シナリオ 阿部高ルート 7月31日(土曜日)・その4
What Kind of Man Would I Be
晩御飯をご馳走になった後、部屋で遊ぼうと阿部高に誘われた。
どんな部屋なのかとドキドキしていたが、予想とは違う殺風景な部屋だった。
寮の部屋は、男だというアピールなのか、女の子っぽいものが何一つ無い部屋。
しかし実家の部屋ともなると、さすがに阿部高も……
と思っていただけに、拍子抜け。
本人が言うには、『たまにしか帰らないからこんなんだ』
たしかにそういうものかもしれないけど、
年頃の女の子の部屋にしてはずいぶんと味気ない。
映画やドラマで使われそうな部屋。
そう、まるで無理やり作った印象がする。
和「……むにゃ」
疲れていたのか、早々と寝てしまった阿部高を横目にぼくは部屋を見て回った。
机の本──
男らしい本でもあるのかと思えば、辺り触りの無いタイトルばかり並んでいる。
何の気なしに、適当に一冊を手にしてみる。
パラパラとめくると、所どころに落書きがあった。
微笑ましいなと見ていたが、ページをめくり落書きを見つけるたび、
奇妙な事に気がついた。
落書きはすべてショートカットの女の子の絵。
スカートや大きなリボンをつけて、とても可愛らしい絵だった。
この絵は、阿部高自身なんだろうか。
時折、グチャグチャに消した絵もある。
ぼくには、上手に描けなかったから消したとは思えない。
そこから読み取れるのは……
真緒「………」
理由は分からないが、阿部高は無理に男だと言っているんじゃないだろうか?
本当は女の子だと分かっているのに、無理に……
もう一度殺風景な部屋を見る。
不自然すぎる程何も乗っていない化粧台。
ヌイグルミでも座らせていたんじゃないかと思う小さな椅子。
ぼくの考えすぎかもしれないが──
この部屋が、とても悲しく映った……
最終更新:2010年07月14日 23:51