Call of Lyrical 4
第2話 予期せぬ成功/ブラックアウト
今時の人工衛星からの監視と言うのは、案外馬鹿に出来ないものがある。
民間に出回っている衛星写真でさえ、地上に何が映っているのか判別することが出来る。だから、軍用の人工衛星にしてみれば、地上にいる特定の車を一台発見することなど、然るべき情報さえあれば、さほど難しいことではなかった。
「目標を発見しました」
「追跡を続けろ」
今回も、彼らは目標を発見することに成功した。場所は中東、石油輸出で莫大な富を築き上げていた国。
もっとも、今は事情が違うようだ。その国のあらゆるところでは虐殺、強奪が行われ、つい昨日まで平和だった土地は、黒煙と銃声、悲鳴と怒号で埋もれている。
しかし、地下の司令部でモニターとコンソールを眺める彼らには何も出来ない。今はじっと、目標を追跡することだけが、彼らに与えられた任務だった。
中東 某国
彼に罪はない。あるとすれば、クーデターを事前に察知することが出来なかった、情報収集の甘さぐらいだろう。それすらも、軍部を掌握されているとなれば、まったく意味を成さなくなる。
両腕を屈強そうな兵士たちにがっしりと捕まれた彼に、抵抗する力はない。ずるずると引きずられる形で、彼は用意されていた車の後部座席に放り込まれた。
それでも、放り込まれた車内で彼は果敢に起き上がり、自分を捕らえていた兵士を睨もうとした。かつてこの国の繁栄を国民に約束した、大統領として出来る精一杯の抵抗。
だが起き上がるなり、兵士の持っていたAK-47の銃床が顔面に叩きつけられた。初めから、あの兵士はこうなることを予測していたのかもしれない。
突発的な激痛に苦しんでいる間に、彼を乗せた車は出発を始めた。
どうにか身体を起こすと、短機関銃のUZIを持ったジャージの男が、助手席からこちらを睨んでいる。妙なことをすれば殺す、ジャージの男はそう言いたげな様子だった。
車がどこに行くのか、彼はだいたい予測できていた。だが、それよりもクーデターで乗っ取られたこの国の国民の方が、気になって仕方ない。どうか、無事であって欲しい。
――しかし、現実はあまりにも残酷だった。車が道を行くその先々で、彼は衝撃的な光景を目にする。
通りがかった市場では、市民たちが銃を持った兵士たちに追い立てられていた。路地では抵抗した市民の一団が無理やり押さえつけられ、兵士たちから一方的な暴行を受けていた。
沿岸の道路に出ると、何人もの市民たちが壁に並べられていた。必死に手を上げたり声を張り上げて命乞いをしているようだが、指揮官の命令で一斉に放たれたAK-47の銃弾は、彼らの命を無造作に砕いていく。
なんてことだ、と彼は思った。国民を守るはずの軍隊が、国民を虐げている。やはり、あの男に地位と権力を渡したのは失敗だったのだ。
脳裏に広がるのは絶望、そして国民への謝罪の言葉――だが、聞き入れてくれる国民は果たしているのだろうか。きっと自分は、クーデターの抑圧に失敗し、多くの犠牲を招いた大統領として記憶されるに違いない。
――車が止まり、待機していた兵士たちが後部座席のドアを開け、彼を引っ張り出した。そうして、地面に横たわる彼の頭に向かって、兵士は足を振り下ろす。
途端に、意識が飛んだ。真っ暗になっていく視界の中で、彼の脳裏にはこのクーデターの首謀者の演説だけが、いつまでも響き渡っていた。
「まさに今日、我々は一つの国家として立ち上がるが、なおも幾多もの裏切りに直面している!」
違う。裏切ったのは、お前の方だ。
「我々は、この男こそがこの偉大なる国家に、繁栄の新時代をもたらしてくれると信じていた。しかしこの男は、革命以前と同様、私心の赴くがままに、陰で西側勢力と結託していた!」
違う。荒れ果てた経済を立て直すためには、どうしても西側諸国と交流せねばならなかったのだ。間違っても、私のエゴではない。
「結託は隷属の始まりである! 我々は決して隷属しない! 我々の真の力を示す時がきた。奴らは我らの決意を見くびっている! 奴らなど微塵も恐れていないことを教えてやろう!」
やめろ。あの国を怒らせるんじゃない。腐っても世界の警察官だ。我々の国力では太刀打ちできない。
「我々は一人の人間として、我々の同胞を、外敵による抑圧と言う名の隷属から解き放つのだ!」
やめろ。誰がそんなことを望んだ。多くの国民はただ、平和に暮らせればそれでいいのだ。そんなことを望んでいるのは軍人たちだけだ。
