【後編】

「(……躱された、か。)」

【床は、コンクリートは、斬った。まさしく、膾のように】
【だが〝鬼〟と同じく、避けられた事を察知していた。腕を断ち切った感触がない】

【見れば、床から突き出た刀は直進しており】
【ある程度進んだ場所で、それは床に沈む】

【―――――直後、轟音】
【煙が晴れ、現れたのは…傷一つ無い、〝鬼〟】


【“こうでなければつまらない”…そう言われれば、首を縦に振るのが正しいだろう】
【青年は戦闘狂ではないが―――やはり、剣士の端くれ。強者との闘いは、楽しいと感じるのだ】

「…見事な剣技、そして身体能力だ。」

【剣鬼】、その力、どこで培った?」

【〝鬼〟の言に、片頬を上げる笑みで返答し、問いかける】
【〝【剣鬼】〟の力―――特に身体能力は、〝修羅〟が今までに闘った相手と比較しても、トップクラスのものだ】
【それほどの力を、どこで手に入れたのか…純粋な興味があった】


「どこで? 知らねぇな、あえて言うなら俺が生まれてからだ」

【“修羅”の問いに男は【漆桜】を水平に持ち上げ答える】

「“こいつ”が言うには『妖刀に込められた呪い』って言うことらしいが俺は違うと思ってるんだ
 ―――――即ち愛さ。
 物心付く前から俺は【漆桜】と一緒だったらしいが、詳しいことは分からねぇ
 ただそん時から俺はコイツに何かを感じていたようでな――――」

【鋭い風切り音と共に銀閃が走り、【漆桜】が月明かりに煌めく】
【白銀の刀身が映し出すのは男の深紅の瞳】
【呪いは男の身体を改造した―――その影響は男の瞳にも効果を表す】

「―――我は【漆桜】の為に生まれ
 ―――我は【漆桜】を振る為だけに鍛錬し
 ―――我は【漆桜】を生涯愛し続け
 ―――我は【漆桜】の為にその生涯を捧げよう

 これはな、俺の人生を表した言葉さ」

【良い言葉だろう? と笑いながら“修羅”に問いかける】
【その瞳は狂気を宿していたが――――澄んだ純粋な目をしていた】
【刀に生き、刀に死ぬ……そんなことは例え高名な達人であろうと不可能だろう】
【何故なら彼らは『人』だから―――故に彼は『剣鬼』なのだ】


「………成る程な。」

【呪いが――――得物が与える力】
【大きすぎる力を何の苦労もなく手に入れてしまえば、大抵は歪んだ自信をつけるものだが】
【闘った限りでは…狂ってはいるが、歪んではいない】

【剣士にとって、得物は自分の半身であるが】
【この男にとっては、最早その領域を超越しているのだろう】

【眼前の男は、“愛”と呼んでいるが―――青年から言うのならば、それは間違いなく〝呪い〟だ】
【〝呪い〟を〝愛〟と呼ぶ精神性。青年には理解し難いものだが、しかし―――】


「…一つ、問う。」

「お前がそれほどに想う妖刀、【漆桜】。」

「―――――それが折れた時、お前はどうする。」

【〝男〟の瞳―――狂気を孕む、しかし澄んでいる―――を見ながら、問う】
【〝青年〟の瞳は、どこまでも深く…何を考えているかを見抜かせない】

【もちろん、青年自身は、【漆桜】を折ろうとは考えていない】
【しかし、もしそうなった場合どうするか―――ただ、それを聞きたいのだ】


「あ~、んなこと考えたことねぇな
 俺にとって【漆桜】は『もう一つの俺』なんだよ」

【男の問いに、頭を掻き毟りながら困ったように答える】

「俺は【漆桜】の為に存在し、勿論【漆桜】も俺の為に存在する
 ――逆に問うぜ、レオンハルト
 あんたは自分が死んだらどうしようか―――なんて考えるか?
 まぁ言ってみればそう言うもんさ」

【人と馬が一つの様になって動く様を“人馬一体”というが男はまさにそれだ】
【一心一体を超えた極地――――人剣一体の領域に位置する男はまさに規格外の一言に尽きた】

「I’m sure you have time for one more game, right?(さあ、もう1ゲームといこうぜ?)
 俺たちゃ剣士だ――――なら、それらしく己の得物で答え合おうぜ」

