シナリオ 北上ルート 8月5日(日曜日)・その1
大嫌い!!
真緒「………」
ぼくは迷っている。
練習場に行くか、それとも行かずに寮にいるかどちらにするべきかと。
;;↓全体を見て、前の8-4に詳細を書くか決める
昨日あれからぼくも寮に戻った。
そしてすぐに北上の部屋へ行き謝ろうとするも、部屋から出てこない。
仕方なくドア越しに謝って、夕食まで待ってみた。
そして夕食に顔を見せた北上を捕まえて謝ろうとしても、完全無視。
なんとなく事情が分かったのか、八十記がフォローを入れてくれるものの、やはり無視。
寮長のフォローも同じくだ。
そんな状態のまま一夜明けたわけで、ぼくは迷っている。
きっと行ったとしても昨日と同じだろう。
かといって、無視されてるから行かないというのもな。
聞かれてしまったのはもうどうしようもない。
それに、いつかは話していただろう事だ。
ただ、ちゃんと理由を話したい。
嫌だから辞めるわけじゃないという事をちゃんと北上に──
真緒「………」
真緒「よし、行くか」
練習場。
すでに北上は来ていた。
ぼくの方を一瞬見るものの、すぐに明後日の方向を向いて練習再開。
一晩でどうにかなるなんて思ってはいないけど、これは結構時間かかるかもしれないな。
真緒「北上、おはよう」
奏「………」
真緒「北上?」
奏「………」
真緒「………」
真緒(やれやれ、そっとしておくか)
今日は黙って北上の練習を見守ることにしよう。
そう決めて近くの石に腰を降ろした。
奏「………」
そっぽを向いていた北上がぼくの方へ顔をむけた。
何か言いたそうだな……
真緒「どうした?」
奏「もうメンバーじゃないし」
真緒「い、いや、昨日の事は謝るよ。だから」
奏「もう来ないでほしいし」
真緒「北上」
奏「アタシの名前も呼ばないでほしいし」
真緒「………」
……完全に嫌われたようだ。
北上が怒るのも無理はないけど、悲しいな。
せめて理由だけでも分かってもらいたい。
真緒「あのな、八十記に言うより先に北上に言うつもりだったんだ」
奏「聞こえないし」
真緒「……じゃあ一人ごとを言うよ」
奏「………」
真緒「ライブの中止なんてぼくだってしたくないと思ってる。
でも、今のままじゃ北上が傷つくだけだとぼくは思って……」
奏「………」
真緒「決してライブするのが嫌だからとかそんなんじゃないんだ。
ただ、ぼくは北上を想ってずっとどうすべきか悩んでて……」
奏「……アタシの才能が憎いんだね」
真緒「え?」
奏「センセだってバンドしてたからにはスターになりたかったんでしょ?」
真緒「い、いや、まぁ」
奏「でもなれなかった。だけど教え子であるアタシは大スターへの階段を上ろうとしてる」
真緒(な、なに言ってるんだ……)
奏「そんなアタシが憎いんだね。だからライブを止めようってそう思ったんでしょ?」
真緒「違うって、ぼくは北上の事を心配して」
奏「嘘だし」
真緒「嘘じゃないってば」
奏「だってセンセがライブを中止する理由ってそれしかないし……」
真緒「北上、ぼくは」
奏「もういい!! 話すことなんてないし!!」
真緒「お、落ちつけって」
奏「センセなんて大嫌い!! 顔も見たくないし!!」
真緒「き、北上」
奏「センセなんてタンスの角に小指ぶつけて入院しちゃえ!!」
真緒「話をしよう、な?」
奏「うるさいうるさい!! あっちいって!!」
真緒「………」
奏「嫌い嫌い!! 大嫌い!!」
真緒「……バンドは、バンドはどうするんだ」
奏「もうバンドは終わりだし……」
真緒「北上」
奏「………」
真緒「………」
これ以上何を言っても今の北上には駄目な気がする。
……仕方ないけど、今日は大人しく寮に戻ろう。
また北上が落ち着いて、それからだ。
真緒「分かった……寮に戻るよ」
奏「………」
真緒「じゃ」
奏「………」
踵を返して寮へと歩き出す。
そのぼくの背中に北上の視線を感じる。
でもそれはぼくの思い過ごしなのかもしれない。
今、北上は何を思ってどんな顔をしているんだろう。
振り向いてもういちど呼びかけたい気持ちを抑え、ぼくは歩みを速めた。
最終更新:2010年07月13日 22:50