「我らが兵士たちは強く、我らの志は正義に基づいている。私が語る今この時も、我らが兵士は目的に辿り着かんとしている」
違う。国民を虐げた軍事政権が、何を持って正義を語るのか。
「それによって、我々はかつての偉大なる国家の独立をこの手に取り戻すことが出来るのだ。我々の聖戦は、始まっている」
やめろ。過去を振り返っても、あんな時代はもう戻ってこない。何百年の前の話だ。それを聖戦などと――。
そこまで考えて、彼はようやく意識を取り戻した。目を覚ました時、眼前にあったのは、知らない男の顔。
――誰だこいつは。誰だ。
記憶を掘り起こすが、名前が浮かんでこない。男は左腕が無かったが、眼光だけは異様に鋭く、只者ではないことだけが感じ取れた。
そうしているうちに、彼はどこかの広場に運ばれ、あらかじめ用意されていた十字架に叩きつけられ、兵士たちに縛られた。記憶が正しければ、ここは過去に罪人を処刑する場所だったはずだ。
処刑。その言葉が脳裏をよぎった時、彼ははっとなった。視線を動かすと、テレビカメラが自分の方に向けられていた。どうやら、処刑の現場を世界に公開でもするらしい。
「奴らが我々の郷土を荒らすように、奴らの国土こそ荒れ果てさせるのだ」
先ほどから続く演説がようやく終わり、彼の視界に軍服を着て赤いベレー帽を被った男が入ってきた――アル・アサド。このクーデターの首謀者であり、今のこの国のトップ。
アル・アサドは何故だか先ほどの、左腕の無い眼光の鋭い男と一言二言ほど会話を交わし、差し出された拳銃を受け取った。
「これが、その始まりだ」
テレビカメラに向かって、アル・アサドが呟くように言った。大型拳銃、デザートイーグルを持った彼は、いやにゆっくりとした足取りで近づいてくる。
――そうか、そういうことか。
彼はそこでようやく、アル・アサドとこの眼光の鋭い男が協力関係にあったことに気付く。事前に察知できなかったとはいえ、アル・アサドの行動があまりにも早過ぎる。その理由は、この協力者のおかげだったのだ。
目前にまで迫ってきたアル・アサドはこちらを見てにやりと笑う。まるで、予期せぬ成功が得られた少年のように瞳を輝かせるその様は、とてもクーデターを引き起こした人物には見えなかった。
アル・アサドはデザートイーグルの初弾を手動で装填。引き金に指をかけた。
次の瞬間、響き渡るのは一発の銃声。耳にそれが入る頃には、彼の意識は至近距離で放たれた銃弾によって、永遠に闇に閉ざされてしまっていた。
SIDE SAS
一日目 時刻 2230
イギリス海軍空母「アーク・ロイヤル」
ジョン・"ソープ"・マクダヴィッシュ軍曹
酷い顔だな、とソープは洗面台の鏡に映る自分の顔を見て思う。
ベーリング海峡での任務を終えて、ヘリの母艦になっていたこの空母に戻り、五時間ほど仮眠を取ったが、顔色は優れない。
体調には問題ないが、心の奥で引っかかるものがあった。それが、ソープの顔色を悪くさせていたのである。
とりあえず水で顔を洗い流し、タオルで顔面を拭くと、いくらかマシになったようだ。それでも、胸のうちにもやがかかったようなこの気分だけは変わらない。
「別人――いや、違うだろうな」
目を瞑ると、記憶の奥底にあったつい先ほどの出来事が蘇ってくる。
あの時――偽装したロシアの超国家主義者たちの貨物船を襲撃し、核物質と思しき積荷を強奪しようとした彼らSASは、任務の途中に突如襲来した国籍不明の戦闘機の攻撃で船ごと沈められそうにな
っていた。命からがら船倉から甲板に出た彼らは迎えに来たヘリに飛び移り、どうにか生き延びた。
だが、問題が起きた。ソープがヘリに飛び乗ろうとした瞬間、彼は背後に何者かの視線を感じた。
敵かもしれないと考え、咄嗟に銃口を突きつけた。だが、そこにいたのは敵ではなく、ほんの数日前にひょんなことから知り合いになった少年、クロノだった。
たまたま顔が似ていただけなのかもしれないが、彼は明らかにこちらの顔を見た時、驚いていた。豪雨のおかげでよく聞こえなかったが、自分の名前を叫んでいた気もする。
何故、彼はあんなところにいたのだろう。どうして、彼はあんなジャパニメーションの登場人物みたいな格好をしていたのだろう。
疑問ばかりが浮かぶ思考に、ソープはため息を吐いた。初任務、初の実戦で訳の分からないことばかりなのに。
「ソープ、ここにいたか」
その時、不意に後ろから声をかけられた。振り返ると、髭を生やした自分よりいくらか年上の男、ギャズがそこにいた。ソープの所属する分隊の長、プライス大尉の右腕的存在だ。