【男から再び闘志と剣気が噴き出し、体に纏うように漂い始める】
【そこに居るのは先ほど質問に答えていた男ではなく、まさしく“剣鬼”と呼ばれる存在】

【さぁ―――ひと時の休憩は終わりを告げた】
【後は、クライマックスまで一気に駆け上がるのみ】
【――――Let's start the most crazy Party !!(さあ、イカれてとち狂ったパーティの始まりだ!!)】


「(……これ程とはな………)」

【ここまで、得物を思っている者は、正しく今まで見たことが無い】
【恐らく―――否、確実に、得物に対する思いは、〝修羅〟を凌駕している】

【そして、再び〝鬼〟から噴き出す闘気、そして剣気】
【――――そろそろ、決着か。〝修羅〟は、何とはなしにそう感じた】

【どちらが勝ち、どちらが負けるのかは分からないが】
【―――構わない。決着をつけるのみだ】


「……いいだろう。」

【ヒュン、と、金色の大剣が空気を裂く】
【〝修羅〟は好戦的な笑みを浮かべ―――油断なく〝鬼〟を見据える】


「――――互いに、遊びは終わりだ。」

「来い…〝人剣一体の剣鬼〟咲裂 剣―――――――!!」

【――――〝修羅〟の気が、噴き出す】
【その密度、威圧感、共に先程の比ではなく―――並みの剣客ならば、これだけで卒倒してもおかしくはない】


「ハッハー! I love this! This is what I live for!(こういうノリは嫌いじゃないぜ!)」
『ええ、私も―――負ける気がしません』

【だが、“鬼”はその顔をさらに喜悦に歪める】
【やはりこの男はどこか狂っている、でなければこの状況で笑う事など不可能に近い】
【リズムに乗ってステップ、首を軽く回して調子を確認―――Best Condition!!】
【曲芸師の様にくるくると風車の如く【漆桜】を回転させ、鋭く“修羅”に向かって剣を向け】

「Come on, wimp! You scared――?(来いよ、ノロマ野郎! まさか――俺が怖いのか?)」

【獰猛な、まさに悪魔も泣き出しそうな凶悪な笑顔で放つ安っぽい挑発】
【しかし、男に相手を怒らせるつもりは毛頭無い】
【いわば仲の良い親友に向けた軽口―――そんな表現がしっくり来る】


「フッ、言ってくれる…」

「―――――ならば見せてやろう、この【剣帝】の全力を!!」

【語気を強め、しかしどこか楽しそうに声を上げ】
【上空に跳び上がるように、その姿を掻き消す】


【―――――1拍の時を置き、再び〝修羅〟が姿を現す】
【そう、〝鬼〟の前後、1mほどの距離で剣を構えた―――〝二人〟の修羅が】


『――――見切れるかな?』

【二人の〝修羅〟が、楽しそうに、全く同じタイミングで口を開き、〝鬼〟に襲い掛かる】
【まず、〝鬼〟の前方。剣を左手に構えた修羅が斬りかかり】

【〝鬼〟がそれを防いだならば、後方の修羅が背後より斬りかかる―――斬りかかるタイミングをずらした連撃】


「ワァオ! 忍者の真似ごとたぁ驚いた!」
『This may be fun.(少しは楽しめそうですね)』

【“鬼”を挟むようにして襲いかかる“修羅”に驚きを隠せない男】
【だが―――その動きは先ほどに比べてどこか鈍い】
【分裂の弊害、身体能力が落ちているのだろうか】
【確かに分身と言うのは厄介だったが、先ほどまでのスピードで襲われていた男にとって、その動きはどこか手温く見えた】

