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ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL Project nemo



第16話 夜明けの向こうに


以前、相対性理論の話を更生施設で聞いたことがある。わざわざミッドで有名な大学の偉い人を招いて行われたその授業は、受講した者のほとんどが理解出来ないほどに難解な代物であった。途中から教授の熱心な弁論が催眠音波になり、最後まで真面目に聞き取れたのは年長者の姉一人だけ。結局教授は思う存分自分の話が出来て満足したのか、一人にこやかに帰っていった。
あとで彼女は唯一の生存者である姉に聞いた。結局相対性理論って何?と。するとさすが年長者、取っておいたメモを元に簡潔明瞭な解説をしてくれた。
要するに、楽しい時間はすぐ過ぎるが辛い時間はやたら長く感じる。相対性理論とはそういうもの、らしい。
だからかな、と白い吐息を漏らしながら寒さに身を震わせ、彼女は時刻を確認する。汎用デバイスの表示するデジタル表示の数値、先ほど見た時とあまり変わっていない。後頭部で束ねた赤毛さえも、心なしかしなびたキノコのようにへたれている気がした。
傍らの相棒、女にしては短い同じ赤毛の少女がぶるぶる震えながら呟く。

「ウェンディ……その、寒くね?」
「何言ってんスかノーヴェ。寒いのはもはや分かりきっていたことッス」

きっぱりと、ウェンディと呼ばれたその少女は言い放つ。夜明け前の山岳地帯、防寒用装備をしっかりしてきたはずなのだが、山の冷気は覆いきれない顔や耳を狙って容赦なく襲い掛かってきた。機人と言えども人間、寒さには耐え難い訳である。
もっとも、ウェンディに関してはもはや諦めがついたらしい。薄暗い視界の中で木の影に立ち、しっかり正面を睨んでいる。機人共通の金色の瞳は、山と山の間にある小さな監視塔を捉えていた。

「あったかいんだろうなぁ、あそこは……」

不意に相棒、ノーヴェが同じく監視塔を睨みながら声を漏らす。機械の眼は同じ機人の砲撃手には及ばないものの、それなりの拡大能力を持っている。監視塔の一番上で、ストーブと思しき赤い熱源がチラついているのが見えた。
さっさと制圧してしまおう。相棒の言葉の外にはそんな意思がちらほらしていたし、付き合いの長いウェンディには彼女の考えることはだいたい分かる。

「でも、作戦じゃあそこを制圧するのは味方機が迫ってからッス。もうちょっと待たないと……」

それでも彼女はノーヴェの提案に乗らなかった。傍受した通信によれば、監視塔は定時連絡を行っている。抑えれば寒さはしのげるにしても、異常があったことはすぐ発覚してしまう。それでは任務を果たせない。

「わーってるよ、んなことは……?」

相棒も決して本気ではなかったのだろう。理解している旨を告げようとして、ノーヴェは口を閉じる。何かに気付いたような不自然な行動、ウェンディは怪訝な表情を浮かべ、すぐ彼女も気付く。聴覚に入る音が、脳に警鐘を送ってきた。
聞こえるか?と相棒からのアイコンタクト。もちろんッス、と頷き、金の瞳を空に向ける。未だ太陽に照らされない、薄暗い世界。AWACSの誘導もないと聞いていたが、本当だったのか。
機数の判断までは無理だが、はっきり聞こえる。ジェットエンジンの発する鋭角的な轟音。もう彼らは、近くに来ているはずだ。

「――近い。もう行った方がいいな」
「みたいッスね。さぁ、暖かいストーブを奪いに行くッスよ」

互いの意思を確認し合い、二人は跳躍、山を下り始めた。常人では追いつけない、それこそ機人の身体を持っているからこそのスピード。冷たい空気が頬を撫で、しかし駆け巡る血液は熱を帯び始めていた。
戦闘、開始。