「いいニュースと悪いニュースがひとつずつある、どっちから聞きたい?」
「……じゃあ、悪いニュースからで」
ふんふん、とギャズは頷き、口を開く。誰かにモノを報告する時、報告するべき事項が二つあるなら「いいニュース」と「悪いニュース」に分けるのが、彼の口癖だ。
「衛星放送で全世界に中継されたんだが、中東のあの国――ほら、オイルマネーでたらふく儲けていた国があっただろ? クーデターが起きてな、アル・フラニ大統領が射殺された」
「はぁ――例の、アル・アサドですか?」
ソープが確認するような返答に、ギャズは肯定の意味を込めて頷いた。最近かの国内部で反西側諸国の勢力がクーデターを起こすという情報があり、その首謀者がアル・アサドと言う権力者だと言う噂が流れていた。
米軍はこのクーデターに備えていたと言うが、西側に対して友好的なアル・フラニ大統領の救出は間に合わなかった、と言うことだ。
「もうひとつ、こっちはいいニュースだ」
「期待していいんでしょうね――いや、やっぱり駄目か」
ギャズが気色の悪いニヤニヤした笑みを浮かべているのを見て、ソープは表情を歪めた。
こういう場合、「いいニュース」とはほとんど皮肉を込めて言っているのがほとんどだ。
「ロシアの超国家主義者たちのキャンプに、我々の諜報員、ニコライが潜り込んでいる。そいつが捕まってな、三時間以内に処刑されるそうだ。救出に向かうから、すぐに準備しろ」
どうやら、疑問ばかりの思考に回答は用意できないらしい。ソープは仕方なく、自分の装備をまとめるためその場を離れることにした。
SIDE 時空管理局
二日目 時刻 0125
ロシア コーカサス山脈
クロノ・ハラオウン執務官
どうもややこしいことになってきた。
人目に触れないよう、飛行魔法を使うのを途中でやめて、陸路で目的地に向かうクロノの思考は複雑なものになっていた。
「目標――ヴェロッサ査察官は、現地テロリストのキャンプにて拘束されているわ」
アースラを発つ直前に行われたブリーフィング。そこで母親でもあり、彼の母艦"アースラ"の艦長のリンディから告げられた今回の任務。
任務そのものに疑問を感じることはなかった。先日の貨物船にロストロギア、レリックが積まれているとの情報は、本局の査察官ヴェロッサ・アコースがテロリストのキャンプに侵入し、そこで得た
ものだ。そのヴェロッサが、敵の手に落ちた。古くからの友人でもあるため、クロノにとって彼を救出するのは何ら異議はない。
しかし、である。先の貨物船にてクロノが遭遇した、この世界の軍隊。そのうちの一人は、明らかにロンドンで観光案内をしてくれた青年、ジョン・マクダヴィッシュだった。
おそらく、彼らは自分と同じくレリックを回収しに来たに違いないだろう。回収するものがレリックであると言う認識があったかどうかは、別として。
「今回も来るのかな――」
湿地帯のため、ぬかるんだ地面に足を取られないよう注意しながら歩きつつ、クロノは呟く。
こちらの世界の軍隊も、自分と同じ目的で動いている。共同戦線と言う言葉が脳裏をよぎるのは当たり前だが、彼はいいや、と首を振る。
彼らの主な武器は銃、すなわち質量兵器だ。訓練すれば誰でも扱える、ある意味でもっとも平等な殺戮の道具。管理局の人間として、そんなものと手を組むのは許されまい。
「……っと」
小高い丘を登りきったところで、クロノは身を屈めた。はるか眼下に、情報にあった現地テロリストのキャンプが見えていた。
視覚強化の魔法を使い、暗視と望遠の機能を発動。テロリストたちは、集落を中心として、ここにキャンプを築いているようだ。当然ではあるが、集落の住民は追い出されるか殺されるかされてしまったのだろう。
ヴェロッサはどこにいるんだ、探知魔法でも使うか――そう思った瞬間、クロノの視界の片隅で光と煙が瞬いた。
何事かと視線をめぐらせると、集落の中央広場、そこに展開していた大型トラックの荷台から、何本もの光の弾が煙を引きつつ、はるか向こうへと飛んでいくのが見えた。知識でしか知らないが、確かロケット弾とか言う質量兵器だ。正式名称はBM-21と言うが、そんなことよりクロノは発射されたロケットがどこに行くのか気になった。
「エイミィ、聞こえるか?」
「はいはーい、調べてみるよ」
封鎖していた念話による通信回線を開き、"アースラ"で彼のサポートを行っているオペレーターのエイミィを呼び出す。クロノの行動をモニターしていた彼女は、手早く手元の端末を操作してロケット弾の行く先を調べてくれた。