「そんな動きじゃいつまでたっても追いつけねぇぜ!」

【まず目の前の“修羅”に向けて大きく前蹴り】
【その後男は後方へ天高く跳躍しながら後ろの“修羅”を飛び越す――――綺麗なサマーソルトを描くだろう】


【前方の修羅、斬り掛かる最中、前蹴りを放たれる】
【とっさに剣を止め、剣の腹で前蹴りを防御】

【後方の修羅、すかさず〝鬼〟の背後に斬りかかるが】
【時既に遅し、〝鬼〟は後方へと跳び、振るった剣は空を斬る】


【―――――だが、それこそが狙い】
【〝鬼〟が着地したその瞬間、二人の〝修羅〟はその姿を消し】

【恐らくはまだ、消えた二人の修羅に気を取られているであろう瞬間】
【――――つまり二人の修羅が消えるとほぼ同時、〝鬼〟の後方左斜めより、〝修羅〟が急襲―――凄まじい速度で突進しながら斬りかかる】

【先程の二体の修羅は、二体とも本体ではない】
【〝鬼〟の注意を自身―――本体の〝修羅〟から反らす為の囮】


『さっきのは囮です! 本命は左後ろから接近―――』
「ホント、俺の伴侶は頼りになるねぇ――――!」

【男一人だったならこの強襲を察知することは不可能だった】
【例え反応出来たとしても確実に一太刀は浴びていた筈―――そう、一人だけだったならの話だ】
【周囲の警戒は【漆桜】に任せ、“鬼”はただ目の前の敵を叩き斬る それだけで良い】

【振り向き、【漆桜】を相手の太刀筋に合わせることで斬撃を回避】
【だが相手の勢いの方が強かったのだろう、男は踏ん張りきれず衝撃をそのままに吹き飛ぶ――!】

「Too easy.(楽勝だな)」

【吹き飛ばされながらもしなやかにネコ捻りで地面に衝突するのを避けると】
【土煙りを上げながら地面を滑走―――瞬間、爆発と共にコンクリートが抉れる】
【抉れた場所に“鬼”は居らず、次に姿を現したのは“修羅”から見て右脇】

「――――――Die!(死にな!)」

【いつの間にやら鞘に収まっていた【漆桜】を握りしめ、居合を放つ】
【火花を散らしながら【漆桜】が空気を切り裂き、俊刹の刃が“修羅”に向かって走る】


「フッ――――――ー」

【回避される事も、予想してはいた】
【しかし、この一撃を避けられるとは―――可能性は薄いと踏んでいたのだが】

【だが予想していた、それ故に次の一手は迅く打つ事ができる】
【〝鬼〟が吹き飛ぶ様、反撃を予想し―――〝修羅〟は整える、全力の一撃を放つ為の体勢を】

【体を捻り、全身に力を込め…右脇より居合いが来襲した、その瞬間】


「―――――ハァァァッ!!」

【―――――解き放つ。体ごと剣を回転させる】

【高速―――否、神速で大気を裂く剣は、大気との摩擦により炎を纏う】
【鬼をも焼く炎を纏いし、修羅の斬撃―――〝鬼炎斬〟】

【その剣速、そして威力共に…間違いなく、この〝鬼〟との戦いで〝修羅〟が放った剣閃、そのどれよりも高い】
【炎を纏う黄金の剣が、白銀の妖刀が放つ居合いを弾かんと迫る】


「――――Ha! Sweet babe!(最高だぜ、オマエ!)」
『――――――――――くっ!』

【まさに音速と音速のぶつかり合い】
【ソニックブームをまき散らしながらお互いを喰らい尽くさんとその牙を剥きあう】

【攻防はほんの一瞬】
【その勝敗は皮肉も、得物の質によって決まってしまう】

【決して変形することのない最硬質の大剣と妖刀とはいえ特殊な力を込められた訳でもない刀】
【どちらが勝つかと言われれば―――残念ながら、前者の方に分がある。有ってしまう】

【大剣の色と組み合わさり、まるで金色の炎となった一撃は“鬼”の居合を弾き飛ばし】
【――――――ピシ、と嫌な音が【漆桜】から鳴り響き、小さな罅が刀身に入った】


【全力を込めた〝鬼炎斬〟――――その一撃は、狙い通りに〝鬼〟の居合いを弾く】
【本来ならば、更に追撃をかける所―――しかし】

【――――追撃は、かけない。むしろ、〝修羅〟は後方へと跳び退く】
【それにより開いた両者の距離は、5mをゆうに超える。〝鬼〟の身体能力を以ってしても、恐らくは一瞬では詰められないであろう距離だ】

