『シグフェル、新たなる戦いの始まり』-1
作者・ホウタイ怪人&凱聖クールギン
1724
サラジア共和国・副大統領官邸***
謎のヒーロー・シグフェルの正体は牧村光平であった。
Gショッカーが掴んだこの情報は、
直ちに
サラジア共和国のアフマド・アルハザード副大統領の下へも打電された。
アルハザード「牧村光平…。
まさか…いや、名前からして間違いない…。
うむ…やはりそうだ…!」
ネロス帝国から送られてきたシグフェルの資料を持つアルハザードの手は、
わなわなと震えているのであった。
秘書N「牧村光平、17歳。
東京の海防大学付属高校に在籍している学生です」
秘書R「彼の両親は幼い頃にサラジアで死亡しており、
現在は東京都内の朝倉家という民間人の家庭に身を寄せているようです」
アルハザード「その両親が問題なのだ!
エゴスのホウタイ怪人が調べ上げたというこの資料によれば、
奴の父親はあの牧村陽一郎ではないか」
秘書N「10年ほど前、中近東方面で活動していた日本の外交官ですね」
秘書R「ご存じなのですか? 副大統領」
アルハザード「うむ。奴はちょっとした有名人でな…。
もう20年近く前の事だが、陽一郎は赴任先のアルジェで
石油王アルシャード一族の娘と恋に落ち、
そのまま駆け落ちしてしまったそうだ。
お前達はまだ子供だったので知らんだろうが、
アルシャードは激怒して日本への石油の輸出を止めるとまで言い出し、
それはもう大騒ぎになったものよ」
秘書R「そのような事が…」
アルハザード「結局、何とか事は穏便に収まったが、
日本の外務省を揺るがす一大スキャンダルだったゆえ、
政府はこの件を一切シークレット扱いにしておる。
噂によれば、駆け落ちした二人の間には息子が生まれたとの事だが、
どこでどうしているのか、知る者は今まで誰もいなかった…」
秘書N「その息子こそが、この牧村光平…」
しばらく押し黙っていたアルハザードは、
顔に噴き出す冷や汗をハンカチで拭うと、呟くように言った。
アルハザード「…殺さねばならん」
秘書N「はっ…?」
アルハザード「牧村陽一郎の息子は抹殺せねばならん。
万が一にも奴が父親からあの秘密を聞かされていれば…。
この私にとって一大事となる」
秘書R「…?」
アルハザード「もたもたしている暇はない。
一刻も早く牧村光平をこの世から葬り去るのだ!」
秘書N・R「…! かしこまりました!」
1725
日本・東京メガロシティ 海防大学付属高校テニスコート***
放課後の部活練習時間……。
だが今日はいつもとは違い、テニス部のコートに
牧村光平の姿はない。
優香「光平くん、今日も学校お休みなのね…」
慎哉「あのバカッ…」
陸上ウェア姿の沢渡優香が、テニスコートのフェンス越しに
テニスウェア姿の朝倉慎哉と話をしている。
慎哉は、光平が
ブレイバーズに加わった事に
まだ納得していない様子である。
優香「光平くんが
ブレイバーズに行ったこと、まだ怒ってるの?」
慎哉「そんなんじゃねーよ……」
優香「熟慮の末に光平くん自身が決めた事だもん…。
私たちもその判断を尊重してあげようよ」
慎哉「………」
ブレイバーベース・バトルシュミレーションルーム***
エルファ「これよりシュミレーションスキャンを開始します。
準備はいいですか?」
シグフェル「ああ、やってくれ!」
ブレイバーベースのナビゲータービジョンロイド・エルファの開始の合図と共に、
何もない荒野の中央に一人立つシグフェルを狙って、無数の訓練用球体型バトルポットが
浮遊しながら群れを成し、次々と猛スピードでビーム攻撃を仕掛けて来る。
シグフェル「……!!」
シグフェルは瞬速で頭上に飛翔し、高速で接近してくるバトルポットたちをかわしつつ
無駄のない動きで、炎の手刀を用いて片っ端からバトルポットを切り裂いて戦闘不能にしていく。
超人機メタルダーの必殺技「レーザーアーム」を参考にして編み出した攻撃技「フレイムアーム」だ。
さらにシグフェルは、残ったバトルポットを谷間へと巧妙に誘導し、
そこに敵機が集中してきたところで両手で印を結び、
胸部の辺りより超強力な熱光線を発射した。
シグフェル「――ヴァジェト・レイ!!!!!!」
残っていたバトルポットは、これで全て全滅した。広範囲に跨る敵に対しては有効な破壊光線技だ。
古代エジプトの蛇の女神「ヴァジェト(Vaget)」が悪を焼き尽くすために用いたと伝えられる
燃えさかる炎にちなんで、この技は「ヴァジェト・レイ」と名付けられた。
シグフェル「――!?」
訓練用MA「グゴゴゴォ…!!」
間髪入れずに新たな敵の気配に気づいたシグフェル。背後に振り替えると、
そこには全長60メートルはあろうかという巨大モビルアーマーが立ちはだかっていた。
モビルアーマーはシグフェルめがけてメガ粒子砲を連射してくる。
まるで虚空を舞うように、容赦のない敵の攻撃を回避し続けるシグフェルは、
右腕を天高く掲げて叫ぶ!
