレイバーズからは一時たりとも
 目を離すでないぞ」
朱音「ハハッ!」


1391

○静弦太郎→再び旅を再開する。石津麟一郎と交戦するが、決着はつかず。
○霧島五郎→再び旅を再開する。
○藤森典子→再び旅を再開する。
○聖天子→静弦太郎と霧島五郎にお褒めの言葉をかける。
●石津麟一郎→静弦太郎と交戦するが、決着つかず。姿を消す。
△天童菊之丞→ブレイバーズの存在を危険視し、その監視を配下たちに命じる。

△千坂朱音→天童菊之丞に事の次第を報告。ブレイバーズを密かに監視せよとの命令を受ける。

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最終更新:2020年11月26日 10:28