【追撃をかけることもできた。攻勢を強め、畳み掛けることもできた】
【それをしないのは、決して臆したからではない。むしろ―――――】


「……【剣鬼】。」

「お前と言う剣士―――そしてその刀に敬意を表し、我が全霊の一撃を以って決めさせてもらおう。」

【―――――これで、終わらせる】

【〝修羅〟はまるで天を衝くかの如く、金色の剣の切っ先を空へ向け】
【そのまま、クルリと手首を回し、淀みの無い動作で柄を両手に握り、横に水平に構える】

【――――瞬間、〝修羅〟の全身から放出される、極寒の殺気】
【〝実際に冷気を宿した〟殺気は、横に構えた剣から流れ】

【そして――――『周囲が凍る』】
【〝鬼炎斬〟の灼熱の一撃とはうって変わり、これは言うなれば】
【極寒の世界に住み、その手を一振りするだけで万物を凍りつかせる、冥王の剣―――〝冥王剣〟】

【殺気は尚も周囲を凍らせ、急速にビルが凍り付いていく】
【このままでは、完全にビルが凍結するのにそう時間はかからないだろう】

【しかしそれを止めようにも、迂闊に近づこうものならば、全方位に放たれる極寒の殺気に触れ、問答無用で凍ってしまう】
【空中から襲い掛かろうにも、殺気は空中にまで及んでおり】
【地中から奇襲を仕掛ければ、〝鬼〟が〝修羅〟に辿り着くまでに、ビルは完全に凍ってしまうだろう―――果たして】


「ヒュ~、もうすぐ夏本番だってのに涼しいなぁおい!
 ――――まだまだ往けるよなぁ、【漆桜】!」
『ええ! あなたと私が組んで出来ないことなんて今まで無かった!』
「そう! 俺たちゃ二つで一つ!
 0.5+0.5じゃねぇ、俺たち二人が揃えば二倍にも十倍にも跳ね上がるのさ!」

【周囲が極寒の冷気によって凍結し、死の世界へと塗り変わっていく】
【そんな場に居てなお、男の笑みは崩れない】
【【漆桜】を逆手に持ち換え、弓を引き絞るように後ろへと構える】

【斜め上への斬り上げ――――単純、故に最強】
【斬る以外の全ての要素を排除した最凶にして最弱の奥義】

「――――往くぜ」『――――往きましょう』

「『――――――――――――――I’m absolutely crazy about it!!(楽しすぎて――――――狂っちまいそうだ!!)』」

【“鬼”は風を、音を、全てを置き去りに“修羅”へと駆ける】
【負ける気がしない―――負ける要素が全く見えてこない】
【何故なら俺たちは――――――“人剣一体”、『剣鬼』だからだ!】

【狂いクルイくるくると、刀に狂った狂い鬼】
【――――ヤツらを常識で考えてはいけない】
【彼らは正真正銘、『鬼(化け物)』なのだ】


【遠く、人々のざわめきが聞こえる】
【遠く、サイレンが鳴り響く音が聞こえる】

【〝鬼〟が迫る。防御の要素を一切排し、一心不乱に、まっしぐらに、突撃してくる】
【その姿は正に『剣鬼』。人と剣とが一体と化した、刀に狂いし剣の鬼】


【―――――だから、如何した】
【この身は〝修羅〟―――夥しい血と、積み上げられし屍が彩る闇の道を、たった一人で歩む〝修羅〟】
【その道に立ち塞がるのならば】

【例えそれが、万の軍勢であろうと】
【例えそれが、剣に狂った鬼であろうと】
【例えそれが―――――遠い過去に死別した、大切な者の思いであろうと】



「―――――――――――滅!!!!」



【――――――斬ると決めた】



【〝鬼〟の一撃、それが〝修羅〟の左腕に食い込み、切り裂く寸前】
【〝修羅〟は完全に凍結したビルの床に剣を突き刺す】

【その瞬間、凍結したビルに、幾条もの亀裂が走り―――ビルが、割れる】
【円柱状であったビルは、その屋上や外壁に走った亀裂と共に、幾つもの塊となって崩壊を始める】

【崩壊に巻き込まれ、〝修羅〟の姿は既に見えず、もはや追撃は困難だろうが―――】
【このまま崩壊に巻き込まれたとしても、両者の身体能力ならば傷は負わないだろう】

【もっとも、〝鬼〟が〝修羅〟の凍て付く殺気に触れ、その箇所が凍っていたならば】
【〝修羅〟が剣を床に突き刺した際、その箇所にいくばくかの裂傷が刻まれてはいるだろうが】



