本編1634~1645

『紅蓮の鳳凰を追え!』-3

作者・ホウタイ怪人
1634

その日の朝、日本全国一斉に政府広報によるTV生中継が行われた。

剣持「シグフェルと呼ばれている人物に告げる。私は地球連邦軍
 国際平和部隊レッドマフラー所属、剣持保中佐だ。
 我々ブレイバーズは君とのコンタクトを望んでいる。
 もし君が今、このテレビを見ているなら、明日の夜9時に、
 君と私が一番最初に顔を合わせた場所にまで来てほしい。
 現場には私が一人で来る。君には決して不利益な扱いはしないと
 約束しよう。どうか出て来てもらいたい」


日の出テレビ・報道スタジオ***


村中「これでシグフェルは出て来るでしょうか…?」
海野「そもそもシグフェルが我々と一番最初に出くわした場所なんて、
 果たして覚えていますかねえ…」
剣持「わからん。だがやってみる価値はある」

剣持たちが話し込んでいるところへ、
番組のメインリポーターである八神冴子とプロデューサーがやって来る。

プロデューサー「すごい反響ですよ!
 局の電話はすでにパンク状態。
 公式SNSにも視聴者からの書き込みが
 殺到しています!」
剣持「でしょうな…」
冴子「剣持さん、お願いがあります。
 シグフェルとの約束の場所には私も同行させてください」
剣持「フフッ…お嬢さん、それはでき――」
冴子「八神冴子です!」
剣持「これは失礼…」

剣持がつい鼻で笑って
自分の事を「お嬢さん」呼ばわりしたのに対して、
冴子は有無を言わさず訂正させる。

剣持「冴子さん、それはできんよ。
 たった今、シグフェルとは私一人で現場に行くと
 約束したばかりだ」
冴子「ですが私にも現場での出来事を逐一正確に
 報道する義務があります。それがシグフェルにとっても
 不利益になるとは思えませんが」
剣持「…やれやれ、仕方がない。いいだろう。
 ただしインタビューと撮影は一切禁止だ。よろしいな!?」

こうして八神冴子も、当日は特別に剣持に同行する事になったのだが、
この時、一羽の青い蝶がテレビ局前に駐車していたレッドマフラー隊の
軍用車両の一台に潜り込んだ事には、まだ誰も気づいてはいなかった。

謎の青い蝶「………」

1635

地球連邦軍・極東支部伊豆基地***


コルベット「あれはいったい何の真似だあ!!」

今朝のTV放送を見たコルベット准将は、すぐさま
怒り心頭で伊豆の極東駐留軍司令部まで乗り込んで来たが…。

岡「何の真似も何も…あれはブレイバーズ側で勝手にやっている事でな。
 極東支部は何も関知してはおらん」
コルベット「なら剣持はどこに行った? 今すぐ剣持を出せ!」
岡「剣持中佐は佐原博士と共に独立部隊ブレイバーズに出向中の身だ。
 私に彼を呼び戻す指揮権はない」
コルベット「ならば言え。剣持たちとシグフェルが初めて遭遇した
 場所とはどこだ!?」
岡「シグフェルに関する資料なら、この前に全部渡しただろう」
コルベット「その中にはレッドマフラー隊がシグフェルと初めて接触した
 日付も場所も一切書かれてはいなかったぞ!」

