ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL
第22話 クラナガン奪回
誰かが言っていた。エースには、三つの種類があると。
強さを求める奴、プライドに生きる奴、戦況を読める奴。
あたしはどれなんだろう、とティアナは思う。自分にエースと名乗る資格があれば、と言う前提だが。
状況ははっきり言って悪い。スバルと分断された今の彼女は結界が施されたビルの中で、ナンバーズを一度に三人相手している。
魔力の残りもあと僅か、これまで何とか回避を続けていた身体も、疲労で言うことを聞かなくなっている。
――それでも、諦めない。
不屈の闘志を胸に秘めて、ティアナは立ち上がる。かくれんぼはお終いだ。彼ならきっと、笑ってこう言うから。
「ビビッた後に何するかが、エースか否かの分かれ道……!」
飛び出し、クロスミラージュを構える。最初に出くわしたのは、先ほどから圧倒的な破壊力を見せるノーヴェだった。
「そこか!」
ジェットエッジのノズルが吼えて、ノーヴェは突進。ティアナはそれらにありったけの魔力弾を放って迎撃する。
並みの者なら恐れをなして飛び込むのをためらう魔力弾の弾幕だったが、ノーヴェは右手のガンナックルで直撃しそうなものを優先的になぎ払い
構わず突撃を敢行。
「大した火力も無いくせにぃ!」
ガンナックルを振りかぶり、ノーヴェはティアナの懐深くに潜り込むと、きつい右ストレートを彼女の腹部に叩き込む。
力任せに叩きつけられた金属の手甲によって、ティアナの身体は吹き飛ばされるはずだった。だが、ノーヴェの腕は空を切った。同時に消滅
するティアナの身体。
「ノーヴェ、下がるッス!」
後方で援護のポジションについていたウェンディからの一声で、ノーヴェはバックステップ。直後、彼女が立っていた空間に叩き込まれる魔力
弾。ティアナが幻術を囮に使ったのだ。
外した、とティアナは舌打ちし、すぐにその場を移動。もたもたしていると位置を特定される。案の定、隠れ蓑に使っていた瓦礫がウェンディ
の放ったエリアルキャノンで壁ごと粉砕された。
あれを食らったら、火傷じゃ済まないわね――。
生きるか死ぬかの瀬戸際なのに、思考はどこか冷静だった。ビルの中を走り抜け、射撃に最適な位置を探す。
「!」
視線を巡らせていると、視界の片隅に赤く光る刃がちらついた。反射的にティアナはクロスミラージュをダガーモードに切り替えて、飛び込ん
できた刃を受け止める。間一髪、刃は彼女の首を切りつけることなく停止した。
襲撃をかけて来たのはディード、双剣ツインブレイズの使い手である。彼女は自分の攻撃が受け止められたことに僅かな驚きを見せ、もう一振
りのツインブレイズを振りかざす。
二刀流!? 冗談じゃない――。
高速で振り抜かれる赤い刃。ティアナはそれをクロスミラージュで弾く、弾く、弾く。今にも押し切られそうなのは目に見えていた。
現に致命傷になる部分への斬撃は防げているが、腕には何本ものかすり傷が走っている。
その時、ティアナはふっと何かを思いついた。危険な賭けだが、博打も成功すれば作戦だ、躊躇する余裕は無い。
「はあああ!」
ディードはとどめとばかりに跳躍、渾身の力を込めてツインブレイズを一気に振り下ろす。だがティアナにとって、それはチャンスのほかなら
なかった。
振り下ろされた刃をクロスミラージュで受け止め――このまま鍔競り合いをやったら確実に負けると思ったその瞬間、水平に払い流す。