ところが、その結果が判明するなり、彼女の声が「えっ」と言ったきり止まった。不審に思って自身のデバイスであるデュランダルにデータ転送を頼むと、クロノはその理由を知った。
「なっ――都市部に直撃してる、どういうつもりだ」
「見せしめ、ね。きっと」
会話に割って入ってきたのはリンディだった。
ロケット弾の着弾する部分は、投影される地図データによれば麓の都市に直撃していた。これではそこで暮らす民間人が、何百人も死ぬことになる。
「――艦長、どういう意味ですか? 見せしめって」
「そこのテロリストたちは、超国家主義者たちと呼ばれているそうよ。旧ソ連の復活を目指しているとか……協力しなければ、お前たちもこうなるぞってことよ」
「馬鹿げてる……」
ぎゅ、とクロノは怒りに任せてデュランダルを握り締めた。要するに、彼らはロケット弾で民間人を無差別攻撃することで、他の地域に暮らす人々を服従させようと言うのだ。
出来ることなら今すぐにでも、あのBM-21を破壊したいところだが――それをやれば、確実にテロリストたちは警戒を強める。ヴェロッサも殺されるかもしれない。
任務か、人命か。板ばさみの思考の最中で、クロノは判断を迫られていた。
SIDE SAS
二日目 時刻 0131
ロシア コーカサス山脈
ジョン・"ソープ"・マクダヴィッシュ軍曹
空母からUH-60ブラックホーク輸送ヘリで発ったSASは予定ポイントに到着。その後、陸路で進むことになった。
メンバーは指揮官にプライス大尉、そしてギャズ、ソープの三名。少ないように思えるが、今回はロシアの現政府支持派の特殊部隊との合同作戦である。
「現政府支持派の奴らが半キロ先で待っている、行こう」
プライスの言葉で、彼らは湿地帯を前進する。ところどころで敵の監視所があるようなので、注意しなければなるまい。
「現政府支持派って、いいロシア人ですか? それとも悪いロシア人?」
「まぁ、俺たちを撃ちはしないだろう。それでいいか?」
充分です、と前進の最中に交わした質疑応答にギャズは頷く。こんな時だと言うのに、彼らは気軽さを忘れない。
むしろこんな時だから、とソープは考えた。消音機とM203グレネードランチャー付きのM4A1カスタムのグリップを握る腕に、知らず知らずのうちに力が入ってしまっている。緊張感を持つのは大事なことだが、緊張しすぎてミスするのはよろしくない。
どうしても歩く度に音を立ててしまう水面にソープが顔をしかめていると、前を行くプライスが立ち止まり、左手を上げた。止まれ、の合図だ。
M4A1を構えて、プライスの視線を辿ると、人影が見えた。タバコを吹かして、しかし銃を持っているのを見ると、こいつは超国家主義者に属する敵兵だろう。奥の方には明かりが漏れる家屋。おそらくは監視所だ。
「好きに撃て」
プライスの指示が出た。ソープはM4A1のセレクターを三点バーストに回し、銃床を右肩にしっかり当てて、ダットサイトを覗き込む。照準が敵兵に合ったところで、彼は引き金を引いた。
放たれた五.五六ミリの三発の弾丸は、呑気にタバコを吸っていた敵兵に当たり、音も無く倒す。何事かと慌てて出てきたもう一人の敵兵も同様に銃撃し、射殺。
プライスに目配りすると、彼は前進を指示。監視所まで進んだ彼らは一度立ち止まる。中から、テレビの音声と思しきニュースキャスターの声が聞こえていた。
閃光手榴弾を用意したプライスが、それを監視所に投げ込む。二秒もしないうちに閃光と爆発音が巻き起こり、その後にギャズが突入。中にいた二名の敵兵をM4A1で射殺する。これで、監視所は一つ無力化された。
「よし、敵の監視所はまだあるはずだ。北西の野原で、カマロフの部隊が待機している。行くぞ」
前進再開。橋を潜り、湿地帯を進む彼らだが、そこに再び監視所が立ち塞がる。おそらく、無視は出来まい。後ろから撃たれるのもたまったものではない。
「ソープ、クレイモアをセットして奴らの注意を引け」
「了解」
ひとまずプライスは、監視所の扉の前にクレイモア地雷をセットするようソープに指示。ソープは言われるがまま、バックパックに入れていた一見弁当箱のようなクレイモアをセットする。
――と、セットしたのはいいけど、敵が出てくれなきゃ意味が無いよな。
監視所の奥に聞き耳を立ててみると、敵兵たちの会話が聞こえてきた。どうも、会話に夢中になって出てくる様子はない。
呼べば来るかな?とソープは小さく咳払いして、監視所に向かって言ってみた。
「頭冷やそうか!」
