『光平を救え! 結集せよブレイバーズ戦士たち』-1
作者・ホウタイ怪人
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下田・地球連邦軍第13格納庫***
光平「ぐわああああ!!!!!!!」
大勢の取調官の軍人に取り囲まれている中、
椅子に拘束され、両耳にヘッドホンを取りつけられている光平。
取調官の一人が手に握るスイッチを入れると、
光平は耐えがたい苦しみで絶叫した。
それは超音波による拷問だった…。
取調官A「いい加減この調書にサインしたらどうだ?」
光平「………」
ブレイバーズの助けで地上へと逃れた光平たちだったが、
そこで彼らは待ち伏せしていたコルベット准将配下の特務部隊に
取り囲まれた。シグフェルとなった自分一人だったら
この程度の窮地も難なく切り抜けられただろう。
しかしその時、側には慎哉と優香も一緒にいた。
二人にも銃口を突き付けられては、光平も大人しく従う他はなかったのである。
下田に連行されてからの光平は、慎哉や優香とも引き離され、
一方的に「スパイである事を認めろ!」と言われ続け過酷な拷問を受け続けた。
光平「俺は…スパイなんかじゃない!」
取調官A「はい、ハズレ」
光平「うわああああ!!!!!!」
再度、非情にも取調官は超音波のスイッチを入れる。
悲鳴をあげる光平。もう何時間もこの光景の繰り返しだ。
取調官B「もう一度聞く。お前は地球外の侵略者のスパイだな?」
光平「違う!…何度言ったら!!」
取調官C「そろそろ正解してくれないとさあ、
次は君の大事なお友達に、代わってクイズに
答えてもらうことになるよ」
ヘラヘラと笑いながら光平に詰め寄る取調官。
光平「くっ……」
◇ ◇ ◇
慎哉「おい、ここから出せー!!」
優香「………」
いきなり軍隊に問答無用で連行され、光平とも引き離されて
同基地内の監獄に放り込まれた朝倉慎哉と沢渡優香。
やがてそこへ将校らしき男がやって来た。
将校「出ろ、釈放だ」
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慎哉「…え?」
優香「どういうこと…?」
突然の釈放を告げられ、戸惑う慎哉と優香。
言うがままに鉄格子の中から廊下へと出る。
優香「あの、光平くんは?」
将校「お友達に感謝するんだな」( ̄ー ̄)ニヤリ
慎哉「――!!」
今の一瞬ニヤリと笑った将校の言葉で、慎哉は全てを察した。
光平はきっと、自分と優香の二人の身の安全を条件に脅迫され、
やむなくその圧力に屈したのだ。
慎哉「てめええええええ!!!」
激昂した慎哉は将校に掴みかかろうとするが、
将校はそれを簡単にかわして、逆に慎哉の腹部に
パンチを一発お見舞いする。倒れる慎哉。
慎哉「ぐはっ!?」
優香「朝倉くん!? ――何をするんですか!