いきなり抵抗が無くなったツインブレイズは重力に引かれ降下、ティアナの肩を掠める。たまらず彼女は表情を歪めたが、上から真っ二つにさ
れるよりはマシだ。
思いもよらぬ受け流しに、ディードは驚愕の表情。その横顔に、ティアナは使っていなかった左手のクロスミラージュを、ガンモードで突きつ
ける。
今度はディードの表情が歪む。これでジ・エンドとティアナが引き金を引こうとしたその瞬間――側面から、大きな邪魔が入った。
「どおおおりゃあああ!」
「!?」
よりにもよってこのタイミングで、ノーヴェが高速で突っ込んできた。予想外の攻撃にティアナは防御もままならず、ノーヴェの強烈な正拳を
もろに食らった。衝撃と共に視界が吹っ飛び、彼女はビルの無機質な床へと叩きつけられる。
痛い。整った顔立ちも細い腕もしなやかな足も、全身が苦痛を訴えてきた。無視して立ち上がろうとして、ティアナは脇腹に激痛を感じてその
場に膝を落とす。肋骨をやられたかもしれない。
「……正直、一人でここまでやるとは思ってもみなかった」
複数の足音が近付いて来て、彼女ははっと視線を上げる。ノーヴェとディード、それに続くウェンディが、ティアナを取り囲むようにしてやっ
て来ていた。
クロスミラージュを構えようとする――だが、ティアナはそこでようやく気付いた。腕の中にあったはずの、クロスミラージュが無い。
慌てて視線を巡らせると、少し離れた位置にクロスミラージュが転がっていた。ノーヴェに吹き飛ばされた時に、手放してしまったのだ。
――なんてこと、デバイスを手放すなんて。
攻撃手段が無くなってしまった。今の彼女には、もはやなす術が無い。その間にも、ノーヴェたちはティアナに近付いてくる。足音一つ一つが
ティアナには怖くてたまらなかった。
「こいつは捕獲対象じゃないから、殺しちゃっていいんスよね?」
ウェンディの言葉が、ティアナの恐怖心をさらに煽る。このままでは死ぬ、殺される。
呼吸の間隔が短くなってきた。どうすればいいのか分からない、誰かに助けてほしかった。
脳裏に浮かぶのは、先に逝ってしまった兄の姿。自分も、彼のところに行ってしまうのだろうか。
――馬鹿野郎、諦めるんじゃない!
その時、頭の中で聞き覚えのある声が走った。脳裏に浮かぶ兄が怒ったような表情を見せ、誰か別の人と被る。
――何やってんだよ。お前さんの力は、そんなもんか?
兄に被った別の誰かは、笑ってそう言った。
誰なんだろうと記憶を探っていると、彼が着ているフライトジャケットのリボンのマークが目についた。
――安心しろ、"ティアナ"。お前なら大丈夫だ。"リボン付き"が保障する。
出撃前に、彼から言われた言葉が、また繰り返された。その言葉が引き金となり、死への恐怖で縮こまっていたティアナの心に火を点ける。
自分は何をやっているのだ。まだ動ける、まだ戦える。武器を手放してしまったなら拾いに行けばいい。何故こんな単純なことが分からない。
その時、ティアナは気付いた。視界に映るビルの天井、機能を失った大型のライトが、際どい形で空中にぶら下がっている。石ころの一つでも
当てれば、外れて地面に落ちてくるかもしれない。
ノーヴェたちに悟られないよう、手近にあったコンクリートの塊を掴む。チャンスは一度、失敗したら次は無い。
「こいつで終わりだ……!」
ノーヴェがガンナックルを、ディードがツインブレイズを、ウェンディがライディングボードを構える。彼女たちの頭上には、ティアナの狙う
ライトがある。
――今!