操縦桿とラダーペダルを踏んで、愛機の進路を調整。薄暗い視界の中で機首が揺れる。右へ左へ、まるでダンスのように。
天使とダンスだぜ。勇気付けるように酸素マスクの内側で呟くも、どれほど効果があったのやら。F-15ACTIVEの巨大な主翼が山の斜面を引っかきそうになる度、上擦った悲鳴を上げたくなる。こんなダンスは二度と御免だ。
計器にセットしたカード状の相棒、クロスミラージュが主の緊張を感じ取ったのか、大丈夫ですかと聞いてくる。

「――大丈夫、平気」

額に浮かぶ汗を拭い、コクピットに座るティアナは強がった姿勢を見せた。それからもう一度呟く、天使とダンスだぜ。視覚強化の魔法を行使した肉眼がキャノピーの向こうの山々を捉え、少女はそれらに激突しないよう愛機を飛ばす。ただ飛ばすだけ、それなのに集中力がじりじりと削られていく。狭いところを飛ぶのが、ここまで厳しいものとは。高度を上げれば楽なものだが、それでは敵のレーダー波に掴まってしまう。
前を行く単発、F-2A、編隊長機。機体特性の差はあるだろうけども、条件は同じ。いや、もしかしたらもっと悪いかもしれない。こちらは視覚強化魔法で暗闇でもそれなりに見えるが、F-2のパイロットは魔力適性など持っていない。胴体下に抱えたFLIR(赤外線前方監視装置)が捉えた画像を頼りに飛んでいる。逆探知を防ぐため、レーダー、通信、電波を発するものは全て電源をカットしていた。
軽く操縦桿を引き、目前に迫っていた斜面の上を舐めるように飛ぶ。瞬きする間に数百メートル、ぶつかれば命はない。眼下で揺れる木々が、手を招いているように見えた。眼が良すぎるのも問題だ。
誰が好き好んで、戦闘機でこんなところを飛ぶだろうか。それでもここ、フォートノートンにはベルカ公国の保有する核弾頭が隠蔽されている。派手な電波ジャックを行い、ミッドの民を不安と怒りに駆り立てた彼らの切り札。逆を言えば、それさえ潰せば主導権はこちらに戻ってくると言うとのだ。
まだなの、とティアナは苛立ちを含み始めた眼でサブディスプレイを睨む。自身が補佐する執務官から託された調査結果、敵移送部隊の予想地点はもうすぐのはずなのだが。前を行くF-2、編隊長機の動きは相変わらず。

「あっ……」

山の間を越えた先に、何か見えた。木とは違う、明らかな人工物。いよいよかと考え、彼女は火器管制を担当するデバイスに告げようとした。マスターアームスイッチ、オン。獣が牙を剥き、攻撃の準備を整える。
――違う! 少女の瞳は、捉えた人工物が目標ではないことを明らかにしていた。監視塔、作りは粗末だが屋根の上に何本も立っているのは通信用アンテナだ。おそらくは敵のもの、放っておけば通報される。
酸素マスクの中で、ティアナは小さく舌打ちを打った。火器管制装置はもう起動してしまった。沈黙していたレーダーが眼を覚まし、メインディスプレイに自機が捉えた目標、監視塔が光点として浮かび上がる。さっさと通過するか監視を潰すかせねば、遅かれ早かれ見つかってしまうだろう。
操縦桿の引き金に指をかける。爆弾はもったいない、機関砲で充分。主の意図を察したクロスミラージュが手早く兵装選択、M61A1にセット。HUDの向こうに照準が現れ――それを遮るように、蒼い翼がぬっと前に出た。キャノピーの向こう、F-2のコクピットでパイロットが"待て"と首を振っている。