シグフェル「フレアセイバー!!」
シグフェルの右手の拳が炎に包まれ、プレシャスの剣フレアセイバーが掌の中で具現化する。
戦闘力が急激に上昇したシグフェルは、真上から一刀両断でモビルアーマーを
真っ二つに切り裂いた。轟音と共に爆発し崩れ落ちるモビルアーマー。
1726
ガラス越しにシュミレーションルームでのシグフェルの戦闘能力解析作業の
様子を見守っているブレイバーベース科学陣の面々。
四ッ谷「凄まじいまでの戦闘能力じゃな」
ギルモア「これでシグフェルの持つ全スキル及び
スペックに関する解析は問題なく終了じゃ」
佐原「だが問題は次だ…」
ブレイバーベースでは、光平本人の同意も得た上で、
血液や毛髪の採取、遺伝子の分析、CTスキャンによる体内画像の解析に至るまで、
医療スタッフによるシグフェルの身体の分析作業が開始された。
これは光平本人も元から望んでいた事であった。
しかし
ブレイバーズの誇る宇宙最先端の医学と科学技術力を持ってしても、
超生命体としてのシグフェルの肉体の秘密に迫る事は困難を極めた。
光平「…つまり、どういう事なんですか?」
ウルシェード「お前さんの体は原子レベルの段階で
ナノマシンと置き換えられとる。信じ難いことじゃが、
こんな技術は地球上は勿論、宇宙のどこの星にだって
まだ存在しない」
豪「こんなことを言われるときっと不快に思うだろうけど、
君の肉体はナノマシンが神経組織を伝って全身の細胞に侵食していて、
まさに戦うための生体兵器というべき存在に進化しているんだ」
光平「生体…兵器……」
基地内の診察室で、光平はドクター・ウルシェードと尾村豪から
分析結果の説明を受けていた。予感していた事とは言え、
「生体兵器」という言葉に光平は少なからずショックを受ける。
佐原「光平君、落ち着いて聞いてほしい。
残念ながら今の我々の科学力では、
君の肉体を元に戻す事は不可能だ。
お役にたてず申し訳ない…」
光平「いえ、気にしないでください。
ショックじゃないと言えば嘘になりますけど、
これでスッキリしました」
豪「光平君…」
光平「実の事を言えば、もうこの身体の事は諦めてたんです。
だけど俺はここに来て、俺と同じように自分の意思に反して
普通の人間とは違う力を身につけてしまった人たちが
他にも大勢いる事を知りました。そしてその人たちはみんな、
事情や経緯はどうあれ、その力を世の中のよいことのために
役立てようと前向きに頑張っています…。俺もそんな人たちに
少しでも近づければ…」
ブレイバーズにとって思惑が外れた点は、謎の怪物群「イーバ」の正体について、
シグフェルから何か有力な情報を得られるのではと期待しながら、
実際はシグフェル=牧村光平自身もイーバについてはほとんど何も知っておらず、
具体的な証言や情報の類が全く得られなかった事である。
しかし、光平をシグフェルに改造したと思われる東条寺理乃が、
イーバとも何らかの関係を持っている可能性が高い。
そちらの方は警察機関の方で継続して追跡・捜査が行われるだろう。
光平をシグフェルへと変えた謎の人体実験による生命改造技術…。
エゴスのホウタイ怪人は光平に「改造神(ゴッドサイボーグ)」と呼んでいたが、
果たしてどのような関係があるのであろうか…?
1727
○四ッ谷博士→シグフェルの戦闘能力と肉体構造を詳細に検査する。
○アイザック・ギルモア→シグフェルの戦闘能力と肉体構造を詳細に検査する。
○佐原正光→シグフェルの戦闘能力と肉体構造を詳細に検査する。
○ドクター・ウルシェード→シグフェルの戦闘能力と肉体構造を詳細に検査する。
○尾村豪→シグフェルの戦闘能力と肉体構造を詳細に検査する。
○牧村光平/シグフェル→ブレイバベースで詳しい検査を受ける。
○朝倉慎哉→牧村光平が
ブレイバーズに入隊したことに、まだ不満顔を示す。
○沢渡優香→牧村光平の
ブレイバーズ入隊の決断を尊重する。
○エルファ→シグフェルの戦闘能力をスキャンして分析する。
●アフマド・アルハザード→シグフェル=牧村光平が牧村陽一郎の息子と知り、日本に刺客を放つ。
●秘書N→ネロス帝国から届いたシグフェルの正体の情報を、アルハザードに報告。
●秘書R→ネロス帝国から届いたシグフェルの正体の情報を、アルハザードに報告。
最終更新:2020年12月03日 08:34