勇気を振り絞り、ティアナはコンクリートの塊を投げつけた。ノーヴェたちは一瞬何をするのかと身構えたが、彼女の狙いには気付かなかった。
宙に舞うコンクリートの塊は狙い通り、ライトに当たった。衝撃で外れかかっていたそれは完全に天井から切り離され、落下。床に叩きつけら
れて、破片が砕け散る。たまらず、ノーヴェたちは舞い散る破片から眼を守るべく瞳を閉じた。
その一瞬を、ティアナは見逃さなかった。残った体力を振り絞り、クロスミラージュの転がる床まで疾走。滑り込んでそれを手にし、寝転がっ
た体勢のまま、構える。
「あ……!」
「こいつ!」
ようやくティアナの狙いに気付いたノーヴェたちだったが、すでにティアナはクロスミラージュの照準を合わせていた。
引き金を引き、魔力弾を二発だけ撃つ。放たれたそれはノーヴェとディードの眉間に直撃し、彼女たちは意識を失った。非殺傷設定だから、死
にはしないだろ。
「ノーヴェ、ディード! こんのぉ!」
いきなり撃ち倒された二人を見て、ウェンディは仇討ちとばかりにライディングボードを構える。その寸前に、ティアナは立ち上がり、クロス
ミラージュをダガーモードにして思い切り肉薄する。
右手のクロスミラージュで、ウェンディを切りつける。咄嗟にウェンディはそれをライディングボードでガードしようとするが、大きくて重い
それを動かすには、若干のタイムラグがあった。
不十分な形でダガーモードの魔力刃を受け止めたウェンディだったが、ライディングボードを弾き上げられてしまう。はっと視線を正面に移す
と、ガンモードに切り替わったクロスミラージュの銃口がそこにあった。
「終わりよ」
躊躇う様子など一切見せず、ティアナは引き金を引く。ウェンディはほぼ零距離で魔力弾を浴び、「あっ」と短い悲鳴を上げて倒れた。
ティアナはそれを見届けると、僅かな逡巡の後、銃口を下ろす。
「……残念、五機落とさないとエースとは呼べないのよね」
気絶した三人の戦闘機人を眺めて、彼女はふぅ、と一息ついた。
一方、クラナガン市街地奥深くまで進撃した陸士B部隊のベルツとその部下たちだったが、それまであまり姿を見せなかったガジェットⅢ型の
大群が突然現れ、彼らは包囲されていた。
ベルツは部下の一人と瓦礫に身を隠しつつ、唯一残った武器である拳銃で抵抗していたが、装甲の厚いⅢ型の前には拳銃など焼け石に水だった。
それでも銃撃を続けるベルツだったが、拳銃の弾が底を突いてしまった。予備のマガジンに交換しようと腰に引っ掛けていた雑嚢に手を突っ込
むが、中身は空だった。今のが最後らしい。
「……ソープ、弾をくれ!」
サブマシンガンで戦う部下に声をかけると、彼は自分の腰の雑嚢からマガジンを取り出し、ベルツに手渡す。だが、その数は二つとあまりに少
ない。苦々しげな表情を浮かべていると、部下が口を開く。
「それしかないんです、俺もこいつの弾が切れたらもうカンバンです!」
サブマシンガンのマガジンを交換しつつ、部下もまた苦しげな表情を浮かべていた。
これは、もう駄目かもしれんな――。
そんな思考が、ベルツの脳裏をちらつく。ユージア大陸での撤退時も悲惨極まりない状況に追い込まれたが、あの時は何とか友軍の救出部隊が
間に合った。だが、今回はそれも望めない。増援を要請したが、返事がどこからも帰って来ないのである。
「はい!? 何か言いましたか!?」
そんなベルツの心の呟きを察してか、部下が銃撃をやめることなく彼に声をかけてきた。直後、Ⅲ型のレーザーが飛んできて、防御陣地の代わ
りにしていた瓦礫の一部を吹き飛ばす。一瞬身を屈めて、ベルツは返答をする。
「何でもない。ソープ、あの世でまた会おう!」
「了解! あぁ、死ぬ前に一回、駅前の新しい居酒屋に行ってみたかった……!」
死を覚悟した彼らは瓦礫を飛び出そうとする。どうせ死ぬなら、最後まで足掻くつもりだった。
瓦礫から身を乗り出したベルツたちを確認したⅢ型の群れが、一斉に攻撃態勢に入る。
その瞬間、Ⅲ型の群れの後方で一際大きな爆発があがった。何だと思って視線をやると、鉢巻きを巻いたショートカットの少女が、右手のリボ