暴力はやめてください!!」
将校「フン……」
◇ ◇ ◇
無念の思いを浮かべながら、基地正門へと出る慎哉と優香。
将校「最後に一つだけ忠告しておこう。外に出ても下手に騒ぐな。
もし騒ぎが大きくなれば、"お友達"は勿論、君たちの家族も無事では済まない」
慎哉「………」
優香「そんな……」
一方正門の外側では、釈放された慎哉たち二人の身柄を引き取るため、
伝正夫たちバトルフィーバー隊が待機していた。
正夫「朝倉慎哉君に沢渡優香さんだね?」
誠「君たちにちょっと聞きたい事がある」
しかし慎哉は冷たく拒否反応を示す。
慎哉「アンタたちになんか話す事は何もない!」
優香「朝倉くん…」
京介「おい君、そんな言い方はないんじゃないのか?」
地球連邦軍の内部事情など知る由もない一般人の慎哉や優香にとって、
光平の身柄を不当に拘束している軍隊も、
ブレイバーズに所属している
バトルフィーバー隊も、どちらも同じ傲慢な態度の軍人にしか見えないのだ。
特に慎哉の頑なな態度に困り果てていたバトルフィーバー隊だったが……。
フィリナ「そこから先は私がお話します」
慎哉「…え!?」
優香「フィリナさん!?」
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突然の聞き慣れた声に驚く慎哉と優香。
確かに目の前には黒塗りの高級車から降りて来た
フィリナ・クラウディア・アルシャード本人と、
彼女を守る黒服のSP数人が立っていた。
慎哉「フィリナさん!?」
優香「いつ日本に?」
何の前触れもなしにフィリナが現れた事に
まだ驚きが冷めない様子の慎哉と優香。
フィリナ「たった今成田に着いて、車を走らせてきたばかりよ。
大方の事情は聞いたわ」
優香「フィリナさん…」
正夫「フィリナ・クラウディア・アルシャード嬢ですね?」
フィリナ「はじめまして伝少佐。立ち話もなんですから、
まずは皆さんもご一緒に車の中で。慎哉、この方たちを
貴方の家にご案内してもいいわね?」
慎哉「は、はい…」
慎哉は不本意そうながらも、フィリナに言われたのでは
仕方がないと渋々従った。
バトルフィーバー隊5人、朝倉慎哉、沢渡優香は
フィリナの車に同乗してひとまず東京の朝倉家を目指す。
◇ ◇ ◇
シグフェルを捕獲した以上、もはや日本国内に長居は無用とばかりに
早速撤収の準備を始めるコルベット准将の部隊。
コルベット「先発部隊の準備を急がせろ!」
コルベットが指揮を執る指令室のモニターに、伊豆の岡防衛長官から通信が入る。
コルベット「何の用だ岡? 今こちらは忙しいのだがな」
岡@通信「相変わらず強引な男だな、貴官は…」
コルベット「今や我々人類は、地球防衛の最大の切り札を手にしたのだぞ。
祝いの一言も言ってはくれんのか?」
岡@通信「牧村光平の身柄をこちらに引き渡せ――と言っても無駄なようだな」
コルベット「気の毒だがそういう事だ。お前も要らぬ画策はしないことだな」
岡@通信「わかった。貴部隊の健闘を祈っている」
こうして通信は切れた…。
コルベット「フフフ…岡、今回ばかりはワシが笑う番だ」
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女性士官「ひどい環境ですね。人道的な見地からも早急に手続きを済ませましょう」
光平「………」
弁護士資格を持つと称する女性士官から、これから日本国外へ出国するための
手続きについて説明を受ける牧村光平。
女性士官「週末までには政府再建委員会の施設に移動できると思います。現状に対して何か要望などは?」
光平「………たくありません」
女性士官「え、なあに?」
光平「…どこにも行きたくなんかありません」
国外への連行を拒否するように暗い表情で呟く光平に対し、
その女性士官は冷たく言い放った。
女性士官「まだ自分の立場というものを理解していないようね。
貴方には選択の権利はないの」
◇ ◇ ◇
東京・豊洲 朝倉家***
くらのすけ「くぅ~ん!くぅ~ん!」
優香「くらのすけ、光平くんはいつになったら
帰って来れるのかしらね…」
家の玄関前で優香は優しく、そして寂しそうな顔をして
くらのすけの毛並みをそっと撫でている。
一方の家の中のリビングルームでは、
伝正夫らバトルフィーバー隊の5人が通され、
フィリナからこれまでの経緯について
説明を受けていた。
正夫「どうして今まで黙っていたんですか!?」
フィリナ「それについてはお詫びします。
ですが、今のあの子の難しい立場も察してください」
牧村光平は母方の血筋に世界の石油経済を一手に握る
石油王一族の血を引いている。旧西暦1970年代の中東戦争に
端を発するオイルショックによる経済混乱の生々しい記憶が
今も鮮明に残っている日本の政財界や霞が関関係者の中には、
光平の存在自体を邪魔に思い、疎ましく思っている者も多いのだ。
誠「だから、迂闊に名乗り出る事が出来なかった訳か…」
四郎「………」
フィリナ「今更こんな事を頼めた義理ではないのは重々承知していますが、
どうかあの子を…光平を助けてあげてください!