こうして不毛な押し問答が続く。

コルベット「知っている事を素直に言え。言わねばここで貴様を撃つ!」
岡「………」

激昂したコルベットと銃を抜いて、その銃口を岡長官に向けるが、
すぐに伊豆基地の警備隊が長官室に駆けつけて来て、
コルベットに銃口を向けて包囲した。

コルベット「ぐぬぬぬ…ッ!!」
岡「こちらから話す事は以上だ。お引き取り願おう」
コルベット「岡、このままで済むと思うなよ!」

コルベットは捨て台詞を履いて退散するのであった。


海防大学付属高校・校舎屋上***


昼休み……。

慎哉「ブレイバーズからの呼び掛けに応じるだって!?」

今朝のTV放送を見て、光平からの決断を聞かされ驚く慎哉。
一緒にいる優香も、心配そうな表情で光平を見つめている。

慎哉「まさかお前、ブレイバーズに入る気なのか…?」
光平「そうじゃないよ。ただこれ以上逃げ回っていても
 状況は悪くなるだけだと思うんだ。あの人たちと直接会って
 ハッキリと断ろうと思う」
優香「でも、大丈夫かしら…」
光平「向こうは一人で来るって言ってくれているんだ。
 心配なんかないよ」
慎哉「まあ、お前がそう言うなら…」

慎哉も優香も、光平の判断を尊重する事にする。

慎哉「でも、お前があの連邦の軍人と一番最初に
 会った場所ってどこなんだ?」
光平「今朝のTVに出ていたヒゲの隊長さんと
 確か初めて会ったのは……」

下水道の土管工事をしていた現場作業員の中年男を
ホブゴブリンイーバから救った、あの場所だ…!

1636

スマートブレイン本社ビル・54階・社長室***


ゴメス「フフフッ…剣持め、ついに痺れを切らして
 賭けに出たな」

今朝の剣持隊長によるTV放送の呼び掛けは、
当然スマートブレインの面々も見ていた。

村上「このままだとシグフェルは、明日の夜にはブレイバーズと
 接触します。どうするつもりです?」
ゴメス「こちらとて抜かりはない。スマートレディ、
 例の準備はできたかね?」
スマートレディ「しっかりOKよん♪ もうレッドマフラー側の動きは
 全部こちらに筒抜けでーす!」
ゴメス「結構だ。――では村上社長、我々は黙って
 高みの見物をしているだけでいい」
村上「…??」

こうして各方面の思惑が交錯する中、
いよいよ翌日の夕方の時刻を迎えた…。


下田・地球連邦軍第13格納庫***


コルベットの部下「准将、たった今我が隊に匿名の通報がありまして…」
コルベット「匿名の通報だと?」

部下からメモを手渡されるコルベットは、
その中身に目を通した瞬間、顔がニヤリッと笑った。

コルベット「フフフフフフ…どうやら神は、真の英雄である
 このワシをまだ見放してはいなかったようだな!」


豊洲・某ショッピングモール***


優香「ごめんね。こんな大事な日に
 買い物につき合わせたりしちゃって…」
光平「いいんだよ。俺の方こそありがとう。
 いい気分転換になるよ。優香も俺の緊張を
 解きほぐそうとして誘ってくれたんだろ?」
優香「光平くん…」

まだ約束の夜9時までには時間がある。その前に、
光平と優香は二人でささやかな一時を楽しんでいた。

優香「あれ、確かあのコは…」
光平「どうした優香?」

優香の視線の先には、肩に黒猫を載せた
おだんご頭をしたツインテールの女の子が
両手にスイーツやファストフードを持って
食べ歩きしながら、こっちに向かって歩いて来る姿が…。

うさぎ「ねぇルナ、次はあっちのたこ焼きを食べに行こっ♪」
ルナ「うさぎちゃん、今日がどういう日だかわかってる…?(汗
 剣持隊長がシグフェルと待ち合わせする日よ。万が一の
 不測の事態に備えて、他のヒーローたちも都内の各所を
 手分けしてパトロールしてるんじゃないの!
 それなのにアナタときたら…」
うさぎ「でもでも美味しいんだもん!」
ルナ「まったくもう…(汗」

1637

月野うさぎの姿に気がついた優香は、
自分の方から彼女に声を掛ける。

優香「うさぎちゃ~ん!」
うさぎ「…? ああ! 優香さん! それに光平くんも!」
光平「確か君はこの間の…」

光平もうさぎの事を思い出す。

優香「久しぶりね。買い物?」
うさぎ「ナハハハハ~!! まあ、そんなとこ。
 そう言う優香さんはもしかして光平くんとデートですかぁ?
 隅に置けないなあ。コノコノコノォ~♪」
優香「デ、デートっていうほどでも……(///)」