ルバーナックルを振り回し、雄叫びを上げていた。
「うおおおおお!!」
少女――スバルは、手当たり次第にⅢ型を殴り、無反動砲でもないと撃ち抜けないはずのその装甲を突き破り、粉砕していく。
眼にも止まらぬ速さ、とはきっとこのことだろうとベルツは頭の片隅で考えた。取り囲まれているはずなのに、スバルはⅢ型のレーザーを物と
もせず、二本のアームによる格闘攻撃を払いのけ、次から次へとⅢ型を撃破していった。
「……はぁ、間に合った。お待たせしました、機動六課所属、スバル・ナカジマ二等陸士です!」
一通りのガジェットⅢ型を撃破した彼女は、呆然と戦闘の行方を見守っていたベルツたちに近寄ってきた。どうやら彼女が増援らしい。
「ご苦労。B部隊指揮官、レオナード・ベルツ二尉だ。こっちはソープ陸曹……助かったよ」
敬礼を交わし、ベルツは笑みを浮かべた。たった一人の増援だが、ガジェットⅢ型を軽々と蹴散らすこの実力は、なかなか頼りになる。
「いえ、そんな――戦況は、どうなってるんです?」
感謝されたことで僅かに頬を緩めたスバルだったが、ここはまだ戦場だ。各地に散らばったベルツの部下や他の部隊の陸士たちを束ねる必要が
あった。すぐに表情を真剣なものに戻し、ベルツに問う。
「ここに至るまでの市街地のガジェットは全て片付けたが、部隊が散り散りになっちまってる。航空支援も期待できないからな、俺たちが彼ら
を助けて行くしかあるまい。悪いが、援護を頼めるか?」
「はい、任せてください!」
バシッとリボルバーナックルを叩き、スバルは頷いた。
ベルツはそんなスバルを見て、どこかで見たことがあるなと考えていたら確か以前救出した一〇八部隊のギンガ陸曹と同じ装備であることに気
付いた。姓も同じだから、きっと妹だろう。
――姉に代わって、妹が恩返しにきてくれたか。
ふっとベルツは感慨深いものを感じて笑みを浮かべ、彼女と行動を共にすることにした。
「――ぶち抜けぇええええええええ!!」
間違いなく、最後の力を振り絞った、ヴィータのグラーフアイゼンによる一撃。
メビウス1の援護の下、"ゆりかご"艦内に突入した彼女は全身傷だらけになりながらもガジェットたちの防衛網を突破。動力炉に到達し、手持
ちのカートリッジ全てを投入して破壊を試みていた。
「うおおおおおおおお!!」
すでに何度も何度も、自分が出しうる最大の一撃をこの動力炉に叩き込んだ。だと言うのに、この禍々しいほど妖しく光る動力炉は、壊れる様
子を見せない。
――だからって、諦められるか!
動力炉を包む防護フィールドとの激しい鍔競り合いの最中、ヴィータは思考を巡らせる。
こいつをぶっ壊さなきゃ、はやてのことも、なのはのことも守れない。"ゆりかご"まで護衛してくれたメビウス1にだって、申し訳ない。だか
ら、だから壊れろ、砕けろ、ぶち抜け!
そんな彼女の必死の思いは、力になった。肉体的にはとっくに限界のはずなのに、グラーフアイゼンを叩きつけられた動力炉には、亀裂が走り
出している。あと一押しで、全てが砕ける。
――だが、ここに来て彼女の相棒の方が、限界を超えてしまった。グラーフアイゼンはついに防護フィールドを打ち破り、動力炉本体に到達し
たその瞬間、バラバラに砕け散ってしまった。
「……!!」
身体から、不意に力が抜けてしまった。グラーフアイゼンと同じく、自分自身ももう戦えないほどにまで、消耗してしまっていた。
ダメ、だ――絶望が、彼女の脳裏を支配していく。もはや動力炉を壊すことは、叶わない。あとは固い"ゆりかご"の床に叩きつけられるのを
待つばかりだ。
「はやて、みんな……ごめん」
そうなるはず、だった。ところが、彼女が次に感じた感触は、思いのほか柔らかく、暖かいものだった。
何も考えられないぼんやりした頭を動かすと、そこには騎士甲冑を着た主、はやての姿が。髪がいつもの茶髪ではないのは、リインフォースと
ユニゾンしているからだろう。
「あ……はやて……リインも?」
「はいです……」
「――謝ることなんか、あらへんよ」
優しく微笑んで見せるはやてとリインフォースは、視線を動力炉に移す。釣られてヴィータも視線を動かし、我が目を疑った。