「オイオイオイオイ、こんな所で俺が諦めるとでも――――――」

【崩壊するビル、雪崩のように落下する瓦礫、破片】
【まるでテロの一部始終のような過激な光景は――― 一つの爆発音の様な衝撃と共に吹き飛ばされる】
【爆音、爆号、何かが砕ける音と何かが吹き飛ぶ音の狂気のセッション】
【また一つ、巨大な瓦礫が吹き飛び―――】

「――――思ってんのかぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ!!」

【現れたのは血濡れの“鬼”】
【落ちてくる瓦礫を、飛んでくる破片を無視し続けた結果が、男の血濡れ姿】
【黒い髪と服が所々凍っており、その姿まさに“剣鬼”の一言】

【そして男が吹き飛ばした瓦礫の向こうには―――――】


「――――全ての瓦礫を無視し、俺を見つけ出すことのみを考えたか。」

【―――左腕を浅く斬られ、しかしそれ以外には傷らしい傷は見えない、瓦礫の中に立つ〝修羅〟の姿】
【その表情は、尚も不敵―――片頬を上げ、微笑んでいる】


「…見事だ。このまま決着、と行きたいところだが……」

【注意は〝鬼〟に向けたまま、辺りを軽く見回す】
【遠からず、しかし近からずから人々のざわめき、そしてサイレンの音が聞こえる】

【無理も無い、高層ビルが一つ崩壊したのだ。それも完全に凍結してから】
【このままここにいれば、やがて一般人たちや警察組織などがここに集まるだろう】


「このままここに居れば、面倒な事になりそうだ。」

「………それに………」

【〝修羅〟は、ちらりと、〝鬼〟の得物を見る】
【〝鬼〟の刀には、〝鬼炎斬〟によって生じた、小さな罅がある】

【小さいとは言え、一本の罅が勝敗を左右する事が多々ある】
【できれば、不完全な状態では倒したくない。そう考えたようだ】


「お前の刀、その状態では、完全とは言えないだろう。」

「そのような状態の得物を持ったお前を斬っても、意味が無い。」

「――――まずは傷を癒し、刀を直せ。お前が再び完全な状態となった時、その時は俺が斬り捨ててやろう。」

【優しげとは程遠い―――しかし好戦的でもない笑みを浮かべる】
【そうこうしている間にも、サイレンと人々のざわめきは近づいている】


「………っち、仕方がねぇな」
『すみません、私の所為で――――』
「別に【漆桜】が悪かった訳じゃねぇ、お前を使いこなせなかった俺が悪いのさ」

【申し訳なさそうにうなだれる【漆桜】】
【男はそれは自分の所為だと、お前を扱う自分の責任だと慰める】
【優しく、【漆桜】の刀身を撫でた後、【剣帝】――レオンハルトに向き直り】

「この決着は次に会うまで持ち越しだ
 ―――――それまで、俺以外の相手に殺されでもしたら俺が殺してやるからな!」
『ハッキリ言ってそれ矛盾してますよ……』

【【漆桜】を収め、すれ違うように目の前の男に向かって歩き出す】

「――そうそう、名前長いからこれからは“レオン”って呼ばせて貰うぜ?」

【すれ違いざまに言葉を発し、その場から居なくなる男】
【後にはサイレンの音と人の騒がしい音が広がり続ける】

【“鬼”と“修羅”】
【二人の遭遇劇は終わりを告げた――――】
【次の舞台の幕開けは――――空に浮かび上がる月すらも知らない】

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最終更新:2011年05月17日 17:48
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