光平「………」

一方の光平は、さっきからじーっと、うさぎの肩の上に乗っている
黒猫のルナをまるで怪しむように見つめている。

光平「なあ、この猫、今喋ってなかったか?」

うさぎ「ガ━━ΣΣ(゚Д゚;)━━ン!!」
ルナ「ガ━━ΣΣ(゚Д゚;)━━ン!!」

光平の一言に硬直するうさぎとルナ。
その動揺は激しく、眉間に汗をだらだらと
滝のように垂らしている。

ルナ「ニャ…ニャ~~ン!」

ルナは、猫の鳴き声を出して必死に誤魔化そうとする。

優香「やだなあ光平くん。猫が人間の言葉を話す訳ないじゃない」
うさぎ「…そ、そうですよぉ! いやだなあ。あはははは…(汗」
光平「………」

光平はどこか釈然としない雰囲気だったが、
特にそれ以上追及しようとはしなかった。
そして時刻は夜の8時45分頃を迎えた。

光平「そろそろ時間だな。優香、もう夜遅いけど
 一人で帰れるか?」
優香「私なら大丈夫よ。構わず行って来て」
うさぎ「えっ? 光平くん、優香さんを置いて
 これからどっかに用事でもあるの?」
光平「ちょっと俺一人でヤボ用でね。それじゃあ月野さん、
 また機会があったらどこかで!」

光平はうさぎにも挨拶をして、優香と別れて出口の方へと消えて行った。

優香「さて、そろそろモールの閉まる時間だし、
 私たちもそろそろ帰ろっか?」
うさぎ「ごめん。あたしは近くに友達を待たせているから」
優香「友達って木野さんや愛野さんたち?」
うさぎ「そうだよ♪ そういえば優香さんは
 まだ亜美ちゃんやレイちゃんには会ってなかったけ?
 今度紹介するね」

1638

都内・郊外某所***


嵐「ちきしょう…シグフェルの野郎、どこにいやがる!」

シグフェルに懸けられた懸賞金500万円を目当てに、
毒島嵐は今日も懲りずに大きな虫取り網を片手に
各場所をさまよい歩いていた。
実を言えば、ドロテ博士の研究所を抜け出してから
もう三日も何も食べていなかったりする…ww

嵐「あー腹減った。そういえば今日一日ずっと
 飲まず食わずだったもんなあ…」

空腹に耐えかね、すぐ近くの草むらに大の字になって寝転がる嵐。
そこへ騒音と共に、何やら物騒な装甲車や戦車が何台も車列を組んで
すぐ目の前を通り過ぎるのを目撃した。

嵐「なんだありゃ…?」

どことなく怪しい気配を感じ取った嵐は、
その車列の後を尾行する事にする…。


豊洲住宅街・朝倉家***


夕方に光平を家から送り出した慎哉は、
一人留守番をしながら自室のコンピュータールームに籠っていた。

彼が試みているのは、地球連邦・国防本省の防衛ネット――
――今現在、日本国内に駐留している地球連邦軍全部隊の動向に
関する部外秘ネットワークへの侵入だ。

慎哉「………」

いったんは光平の意思を尊重したものの、
慎哉はどうしても不安を拭い去る事ができなかった。
居ても立ってもいられず、何かブレイバーズや日本の警察・公安、
そして地球連邦軍の側に妙な動きはないかと調べているのだ。

慎哉が軍の機密情報にアクセスするなど、彼自身の持つスキルならば造作もないが、
本来、一民間人に過ぎない彼がこれをやるのは明白な違法行為だ。
一流のハッカーならば、滅多に危ない橋など渡らない。
だがもしかして、親友に危機が迫っているのかもしれないとすれば
背に腹は代えられない状況にあった。

――そして「不幸」にして、彼のイヤな予感は的中した!

