E-8/1-3

シナリオ 阿部高ルート 8月1日(日曜日)・その3

 戻りたい、戻れない


和「………」

真緒「………」

お互いの言葉が消えてどれくらい経っただろう。
そして阿部高は、今何を思っているんだろうか。

和「……でも、だめだよ」

沈黙を破り、阿部高が言った。

真緒「駄目? 何が駄目?」

和「先生の気持ちは凄く…嬉しい……」

和「でも、ここは家だから……」

そう言って、阿部高はぼくの手をすり抜けた。


※CG終


和「………」

真緒「………」

何か言おうとしても、言葉が見つからない。

阿部高はきっと、女の子に戻りたいと願ってるはずだ。
でもそうする事で、母がまた悲しむと思っている。

言ってしまいたい……お前のお父さんは生きているんだと。
もう無理に自分を演じる必要は無いんだって──

和「や、やはり、時と場所をわきまえてイチャつかないとな! 
それが良い男ってもんだ!」

和「だから、ここにいる間はしちゃいけないぜ?」

真緒「………」

和「………」

和「さぁて、俺は部屋に戻ろうかな。
それじゃあな!」


逃げる様に阿部高が去っていく。
そしてまた、追いかける事が出来ない自分がいた。

追いかけてすべてを話せば、もう演じる必要もない。
でもそれは、これまで積み重ねてきた阿部高の思いを壊してしまう事になる。
母親ですら言えない事を、知り合って間もないぼくが言える訳もなくて……

いつの日か阿部高も真実を知る時が来るだろう。
ぼくはその日まで、今まで通り接する事しか、出来る事はないのかもしれない……



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最終更新:2010年09月07日 23:11
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