「発光信号?」

チカチカと、自分が木っ端微塵にしようとした監視塔の方から光が瞬く。不自然な点滅の繰り返し、何かのメッセージだろうか。テロリストに知り合いはいないのだが。
ティアナの言う通り、監視塔からの光は発光信号だった。クロスミラージュが手早く解析し、主に内容を解説。監視塔を制圧、幸運を祈る――制圧? いったい誰が。視覚強化の魔法をもう一段行使、塔の屋上を睨む。人影が二つ、こちらに向けて手を振っていた――ぶっ、と酸素マスクの中に吹き出しそうになった。見覚えのある影、戦闘機人の姉妹たちだ。一人は赤毛のショートカット、もう一人は同じく赤毛を後頭部に束ねていた。黄色中隊、更生施設を卒業した彼女らが特殊部隊を率いているとは聞いていたが、しかし。
ともかくも、監視塔は制圧された。定時連絡がないのを敵は不審に思うだろうが、時間は稼げるはずだ。
その時、編隊長のエンジンから赤いジェットの炎が伸びるのが見えた。どっと勢いよく加速、アフターバーナー点火。狭い山岳部の合間では危険極まりないが――くいくい、とF-2の主翼が揺れる。ついて来れるか、メビウス2?

「っ、馬鹿にして……」

むっと怒ったような表情を浮かべ、ティアナは負けじとエンジン・スロットルレバーを押し込む。恐怖はあるが、それ以上に持ち前の負けん気が強かった。
咆哮、F100エンジンの爆発的な加速力がF-15ACTIVEを前へと押し出す。山を抜け、二機はさらに奥深くへと突き進んでいった。



一方で、F-2のコクピット。バックミラーに映る二番機に時折視線を送りながら、メビウス1は前を睨む。アフターバーナーで加速した愛機は音速寸前にまで達し、キャノピーの向こうを流れる風景が吹っ飛んでいく。
監視塔が潰されているのはありがたかったが、誰の差し金だろう。オーリス准将はブリーフィングで何も言わなかった。八神あたりかな、と予測する。
高度は二〇〇フィートを割っている。先ほどから警告の意味を込めた電子音が鳴り響き、高度を上げるよう無機質な音声が促してくる。うるせぇよ、と計器に手を伸ばし、スイッチを切った。これで静かになるはずだ。
サブディスプレイに眼をやり、胴体下のFLIRが捉えた正面画像を確認。赤外線が捉えた映像の中で、山の間は途中で緩やかにカーブを描いていた。操縦桿を左に倒し、次いで引く。右主翼が軽やかに跳ね上がり、F-2は左旋回に入った。
ランスターは――バックミラーに眼をやる。メビウス2のF-15ACTIVE、離されることなく追従旋回――よし、大丈夫だな。
難なくカーブを抜けた先で、妙に開けた土地に出た。FLIRを確認、山の間を隔てるように流れる小川、その脇には道路がある。路上を走るのはトラック、周囲を囲むのは――

「メビウス2、無線封鎖解除! いたぞ!」
「!」

予想地点との誤差無し。あれが目標、核弾頭を搭載した移送部隊で間違いない。
通信機のスイッチを入れるなり、後方の僚機に向けて怒鳴る。ほとんど同時に、トラックの周囲を併走していたジープの荷台から白煙が上がった。SAM(対空ミサイル)だ。コクピット内に死神の笑い声、ミサイル警報が鳴り響く。
F-2は主翼を左右に振ってバンク、ティアナに散開の合図。二つのリボンは編隊を解き、同時に赤い炎の塊、フレアをばら撒いた。
ドッと、背中を蹴飛ばされたような衝撃。すかさずメビウス1はダメージチェックに入った。損傷無し、放たれたSAMはフレアに食いついたのだろう。眼下の目標、トラックは一目散に走ってひたすら逃げる。その向こうにあるのは――くそ、とリボン付きは吐き捨てる。奴ら、トンネルの中に逃げ込むつもりか。