慎哉「ちっくしょおおおっっっ!!!!!!!」

血相を変えて、すぐに自宅の玄関から飛び出した慎哉は、
そのまま自転車に飛び乗って必死に目的地まで走らせる。

慎哉「やっぱり罠だったんだ! 騙されてたんだ!!
 光平っ、どうか無事でいてくれ!!」

後に残された、不在の朝倉家の電源が入れっぱなし
となったPCのモニター画面には、大きく
「capture(鹵獲)」の文字が表示されているのだった…。

1639

豊洲・某ショッピングモール出入り口***


優香「それじゃあうさぎちゃん、また今度ゆっくりとね」
うさぎ「優香さんも元気で」

こうしてうさぎとモールの出入り口で別れてから数分後、
周囲から騒ぎの声が聞こえ始めた。

群衆A「ば、化け物だぁ~!」
群衆B「タツノオトシゴみたいな怪人が3匹、
 あっちの方向で暴れてるぞ!」

優香「――!!」

逃げ惑う群衆から噂が耳に入った優香は、
怪人を目撃したという場所が月野うさぎのいる場所に
近い事を思い出した。

優香「うさぎちゃんが危ない!?」
群衆C「おいお嬢ちゃん!どこ行くんだ!
 そっちは危ないぞ!」
優香「友達に危険が迫ってるんです!」

優香は、さっき別れたばかりのうさぎの事が心配になり、
群衆が逃げる方向とは逆に向かって走り出した。


◇   ◇   ◇


シードラゴンⅠ世「イーチッ!!」
シードラゴンⅡ世「ニーィチ!!」
シードラゴンⅢ世「ターツ!!」

左腕の形状がそれぞれ異なる3体一組のシードラゴン3兄弟が、
右手の発電鞭を振り回しながら、商業施設の集まるこの区域で暴れており、
周囲のあちこちには割れたガラスや倒れたコンクリートの柱などが散乱している。

レイ「もうっ、うさぎったら何処行ってたのよっ!?」
うさぎ「ごめ~ん!」
亜美「みんな、変身よ!」

うさぎも駆けつけ合流を果たした5人は、
変身呪文を叫んだ。

うさぎ「――ムーン・コズミックパワー!」
亜美「――マーキュリー・クリスタルパワー!」
レイ「――マーズ・クリスタルパワー!」
まこと「――ジュピター・クリスタルパワー!」
美奈子「――ヴィーナス・クリスタルパワー!」

5人全員「「「「「――メイクアップ!!」」」」」

変身を完了するセーラー戦士。

セーラームーン「行こうっ!みんな!」
他4人「「「「――OK!!」」」」

シードラゴンの出現ポイントまで急ぐセーラー戦士たち。
そしてその場には、たった今物陰から偶然に一部始終を見てしまった
沢渡優香一人だけが残されたのだった。

優香「そんな…まさか…!
 うさぎちゃんが…セーラームーン!?」

1640

都内郊外某所***


ここは以前、シグフェルが下水道の土管工事をしていた現場作業員の中年男を
ホブゴブリンイーバからたまたま救った場所の上空である。

シグフェル「…あそこか!」

飛来したシグフェルは、地上に待つ剣持と冴子の姿を見つけ、
翼をはためかせてゆっくりと降り立った。

シグフェル「………」

冴子「……(彼がシグフェル…)」
剣持「よく来てくれた、シグフェル」

剣持が握手しようと歩み寄ろうとした瞬間、
突然四方八方からシグフェルに向かって眩い照明が照らされた。

シグフェル「――!?」
剣持「なんだこれは!?」

バルザック「今だ! 撃てぇーぃっ!!」

いつの間にかその場は戦車隊によって包囲されて行った。
指揮を執るバルザック中佐号令のもと、シグフェルめがけて
砲弾が降り注がれる!

