『女体化前日』続き

『女体化前日』の続きです



 カーテンの隙間から、太陽の光が射してくる。 外からは、ゴミの回収に来たトラックの音がする。
どうやら朝になったみたいだ。
いつもは朝に弱いはずの俺だが、今日は違った。 パチッと目覚め、何だかとてもスッキリとした気分だ。
何だか体が軽い。 女体化したからなのだろうか。
俺は尿意を感じ、トイレへ向かう。 その途中で、洗濯物をたくさん抱えた母親に出会う。
「あら、今日は早いんじゃないの?」
「いや、なんか早く目が覚めちゃってね。」
 驚いた様子を見せるかと思ったら、そんなことはなかった。 いつもと変わらぬ感じで接してくる。
俺は首を傾げる。 女体化してるのなら、そんな態度でいられるはずがない。
「姉貴と勘違いでもしたのかな・・・?」
 小便を済ませ、朝食を食べに台所へ向かう。 ボサボサの髪を掻きあげながら、親父の対面に座る。
「まったく、その髪の毛どうにかならねぇのかよ。」
 新聞越しに苦言を呈す。 親父は、俺の鬱蒼と茂った髪のことを非常に嫌っている。
男らしく短くしろといつも言っているのだが、それを聞き入れていないからだろう。
はいはい、といつものように生返事。 テレビを見ながら、出来立ての目玉焼きと熱々の味噌汁を胃の中に流し込んだ。
 俺は食べ終えると、さっさと自分の部屋に戻った。
「そういえば、親父もいつもと変わらない反応を示してたな。 何でだろ?」
 腕を組みながら、ううんと唸る。 もしや女体化してないのか?
俺の部屋には鏡がない。 携帯のカメラ機能を使い、自分自身を撮った。

「・・・マジ?」

 携帯の液晶に映る一人の男性。 それは間違いないく「男の俺」であった。
俺は「童貞だが女体化しない」という奇跡的な確率に当たったのだ。 宝くじで一等賞プラス前後賞当てるよりすごいはず。
女体化しなかった喜びを素直に噛みしめ、部屋を駆けずりまわった。
「やった! 俺は男のままでいられるんだ!」
馬鹿みたいにはしゃぎすぎて、俺は箪笥の角に頭をぶつけ意識を失った。

――――――――――――――――

ベッドから体がずり落ち、その痛みで目覚めた。
「・・・夢だったんだ・・・」





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最終更新:2008年08月09日 22:58
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