一話 「つかの間の平和というもの」
翔太が戻って夕張との戦闘も終って数ヶ月経った。
特別警察の仕事にも復帰する事ができた。私は特別警察第一局警護部に所属している。警護部は連邦の要人を警護する役目を持つ。私もそのためにここに所属した。そう、私は久しぶりに平和というものを享受していた。
「クラディア君、明日の任務についてだが。」
警護部長がクラディアに話しかける。
「はい。」
「明日の任務は前も言ったように"証人警護プログラム"の護衛を行う。」
「承知しています。」
証人警護プログラム。
法廷、議会、あらゆる公的な場所での証人の発言により証人が被害を被らないためのシステムだ。良くある護衛任務である。
「分っているだろうが、くれぐれも証人を失くすな。」
「……」
「いつもと同じように任務を完遂してくれ。」
そういって、警備部長はクラディアのもとを去っていった。
―普通の証人警護プログラムなら、こんなことは言われないはずだ。
そんな違和感がクラディアの脳内をのらりくらりと回っていた。
任務当日
クラディアは定位置で証人の到着を待機していた。
証人の名前はアレスカースナ・クラン。女性であり、夕張の保有していたハフリスンターリブ軍の契約の糸口証人らしい。彼女の証言でハフリスンターリブの流れが分り
ハタ王国内のテロリスト分子の摘発に役立つと共に犯罪の証人にもなるという一石二鳥の武器なのである。このためにハフリスンターリブたちの襲撃も予測し我々、特別警察第一局警護部が付けられたのだ。
「―証人到着。」
無線から流れるその声が聞こえた時にはもう車両が到着していた。装甲の無いように見える車両、これは機動性なども考慮された特別警察研究所謹製の防弾カーである。
車両のドアを特別警察の男が開ける。
しかし
「居ないぞ!?」
男の周りに特警官が駆け寄り車内を確認する。
バンパー、トランク、くまなく探すが証人とドライバーの姿は確認できなかった。
「……」
予想していた事が起こってしまった。
証人が消えたのだ。
最終更新:2015年02月22日 00:42