私からもこの通りお願いします」
マリア「それは勿論です」
正夫「たとえ、光平くんが我々
ブレイバーズの仲間に
なってくれなくてもね」
フィリナ「ありがとう…」
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メガロシティ署***
メガロシティ警察署のチャック・スェーガーと桂美姫の
両刑事を訪ねて来る弁護士の北岡秀一。
チャック「何しに来た?悪徳弁護士!」
北岡「これはまた、相変わらず御挨拶ですね」
美姫「いったい何の用? こっちはこれでも忙しいんだけど」
北岡「実は今日はお二人に耳寄りなお話を持って来ましてね」
いかにも勿体振るように話を切り出す北岡。
チャック「へえ~そりゃいったい何の話だ?」
北岡「実はですね、ついにあのシグフェルの正体が判明しました」
美姫「ふ~ん、そうなの」
北岡「いったいシグフェルは誰だったと思います?
お二人もよく知っている人物ですよ。名前を聞いたら
きっと驚きますよ」
自慢げにドヤ顔で話す北岡だったが、次の美姫の言葉で
その空気は一変した。
美姫「牧村光平でしょ?」
北岡「ど、どうしてそれを!?」
あっさり美姫に言い当てられ、驚いたのは北岡の方だった。
北岡「もうすでにそちらにも情報が届いていましたか…」
美姫「いいえ、たった今知ったばかりよ。
たぶんそんなところじゃないかと思って、一つカマをかけてみたのよ」
北岡「やれやれ…やはり貴女には敵わないな」
北岡は降参の姿勢を示す。
北岡「おそらく牧村光平君の身柄は、明日には国外に移送されるでしょう。
もし万一ティターンズの本拠地ジャブローにでも連れていかれたら最後、
彼の奪還は永遠に不可能になるでしょう。日本政府も人身保護請求を出していますが、
おそらくそんなものは無視されるでしょうし、伊豆の連邦正規軍も建前とは言え
友軍相手では手が出せません」
チャック「だが、独立した行動権限を持つ俺たち
ブレイバーズになら
それが出来る!」
北岡「ご名答! それで、お二人ともどうされますか?」
美姫「聞かれるまでもないわ!」
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秩父山赤心寺***
シグフェルの正体は牧村光平だった。その知らせを聞いた沖一也は、
玄海老師のいる秩父山中の赤心寺へと急行した。
玄海「どうした一也? 久しぶりに顔を見せたかと思ったら、
そのような怖い顔をして…」
一也「老師! 老師はシグフェルの正体が光平君だと
前々から気付いていらっしゃったのではありませんか!?」
問い詰める一也に、玄海老師は静かに答える。
玄海「…だとしたらどうする? 本人の意思を無視して、
彼を無理やり
ブレイバーズの仲間に組み込んだか?」
一也「それは…」
玄海「地球の平和と人々の平穏を守るために戦おうとするのは、
あくまでもその戦いに身を委ねる者たち自身の意思によるもので
なければならん。嫌がる者に戦いを無理強いしたとしても意味はない。
それゆえわしは、光平君が自分から名乗り出て来るのを待っておった…」
一也「老師…」
玄海「しかし、それがかえって彼の異形の力を邪な野心に利用せんとする輩に
付け入る隙を与えてしまった。これは間違いなくわしの不覚であった。
一也、なんとしても光平君を助け出すのだ!」
一也「はい、必ず!」
ポイントゼロ・無幻城 十二邪将円卓の間***
地獄大使「どうするのだ村上よ!」
ジャーク将軍「せっかく苦労してシグフェルの正体を突き止めたというのに、