「時間がない、突っ込むぞ」
「了解、前をお願いします」

短い意思疎通を終えて、二機は編隊を組みなおす。メビウス1のF-2は前に立ち、目標のトラック目掛けて突進する。
SAMを回避された周囲の護衛車両は、対空砲火を持って彼らの行く手を遮ろうとした。夜明け前の向こう、赤い火線が愛機の翼を掠め、黒々としたガン・スモークが視界を阻む。逃げ出したい衝動に駆られ、しかしリボン付きの眼はじっと逃げるトラックを追っていた。
マスターアームスイッチ、オン。兵装を選択、主翼下に積んできた五〇〇ポンド爆弾一二発。HUDの向こうに弾着予想地点が現れた。ラダーペダルを踏み込み照準調整、対空砲火の中を掻い潜りながらF-2は前に進む。
引き金に指をかける――メビウス1の脳裏に、今更な不安が過ぎった。トラックの荷台にあるであろう核弾頭、誘爆の危険はないだろうか――今更何言ってる。怯える思考をなぎ払い、リボン付きはさらに接近。ブリーフィングでは爆撃を受けたからと言って、核弾頭はそうそう誘爆するものではないとあった。今はそれを信じよう。
眼を凝らし、火器管制装置が算出した弾着予想地点を睨む。近距離で爆発した対空砲の弾丸に、集中力を殺がれる。黙ってろ、くそ。

「当たれよ――投下!」

引き金を引く。途端にふわっと機体が軽くなり、抱えていた爆弾が放り投げられたことに気付く。
エンジン・スロットルレバーを叩き込み、操縦桿を引く、急上昇。主翼の先端から大気を引き裂くように白い水蒸気の糸を引き、彼のF-2は上空へと逃れる。
ドンッと、背後で強い衝撃。すぐさまメビウス1は振り返り、眼下を睨む。一斉に放たれた五〇〇ポンド爆弾の雨は、木も道路も木っ端微塵に粉砕したはずなのだが。肉眼では見えない、機体を反転させて大地をFLIRで観測する。

「くそ、外れた」

吹き飛ばされて横転した護衛のジープ、夜明け前の薄暗い空に立ち上る黒煙。その最中に蠢く車両が一台ある――目標であるはずのトラックだ。奇跡的に爆撃を逃れた彼らは、必死の勢いで目の前にあるトンネルに逃げ込もうとしている。
だったら機関砲で――ウエポンシステムに手を伸ばそうとしたその時、リボン付きの動きが止まる。護衛車両のいなくなったトラックに向けて、一緒に突進したはずのF-15ACTIVEが突っ込んでいくのが見えた。
もはや邪魔する者はいない。リボンを付けた荒鷲はゆっくり――それでも、狙われるトラックにとっては恐ろしく速い――飛んで、目標上空に差し掛かった途端、翼の下に抱えていた五〇〇ポンド爆弾を落とす。しっかり照準をつけられたトラックに逃れる術はなく、周囲に着弾した爆弾、それが生み出した炎と衝撃が彼らに容赦なく襲い掛かった。爆炎と黒煙が周囲を支配し、F-15ACTIVEが編隊長の元に戻ってくる。

「目標撃破。すみません、メビウス1。利用させてもらいました」

傍らに舞い戻ってきた荒鷲からの通信は、しかしちっとも悪びれた様子がない。一瞬怪訝な表情を浮かべ、あっとメビウス1は気付く。

「お前、俺が護衛を一掃するの待ってやがったな」
「あのまま突っ込んでも、対空砲火に邪魔されて照準つけられないですからね」

いけしゃあしゃあと。F-15ACTIVEのコクピットで、パイロットを務める少女が気分良さそうにしていた。この野朗、と二番機の行いにリボン付きは怒ってみせるも、顔は苦笑い。言うようになったじゃないか、と付け加える。
黒煙が晴れた頃に、改めて戦果を確認。トラックはひっくり返り、もう動く様子もない。核弾頭の移送は失敗に終わった。あとは地上部隊に任せてしまえ。

「よし、任務達成だ。帰投するぞ、メビウス2」
「了解」

身軽になった二機は主翼を翻し、帰路に着く。



「派手にやったな」

立ち上る黒煙、鼻を突く焼け焦げた臭い。それらを掻き分け、山から下りてきた彼女はぽつりと呟く。隻眼の瞳に映るのはひっくり返ったり粉砕されたりしているジープ。その奥に、目標と思しき横転したトラックがあった。これだけ派手にやっておいて、人間の死体は一つもない。ただ、足元に見覚えのある残骸が転がっていた。