途端に、中にいた敵兵たちが銃を手に監視所から出ようとする。ところが、監視所の扉の前にはクレイモアがセットされていた。
爆発。クレイモアの放つ何百もの鉄球によって、敵兵たちは壮絶に頭を冷やされる羽目になった。
もちろん、爆発音に気付いた敵兵たちがわらわらと他の監視所から姿を見せた。しかし、彼らのほとんどはあらかじめ待ち構えていたプライスとギャズの銃撃により、ことごとくが射殺される。
前進を再開――しようとしたら、ソープは頭をごつんとギャズに叩かれた。「素直にノックでいいだろ、お前が頭冷やせ」とか言われてしまった。
個人的には、いいアイディアだと思ったのだが。
廃屋と化した民家を抜けたところで、平原に出た。事前に得た情報が正しければ、ここでロシアの特殊部隊と合流することになっている。
「ギャズ、臭うか?」
先頭を行くプライスが、M4A1の銃口を正面に向けたまま、ギャズに声をかける。
「ええ、カマロフですね」
ギャズも頷き、しかしソープ一人が平原に視線を巡らせる。上官二人はここにロシア人がいることをもう知っているようだが、新米の彼には気配すら察知できない。
と、その時彼の視界の片隅で、何かが動いた。慌てて銃口を向けようとして、ギャズがそれを手で抑える。
平原の中から姿を現したのは、髭面のロシア兵だった。右手にAN-94、ロシアでは新しい部類に入る小銃を掲げ、敵ではないことをアピールしていた。
「変わり果てたロシアへようこそ、プライス大尉」
ロシア兵が、プライスに向かって明らかに訛りの入った英語で声をかける。それを合図に、平原に身を潜めていたロシア特殊部隊の兵士たちがぞろぞろと姿を現す。
「カマロフ、そっちの目的は何だ? こっちは諜報員の奪還だ」
プライスはどうやら、このロシア兵――カマロフのことを知っているらしい。過去に共同作戦でもやったのだろう。
カマロフは左手で右に見える丘を指差しながら、プライスの質問に答えた。
「超国家主義者がBM-21を丘の裏側に展開している。そいつのロケットでな、下の民間人が何人も死んでる――」
なるほど、とプライスは頷く。要するに、カマロフたちの目的はBM-21自走式多連装ロケットランチャーを破壊するのが目的だ。BM-21が展開する地に諜報員も拘束されているため、SASと協力と言う形になったのだろう。
早速部下を引き連れ、丘にある小道を登ろうとするカマロフだったが、プライスが「まぁ焦るな」とその肩を掴む。
「ベイルートを忘れたか? 俺たちと一緒だ、行くぞ」
「ふん……お前には借りがあったな」
前進開始。かくして、SASとロシア現政府支持派による合同作戦が始まった。
SIDE 時空管理局
二日目 時刻 0140
ロシア コーカサス山脈
クロノ・ハラオウン執務官
あ、とクロノはその端正な顔立ちに焦りと驚きの色を浮かべた。
民間人を見せしめに殺すロケットを破壊すべきか、それとも任務であるヴェロッサの救出を優先すべきか。迷っていたところで、丘の下で突如、銃声と爆音が走り出す。
視覚強化の魔法を実施するまでもなく、視線を下ろせばテロリストたちと同じ質量兵器で武装した兵士たちが、彼らのキャンプに襲撃を仕掛けていた。
瞬く閃光、響き渡る銃声、そして耳をつんざく爆音、悲鳴、怒号。あっという間に、静かな夜は切り裂かれた。
「くそ、どこの誰だか知らないがおっぱじめたぞ」
テロリストたちも銃を手に飛び出し、襲撃者たちを迎え撃つ。装甲車まで持ち出して来る辺り、彼らはもう完全に戦闘態勢に移ってしまった。急がなければ、ヴェロッサの命が危ない。
「突入します。通信は以後封鎖、ヴェロッサ救出後に再開」
「え――ちょ、ちょっと待って、クロノ君!?」
念話を一方的に断ち切って、クロノは丘の上を一気に滑り降りる。躊躇なく行動に移れるのは、訓練の賜物だ。
丘の斜面からキャンプに到着。テロリストたちと襲撃者たちの交戦に紛れ、彼は歩みを進めていく。
残骸と化した廃車、家屋、黒煙すらも利用して、隠密行動。同時に探査魔法も平行して使用し、ヴェロッサを探す。
ここでもない。違う、ここにもいない。どこだ――。
脳裏に浮かぶ、キャンプ内にある家屋の中の風景。その中の一つに、ようやく見つけた。周囲の人間とは明らかに異なる、魔力反応を持つ男。
デュランダルが示すブラウン管とも液晶とも違う、半透明のディスプレイにて彼はヴェロッサの位置を確認する。北西、キャンプの外れにある家だ。
場所が分かれば話は早い。思い切ってキャンプの真ん中を突っ切ろうと彼が駆け出す。
「っち!」
