新暦76年 9月29日 第97管理外世界 日本国 東富士演習場
「気をつけーッ、礼!!」
ザッ、と一斉に自衛隊員達が敬礼し、管理局員達も敬礼をする。
「陸上自衛隊、ロメオ隊指揮官の森彰彦(もり あきひこ)一等陸佐です。よろしくお願いします」
「時空管理局、ホール対策特別部隊長、八神はやて二等陸佐です。こちらこそよろしくお願いします!」
そう仏頂面の森と笑顔のはやてが握手し、ここに管理局と自衛隊の合同作戦が開始された。
リリカル自衛隊1549 第4話 「協力?」
しばらく双方の紹介があり、その間管理局員と自衛隊員はお互いを観察していた。
双方とも相手をジロジロ見ることはしないが、チラチラと目を走らせて詳細に観察する。
それでは、彼らの心を覗いてみよう。
自衛隊員A:(子供が大人より多い武装組織って、倫理的にどうよ?)
自衛隊員B:(つーか何で二十歳で二等陸佐なんだ?森一佐はそろそろ50代なのに)
自衛隊員C:(うわあの子かわいい、てかかわいい子が多い。後で誰をナンパするか・・・?)
自衛隊員D:(あの赤い犬と青い犬、何か意味でもあんのか?つーか子供ばかりで大丈夫なのか?)
管理局員A:(おっさんばかりだな。ちゃんと動けんのか?)
管理局員B:(あの森っておっさん、50歳前でようやく一等陸佐かよ。出世コースに乗り遅れたんだな)
管理局員C:(質量兵器を持った奴らと合同作戦なんて・・・・・・)
管理局員D:(ま、せいぜい足を引っ張らないで欲しいな)
・・・とまあ、初っ端からお互いに良い印象を持てなかった合同部隊の面々だった。
「それでは早速、富士山麓のホールを見てもらいます。5分後にトラックが来ますので、管理局の方々はそれに乗ってください」
人口磁場シールド計画の主任で、今回の「オペレーション・ロメオ」にも参加する神崎怜(かんざき れい)一等陸尉の言葉で、管理局のメンバーはゾロゾロと駐車場に向けて歩き出した。
それを森は、何か気に食わない顔で見ていた。すかさず部隊先任陸曹の三國善友(みくに よしとも)陸曹長が、森に近づいて小声で話しかけた。
「何かご不満がありそうな顔ですね」
「・・・三國か。不満があるに決まっているだろう。いきなり訳の分からない集団がやって来て、しかもいきなり指揮権を寄越せなんて言われて不満が無い奴がいたら、そいつはとてつもないお人よしだ」
今回、管理局はホール対策を管理局主導で行おうとした。そのため、何年も前からタイムスリップの準備をしていた日本国政府に対し、「全次元世界に関わる事なので指揮権を譲渡しろ云々」と迫ったのだ。
もちろん日本政府は拒否し、結局自衛隊と管理局合同の作戦となったわけだ。
「政府の態度も気に入らん。話によると、ずっと前から管理局とやらの存在を知っていたそうじゃないか。それを知らせず土壇場で合同作戦を命ずるなんて、私達の間に協力体制も何も無いのにいきなりやれとは無茶苦茶だ」
「それ以外にも、色々不満がお有りで?」
三國の言葉で、森は管理局部隊の面々を眺めた。管理局メンバーは半分が10代、残りの半分も大半が20代という若さだ。地球だったら少年兵やら何やらと言われて批判を受けることは間違いない。
「子供を戦わせるというのが一番気に食わない。聞く所によると、管理局とやらは慢性的に人手不足で、局員の多くが子供だと聞いている。あの高町とかいう一等空尉だって、9歳の時に管理局に入ったって話だ。アフリカの少年兵より酷い」
「でも、彼らは全員優秀だって聞いてますよ」
「それでも・・・、私は子供が戦場に立つのは見たくない。いくら優秀でも、な」
森はそう言って、富士山麓のホールへ向かうトラックに歩いて行った。三國はその後ろ姿を見送り、そしてロメオ隊員達が管理局員達をジロジロ眺めているのに気づき、溜息を吐いて
「上手くやっていけるのかねえ・・・・・・」
と呟いた。
最終更新:2009年11月14日 23:13