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シナリオ 阿部高ルート 7月29日(日曜日)・その1

 喧嘩



日本を離れてもう五日が過ぎた。

きっと夏休みじゃなかったら大騒ぎになっていただろう。
いや、それだけじゃ済まないな。

だからほんと、不幸中の幸いだ。

ん? 不幸……なのかな?
うーん……

でもまぁ、日本に帰ったら莉緒たちから嫌になる程怒られるだろう。
連絡をしたとはいえ、きっと今も心配してるだろうし……

真緒「莉緒どうしてるかな……」

和「ん? 寺井さんがどうしたんだ?」

真緒「あ、いや、どうしてるかなってさ」

和「……そうか」

和「しかし、昨日は楽しかったな。今日も行くかい?」

真緒「いや、行かないよ」

和「ん? じゃ、どこか行きたい所があるのかい?」

真緒「ああ」

和「真剣な顔してどうしたんだ?
そんなに行きたい所なのかい?」

真緒「そろそろ帰ろう」

和「帰る……だと?」

真緒「日本に、寮にな」

和「………」

真緒「莉緒たちも心配してると思うんだ」

和「………」

真緒「なぁ、阿部高」

和「………」

何も言わずとも、嫌だという気持ちがハッキリと顔に出てる。
分かってた事だけど、困ったな。

真緒「嫌か?」

和「だめだ」

真緒「なんで?」

和「なんでって……とにかく、絶対に嫌だ!」

真緒「……はぁ」

和「………」

真緒「なぁ、いつまでもここにいる訳にはいかないだろ?」

和「………」

真緒「早く帰らないと、莉緒たちが捜索願い出すかもしれないしさ」

和「………」

真緒「あんまり大事にはしたくないし」

和「………」

真緒(……ぬう)

真緒「何か言ったらどうなんだ?」

和「………」

真緒「阿部高! 怒るぞ!」

和「………」

真緒「………」

和「……そんなに寺井さんに会いたいのかい?」

真緒「は?」

和「さっきから黙って聞いてればなんだい、
寺井さん寺井さんと……」

真緒「な、何言ってるんだよ」

和「そうだよな、寺井さんだけ特別扱いだもんな! 
一人だけ名前で呼んでるしな!」

真緒「いや、だからそれは知り合いだったからで──
って、今はそんな事関係ないだろ!」

和「あるさ!!」

阿部高が叫んだ。
予期せぬ逆切れに面食らう。

しかしなぜ怒ってるのか分からない。
だってそうだろ、莉緒の事なんて今は関係ないじゃないか。

和「ぼくのことより寺井さんの方が良いんだろ!」

真緒「だから、なんで莉緒が出てくるんだよ!」

和「また名前を……こんなに言ってるのにどうして……」

真緒「帰ろうって話をしてただけだろ? 莉緒は関係ないじゃないか。
さっきから阿部高が何を言ってるのか分からないよ」

和「………」

阿部高の鋭い視線が突き刺さる。
怒ってるんだろうけど、怒りたいのはこっちの方だよ。

真緒「さ、帰るぞ」

和「一人で帰ればいいだろ!!」

真緒「おい、落ち着けって!」

和「うるさい! うるさい! 俺のことなんてなんとも思ってないくせに!」

真緒「おいっ!」

阿部高が部屋を飛び出した。
勢いよく閉まったドアの音が耳にこびりつく。

なんであんなに怒ってるんだか──
くそっ、勝手にしろ!

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最終更新:2010年07月14日 23:25
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