露骨に舌打ちし、右手を掲げて防御魔法展開。運悪く、テロリストたちの集団と遭遇してしまった。
彼らは見慣れぬクロノを襲撃者の一人と見て、手にしていたAK-47を構え、撃つ。薬莢が飛び出し、閃光が走り、銃声が騒がしい戦場の最中に消えていく。が、クロノの防御魔法は歩兵の小火器程度では打ち破れなかった。
銃弾が魔力の障壁を叩き、火花が散る。テロリストたちはそれを見て怯んだが、銃撃をやめようとはしなかった。
この、とクロノは空いていた左手にデュランダルを握り、詠唱を代行させる。自分でやってもいいが、魔力による障壁を崩さないことに集中したい。
周囲に浮かぶ、青白い魔力の弾丸。テロリストたちがAK-47を撃ち尽くし、マガジンの交換に入ったところでクロノは障壁展開を終了、デュランダルを振り抜く。
スナイプショット。得体の知れない弾丸を見たテロリストは驚くことは出来ても回避はままならず、それぞれ直撃を受けてひっくり返った。例によって非殺傷設定なので、気絶しただけだろう。クロノは倒れた敵に目もくれず、再び駆け出す。
家屋の壁に身を寄せて、前方に敵影がないか己が眼で直接確認――直後、壁を叩き破片を飛び散らせるのは銃弾の嵐。顔を少し出しただけだが、見つかってしまったらしい。
その後も銃撃は続く。身を潜める家屋の壁は、防御用には心細い。現に、銃弾が何発かは貫通してきている。それに加えて、銃撃が途切れない。敵が持っているのは、RPD軽機関銃のようだ。ドラム型のマガジンにより、装弾数一〇〇発を誇る。撃ち尽くしてマガジンの交換により生ずる隙を待つには、時間が惜しい。
スティンガースナイプで、影から撃つか。得意の誘導射撃魔法で銃撃の及ばない地点から仕留めようとしたが、デュランダルを掲げたところで突然、銃撃が止まった。
不審に思ってわずかに顔を出すと、RPDの射手だったと思しき死体が転がっていた。仲間の遺した銃を拾おうと、テロリストの一人がRPDに駆け寄ってきて、いきなりひっくり返って動かなくなる。
襲撃者たちが、どこからか狙撃しているのだろうか。見えない恐怖に少しばかり顔をしかめたクロノだが、怯んでばかりもいられない。ヴェロッサが拘束されている家屋まで、そう遠くは
なかった。狙撃を警戒しつつ、彼はキャンプの中を走りぬける。
SIDE SAS
二日目 時刻 0146
ロシア コーカサス山脈
ジョン・"ソープ"・マクダヴィッシュ軍曹
カマロフの要請を受け、丘の上からロシア軍の突入を狙撃により援護していたソープたちだったが、カマロフは一行に諜報員が拘束されている場所を教えようとしなかった。
「見ろ、最後の突撃が始まっている――あんたたちが狙撃で援護してくれれば、勝てるぞ」
相変わらずのロシア訛りの英語も、そろそろ聞き飽きた。プライスはギャズに目配りし、首で「やれ」と合図を送った。
どがっっと、いきなり後ろからギャズの手により、コンクリートの壁に叩きつけられるカマロフ。何が起こったのかさっぱり分からない彼は混乱し、ロシア語で喚いていた。
「狙撃はもういい! 諜報員はどこだ!?」
耳元で怒鳴るギャズだったが、カマロフはやはりロシア語で喚く。仕方なく、彼は分かりやすいようゆっくりとした口調で、しかし怒鳴る。
「どこにいるんだ!」
「家屋だ……北西の、村はずれにある家だ!」
「何だ、早く言え」
必要な情報は得た。乱暴にカマロフを解放したギャズはプライスに向き直り、「行きましょう」と頷く。
「ソープ、ギャズ、奴が無事なうちにその家に向かう。行くぞ」
指示を受け、ソープはバックパックから降下用のロープを持ち出す。適当な場所に引っ掛けて、あとは一気に丘の麓に高速降下だ。
SASの三人は手馴れた様子で手早く降下、M4A1を構えて前進開始。
すでに先行したロシア軍は、テロリストに対して有利に戦闘を進めていた。テロリストたちは最後の抵抗を試みようと、キャンプの中央にあった家屋に陣取っている。
目の前にはBM-21、例の民間人を何人も殺したロケットがあったが、ソープたちは無視した。放っておいても、ロシア軍が破壊するだろう。どの道今回の任務ではC4爆弾を持ってきていない。
家屋の裏に回り込んで、先を急ぐ。緩やかな坂を上ったこの先の家に、例の諜報員がいるはずだ。
「ギャズ、裏に回って電源を落とせ。ソープは俺と一緒に突入準備」
了解、とギャズは頷き、家屋の裏に回る。ブレーカーを落として、電力供給を断つ。これで屋内は真っ暗になるはずだ。
スタンバイ。ギャズが行動している隙に、プライスとソープは暗視スコープの準備をする。視界は狭くなるが、これがあるのとないのでは雲泥の差がある。