剣持「危ないッ!」
冴子「キャッ!?」

剣持は、横にいた冴子を銃弾の雨から守って横に伏せる。

冴子「剣持さん! これはいったいどういうことなんです!?」
剣持「こっちが聞きたいくらいだ!!」

一方のシグフェルも、訳が分からぬまま必死に
砲撃に耐えている。

シグフェル「…くっ! いったいどうなっているんだ!?」


豊洲・某ショッピングモール近く***


セーラームーン「東京湾と星空のコラボレーション! レインボーブリッジが超キレイ!
 そんなカップルたちの楽しむ夜景を台無しにするなんて不届き千万!
 この愛と正義のセーラー服美少女戦士、セーラームーンが月に代わってお仕置きよ!」

ショッカーのシードラゴン三兄弟と対決するセーラー戦士。

シードラゴンⅠ世「…ん? 仮面ライダー1号と2号はどうした?」
シードラゴンⅡ世「俺たちの相手がこんな小娘どもとは…。とんだ貧乏くじを引かされたものよ!」

現れた相手を侮り、鼻で笑うシードラゴン三兄弟。
憤慨するセーラー戦士たち。

セーラーマーズ「なんですって!」
セーラーヴィーナス「言ってくれるじゃない!?」

シードラゴンⅢ世「待て兄者! 我々の使命はブレイバーズとシグフェルの接触を牽制する事だ。
 ここは俺に一番手を任せてもらおう!」

12000ボルトの電流を蓄えた右手の発電鞭を振り回して迫るシードラゴンⅢ世。

セーラージュピター「電気ならアタシに任せて! 我が守護木星! 嵐を起こせ! 雷を降らせよ!」
 ――シュープリーム・サンダー・ドラゴンッッ!!!」

セーラージュピターは、ティアラの避雷針で受けた落雷のエネルギー電撃を放ち、
それらを収束してドラゴンの姿に変化させて攻撃する。

1641

再び、都内郊外某所***


荒れ狂う砲弾が飛び交う中、なんとかバルザックの元まで辿り着く剣持。

剣持「バルザック中佐、これは何の真似だ!
 すぐにやめさせろ!」
バルザック「これは剣持中佐、あいにくですがそれは出来ませんな。
 私はコルベット准将から命令を受けた身だ」
剣持「今一度言う。今すぐ攻撃をやめろ!
 やめなければ撃つ!」

剣持は銃を抜いてバルザックの眉間に向ける。
バルザックの部下たちも剣持に向けて一斉に銃を向ける。
緊迫した状況だ。

シグフェル「くっ…!」

約束の場所に到着したシグフェルが一方的に集中砲火を浴びる中、
自宅から全力で自転車を漕いできた慎哉が現れた。
シグフェルが連邦軍に攻撃されている光景を目にするや、
自転車をその場に乗り捨ててシグフェルの側にまで駆け寄ろうとする。

慎哉「光平ッッ!!!!!!」

冴子「なんでこんなところに子供が!?」

突然現れた高校生くらいの年頃らしき男子に、
その場近くにいた八神冴子も戸惑う。

シグフェル「――!? 慎哉! 危ない来るなあッ!!」
慎哉「――え!?」

気がついた慎哉の目の前にも、容赦なく銃弾の雨が降り注がれようとした
まさにその時――!!

アシュラ「ぐはっ…!?」

金髪に赤い身体の怪人風の男が、咄嗟に盾となって慎哉とシグフェルを庇った。
先程コルベット隊の動きを偶然目撃し、そのまま後を付けて来た
毒島嵐=ドクター・アシュラだ。

慎哉「――!?」
シグフェル「…あ、あなたは?」
アシュラ「なにボサッとしてる! そいつはてめぇのダチなんだろ!!
 ここは俺に任せて早く行け!!」
慎哉「………*1)ガクガクブルブル」