このままでは奴の身柄を
ロゴスの地球至上主義者どもに奪われてしまうぞ!」
村上「………」
漁夫の利をさらわれる形で、まんまとシグフェルを
ロゴスに横取りされてしまった件について
他の同僚の邪将たちから糾弾の矢面に立たされている村上峡児。
村上「まだ打つ手はある!」
村上は、すぐさま側近の部下二人を
その場へと呼び寄せた。
村上「なんとしてでも牧村光平の身柄をこちらに奪い取って来てください。
もし彼が拒むようなら命を奪っても構いません」
村上の部下A「畏まりました」
村上の部下B「直ちに!」
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○伝正夫→朝倉家にてフィリナから全ての事情について説明を受け、牧村光平救出を約束する。
○神誠→朝倉家にてフィリナから全ての事情について説明を受け、牧村光平救出を約束する。
○志田京介→朝倉家にてフィリナから全ての事情について説明を受け、牧村光平救出を約束する。
○曙四郎→朝倉家にてフィリナから全ての事情について説明を受け、牧村光平救出を約束する。
○汀マリア→朝倉家にてフィリナから全ての事情について説明を受け、牧村光平救出を約束する。
○岡防衛長官→コルベット准将に牧村光平の身柄引き渡しを要求するが、拒否される。
○チャック・ウェーガー →牧村光平がシグフェルである事を知る。
○桂美姫→牧村光平がシグフェルである事を知る。
○北岡秀一 →牧村光平がシグフェルである事を伝えにメガロシティ署を訪れる。
○沖一也→牧村光平がシグフェルである事を知る。
○玄海老師→沖一也に牧村光平救出を命じる。
●コルベット准将→日本からの撤収準備を開始。伊豆の岡防衛長官からの牧村光平の身柄引き渡し要求を一蹴する。
●地獄大使→シグフェルをコルベットに横取りされた件で村上峡児を糾弾。
●ジャーク将軍→シグフェルをコルベットに横取りされた件で村上峡児を糾弾。
●村上峡児→部下に牧村光平の身柄奪取を命じる。
●村上の部下A→村上峡児から牧村光平の身柄奪取を命じられる。
●村上の部下B→村上峡児から牧村光平の身柄奪取を命じられる。
○牧村光平→コルベット准将に拘束され、やむなく脅迫に屈して彼らの言うがままに従う。
○朝倉慎哉→コルベット准将に拘束されていたが、釈放される。
○沢渡優香→コルベット准将に拘束されていたが、釈放される。朝倉家で牧村光平の身を案じる。
○くらのすけ→帰って来た沢渡優香に優しく撫でてもらう。
○フィリナ・クラウディア・アルシャード→急遽来日。朝倉家にてバトルフィーバー隊に全ての事情を説明。
【今回の新規登場】
●村上の部下A=ライノセラスビートルオルフェノク(仮面ライダー555)
スマートブレイン本社のエリート社員の1人。 裏切り者の澤田亜希を始末するよう村上峡児から命じられる。
カブトムシの特質を備えたオルフェノクで、動きは鈍重だが、頑強な鎖帷子を身に纏い、鋭利な薙刀を武器とし、スタッグビートルオルフェノクとの連携で相手に襲い掛かるタッグ戦法を得意とする。
●村上の部下B=スタッグビートルオルフェノク(仮面ライダー555)
スマートブレイン本社のエリート社員の1人。 裏切り者の澤田亜希を始末するよう村上峡児から命じられる。
クワガタムシの特質を備えたオルフェノクで、ライノセラスビートルオルフェノクとのタッグ戦において相手を翻弄する役割を担い、刺股を自在に振るって相手と斬り結ぶ攻撃を得意としている。
最終更新:2020年12月03日 08:25