「ギャズ、やれ」
「了解、落とします……完了」
ふ、と屋内に灯っていた明かりが消える。それを合図に、プライスはゆっくりと扉を開けた。ソープもこれに続く。
丁寧に玄関から入った彼らは、暗視スコープの向こうで蠢くものを眼にした。どうやら敵兵らしい。突然の停電を、故障か何かと思っているのだろう。仲間の名を呼び、裏を見てくるよう指示を飛ばしているようだ。
躊躇せず、ソープはこいつに向かってM4A1の引き金を引いた。消音機付きのM4A1は薬莢を排出する音だけを小さく響かせ、銃弾を放つ。何も知らない敵兵は頭部に銃弾を浴び、崩れるように
して倒れた。
リビングを抜けて階段へと続く廊下に出ると、またしても敵兵の姿があった。こちらは拳銃を構え、それなりに警戒しているようだ。もっとも、こちらの姿はやはり見えていないようである。
手早く照準を合わせ、銃撃。暗視スコープと連動したレーザーサイトのおかげで、放った銃弾は的確に敵の頭部を砕いていた。
階段を上って、身をよじり、銃口と共に先を覗き込む。カッティング・パイと呼ばれる、屋内戦における警戒方法の一つだ。
「……! ……!!」
暗視スコープの向こうでは、怯えきった敵兵が尻餅をつき、拳銃の銃口を左右に落ち着きなく振り向かせていた。可愛そうだが、これも射殺。
ブラックアウト。暗闇に放り込まれた人間はほとんどの場合、恐怖に陥る。敵兵たちは、今まさにその状態だった。
その時、いきなりベランダ側の扉が開いて、何者かが侵入してきた。ソープは咄嗟にM4A1を構え、そいつがギャズであることに気付く。
安堵のため息を吐いたその瞬間、視界の片隅で閃光が走る。
一瞬怯みはしたものの、敵襲だと気付いた敵兵がAK-47を無造作に撃ちまくっているだけだった。流れ弾が当たることはあっても、可能性としてはまず低いだろう。入ってきたギャズが、静かにしろと言わんばかりに銃撃を浴びせ、これを黙らせる。
この分なら大丈夫そうだ。ソープはM4A1を構えつつも、無用心に歩き――いきなり視界の真正面に強烈な光を浴びせられた。
「!?」
望遠鏡で、太陽でも見たかのような感覚。訳も分からず、ソープはM4A1の引き金を引く。
白く眩しい、何も見えない視界の中で、銃弾が身を掠め飛ぶのが分かった。同時に腕に走るM4A1特有の、小さな反動。
かちん、とM4A1が金属音を鳴らしたところで我に返る。上半身を穴だらけにされた敵の死体が一つ、床に転がっていた。
「ソープ! 何やってるんだ、お前は」
ギャズに肩を叩かれて、ソープはようやく何が起こったのか、理解した。小部屋から飛び出した敵兵が、ライトを自分に浴びせてきたのだ。咄嗟にM4A1の引き金を引いたおかげで――ほとん
ど偶然に等しいが――彼は撃たれる前に敵兵を撃ち倒すことに成功した。
「まったく、油断するからだ。どうしてお前がSASになれたんだろうな」
後ろから聞こえる、プライスの小言。ソープは苦虫を噛み潰したような表情になって、ともかくも立ち上がる。
小部屋に奥では、ソープが射殺した敵兵のライトが転がっていた。その光に照らされる、半袖Tシャツに目隠しされた男――と、もう一人。同じく目隠しされた、こんな戦場の最中では場違いにも程がある白いスーツの優男。こいつらが目標の諜報員か。
「こいつだ」
「ニコライ、大丈夫か? 助けに来たぞ」
ギャズは諜報員――ニコライを助け起こし、彼の拘束を解いた。同時に、白いスーツの男に眼をやる。この男は、情報には含まれていなかったはずである。
「あぁ、ありがとう……俺はまだ戦えるぞ、銃をくれ。それから、彼も助けてやってくれ」
「何者なんだ?」
プライスは敵兵が持っていたAKS-74Uをニコライに手渡し、もう一人の男について問う。
どうやら、ニコライが言うには目的を同じとする別組織の諜報員らしい。同じ諜報員同士、敵に捕まってここに連れて来られたそうだ。
「ソープ、そいつの拘束を解いてやれ」
「了解」
プライスに言われて、ソープは白いスーツの男の拘束を解いた。だが、ここでソープは気付く。ニコライに比べて、腕に縛られたロープがえらく頑丈になるよう工夫されているのだ。よほど腕を
使わせたくないらしい。
最後に目隠しと口封じ用の黒いビニールテープを剥がしてやる。スーツの男はわずかに咳き込み、口を開いた。
「げほ――あぁ、苦しかった。ありがとう、見知らぬ人よ。管理局の方かな?」
「管理局?」