「運転手はガジェット、か……なんでまた」

背後をついて来る砲撃手、妹のディエチがかつての仲間の骸を手にとって呟いた。ジープの運転席でハンドルを握っていたのは人間ではなく、彼らガジェットだった。移送ならガジェットのままで運べばいいと言うのに。

「目立つのを恐れたんじゃないか? あるいは、そういう実験もやりたかったのか……」
「実験? チンク姉、それって」

妹の言わんとすることを、彼女――新生黄色中隊隊長、チンクは理解していた。もっとも、あえて口には出さない。名前を出すのも憚るのだ、あの自分たちを作った狂人は。
残骸を踏み越え、目標に到着。上下が逆さまになったトラックの荷台に入る前に、持参したガイガーカウンターを当てる。反応あり、ガリガリと警告するように機械音が鳴って彼女は確信する。間違いなく目的の核弾頭だ。彼女らの任務は突入し来る戦闘機の援護と、爆撃後の核弾頭の回収であった。

「よし、目標を確保した。監視塔のウェンディたちに連絡しよう」
「了解……って、え、何?」

任務達成の旨を二手に分かれた姉妹たちに連絡しようとした矢先、念話で通信が入った。相手は他ならぬウェンディ、ノーヴェ。

<<聞こえるッスか、二人とも!>>
<<……大声出すな、音量設定を落とせ>>
<<それどころじゃないんだ!>>

脳内にキンキン響く妹たちの声は、何かしらの緊迫感を持っていた。チンクはディエチを顔を見合わせ、互いに確認し合う。不味い事が起きている、それも相当高いレベルで。

<<話せ、何があった>>
<<戦闘機ッスよ! 山の中から大量の戦闘機が……あぁ、なんかのカーニバルみたい>>

戦闘機? しかし機人の二人は首を傾げる。山の斜面は木々が立ち並び、とても戦闘機が離着陸出来るような場所は無い。
――轟音。それは、まるで彼女らの思考を否定するかのように現れた。
木々の合間を縫うように、赤いジェットの炎が姿を見せる。耳をつんざく排気音、紛れもない鋼鉄の翼。ウェンディたちの方だけではなく、こちらにも彼らはじっと息を潜めていたと言うのか。
現れた無数の鳥の名は、F-35BライトニングⅡ。高度なステルス性と電子戦能力を持ちながら、垂直離着陸が可能な新鋭VTOL戦闘機。数えるのも嫌になるくらいの数が、チンクとディエチを取り囲む。

「チンク姉、これは、ちょっと……」
「まずいかも、だな」

じわじわと、脳裏の奥から不愉快な感覚が迫ってくる。浮かぶ言葉はただ一つ、絶望の二文字。
それでも決して屈さないのは、仮にも"黄色"の名を受け継いだが故。チンクは懐から愛用ナイフのスティンガーを持ち出し、ディエチは大砲イノーメスカノンを構える。戦闘態勢、最後まで戦いを貫く姿勢。
取り囲む鋼鉄の翼たちは、と言うと――一定の高度まで上昇。真下に向けていたノズルを水平に戻し、主翼を翻す。全機反転、一斉離脱。
沈黙。しばしの沈黙。必死に状況の理解に努めるが、機人の思考はぐるぐる回るだけで回答を見出せない。

「……ディエチ」
「分かんない。逃げたのかな」

妹に助けを求めてみたが、即答で返された。逃げた? 馬鹿な、戦力差では圧倒的だった。ただで負けるつもりはないが、いずれは押し込まれるのは眼に見えていたはず。それなのに、何故だ。何故あの無数のF-35は逃げ出した、どこに行った。
答えを彼女が得ることはない。彼らの獲物は、最初から戦闘機人たちではなかったのだ。
狙うは敵機、二つのリボン。








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最終更新:2010年01月11日 11:05