シナリオ 阿部高ルート 8月1日(日曜日)・その3
戻りたい、戻れない
和「………」
真緒「………」
お互いの言葉が消えてどれくらい経っただろう。
そして阿部高は、今何を思っているんだろうか。
和「……でも、だめだよ」
沈黙を破り、阿部高が言った。
真緒「駄目? 何が駄目?」
和「先生の気持ちは凄く…嬉しい……」
和「でも、ここは家だから……」
そう言って、阿部高はぼくの手をすり抜けた。
※CG終
和「………」
真緒「………」
何か言おうとしても、言葉が見つからない。
阿部高はきっと、女の子に戻りたいと願ってるはずだ。
でもそうする事で、母がまた悲しむと思っている。
言ってしまいたい……お前のお父さんは生きているんだと。
もう無理に自分を演じる必要は無いんだって──
和「や、やはり、時と場所をわきまえてイチャつかないとな!
それが良い男ってもんだ!」
和「だから、ここにいる間はしちゃいけないぜ?」
真緒「………」
和「………」
和「さぁて、俺は部屋に戻ろうかな。
それじゃあな!」
逃げる様に阿部高が去っていく。
そしてまた、追いかける事が出来ない自分がいた。
追いかけてすべてを話せば、もう演じる必要もない。
でもそれは、これまで積み重ねてきた阿部高の思いを壊してしまう事になる。
母親ですら言えない事を、知り合って間もないぼくが言える訳もなくて……
いつの日か阿部高も真実を知る時が来るだろう。
ぼくはその日まで、今まで通り接する事しか、出来る事はないのかもしれない……
最終更新:2010年09月07日 23:11