ソープが何だそれは、と言いかけたところで、プライスが前に出た。その表情は、珍しく驚きに満ちている。
プライスはスーツの男が立ち上がるのを手伝ってやると、彼に向かって問いかけた。お前は管理局の人間なのか、と。
「ああ……そうだよ。だけど――見たところ、君らはここの世界の軍人のようだね。どうして管理局の名を知っているんだい?」
「レジアスは知ってるか。一五年前、俺はそいつと生死を共にしたことがある」
ソープとギャズ、ニコライは二人が繰り出す単語に訳も分からず怪訝な表情を浮かべるばかり。彼らほ無視する形で、プライスとスーツの男は会話を続けた。
「レジアス……ひょっとしてレジアス・ゲイズ中将かい? 地上本部の司令官の」
「たぶんそうだろう。なんだ、あいつ中将にまで上り詰めていたのか……まぁいい」
ここで立ち話もなんだ。そう付け加えて、プライスは一同に一度家屋を出るよう命令した。ここからそう遠く離れていない平地が、彼らSASの回収ポイントだった。
SIDE 時空管理局
二日目 時刻 0154
ロシア コーカサス山脈
クロノ・ハラオウン執務官
飛び交う銃弾を掻い潜り、クロノはSASに一歩遅れる形で、目的地の家屋に到着した。
中に入って見ると、電源が落とされたのか、真っ暗な闇だけが広がっていた。視覚強化の魔法、暗視モードを使って警戒しつつヴェロッサを探す。
だが、探索を進めていくうちに、そこがすでにもぬけの殻であることをクロノは思い知らされた。テロリストたちの死体が転がるばかりで、むせ返りそうな甘ったるい血の臭いが充満している。
遅かったか。苦渋の表情を浮かべたその時、家屋の裏で物音がした。ベランダの方に出てみると、銃で武装した兵士が四名、それに彼らに肩を貸される形でよろよろと歩く白いスーツの男が一名見えた――間違いなく、ヴェロッサだ。この世界の軍隊に連行されているのか。
ベランダの床を蹴り、クロノは跳躍。兵士たちの頭上を飛び越して先回りし、着地。デュランダルを構える。
兵士たちはいきなり空から降りてきた少年に驚き、銃を向けるが、その中の一人がクロノの顔を見て、声を上げた。
「……クロノ? クロノだろ? 俺だ、ジョンだ。ジョン・マクダヴィッシュだ」
暗視スコープを外し、ジョンと名乗った兵士――ソープが、自分の素顔を見せる。やはり、彼はこの世界の軍人だった。昨日の貨物船で見たのは、間違いではなかったのだ。
「ソープ、知り合いなのか?」
「友達です」
隣にいた隊長らしき兵士の質問に答え、ソープは銃口を下ろし、クロノに近付こうとする。だが、そんな彼に向けてクロノはデュランダルを突きつけた。
デュランダルがどういう代物なのかは、魔法に関する知識を知る由もないソープでも理解できたようだ。歩みを止めて、疑念に満ちた視線を送ってくる。
「クロノ……」
「残念だけどジョン、今ここにいる僕は君の知ってるクロノじゃない――返してくれないか、彼を」
クロノはソープへの構えを解くことなく、視線だけをずらして彼らの後方にいるヴェロッサに向ける。
ソープは、と言うと――一瞬ちらり、とヴェロッサの方に視線をやり、クロノに向かって下ろしたはずのM4A1の銃口を向けた。
この行動の意味するところは、拒絶。
「残念だがクロノ、それは出来ない――得体の知れない奴を、そう易々と手放す訳にはいかないんだ」
「どうしてもか」
「どうしてもだ」
かちっと、ソープは右手の親指でM4A1のセレクターをフルオートにした。こちらは本気だと言う、意思表示だ。
「クロノ、今回は見逃してやってくれ」
「ヴェロッサ?」
その時、思わぬ方向から横槍が入った。救助するべきヴェロッサが、クロノに退くよう言ってきた。
「彼らは僕を手放すつもりはなさそうだ。それに見たところ、かなり強い――管理局とこの世界の全面戦争になっても面白くないからね」
確かに――クロノはソープを初めとした兵士たちに眼をやる。知識でしか知らないが、あの兵装は特殊部隊のものだ。選び抜かれた精鋭であることは、間違いない。
何よりヴェロッサの言うとおり、ここで彼らと戦闘になって管理局とこの世界の関係がこじれてしまっては、執務官として大失態だ。
渋々、クロノはデュランダルを下ろす。それを見たソープは安心したように、同じくM4A1を下ろした。
「……行くぞ。この先でヘリが待っている」
隊長らしき兵士の言葉で、彼らは前進を再会する。
ソープとクロノは一度だけ顔を見合わせたが――これ以上、言葉を交わすことはなかった。
最終更新:2009年03月23日 20:21