アシュラが庇わなければ、あと一歩でハチの巣になって
無残に死ぬところだった慎哉は、身体が震えて動けないでいる…。

シグフェル「ありがとう!」

アシュラの叱咤で、咄嗟にどうすべきか理解したシグフェルは、
慎哉を抱えて浮上し、とりあえずその場から離脱するのだった。

バルザック「…逃げられたか。撃ち方やめーいッ!」

バルザック中佐から攻撃中止が命令される。

1642

アシュラから人間体の姿に戻った毒島嵐を、
コルベット隊の兵士たちが銃口を向けて取り囲んだ。

兵士A「よくも邪魔をしてくれたな!」
兵士B「この男を拘束しろッ!」
嵐「チッ…!」

嵐は両手を挙げて降参のポーズをとるが、
剣持が乗り出して来てこれを制止する。

剣持「待て! その男の身柄はレッドマフラーの方で預かる」
バルザック「剣持中佐、只今の貴官の妨害行為は後日問題にさせて頂く」
剣持「それはこっちの台詞だ! コルベット准将率いる部隊の
 数々の越権行為は必ず究明させてもらうぞ!」
バルザック「……引き揚げろ!」

暫し睨みあっていた剣持とバルザックだったが、
やがてバルザックは部隊を率いて撤退して行った。


豊洲・某ショッピングモール近く***


セーラームーン「――ムーン・スパイラル・ハート・アタック!!!」
セーラーマーズ「――マーズ・フレイム・スナイパー!!!」

巨大なハート形の光の塊と、高熱の烈炎で作った光の矢が
残りのシードラゴン2体を見事撃破した。

シードラゴンⅠ世「イーチッ!! む、無念だぁぁ~!!」
シードラゴンⅡ世「ニーィチ!! ショッカー軍団ば、ばんざ~い!!」

爆発四散して消滅する怪人シードラゴン。

セーラーマーキュリー「終わったわね」
セーラーヴィーナス「剣持隊長、無事にシグフェルに会えたかしら?」

皆が剣持とシグフェルの会見が上首尾な結果に終わる事を期待していたが、
一人セーラームーンだけが全く別の事を考えていた。

セーラームーン「優香さん、あれからちゃんと無事に帰れたかな…」
セーラージュピター「優香さんって…沢渡優香さん?」
セーラームーン「うん。実はついさっき近くで会って…」
セーラーヴィーナス「うそっ!? 優香さん近くに来てたの!?」
セーラーマーズ「…誰? その沢渡優香って?」
セーラームーン「ああ、この間偶然知り合った女の子なんだけど、
 マーズやマーキュリーにもいずれ近いうちに紹介するね♪」

1643

レッドマフラー隊基地***


コルベット隊の予期せぬ妨害によって、不首尾に終わってしまった
シグフェルとの会見から帰って来た剣持だったが…。

村中「隊長、実は基地の車両の中からこんな物が!」
剣持「これは…!?」

それは超小型の盗聴器だった。いつの間にこんな物が仕掛けられ、
シグフェルとの待ち合わせ場所も含めたこちらの動きが、
全部外部に筒抜けになっていたのだ。

そしてその情報を掴んだ何者かが、コルベット隊に密告したに違いない。
このような悪辣な手を使う男を、剣持は世界広しと言えども一人しか知らなかった。

剣持「…やってくれたな! ゴメスさんよォッ!!!」

剣持は怒りに任せて盗聴器を床に叩きつけ、硬い革靴で踏み潰した。


スマートブレイン本社ビル・54階・社長室***


村上「さすがはキャプテンゴメス。上の上たる策略です」

剣持とシグフェルの会見が決裂に至った事を知り、
祝杯を挙げて喜ぶ村上社長とゴメス。

ゴメス「シグフェルの正体が人間の民間人だとすれば、
 一般の素人に地球連邦軍の内部事情など解る筈もない。
 シグフェルから見れば、ブレイバーズ派もロゴス派も
 同じく地球連邦軍。一々区別などは到底つかない」
村上「今回の件で、おそらくシグフェルはブレイバーズから
 裏切られたと思った事でしょう」
ゴメス「今やブレイバーズに対するシグフェルの心証は最悪となった。
 そこに我々Gショッカーが付け入る隙が生じるのだ。
 村上社長、いよいよ果実を我々の手にもぎ取る時ですぞ!」