「鉄槌の騎士ヴィータと、鉄の伯爵グラーフアイゼンがこんなになるまで頑張って……壊せんものなんか、あらへんよ」
ピキリ、と動力炉に入っていた小さな亀裂が広がっていく。そして、先ほどまでの頑丈さが嘘のように、動力炉はバラバラになった。
これでヴィータの任務は、完了だった。
動力炉が破壊されたことで、思わぬ効果が生み出された。"ゆりかご"から発信されていたECMが、大きく弱まったのだ。
「……! レーダー、ほぼ回復! 各機、中距離ミサイルの使用を許可する!」
無人戦闘機とのドックファイトを繰り広げていたが、絶対的な数の差により膠着状態だった地上本部戦闘機隊に対し、空中管制機ゴーストアイ
はただちに強力な中距離空対空ミサイルの使用許可を出す。
「こちらアヴァランチ、了解! おい、頼む」
「合点承知」
F/A-18Fを駆るアヴァランチはすぐさま後席にウエポン・システムを操作させ、使用する兵装でAIM-120を選択する。
レーダー上に映る敵機に手当たり次第にロックオン、同時攻撃できる数としては限界な四機の敵機に向けて、アヴァランチはAIM-120を放つ。
「今までのお返しだ、遠慮はいらねぇから全部食っていけ――アヴァランチ、フォックス3!」
ミサイル発射スイッチを連打。発射されたAIM-120はロックオンした各々の目標に向かって突っ込み、爆発。四機同時撃墜と言う快挙を果たす。
「いやっほう、いい感じだ、全弾命中!」
「これでイーブン……いや、もうこっちのもんだ!」
後席が歓声を上げ、更なる獲物を求めてアヴァランチは操縦桿を捻り、機首を翻す。その重量ゆえ加速力は鈍いF/A-18Fだが、ミサイルの搭載量
は半端ない。主翼下に抱えるAIM-120は、まだまだあった。敵機を蹴散らすにはもってこいだ。
「アヴァランチに遅れるな、各機続け!」
「天使とダンスだぜぃ!」
味方も奮起し、逃げ惑う敵機Su-35を追い散らす。制空戦闘の情勢は、すでに決まりつつあった。
同時に制空戦で勝利がほぼ確定したことで、一部の戦闘機隊は低空に下り、地上で戦闘中の陸士及び近接航空支援の空戦魔導師の援護に向かう
ことになった。ウィンドホバーの駆るF-16Cもまた、その中の一機だ。
「陸士部隊、敵の位置を知らせろ。航空支援を行う!」
「なんだって? ありがてぇな。ポイント三-三-六にガジェットが集結中だ、叩いてくれ!」
「了解!」
ウィンドホバーはレーダーで陸士から送られてきた座標を下に機体を降下させる。市街地の中、小さな公園にガジェットⅠ型とⅢ型が集まって
いるのが見えた。これに間違いない。
「俺たちの街によくも……高くつくぜ、こいつは」
F-16Cのコクピットからガジェットたちを睨みつけ、ウィンドホバーはウエポン・システムを操作して機関砲を選択。本来なら対地ミサイルで
も叩き込んでやりたい気分だが、空戦の最中を抜け出してきたため、あいにく対地攻撃可能な装備は機関砲のみだった。
「ウィンドホバー、ガンアタックを仕掛ける……そぉら、食らえ」
地面に衝突しないよう注意しながら、ウィンドホバーは操縦桿とラダーペダルを巧みに操り、照準を微調整。全弾当てるつもりで、引き金を引
いた。
ミサイルには及ばないが、毎分六○○○発もの発射速度を誇る二〇ミリ機関砲の威力は、対地でも恐ろしいものがある。薄い上面装甲を蜂の巣
にされたガジェットたちはボロ雑巾のように弄ばれ、爆発していった。
「こちらウィンドホバー、攻撃終了。どうだ?」
「助かった、いい仕事だぜ。よし、前進再開!」
地上に確認を取ると、陸士の威勢のいい声が返ってきた。航空支援で百人力を得た陸士たちはさらに前進し、市街中央に接近しつつあった。
戦況は、すでに管理局側に傾いていた。召喚獣もエリオとキャロの二人によって鎮圧され、市街に展開していたナンバーズも全員が取り押さえら
れていた。陸士部隊は一度はバラバラになったが再編成され、進撃。市街地のガジェットを次々と制圧していく。
クラナガンの完全奪回まで、あと僅か。残る脅威は、"ゆりかご"のみ。
最終更新:2009年02月21日 19:56