2007年度を持って終了しました。

シラバスより~
 国民国家という近代の産物は、グローバル化の進む現在どのような変容を遂げつつあるのか。国民国家が近い将来に消滅する可能性は現時点では考えられないとはいえ、その役割や国際社会における位相は、確実に変化している。
 授業では、もともとはそれぞれの国の国家性や歴史を反映していた国籍政策や言語政策などの国民国家という体系を支えていた諸制度が、ヨーロッパではEUの拡大と統合の深化にともなう人の国際移動の活発化により変化を受けている状況などを取り上げ、こうした現代における国民国家の位相について様々な角度から検討を加える。

《参考文献》
 このテーマに関する参考文献は膨大です。
Will Kymlicka and Magda Opalski (eds.), Can Liberal Pluralism Be Exported?: Western Political Theory and Ethnic Relations in Eastern Europe, Oxford University Press, 2001.*授業の中で本書所収の"Western Political Theory and Ethnic Relations in Eastern Europe"を通読したこともあります。国民国家のマイノリティをナショナル・マイノリティと移民にわけ、前者により大きな権限を認める(ある意味ではマジョリティと同等の)議論は、有名な『多文化時代の市民権-マイノリティの権利と自由主義』の焼き直しですが、これを「東欧」に適用かどうか検討しています。

岡野八代『シティズンシップの政治学ーー国民・国家主義批判』白澤社/現代書館、2003年。*シティズンシップ論を手際よくまとめ、「平等」について考えさせられるお薦めの1冊。

アイリス・M・ヤング(施光恒訳)「政治体と集団の差異-普遍的シティズンシップの理念に対する批判」『思想』867号、1996年。*2007年の前半にテキストとして使用しました。なんといっても「ある視座や歴史を有する個人が、他の集団特有の視座および歴史を担っている人々の観点を、完全に理解したり、採用することはあり得ないのである」という一文には考えさせられます。こうした「差異化されたシティズンシップ」をいかに実現するのか。北欧などでは、一部、先住民のサーミ人などに集団的な代表権が認められているといえるかもしれませんが、その他の集団となるとどうでしょうか。

Nick Stevenson, Culture and Citizenship: an Introduction. Nick Stevenson (ed.), Culture and Citizenship, London: Thousand Oaks: New Delhi, 2001.*これも2007年前期に読みました。インターネットが普及し、メディアや消費の意味づけが変化する中でのシティズンシップの変容についても言及しています。
最終更新:2008年04月06日 14:21