1644

地球連邦軍極東支部・伊豆基地***


執務室に一人だけでいる岡長官は、誰かと電話で話していた。

???@電話の声「申し訳ありません。こちらも監視がついていたため、
 事前にお知らせできませんでした…」
岡「君のせいではないよ。気に病む事はない。
 引き続き潜入任務を続けてくれたまえ」
???@電話の声「了解しました。ではこれにて」

電話の受話器を下ろす岡長官。果たして今彼は、
誰と話をしていたのだろうか…?


臨海高速線の車両内***


お台場、豊洲、メガロシティ、ヌーベルトキオシティを縦断して結ぶ
旋風寺鉄道の新交通システムに乗車して帰宅途中の沢渡優香。
思いつめた表情で座席に座っている…。

優香「………(うさぎちゃんも他の女の子たちもセーラー戦士だった。
 いったいどういうことなの?)」

何か言いようの知れぬ不安に駆られる優香。
この後、光平、慎哉、優香の3人に
さらに大きな影が忍び寄ろうとしている事を、
この時はまだ誰も知らなかった…。

1645

○剣持保→シグフェルとの会見に臨むが、コルベット隊の妨害によって決裂してしまう。
○村中隊員→日の出テレビでの剣持保の録音放送に同行。
○海野隊員→日の出テレビでの剣持保の録音放送に同行。
○八神冴子→シグフェルとの会見に臨む剣持保に同行する。そこで朝倉慎哉の姿を目撃。
○岡防衛長官→抗議にやって来たコルベットを追い返す。剣持とシグフェルの会見失敗後に
 謎の人物と電話で会話する。
○月野うさぎ/セーラームーン→ショッピングモールで沢渡優香と再会。優香に変身の瞬間を
 目撃された事にまだ気づいていない。
○ルナ→人間の言葉を喋っていたところを牧村光平に怪しまれて焦る。
○水野亜美/セーラーマーキュリー →シードラゴンⅠ~Ⅲ世と交戦してこれを撃破。
○火野レイ/セーラーマーズ→シードラゴンⅠ~Ⅲ世と交戦してこれを撃破。
○木野まこと/セーラージュピター →シードラゴンⅠ~Ⅲ世と交戦してこれを撃破。
○愛野美奈子/セーラーヴィーナス→シードラゴンⅠ~Ⅲ世と交戦してこれを撃破。
○毒島嵐/ドクター・アシュラ→自ら盾になり、シグフェルと朝倉慎哉の窮地を救う。
●コルベット准将→バルザック中佐の部隊を派遣して、シグフェルと剣持の会見を妨害する。
?バルザック・アシモフ→コルベットの命令で、シグフェルと剣持の会見を妨害して、シグフェルの捕獲を目論む。
●村上峡児→剣持保とシグフェルの会見失敗を喜ぶ。
●スマートレディ→レッドマフラー隊の車両に盗聴器を仕掛ける。
●キャプテンゴメス→剣持保の動きをコルベット准将に匿名で密告。
●シードラゴンⅠ世→豊洲で暴れるが、セーラー戦士たちに倒される。
●シードラゴンⅡ世→豊洲で暴れるが、セーラー戦士たちに倒される。
●シードラゴンⅢ世→豊洲で暴れるが、セーラー戦士たちに倒される。

○牧村光平/シグフェル→剣持保の呼び掛けに応じて会見に臨むが、コルベット隊に襲われ離脱。
○朝倉慎哉→コルベット隊に襲われるシグフェルの元に駆けつけ、彼と共にその場を離脱。
○沢渡優香→セーラームーンの正体が月野うさぎである事を知る。

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最終更新:2020年12月03日 08:20

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